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第五章 『喰人魔獣』 東京内で襲う正体不明の魔獣が人々を恐怖のどん底に突き落とす。黒いライオンを操る狂人・暴食の獅子との推理対決です!
5-5.勘太郎、喰人魔獣と対峙する
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『ガアッオオオオーン! ガオォォオォーオォォォォーン! ガッオオオォォォーン!』
犬の遠吠えとは明らかに違う重量感のある雄叫びに黒鉄勘太郎・羊野瞑子・赤城文子刑事・耳沢仁刑事・猟師の石田淳二・同じく猟師の林家三太の六人が皆一斉に振り向く。
よ~く目をこらしてその先を見てみると、六人がいる展望台入口から駅の方角約八十メートル付近に、路上を横切ろうとする黒い大きな物体をハッキリと見てしまう。
まだ日は昇らないので辺りはまだ暗く、黒い獣を照らす外灯の明かりだけがその不気味な物体の影を映す。
その異様な大きさと不気味な佇まいを直に見てしまった六人は、体を小刻みに震わせながら思わずその息を呑んでいた。
そんな謎の黒い大型獣の姿を直に見てしまった勘太郎はその素直な感想を言葉として呟く。
「なんだ、あの黒い化け物は。見た感想は、とにかくでかい、でかいと言う事だ。通常の大型犬よりも遙かに大きく。あの警察犬の訓練士の下田七瀬刑事が連れて来たシェパードの大型犬、ハイド・ワイド・ハイターの三匹の警察犬よりも二~三倍はでかいぞ。首の回りに黒く大きな鬣が生えていると言う事は、まさかこいつが……」
ここから約八十メートル以上は離れ、しかもまだ外は薄暗いと言う事もあり、その生物の姿は輪郭と大きさしか見えない。
だが時折唸る鳴き声と、その尻尾の形や全体の佇まいから考えて、この生物が五年間の間に罪のない人達を無差別に襲い、そして食らい続けて来た凶悪なる獣、黒いライオン・あの喰人魔獣に先ず間違いはなかった。
「こ、こいつが過去五年間の間に、関東地方で罪のない人達を無差別に襲い続けて来たと言う、あの黒いライオン、喰人魔獣か!」
余りの緊張に体が動かず皆が金縛り常態になっていると、勘太郎の隣にいる羊野瞑子が白く長いスカートの裾を太股まで捲り上げながら、両太股に装備されている大きくそして長い包丁を備え付けの鞘から素早く引っこ抜く。
「黒鉄さん、ちょっと遠すぎてあの黒い獣がよく見えませんから、もう少しだけあの黒いライオンに近づいて見ますね」
散歩感覚で無造作に歩き出す羊野を見た勘太郎はそんな彼女を必死で止める。
「いやいやいや、無理、さすがにそれは無理だろう。アホかお前は、いくら包丁を持ったお前でも、猫科最強のライオンを相手に包丁二本で勝てる訳がないだろう。人間相手とは訳が違うんだぞ。それくらいは少し考えたら分かるだろう!」
「でも直に近づかなければ、あの黒いライオンが一体どんなライオンなのかは分かりませんよ」
「ああ、確かにそうだが、他にもっと効率のいい、俺達に危険が及ばない何か別の方法があるだろう!」
「そんなことを考えている時間はありませんわ。ぼやぼやしていたらあの黒いライオンがどこかに行ってしまいますよ」
「だからやめろってえ~ぇぇぇぇーっ! そんなに死を急ぎたいのかよ、お前は!」
羊野と押し問答をしているその傍で、耳沢刑事が(セミオートの自動単身銃)ライフル銃を堂々と構える。
「耳沢刑事!」
「シーっ、お静かに。実は何を隠そう、三人目のハンターと言うのは実はこの私の事なのですよ」
「あなたが三人目のハンターなのですか。耳沢刑事」
「はい、そうです。あの黒いライオンともそれなりに因縁がありましてね。晴れてこうしてこの狂人ゲームにも参加が許されたと言う訳です。だからあの黒いライオンはこの狂人ゲームで私が必ず仕留めてみせます。必ずです!」
声をかけた赤城刑事を静かに制止しながら耳沢仁刑事は、その狙いを黒いライオンの額に照準を合わせる。
「くらえ!」
パアァァーン!
