白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第五章 『喰人魔獣』 東京内で襲う正体不明の魔獣が人々を恐怖のどん底に突き落とす。黒いライオンを操る狂人・暴食の獅子との推理対決です!

5-20.勘太郎、喰人魔獣の正体を暴く

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 所変わって、羊野が水元公園で耳沢仁刑事・石田淳二・林家三太の3人を卑劣な罠にはめていた同時刻頃。

 時刻は二十一時丁度。

 黄木田喫茶店専用のワゴン車を、大池やフィットネス広場が見える第二駐車場に停めた勘太郎と緑川章子は足立区内の中にある舎人公園に来ていた。
 大都会の東京の中でありながら駅近で、広がる空と多様な自然が楽しめるくつろぎの空間となっている。

 緑と水に恵まれた敷地は今も造成が進み、最終的な計画では69.5ヘクタールに及ぶ広さとなる予定であり。現在は野球場・テニスコート・陸上競技場などのスポーツ施設やキャンプ場やバードサンクチュアリなどと言った様々な広場、そして水鳥が見られる大池や親水広場などが整備され。約61.2ヘクタールを開園しているとのことだ。

 そんな町の中にある大きな公園の中に足を踏み入れた勘太郎と緑川章子は、ワゴン車から降りるとざっと公園内を見渡す。

 まだ夜の二十一時なので駐車している車はチラホラと何台かは見えるが、その駐車場の人目に付きにくい一番隅に大きな冷凍庫を積んだ精肉店の車が駐車をしている。
 その冷凍車らしき車体には日ノ和精肉店と書かれたロゴがしっかりと勘太郎と緑川章子の目に映る。

 直感が働いたのか勘太郎は何故かその冷凍車に疑惑の目を向けながら、隣にいる緑川章子に話しかける。

「なあ、緑川。確か赤城先輩から送られてきたメールの内容では、狂人ゲームが始まる1日目の前夜に、葛西臨海公園の周辺で謎の冷凍車が入っていくのを……とある目撃者が見たという証言があったらしいが、この舎人公園の駐車場にも精肉店の冷凍車が止まっているのが見えるぞ。こんな夜に冷凍車が一台だけこの公園に止まっているだなんて、なんかおかしくはないか?」

「まあ、確かにそう言われて見ればおかしいかも知れませんね。しかもそんな目撃証言を聞いた後ですからね。その似たような冷凍車が一台だけ駐車場の隅に止まっていたら誰だって目に付くのも分からなくはありませんが……」

「ちょっとだけ行って調べて見ようぜ。多分違うとは思うが、何だか気になるからな」

「そうですね、一応は調べて見ますか。それにしても水元公園に来いとメールがあったかと思えば、今度はこの舎人公園に現場の変更だなんて、一体警察は何を考えているんですかね」

「さあな。しかし見た感じ羊野や特殊班の刑事達の姿がまるで見えないんだが。まさか別の駐車場にパトカーを停めているのかな?」

「て言うか、まだこの舎人公園には来てはいないんじゃないんですか。あの赤城文子刑事から送られてきた文面ではそのようにも感じられましたが」

「いや、流石にそれはないだろう。あんなに俺がこの事件に関わる事を良く思ってはいないあの捜査一課殺人班の刑事達がこの現場にいないわけがないだろう。きっとこの舎人公園内の何処かにいるんだよ」

「そうですよね。まさか犯人が待ち構えているこの舎人公園に私達だけを送り込んだりはしないですよね」

「ああ、そんな事は絶対にないさ。捜査一課殺人班の刑事達や特殊班の川口警部・山田刑事・赤城先輩と言ったいつもの刑事達が先にこの公園に来ているはずだ」

「なら早く羊野さんに連絡をしてここに来るように言って下さいよ。敵に回したらかなり厄介な存在ではありますが、味方ならこれほど心強い人はいませんからね」

「そう思って電話やメールを何回もしているんだが、一向に返事が返って来ないんだよ。一体あいつは何をしているんだ?」

「返事が返ってこないですか。それは珍しいですね。いつもなら何かしらの返事は必ず返って来るはずなのに?」

「まあ、来ない返事を待っていてもしょうが無いから、取りあえずは俺達だけで動こうぜ。もしかしたら羊野や捜査一課の刑事達とも何処かで合うかも知れないし」

「そうですね。なら取りあえずはさっきも言っていたように、あの冷凍車を調べましょうか」

 そう言うと勘太郎と緑川章子は駐車場の目立たない一番隅に停車している冷凍車に静かに近づく。

 近くまで近づいて見ると当然のことながら運転席には人は誰も乗っては無く、人の気配も感じることはないようだ。人がいないことを確認すると勘太郎と緑川章子は回りに注意をしながら今度は冷凍車の後ろへと回り込む。

「あ、黒鉄先輩、この冷凍車の荷台の扉、どうにか手動で開くことが出来る用ですよ。どうやら鍵らしき物も掛かってはいないみたいですし」

「なに、それは本当か!」

 荷台の扉に鍵が掛かっていないことを確認すると勘太郎はレバーに手を掛け、その扉を勢いよく開ける。

「でやあぁぁぁ!」


 ギィィィィーガシャン!


