白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第五章 『喰人魔獣』 東京内で襲う正体不明の魔獣が人々を恐怖のどん底に突き落とす。黒いライオンを操る狂人・暴食の獅子との推理対決です!

5-1.東京内の公園に出没する魔獣の影(イメージラフイラストあり!)

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『もうこんな時間か。時間を忘れてこの竹林を散策していたらもう太陽が落ち始めて竹林の中はかなり暗くなってしまったようだな。これは急いで出口に戻らないと直ぐに辺りが真っ暗になってしまうぞ。懐中電灯も当然持ってはいないし、急いでこの公園からでなけねば、いけないな』

 十月八日。時刻は十八時三十分。

 美しい自然が溢れる憩いの公園の中で、一人の男が散歩がてらにこの辺り一帯に広がる竹林を静かに散策していた。

 男の名は相葉敏一あいばとしかず(60歳)

 2時間前に公園の入り口から入り、鬱蒼と生い茂る孟宗竹の中をいろいろと散策しその背景をデジカメに収めていた相葉敏一は、今は急ぎ足でその綺麗に舗装された道をただひたすらに歩く。
 何故なら時間を忘れてその幻想的で圧巻な風景に気を取られている内に、公園内はもうすっかり暗くなっていた事に気付くのが遅れたからだ。
 暗く不気味になりつつあるその光景に不安を感じた相葉敏一は急ぎこの竹林の公園から出ようと心を流行らせる。


 そんな相葉敏一がいるこの場所は、東京都東久留米市付近にある有名なとある公園だ。

  昭和57年新東京百景に選ばれたその公園は自然の起伏を生かした4100平方メートルの敷地内の広さの中で約2000本の孟宗竹が見られ。公園の一画、武蔵野段丘の谷頭部から湧く水は清らかな湧き水池を作っており、四月から五月にかけては若竹の緑色が特に美しい竹林の土や根を潤す水にもなっている。そんな場所だ。

 平成15年1月には東京の名湧き水57選に選ばれる程の自然溢れる公園であり子供達の水遊びや市民の憩いの場にもなっている程だが、その小川の湧き水が流れるまるで迷路のような鬱蒼とした竹林は場所によっては暗く不気味で異空間の雰囲気をも漂わせる。

  密集した住宅街の中にその竹林の公園はあるので、いつでもその場から出られると軽く考えていた相葉敏一ははやる気持ちを急かしながらその空間から出ようと小走りになる。

「くそ、出口はまだか。明かりとなる物はスマホしか持って来てはいないから本格的に暗くなったら歩いている道が見えなくなるぞ。そうなってしまったらかなりまずいからな、早くこの竹林から出ねばな」

 かなり焦りながら出口に急ぐ相葉敏一だったが、約30メートル先の途中の道に、肌色っぽい何かの物体が落ちているのを発見する。

「何だ……あれは?」

 そのまま近づき目を凝らしながらその肌色の物体を見た時、相葉敏一の顔はその瞬間恐怖の色で染まる。何故ならそこに落ちていたのは、見た感じでは人の腕だったからだ。

「なんか、臭うな。まさか本当に、本物の人の腕じゃないだろうな?」

 どうせ人形かマネキンの腕だろうと思った相葉敏一はその腕を持ち上げようとした瞬間、獣のような何かに食いちぎられたその腕の骨とリアルな生々しい肉片に思わず目を背けてしまう。

「ま、まさかとは思うが……この腕は本当に人の腕なんじゃないだろうな。まさか……まさか……」

 触った感触も冷たい本物の死体の腕だと分かったことから、相葉敏一は体をガタガタと震わせながらその腕を元あった場所へと直ぐさま戻す。

「うわわわぁぁぁーっ、本物の……本物の……人間の腕だあぁぁぁ。な、なんでこんな所にあるんだよ!」

 そう叫びながら体をのけぞらせたその時、まるで猛獣のような鳴き声が竹が生い茂る竹林とその下を流れる小川のある方角から響く。


 ガッオオオオォォォォーン! ガッオオオオォォォォーン!


「な、なんだ、今の鳴き声は……まさかこの竹林には野生の肉食の獣でも住み着いているのか? まさか……まさかな。ここは大都会の東京近辺だぞ。そんな野生の猛獣がいるはずはないんだ」

 そう呟きながら獣の鳴き声のした方角を見た相葉敏一は、暗闇に何かを見つけそのあり得ない何かに釘付けになる。その竹の柵が連なるその歩道から少し外れた五十メートル先にいたのは、小さな小川の傍で蠢く、黒い大きな塊の何かだった。

「何だ……あの黒い大きな塊は?」

 暗闇が周りを包もうとしている中、目を凝らして見ていた相葉敏一はその物体が何かの生き物だと言う事に気付くと、体をガタガタと震わせながら一歩後ろへと下がる。

「な、なんだあれは、かなり大きいぞ。まさか野生の大きな猪かそれともツキの和熊か何かか?」

 その小川の傍にいたのは何か黒っぽい、毛むくじゃらの大きな生き物だった。その黒い何かの獣は相葉敏一の存在に気付くと、鋭い眼光を向けながら口に加えていた何かを地面にポトリと落とす。

 な、何だ……何を落としたんだ?

