白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第二章 『絶望階段』 とある高校に出没する階段落下トリックを操る狂人・絶望王子と呼ばれる謎の学生との推理対決です!

2-21.冬祭りの始まり

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                    21

 夕焼けが沈もうとしている午後の十八時頃。

 冬祭りの開始と共に集まりだした校舎の周りには関係者のみならず生徒達の家族や一般人客が絶えず入り交じる。

 そんな客達を待ち構えるかの用に整備された運動用のグランドには様々な出店が立ち並び、まるで本格的な祭りさながらの賑わいとなっていた。

 勘太郎はそんな人々を見つめながら内心冷や汗を掻く。

 思ったより客が多いな。これじゃ絶望王子があの不良達に近づいても分からないぞ。早くあの四人を見つけて傍にいてやらないと大変な事になるぞ。くそ~っ、それにしてもあの四人は一体何処に行ったんだ。ちょっと近くの出店を見に行ってくると言ったきり誰一人として帰ってこないぞ。

 そんな事を思っていると手にビニール袋を持った緑川章子が勘太郎に焼きそばの入ったプラスチックケースを差し出す。

「はい黒鉄先輩、出店で買って来た焼きそばです。今日はお昼ご飯も食べずに聞き込みやら狙われている人達の監視やらで大変でしたからね、ここらでちょっと休憩にしましょう。腹が減っては戦は出来ませんからね、先ずは何かお腹に入れてから行動に移りましょう。ちゃんと食べないといざという時に動くことが出来ませんよ」

「そうだな、すまない緑川。本来なら上司である俺が気を回さないと行けない事なのに」

「余裕が無いのは分かりますが焦りは禁物だと思いますよ。その絶望王子だってただ闇雲にあの不良達を襲うとは思えませんから。それにあの校舎の階段にさえ近づかなかったら絶望王子は階段落下トリックを使えませんからね。確か円卓の星座のルールでは被害者に危害を与える時は必ずその狂人が使う題材のトリックで殺害しないと行けないんでしたよね。それ以外の方法で殺害した場合は強制的に犯人側の負けになるとか言ってませんでしたか」

「その境界線や判定も結局は円卓の星座側の判断だから一概に絶対とは言えないだろう」

「でもそこはあの人達は徹底していますからね。いくら同じ狂人同士の仲間でも公平差を欠く事は無いと思いますよ」

「円卓の星座の監視員が必ず何処かに紛れて俺達を見ているだろうから出来ればそいつらもまとめて捕まえたい所だが、奴らはただ遠くから監視しているだけで何もしないだろうから見つけようがないのがつらいところだぜ」

「まあ、文字道理の監視役でしょうから、この狂人ゲームの結果がどうであれ、それを報告するのが彼らの任務でしょうから余り気にしない方がいいと思いますよ。先ずは目の前の事件に集中しないと」

「そうだな。なら焼きそばを食べたら先ずはあの不良生徒達を探すか」

 そう言うと勘太郎は緑川が買って来てくれた焼きそばを手に持つと感謝をしながら豪快に口に入れる。

 余程お腹が空いていたのか、食欲をかき立てる匂いと口いっぱいに広がる旨味が相まって勘太郎と緑川は一分もしない内に見事に焼きそばを完食した。

 お腹が満たされた事で冷静さを取り戻した勘太郎は、高校の校舎の方へと視線を向ける。

「よし、これから校舎へ行くぞ。外には他に階段は無いから校舎で見張っていれば絶望王子は階段トリックは使えず、事件は起こらないはずだからな」

「まあ、人が入り組んだ外を闇雲に探すより、四人の生徒達が校舎内に入らないように見張っているのがいいのかも知れませんね。なんかあの生徒達は私達の言う事は素直に聞きそうにありませんからね」