 扉を開けた瞬間荷台のクーラーボックスから冷気が流れ出し、勘太郎と緑川章子の体が白い靄で覆われる。

「うおぉぉぉー、さ、寒いぜ。この冷凍庫の中は一体何度あるんだよ。これじゃ寒くて中には入りづらいぞ」

「家庭用の冷凍庫は約マイナス18℃の環境で冷凍品を保存する為に使う物ですが、どうやら業務用の冷凍庫(ストッカー)は約マイナス20℃から~マイナス80℃くらいまで温度を下げられるみたいですね」

「ならこの冷凍車は間違いなく業務用の物だから、この冷凍車の中の温度は間違いなくマイナス20℃から~マイナス80℃くらいはあるということか」

「この冷凍庫の中にはどうやら牛や豚の冷凍のお肉を積んでいるみたいですから、それくらいの温度はあるでしょうね。でも仮にこの冷凍車を犯人が運転してここに停めたとして、この中にあの黒いライオンこと喰人魔獣が隠れていたのでしょうか。とてもじゃないですけどこんな寒い所に長時間いたら、例え百獣の王と呼ばれているあのライオンでも耐える事は出来ないんじゃないのですか」

「まあ、猛獣とは言えアフリカにいるネコ科の動物だしな。寒さには弱いのかもしれないな。そう考えるのならマイナス20℃から~マイナス80℃にもなるこの冷凍庫の中に隠れるのは流石に無理があるか」

「警察犬に臭いを嗅いで貰ったら1発でこの冷凍車にいたのかが分かるんですがね」

「それが出来ないからこの冷凍庫に入って中を調べようとしているんじゃないか。そういう訳で緑川はこの扉の前で待機をしていてくれ。行き成り犯人に扉を閉められたら洒落にならないからな」

「了解です。この入り口は私が死守しますね。なので黒鉄先輩は安心してこの冷凍庫の中を調べてきて下さい」

 決意を込めた声で言う緑川の声援を聞きながら勘太郎は倉庫内へと足を踏み入れる。
 冷凍庫の中はとても寒く、体をブルブルと震わせながら歩く勘太郎の口からは息を吐く度に白い靄が勢いよく漏れる。そんな勘太郎の目の前には何処かの肉の部位が入ったブラスチックの大きなケースが四~五段に重ねられて幾つも中に入っていた。

 勘太郎はそれらの肉の入ったプラスチックのケースを見て回りながら、一段一段ケースを調べて回る。

「やはりこの中に何かの生き物がいた形跡はないな。動物の抜け毛や足跡くらいはあると思っていたんだが」

「まあ、そんな都合良くこの冷凍車が犯人と黒いライオンが乗って来た車でした~なんて言う確率の方が断然に低いですからね」

「そうか、そうだよな。やはり俺の考え過ぎか」

「この冷凍車の中を調べても何もなかったのなら、早く中から出て来て下さい。この車の持ち主に許可を取ってもいないのに、こんな所を見つかったら泥棒と勘違いされて間違いなく警察に通報されますよ」

「そ、そうだな。もう出るか。流石にこの中は寒いからな」

 あの喰人魔獣に繋がる証拠を何一つとして見つけることが出来なかった勘太郎は仕方なく冷凍庫の中からいそいそと出て来ると、闇に広がる公園を見ながら近くにいる緑川に話しかける。

「よし、俺はこのまま舎人公園内に入って、この中で黒いライオンを使った殺人を起こそうとしている暴食の獅子を探すからお前はこの駐車場で待機をしていてくれ!」

「分かりました。私は、もしも黒鉄先輩の身に何かがあった時のための保険と言う訳ですね」

「まあ、そう言う事だ。何にしろ、もしもの為の情報のつなぎ役は必要だからな。そんな訳でちょくら行ってくるが、本当に大丈夫なんだろうな?」

「何がですか?」

「お前が渡したこの謎の大きなリュックサックの事だよ。お前が見るなと言うからまだ中身は見てはいないが、本当にあの黒いライオンを相手に有効に働くアイテムなんだろうな」

「勿論ですよ、黒鉄先輩。なのでまだ中を開けちゃ駄目ですよ。もしもあの黒いライオンが現れてこの荷物を開く時が来たら、黒鉄先輩はきっと私に感謝をするでしょうね。こんな役立つ物を入れてくれてありがとうとか言ってね!」

「そこまでの物が入っていると言う事か。本当に、本当に、お前のことを信じていいんだな。緑川!」

「勿論ですよ、黒鉄先輩。大船に乗ったつもりでいて下さい!」

 無邪気に笑う緑川章子のまだあどけなさが残る可愛らしい顔を見ながら勘太郎はその言葉を信じることにしたようだ。

 勘太郎は緑川が用意をしてくれたリュックサックを背中に背負いながら、この公園の闇夜の何処かに潜んでいると思われる黒いライオンとその獣を操る暴食の獅子の行方を捜すために前へと進む。

            *

 まだ夜の二十一時という時間帯と駅近な事もあり、公園内にはまだ道を行き来する人の姿がチラホラと見える。そんな中、キャンプ場のある方に向けて歩いていると、目の前には大きく広い水を蓄えた大池がその姿を現す。勘太郎は暗くて何も見えない水面を見ながら、この三日目の狂人ゲームに川口警部の挑発に乗った暴食の獅子の行動について考える。