 そう思いながらもその獣が口から落とした物を見てみると、それが人の足の部分だと言う事が分かり、相葉敏一はその事実を知った段階で自分の身が極めて危険である事をひしひしと感じていた。

 あ……足の部分だとう。あの毛むくじゃらの黒い謎の大きな生き物が口に加えていたあれがもし人の本物の足だったとしたら、今俺の足下にあるこの人の腕も奴の仕業と言う事になる。おそらくはあの謎の生き物がこの竹林の茂みまで運んで来たんだ。恐らくは人を何処かで襲ってから、その獲物を隠す為にこの竹林公園内の茂みに連れ込み、この陰となる茂みで、誰にも知られる事無く密かに食べていたのだろう。その人の残骸が恐らくはこれなんだ。でもまさかこの大都会にある東京の竹林の公園内でこんな痛ましい獣害事件が起きるとは……一体あの獣の正体はなにで……そして一体どこから来たんだ?

 あまりの絶望的な光景に呆然と立ち尽くす相葉敏一と目が合った事で興味を示したその大きな謎の獣は、ゆっくりとその場所から立ち上がるとその長く細い尾をゆらゆらと揺らしながら堂々とした足取りで相葉敏一のいる方へと接近して来る。
 だが皮肉な事にそんな謎の大きな黒い獣が徐々に闇からその全貌を見せる事で相葉敏一はその正体を嫌でも知る事になる。

 太陽が沈み欠け、もう既に回りが暗くなりつつあるその小川付近からゆっくりとその姿を表した謎のその大きな獣は、黒い毛並みで彩られた立派なたてがみを持つかなり大きなライオンだった。

「な、なにぃぃぃー、く、黒いライオンだとう。馬鹿な、何故そんな生き物がこの竹林公園内にいるんだ。まさか何処かの動物園から逃げて来たんじゃないだろうな?」

 完全に怯え思わず尻餅をつく相葉敏一に近づいてくるその大きな黒いライオンは、ガッオオオオォォォォーン、ガッオオオオォォォォーン! と咆哮とも言うべき大きな雄叫びを上げながら瞬時に間合いを計り威嚇をする。その獣としての直感は正に野生その物で、いつでも獲物を仕留められるようにとその間合いを的確に詰めようとしていた。

 だ、駄目だ。ライオンの足からは絶対に逃げられない。確実に襲われて食い殺される。不味い、不味いぞ。早く……早く……この場から逃げなくては……でも怖くて体が思うように動かない。しかし黒いライオンだとう……そんなライオンが現実にいるだなんて俺は知らないぞ。この状況じゃ助けも呼べないし、俺は一体どうしたら、どうしたらいいんだ!

 襲う準備が出来たのか、突如猛スピードで迫る黒い謎のライオンは大きくジャンプをしながら腰を抜かしてまともに動けないでいる相葉敏一に襲いかかる。

「うわわわあぁぁぁぁぁぁぁーっ、く、食われるぅぅぅ! 食い殺されるぅぅぅ! 誰か、誰か助けてくれ!」

 そんな突如訪れた絶対的な絶望とあまりの恐ろしさに自らの死を悟った相葉敏一は、もう駄目だと思いながらも目を硬くつむり何とかその黒いライオンに抵抗しようと体を丸めるが……。

「……。」

 いくら待ってもその謎の黒いライオンからの攻撃は一向に来ない。

 来ない。あの黒いライオンの攻撃は何故来ないんだ?

 その命を賭けた素朴な疑問に答えを確かめようと恐る恐る顔を上げて辺りを確かめて見ると、黒い謎のライオンは大きな雄叫びだけを上げながらいずこへと走り去って行く。

 人間に興味を示さず走り去ってくれた黒いライオンの気まぐれとも言える謎の行動にどうにか安堵の溜息をついた相葉敏一は、泣き顔を見せながらも自分の幸運に神に感謝をする。

「お、俺はもしかして……助かったのか。恐らくはもう既に人間を襲って食っていたから腹が一杯だったのかも知れないな。だから俺は助かったのかもな。でもまさか、この東京のど真ん中であの黒い謎のライオンが人知れず生息していたとはな、流石に思いもしなかったぞ。一体どこから逃げ出したのかは分からないが、確実に誰かが襲われてあの獣に食い殺されているのだけは確かなようだ。まあ、あの黒いライオンに出くわしていない人にとっては先ず信じられない話だが、これは大いに危険だし、そして大問題だぞ。早く警察に電話をしてあの黒いライオンの事を何とかして貰わないと……もう安心してこの東京には住めなくなるぞ」

 声を震わせ独り言を言う相葉敏一は死に直面した体を引きずりながらもどうにか立ち上がると、ズボンのポケットの中に入れてあるスマートフォンに急ぎ手を掛けるのだった。


 円卓の星座の狂人・暴食の獅子と喰人魔獣と呼ばれる謎の肉食生物です。その正体はいかに?
 因みに第五章は26話あります。
 
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