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第一章 『大蛇神の蛇使い』 民間に古くから伝わる大蛇神伝説を利用したトリック使い、狂人・大蛇神の蛇使いとの推理対決です!
19.美弥子の蛇占い
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『それでは美弥子、始めなさい!』
正に大人の威厳とも言える声で草五郎が美弥子に命令すると、その言葉を聞いた美弥子は「はい……」と言いながらと、両手に持った円筒形の筒を念を込めて振り始める。
振り始めた体の揺れは最初は小さな物だったが次第に大きくなり、終いには荒々しい動きとなって一心不乱にその筒の中身を振るい続ける。
そのクネクネと動く姿はまるで蛇の姿を思い浮かべたが、周りで見ている人達は皆何も言わずにその成り行きを静に見守る。
そんななんとも言えない厳《おごそ》かな雰囲気の中に困惑しながらもその状況を静に見守る勘太郎達の姿があった。
日がすっかり暮れた十九時に池ノ木当麻のアトリエを後にした勘太郎と羊野はそのまま村人達の家を回り軽い聞き込みを再度していたが、二十一時に大沢家である恒例の行事が行われると言う話を聞き、二人は急ぎ大沢家にその足を運ぶ。
遺族や関係者達が葬儀の準備をしている中に足を踏み入れるのは流石に居心地の悪い物を感じたが、大沢家で働くお手伝いさん達は行き成り来た勘太郎と羊野を温かく持て成してくれた為、二人はまだ食べていない遅めの夕食に安心してありつく事が出来た。
その夕食が出された別室の部屋には既に夕食を食べ終えた警視庁捜査一課特殊班の川口警部・山田刑事・赤城刑事の三人がお茶を飲みながら静にくつろいでいたので、勘太郎は彼らがここへ来た理由を直ぐさま訪ねて見る。すると特殊班の人達もまた蛇野川美弥子がこれから行おうとしている蛇神占いの儀式を見る為ここへ来た事を明かしてくれたので、内心勘太郎はかなりほっとしていた。何故なら葬儀の準備で大忙しの大沢家に来る事は流石に非常識だと内心では思っていたからだ。
いくら大沢草五郎社長の依頼を受けているとはいえ流石に今日だけは自粛したいと思っていた勘太郎だったが、今夜は大沢草五郎社長の意向で行われるとされる恒例の蛇神占いが二十一時丁度にあると村人達に教えて貰ったので、勘太郎と羊野は恥を忍んで大沢邸にお邪魔する事に決めた用だった。
そんな理由も相まって少し萎縮気味の勘太郎だったが、それとは別に大沢家に対する一つの疑問が脳裏を過る。
一体何故大沢杉一郎が死んだこの時期にわざわざこんな占いをしなけねばならないのかを?その事実を勘太郎は冷静に見極める。
そんな思いを胸に抱きながら美味しい夕食を食べ終えた勘太郎は、今か今かと楽しみにしている羊野と、川口警部・山田刑事・赤城刑事の三人を伴いながら、大広間へと案内をするお手伝いさんの後へと続く。
親切な案内で無事に大広間にたどり着く事が出来た勘太郎を含めた五人は、人が数十人程いる畳の部屋へと通され……そして今に至る。
現在時刻は二十一時0五分。夜遅くまで準備をしてくれていた葬儀屋が一旦帰り、葬儀の準備に一応一段落がついた宮下達也・小島晶介・池ノ木当麻を始めとした大沢農園株式会社で働く社員達は皆、祭壇を見上げながら奥の畳に静に座る。
その正座をする社員達の先頭にはこの家の当主でもある大沢草五郎社長と。その息子の次男の宗二郎。そして三男の柳三郎が順に並び。その祭壇の真下に置かれている豪華な棺桶を厳かに見守る。
だがその視線の先には当然見えているはずの棺は見えてはいない。何故なら皆の視線は目の前にある棺桶にでは無く、その真ん前で占いをする蛇野川美弥子に全て向いているからだ。
綺麗な神子服姿で円筒状の筒を一心不乱に激しく振るう蛇野川美弥子は一種のトランス状態に陥っている用だったが、その異常な状況を見ても周りの人達は誰一人として止めようとはしない。何故ならこれこそが蛇神様を降臨させる為の儀式である事を皆が知っているからだ。だからこそ特別にこの場に入れて貰った白黒探偵の二人や特殊班の刑事達も敢えて動かなかったのだ。先ずはこの村の風習に従って状況を把握しようと言った所だろうか。
因みに祭壇の前に置かれている棺の中に、まだ大沢杉一郎の遺体は入れられてはいない。今日一日は死体を調べる為に警察が預かっているからだ。
明日の夕方頃には杉一郎の遺体が帰って来るとの事なので、それまでは仏が無い状態で葬式の準備を進めなければならないが、事が事だけに皆が無言のままそれぞれの仕事をこなしている……そんな状況だ。
そんなやるせ無い思いの中で突如行われる蛇神に纏わる占いは大沢草五郎社長の命令で行われている物だが、何故今この時にこんな占いをわざわざやらなくてはならないのかと、勘太郎はこの村の特殊な風習に内心首を傾げる。
羊野が言うには、その村の取り決めや伝統風習を良しとする閉鎖的な環境が今も根強く残っているからだろうと言う話だが、そんな地域限定の風習も都会から来た勘太郎には勿論理解できず、そして不気味にすら感じる。
どうやらこの村では一番影響力のある大沢草五郎社長の意向と、この村に古くから伝わる大蛇神に纏わる行事ごとには誰も逆らえない傾向があるのだろう。それ故にこの特殊な環境がこの村の人達の行動を支配しているのだろうと勘太郎は考えていた。
まあ何処の村や町にも古くから伝わるしきたりや風習はあるので、それを全て否定する訳では決して無いのだが、今行われているこの蛇神占いはその異様さからか勘太郎の目にはとても不気味に見えた。
そんな事を考えながら静に見守っていると、要約長い筒振りを終えた蛇野川美弥子が両手に持った長筒を真下の畳に向けて逆さまに振るう。するとその動きに合わせるかの用に黒いお皿を手に持った大沢草五郎が、振り下ろされる長筒の真下にその黒いお皿をそっと置く。その瞬間長筒の中から出て来た一本の細長い竹の棒が黒いお皿の上へと滑らかに滑り落ち、そのお皿の表面でピタリと止まる。
その出て来た竹の筮竹棒を素早く手に持った草五郎は、彫りの深い顔のシワを更に厳しく歪めながら、その竹の棒に書かれてある文字を真剣に見つめる。
「うむ、これで蛇神が今度は『いつ』現れるかは何となく分かったが。美弥子よ……後は『何処で』『何が』『どうなったか』が書かれてある三つの長筒を順番に振ってくれ」
その草五郎の言葉に四つある長筒を順番に手に取り激しく振り出した蛇野川美弥子は、畳の上に置かれている黒いお皿を目がけて長筒を三度振るう。するとその振りに合わせてそれぞれの長筒から出て来た三本の竹の棒は、まるで落ちるその順番を待っていたかの用に下で待ち受ける黒い皿の上へと滑り落ちる。
するとその三本の竹の棒を素早く手に取った草五郎は、合計四本の竹の棒に書かれている文字を順番に見つめながら、その顔を更に重苦しく曇らせる。
「うぅぅ……これは、余り良くないな。うう~ん」
草五郎の煮えきれない態度に周りで見ていた人達は皆誰もがその結果に不安を抱いていたが、その沈黙を打ち破ったのは警視庁捜査一課特殊班の川口警部だった。
「草五郎社長、一体どうしたんですか。占いの結果は……そしてその四つの竹の棒には、それぞれ一体なんと書かれてあったのですか?」
そのストレートな川口警部の質問に最初は草五郎もどう説明していいのか迷っている様子だったが、最終的には仕方が無いとばかりにその竹の棒に書かれてある文字の内容を言いにくそうに伝える。
「この四本の竹の棒一つ一つに書かれてある言葉によれば、一本目(いつ)『追求する牛水時に』二本目(何処で)『森に囲まれたねぐらで』三本目(誰が)『小賢しい人が』四本目(どうなったか)『酒気により災いあり』と出たのだ。これが一体何を意味しているのかは知らんが、まあ大して気にする事でも無いだろう。昔からの形式に従って蛇神様の占いを毎年美弥子にやって貰ってはいるが、ワシは本当は全くと言っていいほどこんな占いなど信じてはいない。だがだからと言ってこの占いの結果を良しとも思ってはいない。むしろその逆だ。もしこの結果の通りにまた誰かに良くないことが起こったりなどしたら、今度こそ流石に説明が付かないからな。今までのことは天災による事故か人の手による事件だと言うワシの主張もついには破綻してしまう恐れがあるからのう」
「そんな結果が出たのですか。それでその言葉には一体どんな意味が隠されているのですか?」
「さあな、ワシにも分からんよ。勿論長筒を振っていた美弥子当人にも分からん。何故ならこの結果をもたらしたのは美弥子では無く、蛇神様とやらの言葉だからだ。そう美弥子はいつも言っている。まあ、この一つ一つに書かれてある四つの筮竹棒の文字から連想して、答えを探すほかは無いと思うがな」
意味ありげにニヤリと笑う草五郎社長と渋い顔をする川口警部との会話に、傍で聞いていた勘太郎が体を震わせながら青ざめる。何故なら昨日植物園の中で美弥子にあった時に、帰りの際に何かを警告された事を思い出したからだ。
確か昨日植物園で美弥子が言っていた事は……暴漢・毒蛇・お酒・には十分に気をつけて下さいだったかな。でももう既に暴漢と毒蛇には昨日の段階で体験しているから。残るは『お酒』と言う災いの言葉だけと言う事になるな。まあ今夜の占いでは、最後に出た『酒気により災いあり』と言う予言と『お酒』と言う災いの言葉が何だか被るので、一応ここにいるみんなにも注意は必要だな。そ、それにしても、このお酒に関わる呪いの対象者ってまさか俺の事じゃないだろうな?