 この時間帯からして、もう川口警部と暴食の獅子との推理戦は始まっているのだろうか?
 行き成りの赤城先輩からのメールで水元公園から~舎人公園への行く先の変更に正直かなり疑問を感じていたんだが、突如変わった場所の変更の意味が未だによく分からん。
 加えてこの舎人公園にはあの暴食の獅子が黒いライオンを引き連れて来ているらしいから、それだけでもこの一夜で警察のメンツを潰そうとする暴食の獅子のやる気が伝わって来るようだ。
 そんな警察と犯人とのやり取りを考えるのなら、もう俺のやることは限られているのかも知れないな。
 何故なら普通に考えてあの西園寺長友警部補佐を始めとした捜査一課殺人班の刑事達が既にこの舎人公園内の敷地内の中に入り、暴食の獅子の行方を懸命に追っているはずだからだ。
 そんな俺に出来る事は、犯人が犯罪を犯すそのきっかけや場所を阻止したり、簡単には逃げられないようにこの公園内を見回る事くらいだろうか。

 確か今日の午後に届いた暴食の獅子からの声明文では、この舎人公園で警察関係者を一人、喰人魔獣を使って食い殺すからその殺人行為を見事に阻止して見せろ! とか書かれていたらしいからな。だとするならばこの事件に関わりのある刑事達が一番その標的にされる可能性も十分に考えられるという事だ。あんな挑発めいた会見をした川口警部は特に狙われるかも知れないが、その川口警部を守るガードが堅いことも当然暴食の獅子は知っているはずだから、川口警部への狙いは極力避ける物と俺は考えている。

 だけど……その刑事達の姿がさっきから何処にも見当たらないな。一体彼らは何処にいるんだろうか。そして今夜の狂人ゲームの開始時間は二十一時のはずだから、急いで赤城先輩や羊野と合流をして態勢を立て直すんだ。もしかしたらこの公園内にいる一般の人達にも被害が及ぶかも知れないからな。だから警察には今夜だけでもこの公園内には人が入れないように何とか手を打って貰わないと流石に不味いのかも知れないな。

 そんな事を思いながら勘太郎は、周囲に警戒をしながら大池の回りを一周する。

            *

「何故だ。なぜ誰も電話に出ない。なぜこの公園には刑事達の姿が一人も見えないんだ。まさか本当に俺だけしかいないんじゃないだろうな。いや、まさかな。そんな事はあるはずはないさ。流石に考え過ぎかな。あの暴食の獅子が自ら指定したこの公園での対決の場にまさか俺だけを行かせるような真似は流石に警察はしないはずだ。て言うかそんな事は川口警部やあの西園寺長友警部補佐が絶対に許しはしないだろう。と言う事はやはり……俺の気付かない場所で密かに隠れて待機をしているのかな。あの暴食の獅子に見つからないように監視をしているんだ……そうだ、そうに違いないぜ!」

 時刻は二十二時十五分。

 舎人公園内の何処にも刑事達がいないことにようやく気付いた勘太郎は急ぎ赤城文子刑事や羊野瞑子に電話やメールをするが、一向に返事が返って来ない事に今更ながらにかなりの不安と焦りを感じているようだ。

 急激に舎人公園駅に降りる人の数が少なくなっている事に時間の経過を感じた勘太郎はこれからどうした物かと途方に暮れていたが、そんな勘太郎に一人の男が息絶え絶えになりながら近づいてくる。そのジーンズのズボンにヨレヨレのワイシャツを着たその大柄の男は首から下げた一眼レフカメラを激しく揺らしながら走り寄ってくる。
 その男の必死な形相に勘太郎は何事かと言った顔をしながら、自分の所まで近づいてくるのを警戒しながら静かに待つ。

 ようやく目の前まで近づいて来たその男の姿に勘太郎は正直どこかであったような気がしていたが、どうしても思い出せない。だがその男の胸ポケットから飛び出ているカロリーバーが目に入った時、この男が先日上野動物園のライオンコーナーで勘太郎にカロリーバーをくれた人物だと言う事にどうにか気付く事が出来たようだ。

 勘太郎は胸ポケットに閉まってある先日貰ったカロリーバーに手を触れながら、彼がなぜこんなにも慌てて自分に近づいて来たのかを聞いてみる。

「そんなに慌てて一体どうしたんですか?」

「ハア、ハア、ハア、ハア、く、黒いライオンだ……」

「へぇ?」

「黒いライオンが現れて一緒にいた下田七瀬刑事が襲われたんだよ! スマホでこの舎人公園にいる西園寺長友警部補佐や川口警部に電話をしようとしたんだが、驚いて逃げる途中にスマホを何処かに落としたみたいでどうしたものかと思っていたんだが、近くに人がいて助かったよ。その全身黒服のダークスーツは……まさかお前があの噂の黒鉄の探偵だな。下田七瀬刑事の話では、今回の狂人ゲームにはあんたが呼ばれていると聞いてはいたが、まさか逃げてきたその先にもあんたがいてくれたのは本当にラッキーだったと言った所だろうか。まあ、西園寺長友警部補佐の方は黒鉄の探偵、お前のことをどうやら認めてはいないようだが、俺はあんたの事を高く評価をしているから、あんたの姿を見つけた時は物凄く嬉しかったよ。だから一目散にあんたの所に来たんだよ。お願いだ、俺と現場に戻って俺の同僚の下田七瀬刑事を助けてくれ。ライオンに襲われてはいるがもしかしたらまだ生きているかも知れない。襲われてまだそんなに時間は経ってはいないし、急いで助けに行ったらまだ助かるかも知れないんだ!」

「ならこの駅の近くにある交番に電話をして人手を増やしてから助けに行こう。交番勤務の警察官が駆けつけてくれるだろうし……」

「いや、それは不味いだろう。下田七瀬刑事や西園寺長友警部補佐から聞いていますよ、今は狂人ゲームの真っ最中だって。となれば今関係の無い警察官をこの事件に招き入れる事は狂人ゲームのルール違反になるんじゃありませんか?」