 混雑する人混みをかき分けながら勘太郎と緑川は、今は人がまばらにしかいないと思われる校舎内へと急ぐ。

「ん、あれは?」

 歩いている途中勘太郎と緑川の視界に絶望王子こと内田慎吾の姿が見えたが、内田慎吾が何かを仕切りに他の生徒達に訴えている姿が目に入る。

 その姿は正に必死で、何か覚悟のような物を勘太郎は感じていた。

「あんなに必死に話し掛けて、内田慎吾君は一体何をやっているんだ」

「さあ、それは分からないですけど、彼ももしかしたら何か思う所があるのかも知れませんね。ちょっと彼とお話しして来ますので黒鉄先輩も付き合って下さい」

「まあ、少しくらいならいいけどな」

 そう言うと勘太郎と緑川は未だに絶望王子の姿に扮しながら動き回る内田慎吾に近づく。

「やあ~っ、君は確か内田君だよね。何か仕切りに他の生徒達と話ている用だったけど何かあったのかな」

「こんにちは内田君、昨日はどうも。何かあったのですか」

 行き成り現れた勘太郎と緑川の問に内田慎吾は何かを覚悟したかの用に応える。

「緑川さんに黒鉄の探偵さん……僕も勇気を出して戦いますよ」

「戦うって誰とですか。まさか……あの不良達とですか?」

「いいえ、違いますよ。あの可哀想な絶望王子達を操っている悪い犯人とです。もしかしたら俺……その犯人を知っているかも知れません」

「犯人を知っているかも知れないって、それはどういう事ですか。何故それをもっと早く言ってくれないんですか。この事件には人の生死が掛かっているんですよ!」

 内田のいきなりの衝撃的発言に思わず勘太郎は強く聞き返すが、その行為を緑川が止める。

「黒鉄先輩落ち着いて下さい。そんなに頭ごなしに話したらせっかく勇気を出して話してくれた内田君だって何も話せなくなりますよ。今まで話せなかったのはもしかしたら絶望王子の中に自分がよく知る人がいるかも知れないと思ったからじゃありませんか。だってそんな重要な話、憶測だけでは絶対に話せないですからね。しかもそれが自分のよく知る人物なら尚更です」

「そ、そうだな、内田君、君の気持ちも考えずに強く言ってしまって本当にすまなかった。許してくれ」

 自分の非を認め素直に頭を下げる勘太郎に内田慎吾は狼狽する。今まで生きて来た中で自分の言葉に深々と頭を下げる人間などいなかったからだ。そんな勘太郎の素直で謙虚な態度にこの人は信用できる人だと感じた内田慎吾はまるですがるように話を続ける。

「悪い絶望王子は確かにこの高校内に存在します。でも本当に悪いのはその絶望王子ではありません……それを陰から操っている悪い人間です」

「悪い人間……? それは一体どこの誰ですか!」

「ちゃんと見た訳じゃないし、人を憶測だけで疑うのはどうかとも思ったので今まで言いませんでしたが、谷口先生が死に……今度は綾川エリカさんまで行方不明になったのなら、これはもう言うしか無いと思いました」

 その内田慎吾の発言に勘太郎は考え込む。

「内田君……案外その事を今まで言わなかったのは結果的にはよかったのかも知れませんよ。内田君が見たと言うそいつが狂人と呼ばれる真の対戦相手なら、その事を何処かで知った犯人は口封じの為に必ず内田君を始末しに来たでしょうからね」

「そうなってたら大変でしたね。何せ警察の内部にも円卓の星座の工作員は紛れ込んでいると言う噂ですから。いつどこで情報が漏れてもおかしくはないですよ」

「狂人……円卓の星座? 何ですかそれは」

「いや、何でも無い、こっちの話だよ。とにかくだ、君の話をもっと詳しく聞かせて貰おうか。今君が知ってる事や心配に思っている事も全てだ!」

「大丈夫ですよ。黒鉄先輩に任せたら多分……悪い用にはしないと思いますから。それに信用できる警察の人も何人か知っていますからね」

 おい、今の『多分』の間は一体なんだと突っ込みを入れたい勘太郎だったが、仕方なく聞かなかった事にする。
 そんな事を考えながら周りに目をやると、絶望王子の姿に扮した仮装の生徒達がチラホラと目に映る。

 今まで気付かなかったが冬祭りのせいか生徒達ももしかしたら心なしか浮かれているのかも知れない。
 でもなんで今更、みんなが馬鹿にし蔑んで来た絶望王子の仮装をわざわざ今この時になってしているのだろうか。仮装に扮して動き回るハロウィーンでは無いと言うのに。大体あの金田海人君を意識不明の重体にしたあの絶望王子に仮装するだなんて、不謹慎にも程があるだろ。

 そんな事を不思議に思いながら勘太郎は、目の前にいる絶望王子こと……内田慎吾から詳しく話を聞くのだった。
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