耳沢仁刑事がライフル銃を構えてから長く感じられた五~六秒程の時間が過ぎたその時、ライフル銃の銃口から乾いた音が響き、その銃声を聞いた他の殺人科の捜査員達が皆一斉に展望台へと集まる。
ついさっきまで物的証拠を探し出す為に捜査一課・殺人班の刑事達は皆その場から離れて道路や草むらの中と言った場所を探し回っていたが、その半信半疑だった黒いライオンへの疑念と確信が絶対的な存在となって約八十メートル程離れた所にいる喰人魔獣へと見事に繋がる。
その場に確実にいる黒いライオンの存在を直に見てしまった周りの捜査員達は皆恐怖におののき、蛇に睨まれた蛙のようにその場から一歩も動くことができなくなる。
「め、命中したのですか?」
ガウゥゥ……ガルガル……ッ。
驚きと確認の声をあげる赤城文子刑事の思いに敢えて逆らうかのようにその黒いライオンはまるで何事も無かったかのようにその歩みを前へと一歩踏み出す。
「ひっいぃーっ、こっちに歩いてくる。このままじゃ不味いぞ!」
「おい、ちゃんと狙っているのか。もっとよく狙え!」
焦りながら叫ぶ石田淳二と林家三太の声を聞きながら、赤城文子刑事が緊迫した声で耳沢仁刑事にその状況を聞く。
「あの~全然聞いていないんですけど……まさか外したんですか?」
「くそ、まさかそんな事があるはずがない……当たっている。絶対に眉間に当たっているはずなのに……一体なぜ奴は倒れない?」
とても信じられないと言った言葉を口にしていた耳沢仁刑事は、今度は黒いライオンの心臓部分に向けて好かさず二発の弾丸をその胴体にぶち込む。
パアァァーン! パアァァーン!
「よし、今の2発は確実にあの黒いライオンの心臓に当たったぞ!」
そう喜んだのも束の間、その黒いライオンは少しライフルの音にびっくりしただけで、とくにその場に倒れる事はなかった。
「ば、馬鹿な! 確かに私は三発ものサボットスラグ弾の弾丸をあの黒いライオンの頭・心臓・腹部へと確実に命中させたぞ。なのに奴は何故今も立っていられるんだ。何故倒れない。有り得ない……有り得ないよ。やはりあの時と一緒だ。あの時も奴はライフル銃の弾丸をその体に喰らっていたのに、決して倒れる事はなかった。だとするならば、やはりあの黒いライオンは文字道理の化け物と言う事なのか!」
震えながらもその有り得ない事実に耳沢刑事が驚愕していると、そんな弱腰の態度を見ていた赤城文子刑事が大きな声で叫ぶ。
「いいから続けてライフルを撃って下さい。もしもその撃った弾丸であの黒いライオンが怪我をしていたら、かなり不味いです。手負いの獣は真っ先に私達を襲いますよ。勘太郎と羊野さんは早く私の後ろへ。もしもあの黒いライオンが私と耳沢刑事を襲ったら、振り返らずにゆっくり歩いて、あの近くに見える公衆トイレの中にでも隠れていなさい。あの黒いライオンの注意は私達で何とか引きつけておくから」
「赤城先輩、そういう訳には行きませんよ」
「私達警察には民間人を守る義務があるのよ。だからあなたをこのまま死なせる訳にはいかないわ」
普段は……『知ってた、勘太郎。黒鉄の探偵を名乗る者は、あの狂人に関わる事件やその依頼を拒否する権限は無いのよ。だから命をかけて狂人達に挑みなさい!』とか厳しい事をいつも言ってはいるが、ここぞという時はいつも俺の事を考え、そして助けてくれる。そんな正義感ある先輩だ。そんな赤城先輩を見捨てて逃げる事なんて俺には出来ない。
そう勘太郎が思っていると、勘太郎は羊野に体を引っ張られる。
「黒鉄さん、赤城文子刑事のお言葉に甘えて、ここは大人しく赤城文子刑事の後ろへ隠れましょう。この四人の人達が食われている隙にあの公衆トイレに逃げるのです」
そんな血も涙も無い無情な言葉を容赦なく笑顔で提案する羊野の頭上に、勘太郎の制裁の拳骨が落ちる。
ポカン!
「い、痛いです。何をするんですか?」
「いい加減にしろ。お前は人の優しい好意や恩を、全て仇で返すつもりか。そんなことはいくら臆病な俺でも絶対に許しはしないぞ。そんなのは己の中の人道に反する!」
「でも、それで死んじゃったらなんにもなりませんよね。せっかく身代わりになってくれると言うのですから、その思いを上手く利用しない手はないですよ」
「お、お前と言う奴は……」
尚も後ろに下がろうとする羊野に向けて勘太郎は命令を下す。
「白い羊・羊野瞑子よ。上司命令だ。あの黒いライオンから俺を全力で護れ!」
そう言うと勘太郎は己の決意を固めながら、震える足で約八十メートル先にいるあの黒いライオンに向けて静かに歩き出す。
まるで宙に足が付いていない……自殺志願者のように。
「勘太郎、あなた一体何を考えているのよ、も、戻って来なさい!」
「く、黒鉄の探偵、その行為はあまりにも無謀だ。や、やめろ、やめるんだ!」
赤城文子刑事と耳沢仁刑事の必至の制止の声が聞こえる中、勘太郎は更にその歩みを進める。
だがその勇敢且つ無謀な行動とは裏腹に、勘太郎の本当の心の中は今、後悔とカオスの思いとで満ち溢れていた。
勘太郎は心の中で叫ぶ。
し、しまったああああ~ぁぁぁっ。なんの考えも無くただ勢いだけでこんな無謀な行動に出てしまった!