そんな不安な考えが読まれたのか、羊野が勘太郎の方に顔を向けると耳元で妖艶に囁く。
「大丈夫ですわ、黒鉄さん。既に昨日でこの三つの予言は完遂していますから。最後のお酒の災いは、赤城文子刑事の災難で既に終わっていることをもうお忘れですか。あの『酒気により災いあり』と言うのは、別の誰かを射している物と考えますわ」
そんな羊野の冷静な言葉に勘太郎が落ち着きを取り戻していると、近くで緊迫した若者の声が飛ぶ。
「だから言っただろう親父。美弥子が占う蛇神様の予言は絶対に本物だってよ!とても信じられない事だが、この予言の後にもう既に三人の人が亡くなっているんだからよ。それにあの殺人大蛇の姿も俺は蛇神神社で直に見ているし、信じるなと言う方が無理な話だぜ。だからさあ、いい加減に信じてくれよ、親父!」
そう言い出したのは後ろで話を聞いていた大沢家の三男、大沢柳三郎である。
どうやら柳三郎もまた、大沢家に掛けられている?かも知れない蛇の呪いに怯えている用だ。 既に死んだ三人の被害者は皆大沢家に関わりのある人達なのだから大蛇神の祟りで殺されたと考えても別に可笑しくはないのだが、そんな柳三郎の泣き言を許せない物達がいる。大蛇神の呪いや祟りを真っ向から否定する大沢宗二郎と小島晶介である。
「落ち着けよ、柳三郎。大蛇の呪いなんて、そんな物が本当にある訳が無いだろう。この占いだって事件で人が死んだ後に無理矢理にこじつけたただの言葉の擦り合わせだろう。だからこそいくらでも都合のいい用にいろんな解釈が出来るんだよ。これは親父から聞いたんだが、美弥子が持つあの一つの長筒の中には竹の細棒が約六十本程入っているらしい。と言う事は、あの四つの長筒を全て合わせたら全部で二百四十本と言う数になる。そしてその一つ一つの細棒に書かれてある文字には簡単な言葉が書いてあるから、その言葉の書いてある細棒を四つ程ランダムにつなぎ合わせる事によって一つの文章が作り出されている。と言う事は、何か大蛇を連想させる用な言葉を事前にこの細棒に書いて置けば、その言葉の意味をどう解釈するかは当然後付でいくらでも出来ると言う事だ。そう考えればこの占いの結果にも自然と納得が行くだろう」
「ああ、そうだな。俺も宗二郎さんとほとんど同じ考えだ。それに新種の大蛇と言う可能性だって極めて低いが……十分に考えられる事だ。この気温の寒さを一体どう克服しているのかは知らないが、生物の一つの可能性として大いに期待してもいいだろう。て言うか大の蛇マニアでもある俺としてはそうあって貰いたいと言うのが本音だ!」
どうやら宗二郎と小島の考えは草五郎社長と同じで呪いや大蛇神と言った神がかり的な物はいないと言うのが彼らの意見だ。そんな二人の考えにどこからとも無く抗議の声が飛ぶ。
「いいえ、柳三郎さんの言っている事は全て正しいです。何故なら蛇神様の呪いや祟りは確実に存在するからです。大蛇神様はその呪いや体現によって自らの意思を示しているのです。だからこそ蛇神神社に現れるとされる大蛇の存在もまた否定は出来ない。そうですよね、池ノ木さん」
「ああ、もちろんだぜ。まあ実際ここに神様がいるかどうかは俺には分からないが、この村全体から漂う不可思議な気配をヒシヒシと感じるぜ。なら蛇神様の祟りが会ったって別に可笑しくは無いだろう。今までだって蛇に関わる可笑しな話が沢山あったんだから、それらを無視は出来ないだろう」
この状況で大蛇神の呪い説に賛同するのは、宮下達也と池ノ木当麻の二人である。
大蛇神に対して揺るぎない信仰を唱える宮下は別として、動物模型芸術家の池ノ木がこの意見に賛同したのは何か言葉では言い表せない見えざる意思を感じる。いや……もしかしたら勘太郎や羊野……そしてその後に訪れた特殊班と言ったしつこい訪問者達に腹いせとして、何かしらの抵抗をしたいだけなのかも知れない。
そんな大蛇を信じる派と信じない派が意見をぶつけ合う中で、その意見を行き成り遮ったのは話を黙って聞いていた羊野だった。
「そこまでです。皆さんの大蛇神に対する異議主張は十分に分かりました。ですが今はその事を述べ合っても埒があきませんので今日の所はお互い引いてはくれませんでしょうか。事件が中々解決しないと言う皆さんの不満や苛立ちは十分に分かりますが、今我々は事件の真相を必死に探っておりますので、どうかご協力の程をよろしくお願いします」
もう日はとっくに暮れているので羊のマスクを取り外した羊野が、腰まで伸びた長い白髪をゆらゆらと垂らしながら深々と頭を下げる。
凛としながらも謙虚さを見せるその態度にその場にいた者達は皆その動きを止めたが、その一瞬を見逃さなかった羊野が大沢草五郎と蛇野川美弥子を凝視しながらさらなる言葉で畳みかける。
「あ、そう言えば、草五郎社長と美弥子さんのアリバイを聞くのはまだでしたね。出来たら今すぐにでもお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか」
「は、はい、分かりました。草五郎社長が許して下さるのなら、今ここで私の昨日のアリバイをお話します。ですがその事はもう既にそこにいる刑事さん達にもお話しましたのでオウム返しになってしまいますよ」
「いえいえ、私が知りたいのは昨日の貴方のアリバイではありません。また別の話ですわ。と言う訳で草五郎社長、奥の別室を使わせて貰いたいのですがよろしいでしょうか」
「羊野瞑子さんと言ったかな。別室を貸すのは別に構わないが、今の話はどういう事だ。今ワシの耳には二人のアリバイがどうとかと聞こえたが聞き間違いだったかな。美弥子への聞き込みは分かるが、何故ワシまで答えないとならんのだ。ワシはお前らを雇った依頼人だぞ!まさか依頼人であるこのワシまで疑っている訳じゃ無いだろうな?」
「はい、普通に疑いますよ。貴方はこの大蛇事件に関わる一番の関係者じゃ無いですか。その関係者からアリバイを直に聞け無いだなんて、むしろそっちの方が可笑しいですよ」
「このワシを……まさか犯人だとでも思っているのか。ワシは完全な被害者だぞ!従業員や妻や息子だって殺されている!」
「でも……貴方は死んではいませんよね」
「な、なんだとう!」
「はいはい、ストップ、ストップ!そこまでよ、羊野さん。草五郎社長も落ち着いて下さい」
素早く止めに入ったのは現状を見ていた赤城刑事である。
「すいません、草五郎社長。彼女の言葉に失礼があったかも知れませんが的は得ていますよ。羊野さんが言いたかったのは、この事件を調べるに辺り全ての関係者を公平に調べると言う事です。決して一人の人間を特別扱いはしません。それに彼らにこの捜査の依頼をしたのは草五郎社長本人ですよね。ならご自身のアリバイを聞かれたくらいでそんなに目くじらを立てなくてもいいのではありませんか。それに正直言って私達も貴方のアリバイをもっと詳しく聞きたいですし」
「ふん、もっと詳しくとは言うが、宮下・小島・池ノ木からも既に話は聞いているのだろう。ワシは杉一郎が死んだ十九時から~二十一時までの間は宮下・小島・池ノ木の三人と一緒に民宿であんたら刑事達と話をしていたじゃないか。これ以上のアリバイは他には無いだろう!」
その言葉に今後は勘太郎が素早く反応する。
「ええ、知っています。俺もあの時、帰り際の草五郎社長達とお会いましたから。なので今度は別の視点から話を聞きたいとそう申しているのですよ。そうだよな、羊野!」
「はい。まあ、そう言う事ですわ。ホホホホホッ!」
行き成り会話に割って入った勘太郎の問に、羊野は態とらしく笑みを浮かべながら不気味に笑う。そんな二人を草五郎社長は真剣な眼差しで見つめ返すのだった。
*
「これがつい先ほど美弥子さんが占いに使っていた道具ですか。合計四個あるこの長筒を一つずつ振って中に入っている細長い棒を一つだけ引き出す訳ですね。一つ一つの棒の先にはいろんな言葉が書かれてあって、その文字を合わせることによって言葉が完成する。まるで子供がよく使う『いつ』『何処で』『誰が』『どうなったか』と言う言葉遊びの用ですね。因みにこの棒に書かれてある文字は、美弥子さん貴方が書いた物ですか」
「ええ、私は書いてはいません。何故ならこの四つの長筒は五年前に草五郎社長が私にと直接渡された物ですから。何でも十年以上昔に草五郎社長が蛇神神社の神主だった(蛇野川拓男)私の父から修理の為に預かった代物だそうですが、その長筒を蛇神神社の最後の末裔でもある私に返すと言って渡された物がこの四つの長筒です。そしてこの長筒を返すにあたり、草五郎社長はそんな私に一つの注文を付けてきました。『お前に渡したこの四つの長筒を使ってこの村の天候を占ってくれと……形だけでもいいから村人達を納得させる為に、昔から行われていたあの占いの儀式をまた復活させてくれと……それが蛇神神社の神主が代々行って来た行事であり、そして神に捧げる風習なのだと』そう草五郎社長は言っていました。だから私は蛇神占いを始めたんですけど……まさかこんな事になるなんて」