「うう~ん、確かにそう見られるかも知れないな」

「なら二人で助けに行きましょう。それで肝心の西園寺長友警部補佐や川口警部らはこの舎人公園には来てはいないのですか?」

「今の所は刑事達の姿は見てはいないな。あの警察犬を連れていた女性の刑事さんと一緒にいたのなら何か聞いてはいないのですか」

「私はこの舎人公園に行くと言っていた下田七瀬刑事に無理矢理ついて行きこの公園に来たのですが、先に到着したのは俺と下田七瀬刑事の二人だけでその後いくら待っても他の殺人班の刑事達がこの舎人公園に来たと言う知らせはまだ入ってはいないみたいです。仕方が無いので二人でこの公園中を隈無く調べて回っていたら、行き成り暗闇と木々の影からあの黒いライオンが襲ってきて、必死に抵抗をする下田七瀬刑事を何処かに引きずって行ったんですよ。俺はその迫り来る恐怖に分け目も振らずに一目散に逃げ出してしまったが、黒鉄の探偵……あんたの姿を見て下田七瀬刑事を見捨てて逃げ出してしまった自分の過ちに後悔をしている所だ。だからこそ俺は今あんたに助けを請うているんだよ。お願いだ、今この場で頼る事の出来る人物は……黒鉄の探偵、あんたしかいないんだ!」

 その男が叫ぶ必死の願いを断る事が出来ない勘太郎は、仕方なく彼の願いを承諾する事にしたようだ。

「仕方が無いな。人命が掛かっていると言うのなら、誰かの助けを待っている余裕も時間も当然ないか。なら行くぞ。その下田七瀬刑事とか言う刑事が襲われた場所は何処だ!」

「舎人公園通りを挟んだ自然観察園やみんなの広場やバーベキュー広場がある所です!」

 その男の言葉を聞いた勘太郎は目の前に停めてある何台かの自転車に目をやると、ポケットにいつも入れている探偵七つ道具のニッパーとプラスとマイナスのドライバーを使ってその自転車の鍵を簡単に外していく。

「ちょっと黒鉄の探偵さん、何をしているんですか?」

「この放置してある自転車を借りて、下田七瀬刑事が襲われたと言う自然観察園がある池付近に行くんですよ。遠くでライオンの姿を見たら走るよりも自転車の方が断然に早いですからね。もしライオンに追いかけ回されても、急いで高い建屋や木にたどり着く事が出来れば助かる確率はかなり高くなりますからね」

「戦ってその黒いライオンを追い払うという選択肢は無いと言う事ですね」

「ライフル銃も無しにあの猛獣のライオンに勝てる訳がないでしょ!」

「た、確かにそうですね!」

「一応赤城文子刑事にはこの状況をメールで知らせて起きましたから、刑事達がここに到着するまで、何とか俺達だけで頑張って見ましょう。あの黒いライオンは暴食の獅子の命令で動いているみたいですから、その犯人の命令がない限りは一般の人達には被害はないはずです!」

「そうか、なら急ぎましょう。俺が案内します!」

 そう言いながら自転車に跨がるその男の姿を見た勘太郎は、素直に名前を聞く。

「それで……その下田七瀬刑事と行動を共にしていたというあなたは、一体誰なんですか?」

 その勘太郎の言葉にその男はニヤリと笑う。

「俺の名は城島茂雄。神奈川県警に所属をしている警察犬の訓練士で、下田七瀬刑事が訓練をしていた警察犬のハイド・ワイド・ハイターの知り合いだよ。あの優秀な犬達を殺したあの黒いライオンが許せなくてな、俺も下田七瀬刑事に手を貸す事にしたんだよ」

「手を貸すことにしたって、この狂人ゲームに他の警察官が関わったらその時点でこの狂人ゲームは俺達の負けになるかも知れないと言うのに、もうそんな事は止めて下さい!」

「大丈夫だよ。一人くらい警察官が増えた所であの壊れた天秤が狂人ゲームの勝敗を無断で決めたりはしないさ。あの壊れた天秤という狂人は、他の狂人達が操る不可能犯罪のトリックがその対戦相手でもある白い羊と黒鉄の探偵に暴かれるかどうかを確かめる為に行っている殺人トリックゲームだから、狂人ゲームその物の邪魔にならないのなら一人の警察関係者が増えた所で違反には絶対にしないさ。むしろ無駄な雑魚キャラが増えたと、壊れた天秤はおろかあの暴食の獅子も喜んでいるんじゃないかな。何せ暴食の獅子が今夜この舎人公園内で確実に殺さなくてはならない警察関係者の数が、また一人増えたのだからね」

「確かにそうとも考えられますが……」

「まあまあ、黒鉄の探偵こと……黒鉄勘太郎君、そんなに思い悩んでいないでこれでも食べなさい!」

 そう言いながら城島茂雄は、頭を抱えながら思い悩んでいる勘太郎に向けて自分が持っているカロリーバーを差し出す。

「では行こうか!」

            *

 舎人公園通りを道路を横断した勘太郎と城島茂雄は自転車を走らせながら下田七瀬刑事が襲われたというみんなの広場に向かう。
 その向かう先に外灯は無く、自転車のライトの明かりだけがその行く先の道をか細く照らす。