羊野にあんな真面目な説教をした手前、これは引くに引けない状況になってしまったぞ。
これじゃもう今さら助けを呼んだり、ましてや後ろに戻る訳にも行かないぞ。どうしよう。本当にこの後俺、どうしよう?
赤城先輩……耳沢刑事……頼むから俺に、もう一声『やめるんだ! 戻ってこい!』と言ってくれ。そうしたら俺は、仕方が無いといった雰囲気を醸し出しながら、直ぐにでも引き返して来るのに。今ならまだ間に合うから、早くして……早くしてくれ! 頼むようぉぉぉ!
そんな勘太郎の接近に興味を示したのか、その黒いライオン・喰人魔獣は、そのゆっくりとした歩みを止めながら、そのまるで獲物を見る鋭い眼光を勘太郎に向ける。
体のいい獲物としてロックオンされた事を察した勘太郎は額から大量の脂汗を掻きながら思わず自分の死を覚悟する。
駄目だ、気付かれた。このまま近づいたら、約七~八十メートルしかないこの距離では、あの黒いライオンに直ぐに追い付かれてしまう。なにせあの黒いライオンがその気になったら、恐らくライオンは60キロか70キロのスピードで走る事が可能らしいからな。俺なんか一瞬でやられてしまうよ! 助けて……猛獣に食われて死ぬのは絶対に嫌だ。誰かこの状況をどうにかしてくれ!
涙目になりながらもそんな事を思っていると、誰かの影がまるで緩やかな風のように勘太郎の横を通り過ぎる。
その軌跡を頼りに勘太郎が視線を向けて見ると、目の前には何故か羊野瞑子の姿があった。
と言う事は羊野は、なんの考えもなく無謀にも飛び出した勘太郎を助ける為にわざわざここまで来てくれたと言う事になる。
「羊野……お前……助けに来てくれたのか……す、すまない」
そんな勘太郎の感謝の言葉を聞いた羊野瞑子はいつものようにその被ってある不気味な羊のマスクを黒いライオンの方に向けると、勘太郎をまるで守るかのようにゆっくりとその歩みを進める。
「全く仕方が無いですね。黒鉄さんの無茶ぶりにこちらも命を賭けるのですから、今月のお給料はそれなりに上げて下さいね」
その屈託のないいつもの声は極めて明るい物だったが、その両手に握られた二本の包丁に嫌でも力が隠るようだ。
どうやら全ての神経を研ぎ澄まし、約七十メートル先にいる黒いライオンにだけ集中をしているのだろう。
む、無理だ、いくら羊野が人並み外れた身体能力を持っているとしても、それはあくまでも対人間相手での話だ。獰猛な肉食獣が相手では太刀打ちする事すらできない。その力の差は言わずとも明白だ。
本来羊野は間違ってもこんな無謀な事をする狂人では無い。冷静沈着に合理的に動く、それが白い羊こと元円卓の星座の狂人……白い腹黒羊の特徴だ。
その彼女が俺の目の前でこんな無茶をしていると言う事は、これは間違いなく俺の責任だ。
俺が『あの黒いライオンから俺を全力で護れ!』と言ったから、羊野はそれを実行しているんだ。
不味い、このままでは間違いなく二人ともライオンの餌になってしまう。
な、七十メートル……。
後、六十メートル……。
後五十メートルくらいに黒いライオンとの距離が狭まったその時、ピタリとその動きを止めていた黒いライオンが顔を上へと上げながら行き成り大きな雄叫びを上げる。
ガッオオオオォォォォーン、ガッオオオオォォォォーン!
すると周囲から突如発生した黒い煙に包まれた黒いライオンは、その黒い立派なたてがみが見えなくなるくらいに闇の煙の中へと紛れて行く。
シュウウウゥゥゥゥゥーゥ! プッシュウウウウゥゥゥゥ! モクモクモクモク!
「な、なんだ、あの黒い煙は? 行き成り黒いライオンの体が見えなくなったぞ」
その獣を包む黒い煙に勘太郎が対応をこまねいていると、その三~四秒後、黒い煙は瞬時に綺麗に消え、その場にいたはずの黒いライオンこと喰人魔獣の姿はもうどこにも見る事は無かった。
消えた……いや、かき消えたぞ。あの黒いライオンは一体どこに消えたんだ?
「どうした。今の銃声は、一体何があった!」
耳沢仁刑事が撃ったライフルの銃声で気付いたのか、遠くから川口警部と山田刑事、それに西園寺長友刑事が率いる数名の刑事達が皆一斉にその姿を現す。
その殺人班の刑事達が赤城刑事の傍まで来た時、右の方角、約八十メートル付近の深い茂みの中からライオンと思われる大きな遠吠えが時間の間を開けて段階的に聞こえたのを皆が確認する。
ガッオオオオォォォォーン! ガッオオオオォォォォーン!