「今まで文句も言わずに草五郎さんに言われるがままに、この長筒を使って占ってきたと言う訳ですね。因みにこの長筒を持ち運びしていたのは」
「わ……私……だけです。この長筒を倉に戻すのはいつも私の仕事ですから。後この長筒は普段はこの家の倉に厳重に閉まってあるので、倉の鍵を持っている草五郎社長しか開けられません」
「そうですか、草五郎社長がねぇ~っ」
そう言いながら羊野は、美弥子が使っていた長筒やその中に入っている細長い竹の棒を一本一本丁寧に調べる。勿論先程の占いの時に使われていた黒いお皿の方も気になるので、軽く指ではじきながらそのお皿の材質も一緒に調べ初めていた。
「……?」
「おい、羊野。今は質問の途中だぞ。調べるのは後にしろよ」
「あ、黒鉄さん、今私とても忙しいので代わりにお話を聞いて貰っていいですか」
「い、いいですかってお前……話を聞きたいと言っていたにはお前の方じゃないか。それなのに全部こっちに押し付けるなよ!」
時刻は二十二時0二分。勘太郎と羊野、そして蛇野川美弥子を入れた三人は、草五郎社長が貸してくれた八畳程ある和室の一室で丸いテーブルを囲みながら、美弥子への質問を始めていた。
本当は当の草五郎社長から色々と話を聞きたかったのだが、そちらの方は特殊班の刑事達が直接話を聞くとの事なので、もう一人の重要人物でもある蛇野川美弥子の方から話を聞く事に決めた用だ。
だが本来質問するはずの羊野の方は手に持つ黒いお皿や竹で出来た長筒の方が気になるのか、かなり集中力に欠ける。その為、本来全てを羊野に任せようと思っていた勘太郎が代わりに美弥子への質問を開始する。
「美弥子さん。貴方は昨日の十五時に自転車で隣町にいる友人の元に向かい。その後は十八時三十分頃に家へと帰宅されているとの事ですが、それで間違いありませんね」
「はい、確かその時間だったと思います。疑うんでしたらその友人に聞いてみて下さい。私その友人に借りてた本を返す為に十六時三十分に友達の家に立ち寄って。その後は町のスーパーで少し三十分程お買い物をして、そして帰って来たのが十八時三十分くらいですから間違いないと思います。勿論その時のレシートもありますから確認して下さい」
「自転車で隣町に行くのに片道一時間三十分も掛かるなんてものすごく大変ですね」
「いえ、高校に通う時は普通に自転車で通学していますから特に気にしてはいません」
「帰宅後は他のお手伝いさん達と共に家事や雑用をこなしていたとの事ですが、その間にお屋敷から出たりとかはしていませんか」
「いいえ、お屋敷の中で私はず~と働いていましたから帰宅後以降は外には出ていません。その後仕事を終えたのが二十二時丁度なので、私はそのまま自分の部屋へと戻り、少しテレビを見てから床へと就きました」
「どうやらそうみたいですね。貴方のアリバイは他のお手伝いさん達が代わりに証言をしてくれましたから。でも部屋に戻られてからのアリバイはありませんよね。それを証明してくれる人とかはいますか?」
「いいえ、当然いないですよ。部屋には私一人だけですから。でも仮に私が犯人だったとしても移動手段が自転車しかありませんから、はっきり言って犯行を犯すには無理があると思いますよ」
「まあ確かに、いくら交通量が少ない田舎道だったとしても、自転車のライトを付けながら夜道を走行なんかしたら誰かに見つかるかも知れないし。それに何より杉一郎さんが死亡した後から蛇神神社に行っても意味が無いと言う事か」
勘太郎は一人呟きながら、蛇野川美弥子が大沢杉一郎を殺害する事は事実上不可能だと考える。何故なら当の美弥子には立派なアリバイがあるからだ。その美弥子が何かを思い出したかの用に言う。
「あ、そう言えば、杉一郎さんの事で一つ気になることがあります。これは他のお手伝いさん達が言っていた事なのですが、十七時に池ノ木さんが隣町に出掛ける少し前に、杉一郎さんの車の鍵が無いとちょっとした騒ぎになったとの事です。でも直ぐに見つかって、後に杉一郎さんも自分の車で何処かへと出掛けたとの事です」
「鍵が無くなったんですか。何処かに置いたのをど忘れしたんですかね」
「さあ、それは分かりませんが直ぐに見つかって良かったとお手伝いさん達も言っていました。杉一郎さんは怒ると怖い人でしたからね」
「ええ、そうみたいですね」と言う勘太郎の言葉に美弥子は少し悲しそうな顔で笑う。
そんな美弥子との会話がもうそろそろ終わりそうなんだけど……と言うような顔で勘太郎が羊野の方を見ると、今まで黒いお皿をじ~と眺めていた羊野が行き成りしゃべり出す。
「う~ん、長筒やその中に入っている細長い棒は古い杉の木で出来ている用ですね。それに棒の先に書かれてある墨汁字の変色具合からして、恐らく五年以上は経っている物と思われますから、昨日今日書き足した文字では無いと推測されます。それと黒いお皿の方ですが何の変哲も無いタダの陶器の用ですね。これについても特に怪しい点は何もありませんでした。私の読みでは、この黒いお皿に何か仕掛けがあると踏んでいたのですが、どうやら読み間違いでしたか」
「当然です。仕掛けなんて何も無いんですから」
「五年以上か。草五郎社長がその長筒を預かったのは十年以上前の話だから、その修理がてらに文字を書き足すことは出来るかも知れないな。まあ、五年以上前から草五郎社長が何かをもくろんでいたらの話だがな。だが、大蛇事件と蛇神の呪いに結びつけるには余りに時が長すぎるから、やはりそれは流石に考え過ぎかな」と勘太郎がさりげなく疑問の言葉を入れる。
「なるほど、では質問を変えます。美弥子さん、貴方は自転車で片道一時間三十分もかけて家路へと戻って来たそうですが、その道すがら何か気付いた事はありませんか。どんな些細な事でも構いませんから教えて下さい」
「と言われても……特に変わった事は何もありませんでしたよ。田畑や山々が広がる公道をいつもの用に走って来ただけですから」
「そうですか……その移動途中に何処かで見慣れた車やもしくはバイクなんかとはすれ違いませんでしたか」
そう羊野に言われ美弥子はハっとした顔をする。
「あ、そう言えば、蛇神神社に通ずる駐車場がある交差点の信号で追い越されました」
「追い越されたとは、一体何に追い越されたのですか」
「バイクにです。誰もいない交差点で信号が青に変わるのを待っていたら、後ろから来たバイクが行き成り私の直ぐ横で止まったんです。私はその信号待ちをしているバイクを見て咄嗟に頭を下げたんですけど、結局彼に無視されてしまいました。お互いに視線が合いましたから丁寧にお辞儀をしたんですけど……あれはあれで少し傷つきますね。いつもなら返事くらいは返してくれるのに……酷いです」
「貴方はそのバイクの人物を知っているのですか」
「はい、あの自動二輪の大きな黒いバイクを持っている人は、この辺りでは一人しかいませんから。その人の名は池ノ木当麻さんです」
「ああ、そう言えば彼も草五郎社長に頼まれて書類を届けに隣町まで行っていたのでしたね。それで二人は道路の途中一つしか無い交差点で顔を付き合わせたと言う訳ですか。その後池ノ木さんが乗るバイクが信号待ちをしていた美弥子さんを追い越したと言う事は、池ノ木さんもまた帰り道だったと言うこと。つまり二人が交差点で出会った時刻は十七時四十五分と言った所でしょうか」
「はい、その通りです。よく分かりましたね」
「いえいえ、池ノ木さんがその時間帯に隣町まで出かけてた事は既に取り調べの時に聞いていましたから。もしかしたら道すがらの途中で池ノ木さんとすれ違っているのではないかと思いましてね。池ノ木さんが隣町を後にしたのが十七時三十分でしたから、十七時丁度に隣町から先に出た美弥子さんは必ず蛇神神社の駐車場付近でバイクに追い越されていると想像したのですよ。なのでもしかしたら池ノ木さんを目撃していると思いましてね。まあ、そんな事よりです。彼が自動二輪のバイクに乗っていた以上フルフェイス型のヘルメットを付けていたはずです。午後に池ノ木さんの家に行った時に玄関の棚の上に黒いフルフェイスのヘルメットが置いてあるのを見ましたから間違いないと思われます。と言う事は美弥子さんは池ノ木さん本人の顔は直に見てはいないと言う事ですよね」