 かなり距離が離れたのか、遠くに見える舎人公園駅の灯りが小さくなると、その自転車で走って来た距離に実感が沸く。
 そんなか細さと目の前に広がる暗闇に不安を感じた勘太郎は、自転車が放つライトの光に道標を求めるが、しばらくしてみんなの広場の中央付近に人が倒れているのを自転車のライトが一瞬照らし出す。

 その倒れている人の姿にビックリした勘太郎は自転車から勢いよく降りると、手に持つ柄系の折り畳み式携帯電話をライトモードに切り替えながら、その明かりで地面に倒れている人の姿を確認する。
 どうやらその倒れている人物は城島茂雄の言う用に、あの下田七瀬刑事に間違いないようだ。

 勘太郎はライトを近づけながら地面にうつ伏せに倒れている下田七瀬刑事の首元を照らすと、頸動脈が物凄い力で食い破られている事を確認する。
 そしてその夥しい血が地面に広がっている事からも分かるように、どうやら下田七瀬刑事は頸動脈を食い破られた事による出血性ショックを起こし、そしてそのまま死に至ったようだ。

 もう既に事切れている事を確認した勘太郎は暗闇が広がる回りに注意をしながら、何処かに潜んでいると思われる黒いライオンの姿を必死に探す。

「し、下田七瀬刑事……下田さんが、死んでいる。俺のせいだ。俺があの時逃げたばかりに、下田さんがあの黒いライオンの犠牲になってしまった。ちくしょう、俺はなんてとんでもない事をしてしまったんだ。見す見す彼女を見捨てて死なせてしまった!」

「そんな事はないですよ。これは城島さんのせいではないです。あの黒いライオンを直に目の前にしたら、例え大の大人だって震えて逃げ出しますよ。それに仮にあなたが勇気を出して無謀にも下田七瀬刑事を助けに行ったとしても死体が二つに増えるだけだったと思います。だからあなただけでも助かった事をそんなに攻めなくていいのですよ。あなただけが無事に助かった事を一体誰が咎められましょうか。誰もあなたを攻めることは出来ません。むしろ奇跡的に助かった事を喜ぶべきです。でもまあ自分の同僚の仲間が自分の代わりに死んでしまっていますから、そんな気持ちになれないことは十分に分かりますがね」

「当然だ、そんな気になれる訳がないだろう。何を言っているんだ、君は!」

「残酷ではありますが、現実に起きた結果を見てそのまま言っているだけの事です。あなたは下田七瀬刑事が襲われている内に逃げる事ができたからこそ助かったのですよ。それが現実であり、残酷な事実です!」

「黒鉄の探偵。貴様あぁぁ、人の気も知らないで、よくもそんな事が言えた物だな!」

「失礼な事を言ってしまったのなら謝りますが、今はこの場を離れましょう。血の臭いがするこの闇の中では、あの黒いライオンの格好の標的にされてしまいますからね。下田さんの死体のことは気になりますが、今は速やかにここから離れた方がいいようです」

「仕方が無い……今はそうするか」

 道ばたに停めてある自転車に戻った勘太郎と城島茂雄の二人は、互いに自転車にまたがると力強くハンドルを握り締める。そんな勘太郎の横で城島茂雄が、行き成り声を震わせながら慌ただしく叫ぶ。

「く、黒鉄さん……あの黒いライオンが俺達の前にその姿を現しやがった。今ゆっくりと下田七瀬刑事の死体に歩み寄っている所だ。どうやら餌を取られると思って出てきたようだ!」

「その城島茂雄の言葉に携帯電話に内蔵されているライトを照らしながらその下田七瀬刑事の死体のある方角に光を向けてみると、その死体がある下田七瀬刑事の足下には大きな黒いライオンがその姿を堂々と現していた。

 喰人魔獣は勘太郎と城島茂雄の方を見るとその黒いたてがみを生やした大きな顔を向けながらまるで獲物との位置を確認するかのように、自転車に乗る二人を睨みつける。
 その黒いライオンと勘太郎との距離は、凡そ十メートル程だ。

 逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ。今背中を見せて逃げたら、肉食動物の習性で獲物と見なされて確実に後を追いかけて来るはずだ。だから少しずつ後ずさりをしながらその場を離れるんだ。

 そんな事を考えていた勘太郎の横で、大声を上げながら城島茂雄が勢いよく逃げ出す。その猛スピードで自転車を漕ぐその姿はなんとも卑怯で、流石の勘太郎も「ちょっとお前、一人で逃げて一体何をやっているんだ!」と思わず叫びながらツッコミを入れたい程だ。
 そんな勘太郎の事などは気にもしないかのように軽快に自転車を走らせる城島茂雄は、後ろを振り返りながら勘太郎に向けて大きな声で叫ぶ。

「黒鉄の探偵さん、何をしているんですか、早く逃げて下さい。あの黒いライオンが今あなたの目の前にいるんですよ。そんな所でただじっとしていたら、その黒いライオンに確実に食われちゃいますよ!」

 その城島茂雄の声を聞いた黒いライオンは、激しく天を仰ぎながらその大きな口を力強く開ける。

 ガッオオオオォォォォーン、ガッオオオオォォォォーン!