「あ、あっちだ。黒いライオン・喰人魔獣は右の方角に逃げたぞ! 皆拳銃を構えろ。そしてもしその身に危険が及んだなら、黒いライオンを見つけ次第、直ぐに射殺しろ! いいな」
「はい、分かりました。西園寺班長」
「良し、行くぞ。絶対にあの黒いライオンを逃がすな!」
警部補でもある西園寺長友刑事がそう命令を下すと、他の殺人課の刑事達は皆一斉に雄叫びが聞こえたとされる右の方角、約八十メートル付近の木々が生い茂る茂みの中に懐中電灯のライトを向けながら急ぎ走り出す。
その間に赤城文子刑事・耳沢仁刑事・石田淳二・林家三太の四人の無事を、川口警部と山田刑事が確認する。
ここの所は警察官達特有の息の合った連携を嫌でも感じてしまう。流石は本庁で働く刑事達と言った所だろうか。
そんないきり立つ殺人課の人達を尻目に、その場に取り残された勘太郎と羊野はお互いに無事を確認しながら大きく溜息をつく。
「あ~あ、行っちゃいましたね」
「そうだな。取りあえずは、命拾いしたな」
「でもあの西園寺刑事って人、たった今かなりまずい事を言ってはいませんでしたか」
「何だよ、かなり不味い事って?」
「あの黒いライオンを見つけ次第、拳銃で撃ち殺してもかまわないとか言っていましたよ。確か今回の狂人ゲームのルールでは、猟銃を使えるのは確か三人のハンターだけだったはずです」
「あ、そうだった。確かにそれは不味いな。もしもそのルールを破ったのがバレたら、問答無用で俺達警察側の負けと言う事になってしまうからな。そうなってしまったらかなり大変な事になるぞ」
「ええ、また無差別に罪のない人達の死体が幾つも増えますね」
「くそ、それはかなり不味いな。早くその事を西園寺刑事に知らせないと」
「まあ、私としては民間人が何人死のうと別に構わないですし、どうでもいい事ですがね」
「たく、お前と言う奴は、例え百歩譲ってそう思っていたとしてもそう言う言葉は軽々しく口には出すなよ。だから川口警部にも目の敵にされるんだよ」
「ええ、困った物です。私は何かあの刑事達の気に障るような事でもしたのでしょうか?」
「お、お前なぁ……」
その羊野の言葉に勘太郎はかなり文句を言いたかったが、不毛の言い争いになると思いここはグッと堪える。
「な、なら、事務所に保管してある、あの黒鉄の拳銃はどうなんだよ。あれも銃器に入るんじゃないのか?」
「いいえ、あれは火薬を使ってはいませんから、玩具のモデルガンの扱いでしょう。それにあれを黒鉄の探偵が使うことは昔からあの壊れた天秤が認めている事ですからね。恐らくは大丈夫だと思いますよ」
「そ、そうか……それを聞いて少しだけ安心したぜ。今回のこの狂人ゲームはどうしても黒鉄の拳銃が必要となるみたいだからな」
気が抜けたのかその場へとへたり込む勘太郎に羊野が歩み寄ったその時、西園寺刑事達が向かった右の方角とは明らかに違う方向……つまり左側に三匹の警察犬が素早くそして機敏に走り出す。
勿論その警察犬とは下田七瀬刑事が連れて来たシェパードの大型犬、ハイド・ワイド・ハイターの三匹の警察犬達である。
その三匹の警察犬が迷いも無く暗闇の木々が生い茂る左側の方角の茂みに颯爽と走り抜けていく。
「おい羊野、あの三匹の警察犬達、何でライオンの遠吠えが聞こえたはずの右方向に向かわないで、全く逆の方角……つまりは左側の方角に向かったんだ?」
「そうですか。つまり、あの遠吠えは真っ赤な偽物で全くのフェイクと言う事になりますね。弾丸が効かない不死身の体に、闇と煙、そして音声を使ったトリックで刑事達を煙に巻いた用ですが、犬達の発達した嗅覚まではどうやっても誤魔化し切れませんでしたか。ほほほほっ、これは非常に興味深いです」
「だったらこのまま黒いライオンの居場所を突き止められるんじゃないのか。あの警察犬達なら、匂いを追跡したら今度はそれを知らせにまた下田七瀬刑事の元に戻って来るんじゃないのか」
「う~ん、それはどうでしょうか? 無事に一匹でも戻ってこれたらの話ですけどね。もし私だったら相手の手の内がまだ分からない以上は、深追いは絶対にしませんがね」