「はい、ヘルメットを被っていましたから見てはいません。でもバイクに乗る時は必ずいつもの革ジャンを羽織っていましたから、あれは池ノ木さんに間違いないです」
「そうですか。その事はまだ池ノ木さんには言ってはいませんよね」
「はい、言ってないです」
「そうですか……なら安心しました」
そう言うと羊野は赤い瞳を輝かせながら怪しげに微笑む。どうやら羊野は池ノ木が主張するアリバイが本当か嘘か、それを確かめる為のサンブルを手に入れた用だ。
「では黒鉄さん。私はこれからこのお屋敷の中を少し探検して来ますから一人で美弥子さんへの聞き込みを続けて下さい」
「ち、ちょっとまて。お前、仕事をほったらかして一体何処に行くつもりなんだよ!」
「少し気になることがありますので、それを確かめに行くんです」
ゆっくりと障子の引き戸を開けた羊野は、気配を消す暗殺者のように素早く廊下の方へと姿を消すのだった。
それから三十分後。
一体何処に行ったのか部屋を飛び出した羊野はまだ帰って来る気配がないので、もう殆ど話す事も無くなった勘太郎と美弥子の二人は仕方なく雑談を始めていた。
本当は聞きたいことが聞けたら直ぐにでも解散したい所だが、羊野に「私が帰ってくるまで勝手に解散したら駄目ですよ」とキツく言われているので、それまでの間二人は羊野が帰ってくるのを待つことに決めた用だ。そんな勘太郎と美弥子の元にどこからともなく廊下を走る誰かの足音が聞こえて来る。
その足音は次第に大きくなり、勘太郎達がいる部屋の前でピタリと止まる。
「し、失礼します!」
勢いよく障子の引き戸を開けたのは、荒い息を吐きながら勘太郎と美弥子を見る宮下の姿だった。
「た、探偵さん、大変です。たった今大蛇が……今度は大沢家の裏庭に現れたらしいです!そ、それと裏庭に偶々いた池ノ木と草五郎社長の二人がその大蛇に襲われて怪我を負ったらしいですから、探偵さんも早く裏庭に来て下さい。それとあの三人の刑事達の方にはもう既に知られてありますから裏庭の方へと向かっているはずです」
慌てふためきながら話す宮下の言葉に勘太郎が勢いよく立ち上がると、今現在大蛇が現れたとされる裏庭の方へと急ぐのだった。
*
「ワ、ワシの方は大丈夫だ。ワシの事よりも……ワシをかばって左腕に怪我を負った池ノ木の方を見てやってくれ!」
体をガタガタと震わせながらそう訴えるのは、涙目で語る大沢草五郎社長である。
草五郎の話によると、川口警部達との話し合いの途中で「ちょっとトイレに行ってくる」と言って部屋を出た草五郎は、トイレ後少し休憩をかねて一人夜の裏庭で休んでいたとの事だ。
夜空を見ながら持っていた煙草を気ままに吸っていると、突然闇夜の方から長くて巨大な何かがゆらりと近づいて来るのを草五郎は目撃する。その闇夜に蠢く謎の正体が例の大蛇である事が分かると草五郎はすっかり怯えて腰を抜かしていたとの事だが、寸前の所で木の棒を振り上げながら駆けつけた池ノ木当麻に助けられたとの事だ。
そんな池ノ木の健闘も相まって何とか大蛇を追い払う事に成功した二人だったが、木の枝を振り回している時にでも切ったのか池ノ木の左腕からは少量の血が流れ、破れた袖口は真っ赤な血で染まっていた。
その後草五郎の悲鳴を聞いて裏庭に駆けつけた宗二郎・柳三郎・小島の三人は即座に草五郎社長と池ノ木の元へと駆け寄り。そして少し遅れて来た宮下は、この事を勘太郎と羊野、そして美弥子や刑事さん達にも知らせようとわざわざ呼びに来てくれたと言う訳なのだ。そして今に至る。
時刻は二十三時0五分。
憔悴しきった池ノ木は大蛇との攻防で受けた左腕の切り傷の応急処置をする為、赤城刑事と山田刑事に付き添われながら屋敷の中へと連れて行かれる。そんな池ノ木を見送りながら川口警部は、今し方大蛇に襲われた事を必死に話す草五郎に先ずは落ち着けと諭しながら頻りに周りを警戒する。
だが縁側から漏れる明かりだけでは裏庭全体は見えず。木々が覆う闇夜の方からは不気味な静けさと風の音だけがザワザワと草木を揺らしていた。
草五郎は体を震わせながら今の状況を伝えようと必死に言葉を語るが、ついさっきまで大蛇の存在を全く信じていなかった草五郎社長がこんな必死に語るのだから、その変わりように皆が驚くのは仕方の無い事だった。
「みんな気をつけろ。あの大蛇はまだそこら辺にいるかも知れない。しかし信じられん。あの皆が噂する殺人大蛇が本当に存在しているとはな。あんな大蛇を間近で見せつけられたらこれはもう信じるしかないな。人知を超えた神の大蛇は本当に存在しているのかも知れない!」
「ばかな、そんなのは絶対にあり得ない。この寒い時期に活発に動ける大蛇なんて、聞いたことも無い」
「そうですよ。何かの見間違いでは?」
「お前らこのワシが言っている事を疑うと言うのか。現《げん》にたった今ワシと池ノ木はそのいるはずも無い大蛇に襲われたんだぞ。つまり直接命を狙われたんだ。確かにあれは何らかの使命と意思を持った大蛇なのかも知れない……」
その明らかに弱気で語る草五郎の言葉に宗二郎と小島はまだ信じられないと言う用な顔で困惑し。その様子を遠巻きに見ていた柳三郎と後から駆け付けた美弥子の顔は心なしか少し青ざめている用だった。
そんな美弥子の肩に優しく手を当てながら前に出て来た宮下がニヤけ顔で話し出す。
「ふふふ、ほ~らだから前々から言っていたじゃ無いですか。やはり大蛇神様は確実に存在していると。今回の事でそれが確実な物となったのではありませんか。やはり大蛇神様は存在するのです。これは大沢家にとって……いや、この草薙村周辺にとって、とても大変な事ですよ。ハハハーハハハハっー!!」
「お前、そんなに恐怖を煽って一体何が楽しいんだよ!」
「そうだぞ。こんな時に何笑ってんだよ。止めろ、その耳障りな笑いを今すぐに止めろ!」そう言いながら宗二郎と小島は、急に笑い出す宮下に激しく怒りながらもその不気味さに何か得体の知れない恐怖を覚える。
この宮下の行き過ぎた行動も、大蛇神の存在を皆に認めさせる事が出来た喜びの現れなのかも知れない。
そんな周囲の混乱を内心ドキドキしながら見ていた勘太郎の後ろに、今まで姿を消していた羊野が涼しい顔で現れる。
「一体何の騒ぎですか。これは?」
「あ、羊野、戻ったのか。大蛇だよ。今度はこの裏庭に大蛇が現れたんだよ。しかもその時に偶々裏庭にいた草五郎社長と池ノ木さんがその大蛇に襲われたんだよ。今までは蛇神神社の周辺でしか目撃例が無いと言われていた大蛇だったけど、今後はこの大沢家の屋敷の裏庭に現れるとは流石に予想外だったぜ。これじゃ草五郎社長の言葉じゃ無いけど、この大蛇の存在を認めるしか無いんじゃ無いのか。何せ大沢家の裏庭にまでわざわざ来て、今まで大蛇の存在を全く信じていなかった草五郎社長にその存在を認めさせる事が出来たんだからな。そう考えるとやはりその突然変異の大蛇とやらはもしかしたら存在しているのかもしれないな」
草五郎社長から聞いた話をそのままを語る勘太郎の説明を聞きながら、羊野は大蛇の話で騒然とする周囲にその視線を向ける。
「なるほど、そう言う事でしたか。でもその大蛇を見たと言ってるのは裏庭にいた草五郎社長と池ノ木さんの二人だけですよね。宗二郎さんと小島さんじゃありませんが、草五郎社長と池ノ木さんの二人は本当にその大蛇とやらを見たのでしょうか?」
「お、お前、何が言いたいんだよ。ま、まさか、あの草五郎社長の証言を疑っているんじゃないだろうな」
「ええ、まあ、そう言う事です。何せあの草五郎社長には疑わしい点がいくつかありますからね」
「疑わしい点だと……なんだよそれは?」
「ええ、ここでは何ですから民宿に戻った時にでもお話しますわ」
「お前のその根拠のない自信が一体どこから来るのか俺には全く分からないが、そんなに容疑者候補を増やして本当に大丈夫なんだろうな?想像と決めつけで犯人を間違える事だけは勘弁してくれよ」
「ホホホっ何を言っているのですか。疑う事こそが私達探偵のお仕事じゃ無いですか。これからは疑わしい点を見つけたら随時追求して行きますよ」
ついには依頼人でもある大沢草五郎社長まで疑いだした羊野を心配しながら、勘太郎はこれからどう捜査をしたらいい物かと本気で頭を抱えるのだった。
『それでは美弥子、始めなさい!』
正に大人の威厳とも言える声で草五郎が美弥子に命令すると、その言葉を聞いた美弥子は「はい……」と言いながらと、両手に持った円筒形の筒を念を込めて振り始める。
振り始めた体の揺れは最初は小さな物だったが次第に大きくなり、終いには荒々しい動きとなって一心不乱にその筒の中身を振るい続ける。
そのクネクネと動く姿はまるで蛇の姿を思い浮かべたが、周りで見ている人達は皆何も言わずにその成り行きを静に見守る。