 その喰人魔獣の力強い遠吠えに恐怖に飲まれた勘太郎は直ぐさま自転車に飛び乗ると、後ろを振り返る事無くただひたすらに猛スピードで自転車のペダルを漕ぎ続ける。その勢いは凄まじく、その生存本能からなのか先を走っていた城島茂雄が運転する自転車に追いつくほどだ。

 明らかに背中に背負っているリュックサックのお陰で重さのハンデを背負っているはずの勘太郎はその重さを感じさせない走りを城島茂雄に見せつける。そのスピードと勢いは目を見張る程で、舎人公園通りを突き抜け第二駐車場やフィットネス広場を横切り、あっという間にキャンプ場へと辿り着く。
 そんなアスリート並みの走りを見せる勘太郎は、いつの間にか途中で追い越してしまった城島茂雄の事を思い出し思わず後ろを振り返る。

 し、しまった。思わず城島さんを追い越してしまった。

 そんな事を思いながらも勘太郎は何気に後ろを振り返ってみると、自転車の後ろを追走しながら音も無く走り寄る黒いライオンこと喰人魔獣がその姿を勘太郎に見せる。

 喰人魔獣はハア、ハア、ハア、ハア、と荒い息を吐きながら勘太郎の後ろにピッタリと張り付いてくる。

「ば、馬鹿な。黒いライオンだとう! 後ろを走っていた城島茂雄には目もくれず、俺の後を真っ直ぐに追ってきたと言う事か。これは流石にやばい状況だぜ。今この場で自転車を止めたら確実に奴に殺される!」

  そう心の思いを口にした勘太郎だったが余程肝を冷やしたのか自転車のハンドル操作を誤り、地べたにスライディングをしながらキャンプ場の一角にある一本の木へと激しくぶつかってしまう。

 ザアァァァ……ズルズル……ガッシャン!

「い……痛い!」

 猛スピードで走る自転車から放り出された勘太郎は木にぶつかった事でその動きを止めるが、遠くからライオンが近づいてくる気配と音を感じ直ぐに立ち上がる。

 木だ。直ぐに木によじ登るんだ!

 瞬時に判断を下した勘太郎の脳は(シナプスを経て神経細胞に繋がり、これまでの人生の中で最も速い動きで傍にある大きな木によじ登ろうとするが、極度の緊張の為か手と足が震えて登る事が出来ないようだ。

 木によじ登ろうとジタバタしている内に近づいてくる何かの気配を感じた勘太郎は思わず振り返って見ると、その50メートル先には、大きな黒いライオンが荒い息を吐きながら立ち止まり、こちらの様子を伺っていた。

「い、いた、あの黒いライオン……喰人魔獣だぁぁぁ!」

 そう思わず叫んでしまった勘太郎の声に反応したのか、その黒いライオンはゆっくりとした足取りで勘太郎の方に近づいて来るのがハッキリと分かる。そんな黒いライオンの接近に命の危機を感じた勘太郎は、まるで蛇に睨まれたカエルのようにその場から動けなくなる。

「ま、不味い、もしかしたら俺は……今まさに最大のピンチを迎えているのかも知れない。やはりライオンの追撃から逃れる為に自転車で振り切ろうだなんて、初めっから無理だったんだ。猛獣に対抗する武器を持っていない人間など、黒いライオンにして見たらあまりにも無力な存在だろうからな。ああ、こんな事なら無理を言ってでも黄木田店長から黒鉄の拳銃を借りて来るんだったぜ」

 自分がしでかした軽率な行動を悔やみながら、これからどう行動したらこの場から生きて生還出来るのかを必死に考えていると、何かを思い出したのか勘太郎は背中に背負ってあるリュックサックを急いで地面へとズリ下ろす。

「そうだ、そうだった。こんな事もあろうかと、緑川の奴がライオン対策用としてこのリュックサックを俺に持たせてくれたんだった。今こそこのリュックサックの中身を使う時だ。一体この中には何が入っているんだ。頼むぞ、どうかあのライオンを撃退出来る道具であってくれ!」

 ズ、ズズズズズーッ。

 少しずつ距離を詰めながら近づいて来る黒いライオンの接近に緊張と焦りを感じた勘太郎は、急いでリュックサックの中に手を突き入れるといろいろある代物の中から手に当たった物を闇雲に取り出す。
 高らかと掲げられたその手には、一冊の分厚い本が硬く握りしめられていた。

「ん~と、何だって『みんなが好きな、わくわく動物に遭遇した時の為の対処マニュアル……』な、なんだこれは、この状況で今からこの本を読めとでも言うのか。使えんだろう、こんな本は。即座に使えて、俺の身を守る事が出来る……そんな実践向きの道具はないのかよ!」と絶叫しながらその本を地面に叩き付けると、勘太郎は直ぐに次の道具を取り出す。

「な、なんだ、これは。ライオン撃退用の武器か何かか?」

 そう言いながら手に取ったのは、プラスチックで出来た折りたたみ式のライフル型、水鉄砲だった。

「え~ぇ、緑川、これで俺に……どうしろと言うんだ?」

 そうこうしている内に黒いライオンはいつの間にかその距離を10メートルまで詰める。

 ま、不味い、いつの間にかもうこんなに距離を詰められてしまった。どうしよう、一体どうしたらいいんだ!

 そう思いながらも何となく撃って見ると、銃口の先端からは圧縮された水が勢いよく飛び出し、黒いライオンの顔面を水で濡らす事に成功する。
 その水しぶきに黒いライオンは少し嫌がって見せたが、それ以上のリアクションは流石に望めないようだった。

 ジョロ~ジョロ~ジョロ~ジョロ~ジョローッ……プシュゥゥゥゥ!