そんな話をしていると、少し遅れて下田七瀬刑事が闇夜の草木をかき分けながら赤城文子刑事らの前にその姿を現す。
「ハイド・ワイド・ハイター、あの黒いライオン・喰人魔獣を追いなさい! 絶対にその行方を見失うんじゃないわよ!」
その下田刑事の掛け声に応えるべく、忠実な三匹の警察犬達は皆「ワン!」と一声主人に吠えながら木々が生い茂る闇夜の林の中へと素早く消えて行く。
しかしこの忠実な三匹の警察犬達の勇気ある勇ましい行動がまさか最後の勇志になろうとはまだ誰も知るよしはなかった。
『ガアッオオオオーン! ガオォォオォーオォォォォーン! ガッオオオォォォーン!』
犬の遠吠えとは明らかに違う重量感のある雄叫びに黒鉄勘太郎・羊野瞑子・赤城文子刑事・耳沢仁刑事・猟師の石田淳二・同じく猟師の林家三太の六人が皆一斉に振り向く。
よ~く目をこらしてその先を見てみると、六人がいる展望台入口から駅の方角約八十メートル付近に、路上を横切ろうとする黒い大きな物体をハッキリと見てしまう。
まだ日は昇らないので辺りはまだ暗く、黒い獣を照らす外灯の明かりだけがその不気味な物体の影を映す。
その異様な大きさと不気味な佇まいを直に見てしまった六人は、体を小刻みに震わせながら思わずその息を呑んでいた。
そんな謎の黒い大型獣の姿を直に見てしまった勘太郎はその素直な感想を言葉として呟く。
「なんだ、あの黒い化け物は。見た感想は、とにかくでかい、でかいと言う事だ。通常の大型犬よりも遙かに大きく。あの警察犬の訓練士の下田七瀬刑事が連れて来たシェパードの大型犬、ハイド・ワイド・ハイターの三匹の警察犬よりも二~三倍はでかいぞ。首の回りに黒く大きな鬣が生えていると言う事は、まさかこいつが……」
ここから約八十メートル以上は離れ、しかもまだ外は薄暗いと言う事もあり、その生物の姿は輪郭と大きさしか見えない。
だが時折唸る鳴き声と、その尻尾の形や全体の佇まいから考えて、この生物が五年間の間に罪のない人達を無差別に襲い、そして食らい続けて来た凶悪なる獣、黒いライオン・あの喰人魔獣に先ず間違いはなかった。
「こ、こいつが過去五年間の間に、関東地方で罪のない人達を無差別に襲い続けて来たと言う、あの黒いライオン、喰人魔獣か!」
余りの緊張に体が動かず皆が金縛り常態になっていると、勘太郎の隣にいる羊野瞑子が白く長いスカートの裾を太股まで捲り上げながら、両太股に装備されている大きくそして長い包丁を備え付けの鞘から素早く引っこ抜く。
「黒鉄さん、ちょっと遠すぎてあの黒い獣がよく見えませんから、もう少しだけあの黒いライオンに近づいて見ますね」
散歩感覚で無造作に歩き出す羊野を見た勘太郎はそんな彼女を必死で止める。
「いやいやいや、無理、さすがにそれは無理だろう。アホかお前は、いくら包丁を持ったお前でも、猫科最強のライオンを相手に包丁二本で勝てる訳がないだろう。人間相手とは訳が違うんだぞ。それくらいは少し考えたら分かるだろう!」
「でも直に近づかなければ、あの黒いライオンが一体どんなライオンなのかは分かりませんよ」
「ああ、確かにそうだが、他にもっと効率のいい、俺達に危険が及ばない何か別の方法があるだろう!」
「そんなことを考えている時間はありませんわ。ぼやぼやしていたらあの黒いライオンがどこかに行ってしまいますよ」
「だからやめろってえ~ぇぇぇぇーっ! そんなに死を急ぎたいのかよ、お前は!」
羊野と押し問答をしているその傍で、耳沢刑事が(セミオートの自動単身銃)ライフル銃を堂々と構える。
「耳沢刑事!」
「シーっ、お静かに。実は何を隠そう、三人目のハンターと言うのは実はこの私の事なのですよ」
「あなたが三人目のハンターなのですか。耳沢刑事」
「はい、そうです。あの黒いライオンともそれなりに因縁がありましてね。晴れてこうしてこの狂人ゲームにも参加が許されたと言う訳です。だからあの黒いライオンはこの狂人ゲームで私が必ず仕留めてみせます。必ずです!」
声をかけた赤城刑事を静かに制止しながら耳沢仁刑事は、その狙いを黒いライオンの額に照準を合わせる。
「くらえ!」
パアァァーン!