そんななんとも言えない厳《おごそ》かな雰囲気の中に困惑しながらもその状況を静に見守る勘太郎達の姿があった。
日がすっかり暮れた十九時に池ノ木当麻のアトリエを後にした勘太郎と羊野はそのまま村人達の家を回り軽い聞き込みを再度していたが、二十一時に大沢家である恒例の行事が行われると言う話を聞き、二人は急ぎ大沢家にその足を運ぶ。
遺族や関係者達が葬儀の準備をしている中に足を踏み入れるのは流石に居心地の悪い物を感じたが、大沢家で働くお手伝いさん達は行き成り来た勘太郎と羊野を温かく持て成してくれた為、二人はまだ食べていない遅めの夕食に安心してありつく事が出来た。
その夕食が出された別室の部屋には既に夕食を食べ終えた警視庁捜査一課特殊班の川口警部・山田刑事・赤城刑事の三人がお茶を飲みながら静にくつろいでいたので、勘太郎は彼らがここへ来た理由を直ぐさま訪ねて見る。すると特殊班の人達もまた蛇野川美弥子がこれから行おうとしている蛇神占いの儀式を見る為ここへ来た事を明かしてくれたので、内心勘太郎はかなりほっとしていた。何故なら葬儀の準備で大忙しの大沢家に来る事は流石に非常識だと内心では思っていたからだ。
いくら大沢草五郎社長の依頼を受けているとはいえ流石に今日だけは自粛したいと思っていた勘太郎だったが、今夜は大沢草五郎社長の意向で行われるとされる恒例の蛇神占いが二十一時丁度にあると村人達に教えて貰ったので、勘太郎と羊野は恥を忍んで大沢邸にお邪魔する事に決めた用だった。
そんな理由も相まって少し萎縮気味の勘太郎だったが、それとは別に大沢家に対する一つの疑問が脳裏を過る。
一体何故大沢杉一郎が死んだこの時期にわざわざこんな占いをしなけねばならないのかを?その事実を勘太郎は冷静に見極める。
そんな思いを胸に抱きながら美味しい夕食を食べ終えた勘太郎は、今か今かと楽しみにしている羊野と、川口警部・山田刑事・赤城刑事の三人を伴いながら、大広間へと案内をするお手伝いさんの後へと続く。
親切な案内で無事に大広間にたどり着く事が出来た勘太郎を含めた五人は、人が数十人程いる畳の部屋へと通され……そして今に至る。
現在時刻は二十一時0五分。夜遅くまで準備をしてくれていた葬儀屋が一旦帰り、葬儀の準備に一応一段落がついた宮下達也・小島晶介・池ノ木当麻を始めとした大沢農園株式会社で働く社員達は皆、祭壇を見上げながら奥の畳に静に座る。
その正座をする社員達の先頭にはこの家の当主でもある大沢草五郎社長と。その息子の次男の宗二郎。そして三男の柳三郎が順に並び。その祭壇の真下に置かれている豪華な棺桶を厳かに見守る。
だがその視線の先には当然見えているはずの棺は見えてはいない。何故なら皆の視線は目の前にある棺桶にでは無く、その真ん前で占いをする蛇野川美弥子に全て向いているからだ。
綺麗な神子服姿で円筒状の筒を一心不乱に激しく振るう蛇野川美弥子は一種のトランス状態に陥っている用だったが、その異常な状況を見ても周りの人達は誰一人として止めようとはしない。何故ならこれこそが蛇神様を降臨させる為の儀式である事を皆が知っているからだ。だからこそ特別にこの場に入れて貰った白黒探偵の二人や特殊班の刑事達も敢えて動かなかったのだ。先ずはこの村の風習に従って状況を把握しようと言った所だろうか。
因みに祭壇の前に置かれている棺の中に、まだ大沢杉一郎の遺体は入れられてはいない。今日一日は死体を調べる為に警察が預かっているからだ。
明日の夕方頃には杉一郎の遺体が帰って来るとの事なので、それまでは仏が無い状態で葬式の準備を進めなければならないが、事が事だけに皆が無言のままそれぞれの仕事をこなしている……そんな状況だ。
そんなやるせ無い思いの中で突如行われる蛇神に纏わる占いは大沢草五郎社長の命令で行われている物だが、何故今この時にこんな占いをわざわざやらなくてはならないのかと、勘太郎はこの村の特殊な風習に内心首を傾げる。
羊野が言うには、その村の取り決めや伝統風習を良しとする閉鎖的な環境が今も根強く残っているからだろうと言う話だが、そんな地域限定の風習も都会から来た勘太郎には勿論理解できず、そして不気味にすら感じる。
どうやらこの村では一番影響力のある大沢草五郎社長の意向と、この村に古くから伝わる大蛇神に纏わる行事ごとには誰も逆らえない傾向があるのだろう。それ故にこの特殊な環境がこの村の人達の行動を支配しているのだろうと勘太郎は考えていた。
まあ何処の村や町にも古くから伝わるしきたりや風習はあるので、それを全て否定する訳では決して無いのだが、今行われているこの蛇神占いはその異様さからか勘太郎の目にはとても不気味に見えた。
そんな事を考えながら静に見守っていると、要約長い筒振りを終えた蛇野川美弥子が両手に持った長筒を真下の畳に向けて逆さまに振るう。するとその動きに合わせるかの用に黒いお皿を手に持った大沢草五郎が、振り下ろされる長筒の真下にその黒いお皿をそっと置く。その瞬間長筒の中から出て来た一本の細長い竹の棒が黒いお皿の上へと滑らかに滑り落ち、そのお皿の表面でピタリと止まる。
その出て来た竹の筮竹棒を素早く手に持った草五郎は、彫りの深い顔のシワを更に厳しく歪めながら、その竹の棒に書かれてある文字を真剣に見つめる。
「うむ、これで蛇神が今度は『いつ』現れるかは何となく分かったが。美弥子よ……後は『何処で』『何が』『どうなったか』が書かれてある三つの長筒を順番に振ってくれ」
その草五郎の言葉に四つある長筒を順番に手に取り激しく振り出した蛇野川美弥子は、畳の上に置かれている黒いお皿を目がけて長筒を三度振るう。するとその振りに合わせてそれぞれの長筒から出て来た三本の竹の棒は、まるで落ちるその順番を待っていたかの用に下で待ち受ける黒い皿の上へと滑り落ちる。
するとその三本の竹の棒を素早く手に取った草五郎は、合計四本の竹の棒に書かれている文字を順番に見つめながら、その顔を更に重苦しく曇らせる。
「うぅぅ……これは、余り良くないな。うう~ん」
草五郎の煮えきれない態度に周りで見ていた人達は皆誰もがその結果に不安を抱いていたが、その沈黙を打ち破ったのは警視庁捜査一課特殊班の川口警部だった。
「草五郎社長、一体どうしたんですか。占いの結果は……そしてその四つの竹の棒には、それぞれ一体なんと書かれてあったのですか?」
そのストレートな川口警部の質問に最初は草五郎もどう説明していいのか迷っている様子だったが、最終的には仕方が無いとばかりにその竹の棒に書かれてある文字の内容を言いにくそうに伝える。
「この四本の竹の棒一つ一つに書かれてある言葉によれば、一本目(いつ)『追求する牛水時に』二本目(何処で)『森に囲まれたねぐらで』三本目(誰が)『小賢しい人が』四本目(どうなったか)『酒気により災いあり』と出たのだ。これが一体何を意味しているのかは知らんが、まあ大して気にする事でも無いだろう。昔からの形式に従って蛇神様の占いを毎年美弥子にやって貰ってはいるが、ワシは本当は全くと言っていいほどこんな占いなど信じてはいない。だがだからと言ってこの占いの結果を良しとも思ってはいない。むしろその逆だ。もしこの結果の通りにまた誰かに良くないことが起こったりなどしたら、今度こそ流石に説明が付かないからな。今までのことは天災による事故か人の手による事件だと言うワシの主張もついには破綻してしまう恐れがあるからのう」
「そんな結果が出たのですか。それでその言葉には一体どんな意味が隠されているのですか?」
「さあな、ワシにも分からんよ。勿論長筒を振っていた美弥子当人にも分からん。何故ならこの結果をもたらしたのは美弥子では無く、蛇神様とやらの言葉だからだ。そう美弥子はいつも言っている。まあ、この一つ一つに書かれてある四つの筮竹棒の文字から連想して、答えを探すほかは無いと思うがな」
意味ありげにニヤリと笑う草五郎社長と渋い顔をする川口警部との会話に、傍で聞いていた勘太郎が体を震わせながら青ざめる。何故なら昨日植物園の中で美弥子にあった時に、帰りの際に何かを警告された事を思い出したからだ。
確か昨日植物園で美弥子が言っていた事は……暴漢・毒蛇・お酒・には十分に気をつけて下さいだったかな。でももう既に暴漢と毒蛇には昨日の段階で体験しているから。残るは『お酒』と言う災いの言葉だけと言う事になるな。まあ今夜の占いでは、最後に出た『酒気により災いあり』と言う予言と『お酒』と言う災いの言葉が何だか被るので、一応ここにいるみんなにも注意は必要だな。そ、それにしても、このお酒に関わる呪いの対象者ってまさか俺の事じゃないだろうな?