「……?」

 この水の勢いに驚いて黒いライオンが逃げてくれたら助かったのだが、これ以上しつこくやると最悪怒らせて自分の死を早める事になるかも知れない。そう思った勘太郎は、水鉄砲での撹乱をもうこれで止めておく事にする。

「緑川の奴……あいつ、もうちょっとマシな物を入れる事は出来なかったのかよ。頼むから、この絶対的な大ピンチの状況をひっくり返してくれるような画期的なアイテムを俺に与えてくれ。頼むぅぅぅ!」

  そう言いながら小さな箱の中から取りだしたのは、形の古いスマートフォンだった。

「う~ん、見た感じでは3~4年前の形の古いスマートフォンのようだな。まだ電源もつくし起動もしているから壊れていないとは思うが、まさかこの携帯電話で助けでも呼べと言う事かな? いやこの状況から助けを呼んでも直ぐには助けてもらえないだろうし、今からじゃ手遅れになってしまうよ!」

 勘太郎はこのスマートフォンも地面に叩き付けようと一瞬考えたが、これはこれで質屋に持って行ったら小金を稼ぐ事が出来るかも知れないので、そっと上着の内ポケットにしまっておく事にしたようだ。

「ガルルル……ガルルルルル!」

「うわあぁぁぁ、も、もう5メートル近くまであの黒いライオンが来ているんだから、今度こそこの状況をひっくり返してくれるアイテムを俺に与えてくれ。頼む、頼むからさあ!」

 そう願いながら次なる代物を取り出すと、その腕に伝わる重みに勘太郎は思わず「お、重い。な、なんだ、これは?」と思わず言葉が口から漏れる。

 取り出した次なる品物は、異国の人が良くクリスマスの時に専用オーブンで丸焼きにして食べると言うあの七面鳥である。
 日本人の多くは焼いた七面鳥をお店から買う事はあっても自ら焼く事は余りやらないようだが、そんな七面鳥の生の肉が丸ごと一羽、この中に入っていた。

「この七面鳥の生肉と、何かが入っているプラスチック容器の大きなタッパーの二つで、このリュックサックの中身は大半を占めているようだが、最後の最後に緑川の奴はいい物を入れてくれたようだ。この七面鳥の生肉なら、あの黒いライオンの気を逸らす事が出来るかも知れないからな。肉食動物でもある猫科最大の猛獣は七面鳥の生肉は恐らくは大好物なはずだ。この血も滴る七面鳥の肉に喰らいついている内に、この場から速く離脱をするんだ。それくらいの時間は十分に稼げるはずだ!」

 そんな希望の言葉を口にした勘太郎は、その七面鳥の生肉を勢いよくその黒いライオンの方に向けて投げつけるが、目の前に落ちた七面鳥の生肉の臭いを嗅いだ黒いライオンは、七面鳥の生肉には興味がないのかその五秒後、勘太郎に再び視線を合わせるとゆっくりした足取りで再び歩き出す。

「ぜ、全然、七面鳥の生肉に食いつかねぇぇぇぇーっ! 一体その七面鳥の生肉の何が気にくわなかったんだ。頼む、頼もからその生肉でどうか手を打ってくれ。俺はおいしくないからどうかそこで止まってくれ!」

 そんな勘太郎の悲痛な願いとは裏腹についに距離が3メートルまで近づいて来た黒いライオンは、その場でまた立ち止まる。
 嫌でも聞こえて来る荒い息遣いを耳で聞きながら勘太郎は、苦し紛れにリュックサックの更に底にあったプラスチック容器を取り出すと、勢いよくそのタッパーの蓋を開ける。

「く、来るな。これでも食ってくれ。頼む!」

 そう言って投げつけたのは少し潰れたおにぎりだった。その地面に落ちたおにぎりを一口で食べきると、その黒いライオンはまるで催促をするかのように勘太郎の目の前にその腰を下ろす。

「お、俺が投げつけたおにぎりを……たったの一口で食べやがった。この大きなタッパーの中にはおにぎりと唐揚げが入っていたのか。何だよ、緑川の奴、長期戦に備えて弁当を用意してくれていたようだな。でもまさかあの黒いライオンがおにぎりに食らいつくとは……まあ今は何でもいいや。このおにぎりを食べてくれるのなら、このおにぎりに注意を向けてから、どうにかしてこの状況から逃げ切ってやるぜ!」

 その場で待機をしている黒いライオンをどうにかこの場から後退させるために、勘太郎は二つのおにぎりを遠くに投げつけるが、その二つのおにぎりを見逃さなかった黒いライオンは器用にジャンプをしながら素早く口でキャッチをする。
  その後何事もなかったかのように地面に着地をするとムシャムシャと口を動かしながら二つのおにぎりを味わう。

 へぇ? ダイビングキャッチをしておにぎりを食べやがった。ライオンがおにぎりを食べないとは言わないが、匂いを嗅ぎ、危険が無いかどうかを確認してから食べると思っていたんだが、難の迷いも無く行き成りおにぎりを食べやがった。やはり人に飼われているライオンだから食い物に警戒心が無いのかな?