耳沢仁刑事がライフル銃を構えてから長く感じられた五~六秒程の時間が過ぎたその時、ライフル銃の銃口から乾いた音が響き、その銃声を聞いた他の殺人科の捜査員達が皆一斉に展望台へと集まる。
ついさっきまで物的証拠を探し出す為に捜査一課・殺人班の刑事達は皆その場から離れて道路や草むらの中と言った場所を探し回っていたが、その半信半疑だった黒いライオンへの疑念と確信が絶対的な存在となって約八十メートル程離れた所にいる喰人魔獣へと見事に繋がる。
その場に確実にいる黒いライオンの存在を直に見てしまった周りの捜査員達は皆恐怖におののき、蛇に睨まれた蛙のようにその場から一歩も動くことができなくなる。
「め、命中したのですか?」
ガウゥゥ……ガルガル……ッ。
驚きと確認の声をあげる赤城文子刑事の思いに敢えて逆らうかのようにその黒いライオンはまるで何事も無かったかのようにその歩みを前へと一歩踏み出す。
「ひっいぃーっ、こっちに歩いてくる。このままじゃ不味いぞ!」
「おい、ちゃんと狙っているのか。もっとよく狙え!」
焦りながら叫ぶ石田淳二と林家三太の声を聞きながら、赤城文子刑事が緊迫した声で耳沢仁刑事にその状況を聞く。
「あの~全然聞いていないんですけど……まさか外したんですか?」
「くそ、まさかそんな事があるはずがない……当たっている。絶対に眉間に当たっているはずなのに……一体なぜ奴は倒れない?」
とても信じられないと言った言葉を口にしていた耳沢仁刑事は、今度は黒いライオンの心臓部分に向けて好かさず二発の弾丸をその胴体にぶち込む。
パアァァーン! パアァァーン!
「よし、今の2発は確実にあの黒いライオンの心臓に当たったぞ!」
そう喜んだのも束の間、その黒いライオンは少しライフルの音にびっくりしただけで、とくにその場に倒れる事はなかった。
「ば、馬鹿な! 確かに私は三発ものサボットスラグ弾の弾丸をあの黒いライオンの頭・心臓・腹部へと確実に命中させたぞ。なのに奴は何故今も立っていられるんだ。何故倒れない。有り得ない……有り得ないよ。やはりあの時と一緒だ。あの時も奴はライフル銃の弾丸をその体に喰らっていたのに、決して倒れる事はなかった。だとするならば、やはりあの黒いライオンは文字道理の化け物と言う事なのか!」
震えながらもその有り得ない事実に耳沢刑事が驚愕していると、そんな弱腰の態度を見ていた赤城文子刑事が大きな声で叫ぶ。
「いいから続けてライフルを撃って下さい。もしもその撃った弾丸であの黒いライオンが怪我をしていたら、かなり不味いです。手負いの獣は真っ先に私達を襲いますよ。勘太郎と羊野さんは早く私の後ろへ。もしもあの黒いライオンが私と耳沢刑事を襲ったら、振り返らずにゆっくり歩いて、あの近くに見える公衆トイレの中にでも隠れていなさい。あの黒いライオンの注意は私達で何とか引きつけておくから」
「赤城先輩、そういう訳には行きませんよ」
「私達警察には民間人を守る義務があるのよ。だからあなたをこのまま死なせる訳にはいかないわ」
普段は……『知ってた、勘太郎。黒鉄の探偵を名乗る者は、あの狂人に関わる事件やその依頼を拒否する権限は無いのよ。だから命をかけて狂人達に挑みなさい!』とか厳しい事をいつも言ってはいるが、ここぞという時はいつも俺の事を考え、そして助けてくれる。そんな正義感ある先輩だ。そんな赤城先輩を見捨てて逃げる事なんて俺には出来ない。
そう勘太郎が思っていると、勘太郎は羊野に体を引っ張られる。
「黒鉄さん、赤城文子刑事のお言葉に甘えて、ここは大人しく赤城文子刑事の後ろへ隠れましょう。この四人の人達が食われている隙にあの公衆トイレに逃げるのです」
そんな血も涙も無い無情な言葉を容赦なく笑顔で提案する羊野の頭上に、勘太郎の制裁の拳骨が落ちる。
ポカン!
「い、痛いです。何をするんですか?」
「いい加減にしろ。お前は人の優しい好意や恩を、全て仇で返すつもりか。そんなことはいくら臆病な俺でも絶対に許しはしないぞ。そんなのは己の中の人道に反する!」
「でも、それで死んじゃったらなんにもなりませんよね。せっかく身代わりになってくれると言うのですから、その思いを上手く利用しない手はないですよ」
「お、お前と言う奴は……」
尚も後ろに下がろうとする羊野に向けて勘太郎は命令を下す。
「白い羊・羊野瞑子よ。上司命令だ。あの黒いライオンから俺を全力で護れ!」
そう言うと勘太郎は己の決意を固めながら、震える足で約八十メートル先にいるあの黒いライオンに向けて静かに歩き出す。
まるで宙に足が付いていない……自殺志願者のように。
「勘太郎、あなた一体何を考えているのよ、も、戻って来なさい!」
「く、黒鉄の探偵、その行為はあまりにも無謀だ。や、やめろ、やめるんだ!」
赤城文子刑事と耳沢仁刑事の必至の制止の声が聞こえる中、勘太郎は更にその歩みを進める。
だがその勇敢且つ無謀な行動とは裏腹に、勘太郎の本当の心の中は今、後悔とカオスの思いとで満ち溢れていた。
勘太郎は心の中で叫ぶ。
し、しまったああああ~ぁぁぁっ。なんの考えも無くただ勢いだけでこんな無謀な行動に出てしまった!