そんな不安な考えが読まれたのか、羊野が勘太郎の方に顔を向けると耳元で妖艶に囁く。
「大丈夫ですわ、黒鉄さん。既に昨日でこの三つの予言は完遂していますから。最後のお酒の災いは、赤城文子刑事の災難で既に終わっていることをもうお忘れですか。あの『酒気により災いあり』と言うのは、別の誰かを射している物と考えますわ」
そんな羊野の冷静な言葉に勘太郎が落ち着きを取り戻していると、近くで緊迫した若者の声が飛ぶ。
「だから言っただろう親父。美弥子が占う蛇神様の予言は絶対に本物だってよ!とても信じられない事だが、この予言の後にもう既に三人の人が亡くなっているんだからよ。それにあの殺人大蛇の姿も俺は蛇神神社で直に見ているし、信じるなと言う方が無理な話だぜ。だからさあ、いい加減に信じてくれよ、親父!」
そう言い出したのは後ろで話を聞いていた大沢家の三男、大沢柳三郎である。
どうやら柳三郎もまた、大沢家に掛けられている?かも知れない蛇の呪いに怯えている用だ。 既に死んだ三人の被害者は皆大沢家に関わりのある人達なのだから大蛇神の祟りで殺されたと考えても別に可笑しくはないのだが、そんな柳三郎の泣き言を許せない物達がいる。大蛇神の呪いや祟りを真っ向から否定する大沢宗二郎と小島晶介である。
「落ち着けよ、柳三郎。大蛇の呪いなんて、そんな物が本当にある訳が無いだろう。この占いだって事件で人が死んだ後に無理矢理にこじつけたただの言葉の擦り合わせだろう。だからこそいくらでも都合のいい用にいろんな解釈が出来るんだよ。これは親父から聞いたんだが、美弥子が持つあの一つの長筒の中には竹の細棒が約六十本程入っているらしい。と言う事は、あの四つの長筒を全て合わせたら全部で二百四十本と言う数になる。そしてその一つ一つの細棒に書かれてある文字には簡単な言葉が書いてあるから、その言葉の書いてある細棒を四つ程ランダムにつなぎ合わせる事によって一つの文章が作り出されている。と言う事は、何か大蛇を連想させる用な言葉を事前にこの細棒に書いて置けば、その言葉の意味をどう解釈するかは当然後付でいくらでも出来ると言う事だ。そう考えればこの占いの結果にも自然と納得が行くだろう」
「ああ、そうだな。俺も宗二郎さんとほとんど同じ考えだ。それに新種の大蛇と言う可能性だって極めて低いが……十分に考えられる事だ。この気温の寒さを一体どう克服しているのかは知らないが、生物の一つの可能性として大いに期待してもいいだろう。て言うか大の蛇マニアでもある俺としてはそうあって貰いたいと言うのが本音だ!」
どうやら宗二郎と小島の考えは草五郎社長と同じで呪いや大蛇神と言った神がかり的な物はいないと言うのが彼らの意見だ。そんな二人の考えにどこからとも無く抗議の声が飛ぶ。
「いいえ、柳三郎さんの言っている事は全て正しいです。何故なら蛇神様の呪いや祟りは確実に存在するからです。大蛇神様はその呪いや体現によって自らの意思を示しているのです。だからこそ蛇神神社に現れるとされる大蛇の存在もまた否定は出来ない。そうですよね、池ノ木さん」
「ああ、もちろんだぜ。まあ実際ここに神様がいるかどうかは俺には分からないが、この村全体から漂う不可思議な気配をヒシヒシと感じるぜ。なら蛇神様の祟りが会ったって別に可笑しくは無いだろう。今までだって蛇に関わる可笑しな話が沢山あったんだから、それらを無視は出来ないだろう」
この状況で大蛇神の呪い説に賛同するのは、宮下達也と池ノ木当麻の二人である。
大蛇神に対して揺るぎない信仰を唱える宮下は別として、動物模型芸術家の池ノ木がこの意見に賛同したのは何か言葉では言い表せない見えざる意思を感じる。いや……もしかしたら勘太郎や羊野……そしてその後に訪れた特殊班と言ったしつこい訪問者達に腹いせとして、何かしらの抵抗をしたいだけなのかも知れない。
そんな大蛇を信じる派と信じない派が意見をぶつけ合う中で、その意見を行き成り遮ったのは話を黙って聞いていた羊野だった。
「そこまでです。皆さんの大蛇神に対する異議主張は十分に分かりました。ですが今はその事を述べ合っても埒があきませんので今日の所はお互い引いてはくれませんでしょうか。事件が中々解決しないと言う皆さんの不満や苛立ちは十分に分かりますが、今我々は事件の真相を必死に探っておりますので、どうかご協力の程をよろしくお願いします」
もう日はとっくに暮れているので羊のマスクを取り外した羊野が、腰まで伸びた長い白髪をゆらゆらと垂らしながら深々と頭を下げる。
凛としながらも謙虚さを見せるその態度にその場にいた者達は皆その動きを止めたが、その一瞬を見逃さなかった羊野が大沢草五郎と蛇野川美弥子を凝視しながらさらなる言葉で畳みかける。
「あ、そう言えば、草五郎社長と美弥子さんのアリバイを聞くのはまだでしたね。出来たら今すぐにでもお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか」
「は、はい、分かりました。草五郎社長が許して下さるのなら、今ここで私の昨日のアリバイをお話します。ですがその事はもう既にそこにいる刑事さん達にもお話しましたのでオウム返しになってしまいますよ」
「いえいえ、私が知りたいのは昨日の貴方のアリバイではありません。また別の話ですわ。と言う訳で草五郎社長、奥の別室を使わせて貰いたいのですがよろしいでしょうか」
「羊野瞑子さんと言ったかな。別室を貸すのは別に構わないが、今の話はどういう事だ。今ワシの耳には二人のアリバイがどうとかと聞こえたが聞き間違いだったかな。美弥子への聞き込みは分かるが、何故ワシまで答えないとならんのだ。ワシはお前らを雇った依頼人だぞ!まさか依頼人であるこのワシまで疑っている訳じゃ無いだろうな?」
「はい、普通に疑いますよ。貴方はこの大蛇事件に関わる一番の関係者じゃ無いですか。その関係者からアリバイを直に聞け無いだなんて、むしろそっちの方が可笑しいですよ」
「このワシを……まさか犯人だとでも思っているのか。ワシは完全な被害者だぞ!従業員や妻や息子だって殺されている!」
「でも……貴方は死んではいませんよね」
「な、なんだとう!」
「はいはい、ストップ、ストップ!そこまでよ、羊野さん。草五郎社長も落ち着いて下さい」
素早く止めに入ったのは現状を見ていた赤城刑事である。
「すいません、草五郎社長。彼女の言葉に失礼があったかも知れませんが的は得ていますよ。羊野さんが言いたかったのは、この事件を調べるに辺り全ての関係者を公平に調べると言う事です。決して一人の人間を特別扱いはしません。それに彼らにこの捜査の依頼をしたのは草五郎社長本人ですよね。ならご自身のアリバイを聞かれたくらいでそんなに目くじらを立てなくてもいいのではありませんか。それに正直言って私達も貴方のアリバイをもっと詳しく聞きたいですし」
「ふん、もっと詳しくとは言うが、宮下・小島・池ノ木からも既に話は聞いているのだろう。ワシは杉一郎が死んだ十九時から~二十一時までの間は宮下・小島・池ノ木の三人と一緒に民宿であんたら刑事達と話をしていたじゃないか。これ以上のアリバイは他には無いだろう!」
その言葉に今後は勘太郎が素早く反応する。
「ええ、知っています。俺もあの時、帰り際の草五郎社長達とお会いましたから。なので今度は別の視点から話を聞きたいとそう申しているのですよ。そうだよな、羊野!」
「はい。まあ、そう言う事ですわ。ホホホホホッ!」
行き成り会話に割って入った勘太郎の問に、羊野は態とらしく笑みを浮かべながら不気味に笑う。そんな二人を草五郎社長は真剣な眼差しで見つめ返すのだった。
*
「これがつい先ほど美弥子さんが占いに使っていた道具ですか。合計四個あるこの長筒を一つずつ振って中に入っている細長い棒を一つだけ引き出す訳ですね。一つ一つの棒の先にはいろんな言葉が書かれてあって、その文字を合わせることによって言葉が完成する。まるで子供がよく使う『いつ』『何処で』『誰が』『どうなったか』と言う言葉遊びの用ですね。因みにこの棒に書かれてある文字は、美弥子さん貴方が書いた物ですか」