羊野にあんな真面目な説教をした手前、これは引くに引けない状況になってしまったぞ。
これじゃもう今さら助けを呼んだり、ましてや後ろに戻る訳にも行かないぞ。どうしよう。本当にこの後俺、どうしよう?
赤城先輩……耳沢刑事……頼むから俺に、もう一声『やめるんだ! 戻ってこい!』と言ってくれ。そうしたら俺は、仕方が無いといった雰囲気を醸し出しながら、直ぐにでも引き返して来るのに。今ならまだ間に合うから、早くして……早くしてくれ! 頼むようぉぉぉ!
そんな勘太郎の接近に興味を示したのか、その黒いライオン・喰人魔獣は、そのゆっくりとした歩みを止めながら、そのまるで獲物を見る鋭い眼光を勘太郎に向ける。
体のいい獲物としてロックオンされた事を察した勘太郎は額から大量の脂汗を掻きながら思わず自分の死を覚悟する。
駄目だ、気付かれた。このまま近づいたら、約七~八十メートルしかないこの距離では、あの黒いライオンに直ぐに追い付かれてしまう。なにせあの黒いライオンがその気になったら、恐らくライオンは60キロか70キロのスピードで走る事が可能らしいからな。俺なんか一瞬でやられてしまうよ! 助けて……猛獣に食われて死ぬのは絶対に嫌だ。誰かこの状況をどうにかしてくれ!
涙目になりながらもそんな事を思っていると、誰かの影がまるで緩やかな風のように勘太郎の横を通り過ぎる。
その軌跡を頼りに勘太郎が視線を向けて見ると、目の前には何故か羊野瞑子の姿があった。
と言う事は羊野は、なんの考えもなく無謀にも飛び出した勘太郎を助ける為にわざわざここまで来てくれたと言う事になる。
「羊野……お前……助けに来てくれたのか……す、すまない」
そんな勘太郎の感謝の言葉を聞いた羊野瞑子はいつものようにその被ってある不気味な羊のマスクを黒いライオンの方に向けると、勘太郎をまるで守るかのようにゆっくりとその歩みを進める。
「全く仕方が無いですね。黒鉄さんの無茶ぶりにこちらも命を賭けるのですから、今月のお給料はそれなりに上げて下さいね」
その屈託のないいつもの声は極めて明るい物だったが、その両手に握られた二本の包丁に嫌でも力が隠るようだ。
どうやら全ての神経を研ぎ澄まし、約七十メートル先にいる黒いライオンにだけ集中をしているのだろう。
む、無理だ、いくら羊野が人並み外れた身体能力を持っているとしても、それはあくまでも対人間相手での話だ。獰猛な肉食獣が相手では太刀打ちする事すらできない。その力の差は言わずとも明白だ。
本来羊野は間違ってもこんな無謀な事をする狂人では無い。冷静沈着に合理的に動く、それが白い羊こと元円卓の星座の狂人……白い腹黒羊の特徴だ。
その彼女が俺の目の前でこんな無茶をしていると言う事は、これは間違いなく俺の責任だ。
俺が『あの黒いライオンから俺を全力で護れ!』と言ったから、羊野はそれを実行しているんだ。
不味い、このままでは間違いなく二人ともライオンの餌になってしまう。
な、七十メートル……。
後、六十メートル……。
後五十メートルくらいに黒いライオンとの距離が狭まったその時、ピタリとその動きを止めていた黒いライオンが顔を上へと上げながら行き成り大きな雄叫びを上げる。
ガッオオオオォォォォーン、ガッオオオオォォォォーン!
すると周囲から突如発生した黒い煙に包まれた黒いライオンは、その黒い立派なたてがみが見えなくなるくらいに闇の煙の中へと紛れて行く。
シュウウウゥゥゥゥゥーゥ! プッシュウウウウゥゥゥゥ! モクモクモクモク!
「な、なんだ、あの黒い煙は? 行き成り黒いライオンの体が見えなくなったぞ」
その獣を包む黒い煙に勘太郎が対応をこまねいていると、その三~四秒後、黒い煙は瞬時に綺麗に消え、その場にいたはずの黒いライオンこと喰人魔獣の姿はもうどこにも見る事は無かった。
消えた……いや、かき消えたぞ。あの黒いライオンは一体どこに消えたんだ?
「どうした。今の銃声は、一体何があった!」
耳沢仁刑事が撃ったライフルの銃声で気付いたのか、遠くから川口警部と山田刑事、それに西園寺長友刑事が率いる数名の刑事達が皆一斉にその姿を現す。
その殺人班の刑事達が赤城刑事の傍まで来た時、右の方角、約八十メートル付近の深い茂みの中からライオンと思われる大きな遠吠えが時間の間を開けて段階的に聞こえたのを皆が確認する。
ガッオオオオォォォォーン! ガッオオオオォォォォーン!
「あ、あっちだ。黒いライオン・喰人魔獣は右の方角に逃げたぞ! 皆拳銃を構えろ。そしてもしその身に危険が及んだなら、黒いライオンを見つけ次第、直ぐに射殺しろ! いいな」
「はい、分かりました。西園寺班長」
「良し、行くぞ。絶対にあの黒いライオンを逃がすな!」
警部補でもある西園寺長友刑事がそう命令を下すと、他の殺人課の刑事達は皆一斉に雄叫びが聞こえたとされる右の方角、約八十メートル付近の木々が生い茂る茂みの中に懐中電灯のライトを向けながら急ぎ走り出す。
その間に赤城文子刑事・耳沢仁刑事・石田淳二・林家三太の四人の無事を、川口警部と山田刑事が確認する。
ここの所は警察官達特有の息の合った連携を嫌でも感じてしまう。流石は本庁で働く刑事達と言った所だろうか。
そんないきり立つ殺人課の人達を尻目に、その場に取り残された勘太郎と羊野はお互いに無事を確認しながら大きく溜息をつく。
「あ~あ、行っちゃいましたね」
「そうだな。取りあえずは、命拾いしたな」
「でもあの西園寺刑事って人、たった今かなりまずい事を言ってはいませんでしたか」
「何だよ、かなり不味い事って?」
「あの黒いライオンを見つけ次第、拳銃で撃ち殺してもかまわないとか言っていましたよ。確か今回の狂人ゲームのルールでは、猟銃を使えるのは確か三人のハンターだけだったはずです」
「あ、そうだった。確かにそれは不味いな。もしもそのルールを破ったのがバレたら、問答無用で俺達警察側の負けと言う事になってしまうからな。そうなってしまったらかなり大変な事になるぞ」
「ええ、また無差別に罪のない人達の死体が幾つも増えますね」
「くそ、それはかなり不味いな。早くその事を西園寺刑事に知らせないと」
「まあ、私としては民間人が何人死のうと別に構わないですし、どうでもいい事ですがね」
「たく、お前と言う奴は、例え百歩譲ってそう思っていたとしてもそう言う言葉は軽々しく口には出すなよ。だから川口警部にも目の敵にされるんだよ」
「ええ、困った物です。私は何かあの刑事達の気に障るような事でもしたのでしょうか?」
「お、お前なぁ……」
その羊野の言葉に勘太郎はかなり文句を言いたかったが、不毛の言い争いになると思いここはグッと堪える。
「な、なら、事務所に保管してある、あの黒鉄の拳銃はどうなんだよ。あれも銃器に入るんじゃないのか?」
「いいえ、あれは火薬を使ってはいませんから、玩具のモデルガンの扱いでしょう。それにあれを黒鉄の探偵が使うことは昔からあの壊れた天秤が認めている事ですからね。恐らくは大丈夫だと思いますよ」
「そ、そうか……それを聞いて少しだけ安心したぜ。今回のこの狂人ゲームはどうしても黒鉄の拳銃が必要となるみたいだからな」
気が抜けたのかその場へとへたり込む勘太郎に羊野が歩み寄ったその時、西園寺刑事達が向かった右の方角とは明らかに違う方向……つまり左側に三匹の警察犬が素早くそして機敏に走り出す。
勿論その警察犬とは下田七瀬刑事が連れて来たシェパードの大型犬、ハイド・ワイド・ハイターの三匹の警察犬達である。
その三匹の警察犬が迷いも無く暗闇の木々が生い茂る左側の方角の茂みに颯爽と走り抜けていく。
「おい羊野、あの三匹の警察犬達、何でライオンの遠吠えが聞こえたはずの右方向に向かわないで、全く逆の方角……つまりは左側の方角に向かったんだ?」
「そうですか。つまり、あの遠吠えは真っ赤な偽物で全くのフェイクと言う事になりますね。弾丸が効かない不死身の体に、闇と煙、そして音声を使ったトリックで刑事達を煙に巻いた用ですが、犬達の発達した嗅覚まではどうやっても誤魔化し切れませんでしたか。ほほほほっ、これは非常に興味深いです」
「だったらこのまま黒いライオンの居場所を突き止められるんじゃないのか。あの警察犬達なら、匂いを追跡したら今度はそれを知らせにまた下田七瀬刑事の元に戻って来るんじゃないのか」
「う~ん、それはどうでしょうか? 無事に一匹でも戻ってこれたらの話ですけどね。もし私だったら相手の手の内がまだ分からない以上は、深追いは絶対にしませんがね」
そんな話をしていると、少し遅れて下田七瀬刑事が闇夜の草木をかき分けながら赤城文子刑事らの前にその姿を現す。
「ハイド・ワイド・ハイター、あの黒いライオン・喰人魔獣を追いなさい! 絶対にその行方を見失うんじゃないわよ!」
その下田刑事の掛け声に応えるべく、忠実な三匹の警察犬達は皆「ワン!」と一声主人に吠えながら木々が生い茂る闇夜の林の中へと素早く消えて行く。
しかしこの忠実な三匹の警察犬達の勇気ある勇ましい行動がまさか最後の勇志になろうとはまだ誰も知るよしはなかった。
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