「ええ、私は書いてはいません。何故ならこの四つの長筒は五年前に草五郎社長が私にと直接渡された物ですから。何でも十年以上昔に草五郎社長が蛇神神社の神主だった(蛇野川拓男)私の父から修理の為に預かった代物だそうですが、その長筒を蛇神神社の最後の末裔でもある私に返すと言って渡された物がこの四つの長筒です。そしてこの長筒を返すにあたり、草五郎社長はそんな私に一つの注文を付けてきました。『お前に渡したこの四つの長筒を使ってこの村の天候を占ってくれと……形だけでもいいから村人達を納得させる為に、昔から行われていたあの占いの儀式をまた復活させてくれと……それが蛇神神社の神主が代々行って来た行事であり、そして神に捧げる風習なのだと』そう草五郎社長は言っていました。だから私は蛇神占いを始めたんですけど……まさかこんな事になるなんて」
「今まで文句も言わずに草五郎さんに言われるがままに、この長筒を使って占ってきたと言う訳ですね。因みにこの長筒を持ち運びしていたのは」
「わ……私……だけです。この長筒を倉に戻すのはいつも私の仕事ですから。後この長筒は普段はこの家の倉に厳重に閉まってあるので、倉の鍵を持っている草五郎社長しか開けられません」
「そうですか、草五郎社長がねぇ~っ」
そう言いながら羊野は、美弥子が使っていた長筒やその中に入っている細長い竹の棒を一本一本丁寧に調べる。勿論先程の占いの時に使われていた黒いお皿の方も気になるので、軽く指ではじきながらそのお皿の材質も一緒に調べ初めていた。
「……?」
「おい、羊野。今は質問の途中だぞ。調べるのは後にしろよ」
「あ、黒鉄さん、今私とても忙しいので代わりにお話を聞いて貰っていいですか」
「い、いいですかってお前……話を聞きたいと言っていたにはお前の方じゃないか。それなのに全部こっちに押し付けるなよ!」
時刻は二十二時0二分。勘太郎と羊野、そして蛇野川美弥子を入れた三人は、草五郎社長が貸してくれた八畳程ある和室の一室で丸いテーブルを囲みながら、美弥子への質問を始めていた。
本当は当の草五郎社長から色々と話を聞きたかったのだが、そちらの方は特殊班の刑事達が直接話を聞くとの事なので、もう一人の重要人物でもある蛇野川美弥子の方から話を聞く事に決めた用だ。
だが本来質問するはずの羊野の方は手に持つ黒いお皿や竹で出来た長筒の方が気になるのか、かなり集中力に欠ける。その為、本来全てを羊野に任せようと思っていた勘太郎が代わりに美弥子への質問を開始する。
「美弥子さん。貴方は昨日の十五時に自転車で隣町にいる友人の元に向かい。その後は十八時三十分頃に家へと帰宅されているとの事ですが、それで間違いありませんね」
「はい、確かその時間だったと思います。疑うんでしたらその友人に聞いてみて下さい。私その友人に借りてた本を返す為に十六時三十分に友達の家に立ち寄って。その後は町のスーパーで少し三十分程お買い物をして、そして帰って来たのが十八時三十分くらいですから間違いないと思います。勿論その時のレシートもありますから確認して下さい」
「自転車で隣町に行くのに片道一時間三十分も掛かるなんてものすごく大変ですね」
「いえ、高校に通う時は普通に自転車で通学していますから特に気にしてはいません」
「帰宅後は他のお手伝いさん達と共に家事や雑用をこなしていたとの事ですが、その間にお屋敷から出たりとかはしていませんか」
「いいえ、お屋敷の中で私はず~と働いていましたから帰宅後以降は外には出ていません。その後仕事を終えたのが二十二時丁度なので、私はそのまま自分の部屋へと戻り、少しテレビを見てから床へと就きました」
「どうやらそうみたいですね。貴方のアリバイは他のお手伝いさん達が代わりに証言をしてくれましたから。でも部屋に戻られてからのアリバイはありませんよね。それを証明してくれる人とかはいますか?」
「いいえ、当然いないですよ。部屋には私一人だけですから。でも仮に私が犯人だったとしても移動手段が自転車しかありませんから、はっきり言って犯行を犯すには無理があると思いますよ」
「まあ確かに、いくら交通量が少ない田舎道だったとしても、自転車のライトを付けながら夜道を走行なんかしたら誰かに見つかるかも知れないし。それに何より杉一郎さんが死亡した後から蛇神神社に行っても意味が無いと言う事か」
勘太郎は一人呟きながら、蛇野川美弥子が大沢杉一郎を殺害する事は事実上不可能だと考える。何故なら当の美弥子には立派なアリバイがあるからだ。その美弥子が何かを思い出したかの用に言う。
「あ、そう言えば、杉一郎さんの事で一つ気になることがあります。これは他のお手伝いさん達が言っていた事なのですが、十七時に池ノ木さんが隣町に出掛ける少し前に、杉一郎さんの車の鍵が無いとちょっとした騒ぎになったとの事です。でも直ぐに見つかって、後に杉一郎さんも自分の車で何処かへと出掛けたとの事です」
「鍵が無くなったんですか。何処かに置いたのをど忘れしたんですかね」
「さあ、それは分かりませんが直ぐに見つかって良かったとお手伝いさん達も言っていました。杉一郎さんは怒ると怖い人でしたからね」
「ええ、そうみたいですね」と言う勘太郎の言葉に美弥子は少し悲しそうな顔で笑う。
そんな美弥子との会話がもうそろそろ終わりそうなんだけど……と言うような顔で勘太郎が羊野の方を見ると、今まで黒いお皿をじ~と眺めていた羊野が行き成りしゃべり出す。
「う~ん、長筒やその中に入っている細長い棒は古い杉の木で出来ている用ですね。それに棒の先に書かれてある墨汁字の変色具合からして、恐らく五年以上は経っている物と思われますから、昨日今日書き足した文字では無いと推測されます。それと黒いお皿の方ですが何の変哲も無いタダの陶器の用ですね。これについても特に怪しい点は何もありませんでした。私の読みでは、この黒いお皿に何か仕掛けがあると踏んでいたのですが、どうやら読み間違いでしたか」
「当然です。仕掛けなんて何も無いんですから」
「五年以上か。草五郎社長がその長筒を預かったのは十年以上前の話だから、その修理がてらに文字を書き足すことは出来るかも知れないな。まあ、五年以上前から草五郎社長が何かをもくろんでいたらの話だがな。だが、大蛇事件と蛇神の呪いに結びつけるには余りに時が長すぎるから、やはりそれは流石に考え過ぎかな」と勘太郎がさりげなく疑問の言葉を入れる。
「なるほど、では質問を変えます。美弥子さん、貴方は自転車で片道一時間三十分もかけて家路へと戻って来たそうですが、その道すがら何か気付いた事はありませんか。どんな些細な事でも構いませんから教えて下さい」
「と言われても……特に変わった事は何もありませんでしたよ。田畑や山々が広がる公道をいつもの用に走って来ただけですから」
「そうですか……その移動途中に何処かで見慣れた車やもしくはバイクなんかとはすれ違いませんでしたか」
そう羊野に言われ美弥子はハっとした顔をする。
「あ、そう言えば、蛇神神社に通ずる駐車場がある交差点の信号で追い越されました」
「追い越されたとは、一体何に追い越されたのですか」
「バイクにです。誰もいない交差点で信号が青に変わるのを待っていたら、後ろから来たバイクが行き成り私の直ぐ横で止まったんです。私はその信号待ちをしているバイクを見て咄嗟に頭を下げたんですけど、結局彼に無視されてしまいました。お互いに視線が合いましたから丁寧にお辞儀をしたんですけど……あれはあれで少し傷つきますね。いつもなら返事くらいは返してくれるのに……酷いです」
「貴方はそのバイクの人物を知っているのですか」
「はい、あの自動二輪の大きな黒いバイクを持っている人は、この辺りでは一人しかいませんから。その人の名は池ノ木当麻さんです」
「ああ、そう言えば彼も草五郎社長に頼まれて書類を届けに隣町まで行っていたのでしたね。それで二人は道路の途中一つしか無い交差点で顔を付き合わせたと言う訳ですか。その後池ノ木さんが乗るバイクが信号待ちをしていた美弥子さんを追い越したと言う事は、池ノ木さんもまた帰り道だったと言うこと。つまり二人が交差点で出会った時刻は十七時四十五分と言った所でしょうか」
「はい、その通りです。よく分かりましたね」
「いえいえ、池ノ木さんがその時間帯に隣町まで出かけてた事は既に取り調べの時に聞いていましたから。もしかしたら道すがらの途中で池ノ木さんとすれ違っているのではないかと思いましてね。池ノ木さんが隣町を後にしたのが十七時三十分でしたから、十七時丁度に隣町から先に出た美弥子さんは必ず蛇神神社の駐車場付近でバイクに追い越されていると想像したのですよ。なのでもしかしたら池ノ木さんを目撃していると思いましてね。まあ、そんな事よりです。彼が自動二輪のバイクに乗っていた以上フルフェイス型のヘルメットを付けていたはずです。午後に池ノ木さんの家に行った時に玄関の棚の上に黒いフルフェイスのヘルメットが置いてあるのを見ましたから間違いないと思われます。と言う事は美弥子さんは池ノ木さん本人の顔は直に見てはいないと言う事ですよね」
「はい、ヘルメットを被っていましたから見てはいません。でもバイクに乗る時は必ずいつもの革ジャンを羽織っていましたから、あれは池ノ木さんに間違いないです」
「そうですか。その事はまだ池ノ木さんには言ってはいませんよね」
「はい、言ってないです」
「そうですか……なら安心しました」
そう言うと羊野は赤い瞳を輝かせながら怪しげに微笑む。どうやら羊野は池ノ木が主張するアリバイが本当か嘘か、それを確かめる為のサンブルを手に入れた用だ。
「では黒鉄さん。私はこれからこのお屋敷の中を少し探検して来ますから一人で美弥子さんへの聞き込みを続けて下さい」
「ち、ちょっとまて。お前、仕事をほったらかして一体何処に行くつもりなんだよ!」
「少し気になることがありますので、それを確かめに行くんです」
ゆっくりと障子の引き戸を開けた羊野は、気配を消す暗殺者のように素早く廊下の方へと姿を消すのだった。
それから三十分後。
一体何処に行ったのか部屋を飛び出した羊野はまだ帰って来る気配がないので、もう殆ど話す事も無くなった勘太郎と美弥子の二人は仕方なく雑談を始めていた。
本当は聞きたいことが聞けたら直ぐにでも解散したい所だが、羊野に「私が帰ってくるまで勝手に解散したら駄目ですよ」とキツく言われているので、それまでの間二人は羊野が帰ってくるのを待つことに決めた用だ。そんな勘太郎と美弥子の元にどこからともなく廊下を走る誰かの足音が聞こえて来る。
その足音は次第に大きくなり、勘太郎達がいる部屋の前でピタリと止まる。
「し、失礼します!」
勢いよく障子の引き戸を開けたのは、荒い息を吐きながら勘太郎と美弥子を見る宮下の姿だった。
「た、探偵さん、大変です。たった今大蛇が……今度は大沢家の裏庭に現れたらしいです!そ、それと裏庭に偶々いた池ノ木と草五郎社長の二人がその大蛇に襲われて怪我を負ったらしいですから、探偵さんも早く裏庭に来て下さい。それとあの三人の刑事達の方にはもう既に知られてありますから裏庭の方へと向かっているはずです」
慌てふためきながら話す宮下の言葉に勘太郎が勢いよく立ち上がると、今現在大蛇が現れたとされる裏庭の方へと急ぐのだった。
*
「ワ、ワシの方は大丈夫だ。ワシの事よりも……ワシをかばって左腕に怪我を負った池ノ木の方を見てやってくれ!」
体をガタガタと震わせながらそう訴えるのは、涙目で語る大沢草五郎社長である。
草五郎の話によると、川口警部達との話し合いの途中で「ちょっとトイレに行ってくる」と言って部屋を出た草五郎は、トイレ後少し休憩をかねて一人夜の裏庭で休んでいたとの事だ。
夜空を見ながら持っていた煙草を気ままに吸っていると、突然闇夜の方から長くて巨大な何かがゆらりと近づいて来るのを草五郎は目撃する。その闇夜に蠢く謎の正体が例の大蛇である事が分かると草五郎はすっかり怯えて腰を抜かしていたとの事だが、寸前の所で木の棒を振り上げながら駆けつけた池ノ木当麻に助けられたとの事だ。
そんな池ノ木の健闘も相まって何とか大蛇を追い払う事に成功した二人だったが、木の枝を振り回している時にでも切ったのか池ノ木の左腕からは少量の血が流れ、破れた袖口は真っ赤な血で染まっていた。
その後草五郎の悲鳴を聞いて裏庭に駆けつけた宗二郎・柳三郎・小島の三人は即座に草五郎社長と池ノ木の元へと駆け寄り。そして少し遅れて来た宮下は、この事を勘太郎と羊野、そして美弥子や刑事さん達にも知らせようとわざわざ呼びに来てくれたと言う訳なのだ。そして今に至る。
時刻は二十三時0五分。
憔悴しきった池ノ木は大蛇との攻防で受けた左腕の切り傷の応急処置をする為、赤城刑事と山田刑事に付き添われながら屋敷の中へと連れて行かれる。そんな池ノ木を見送りながら川口警部は、今し方大蛇に襲われた事を必死に話す草五郎に先ずは落ち着けと諭しながら頻りに周りを警戒する。
だが縁側から漏れる明かりだけでは裏庭全体は見えず。木々が覆う闇夜の方からは不気味な静けさと風の音だけがザワザワと草木を揺らしていた。
草五郎は体を震わせながら今の状況を伝えようと必死に言葉を語るが、ついさっきまで大蛇の存在を全く信じていなかった草五郎社長がこんな必死に語るのだから、その変わりように皆が驚くのは仕方の無い事だった。
「みんな気をつけろ。あの大蛇はまだそこら辺にいるかも知れない。しかし信じられん。あの皆が噂する殺人大蛇が本当に存在しているとはな。あんな大蛇を間近で見せつけられたらこれはもう信じるしかないな。人知を超えた神の大蛇は本当に存在しているのかも知れない!」
「ばかな、そんなのは絶対にあり得ない。この寒い時期に活発に動ける大蛇なんて、聞いたことも無い」
「そうですよ。何かの見間違いでは?」
「お前らこのワシが言っている事を疑うと言うのか。現《げん》にたった今ワシと池ノ木はそのいるはずも無い大蛇に襲われたんだぞ。つまり直接命を狙われたんだ。確かにあれは何らかの使命と意思を持った大蛇なのかも知れない……」
その明らかに弱気で語る草五郎の言葉に宗二郎と小島はまだ信じられないと言う用な顔で困惑し。その様子を遠巻きに見ていた柳三郎と後から駆け付けた美弥子の顔は心なしか少し青ざめている用だった。
そんな美弥子の肩に優しく手を当てながら前に出て来た宮下がニヤけ顔で話し出す。
「ふふふ、ほ~らだから前々から言っていたじゃ無いですか。やはり大蛇神様は確実に存在していると。今回の事でそれが確実な物となったのではありませんか。やはり大蛇神様は存在するのです。これは大沢家にとって……いや、この草薙村周辺にとって、とても大変な事ですよ。ハハハーハハハハっー!!」
「お前、そんなに恐怖を煽って一体何が楽しいんだよ!」
「そうだぞ。こんな時に何笑ってんだよ。止めろ、その耳障りな笑いを今すぐに止めろ!」そう言いながら宗二郎と小島は、急に笑い出す宮下に激しく怒りながらもその不気味さに何か得体の知れない恐怖を覚える。
この宮下の行き過ぎた行動も、大蛇神の存在を皆に認めさせる事が出来た喜びの現れなのかも知れない。
そんな周囲の混乱を内心ドキドキしながら見ていた勘太郎の後ろに、今まで姿を消していた羊野が涼しい顔で現れる。
「一体何の騒ぎですか。これは?」
「あ、羊野、戻ったのか。大蛇だよ。今度はこの裏庭に大蛇が現れたんだよ。しかもその時に偶々裏庭にいた草五郎社長と池ノ木さんがその大蛇に襲われたんだよ。今までは蛇神神社の周辺でしか目撃例が無いと言われていた大蛇だったけど、今後はこの大沢家の屋敷の裏庭に現れるとは流石に予想外だったぜ。これじゃ草五郎社長の言葉じゃ無いけど、この大蛇の存在を認めるしか無いんじゃ無いのか。何せ大沢家の裏庭にまでわざわざ来て、今まで大蛇の存在を全く信じていなかった草五郎社長にその存在を認めさせる事が出来たんだからな。そう考えるとやはりその突然変異の大蛇とやらはもしかしたら存在しているのかもしれないな」
草五郎社長から聞いた話をそのままを語る勘太郎の説明を聞きながら、羊野は大蛇の話で騒然とする周囲にその視線を向ける。
「なるほど、そう言う事でしたか。でもその大蛇を見たと言ってるのは裏庭にいた草五郎社長と池ノ木さんの二人だけですよね。宗二郎さんと小島さんじゃありませんが、草五郎社長と池ノ木さんの二人は本当にその大蛇とやらを見たのでしょうか?」
「お、お前、何が言いたいんだよ。ま、まさか、あの草五郎社長の証言を疑っているんじゃないだろうな」
「ええ、まあ、そう言う事です。何せあの草五郎社長には疑わしい点がいくつかありますからね」
「疑わしい点だと……なんだよそれは?」
「ええ、ここでは何ですから民宿に戻った時にでもお話しますわ」
「お前のその根拠のない自信が一体どこから来るのか俺には全く分からないが、そんなに容疑者候補を増やして本当に大丈夫なんだろうな?想像と決めつけで犯人を間違える事だけは勘弁してくれよ」
「ホホホっ何を言っているのですか。疑う事こそが私達探偵のお仕事じゃ無いですか。これからは疑わしい点を見つけたら随時追求して行きますよ」
ついには依頼人でもある大沢草五郎社長まで疑いだした羊野を心配しながら、勘太郎はこれからどう捜査をしたらいい物かと本気で頭を抱えるのだった。
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