  そう思い気を抜いていると、また黒いライオンが立ち上がり近づこうとしていたので、勘太郎は大きな鶏の唐揚げを2個ほど投げつけてみる。
  これらもまるで曲芸のごとく難なくキャッチをした黒いライオンはムシャムシャと口を動かすと僅か二秒程でその二つの大きな唐揚げを飲み込む。

 そんな黒いライオンの意外な一面を見た勘太郎は、目の前にいる黒いライオンをマジマジと見つめながら五秒ほど考える。

「この黒いライオンって……本当にライオンなんだよな。ん、こいつ……本当にライオンなのか?」

 そう疑問を感じた勘太郎は再び唐揚げを両手に持つと、つい遊び心である言葉を言ってしまう。

「お、お手!」

 その勘太郎の声に黒いライオンは迷わず右手を差し出す。

「なら、おかわり!」

 続いて疑心暗鬼になりながらも勘太郎は「おかわり」と言う言葉を黒いライオンに投げ掛ける。そんな勘太郎の言葉に応えるかのように黒いライオンは、舌を出しながら左手を突き出す。

「な、なら、俺の回りを一週して立ち上がりながらのチンチンだあぁぁ!」

 その無茶な命令に動き出した黒いライオンは、何の躊躇も無く勘太郎のいる大きな木の回りを一周すると、勘太郎の目の前で立ち上がり、前足を上げでちんちんのポーズを決める。
 そんな芸達者な黒いライオンを見ながら勘太郎は思う。

 恐らく……この黒いライオンは……いやこいつは恐らくはライオンじゃないのかも知れない。

 そんな確信と疑惑が入り混じりながらも勘太郎はその答えを出すため、勇気を出してその黒いライオンに立ち向かう。

「さ、さあ~お食べぇ、残りのおにぎりと唐揚げだよ~ん。お前に全部やるよ!」

 勘太郎は震えながらも残りのおにぎりと唐揚げをタッパーごと全て差し出すと、そのタッパーから流れ出る臭いに釣られて、黒いライオンが大きな口お開けながらその食べ物に食らいつく。
 その美味しそうに食べる黒いライオンに携帯電話のライトを当てながら、マジマジとその黒いライオンの姿を観察する。

 全身の毛は短めの分厚い毛で覆われていて、この立派なたてがみもどうやら本物のライオンの毛のようだ。だがこの黒い色は恐らくは闇の中でも目立たず活動が出来るようにと犯人の手により黒く着色された物だろう。

 そして何よりこの黒いライオンは一目見ただけでも分かるように物凄く大きく、そして本物のライオンに近い体型をしていると言うのが正直な感想だ。

 目視でのおおよその推測は、体高七十センチから~八十センチ。体長百七十から~百八十センチ。体重は有に百キロは軽く越えていると思う。尾の長さ七十から~八十センチ。と言った所だろうか。

 勘太郎はその黒いライオンに近づくと意を決してその黒いたてがみに触ってみる。

 毛並みから来る手触りは本物のライオンの用だが、何かが可笑しい。

 その後も勇気を出して黒いライオンの体を触りまくった勘太郎は、その黒いライオンの秘密を全て理解する。

「この黒いライオンもどきは……本物のライオンの毛皮をまるで着ぐるみでも着るかの用に違和感なく自然に着こなしている。しかもご丁寧にも、この獣の為だけに合わせて作ったサイズピッタリのオーダーメイドのようだ。そして……」

 勘太郎は後ろへ回り、黒いライオンもどきの尾っぽやお尻を触ってみる。

「やはり思った通り、尾っぽは偽物か。そして、このケツの手触りからして、この獣は行動時には必ずオムツを着用しているな。その理由は簡単だ。この獣が垂れ流す糞から一体なんの動物なのかを悟らせない為だ。そして最後に……」

 そして更に勘太郎は黒いライオンもどきの腹の前にしゃがむと、喰人魔獣と呼ばれたその生き物のお腹の下部分を優しくまさぐる。

「腹の部分に怪しげなスプレー缶の用な物が二本程くくりつけられているな。恐らくは喰人魔獣が何かしらで追い詰められた時に、暴食の獅子の操作で喰人魔獣の腹部に装備されているこの二本の発煙筒が作動して、その黒い煙幕をまき散らしながらその姿をくらます為の代物だろう。基板や配線なんかも通っていて、なかなか凝った作りになっているじゃないか。しかも黒い毛皮に覆われているから仕掛けがなかなか見えにくいような作りになっているようだな」

 その仕掛けや数々の謎に想像力を働かせた勘太郎は、目の前にいる黒いライオン擬きに目を向けながら静かに考える。

 こいつの正体は多分……いいや恐らくは絶対に『犬だ!』そうに違いない。

 しかも、重く窮屈そうなライオンの本皮を着ていても全く嫌がらずに普通にしている所を見ると、恐らくは子犬の頃からよ~く訓練をしている大型犬のようだ。

 だが、こんな桁違いに大きな犬が本当にこの世界にいるのだろうか? 見た感じでは外国産の犬種である事はまず間違いはないと思うのだが。

 そして、この犬の犬種は一体難なのだろうか?

 そんな事を考えながら勘太郎は、最後に最も疑問に思っていたある謎について調べるため、黒いライオンもどきの毛皮を被った犬の前足を恐る恐る引き上げてみる。
 その足をマジマジと目視した勘太郎は思わず顔をしかめる。

「なるほどなぁ、そういう事だったのか。暴食の獅子の奴め、ひでぇ事をしやがるなぁ。これじゃ動物虐待だぞ。どうやらお前の主人は動物を玩具か道具としか見ていないようだな」

  なんと持ち上げた喰人魔獣の前足は、ライオンの足の用な形に作り替えられていた。
 肉球の位置や骨の形に至るまで、ぱっと見、小柄なライオンの足のようにも見えた。

「暴食の獅子の奴、犬をライオンに似せる為だけに犬の四本足全てに違法手術を施しているな。金さえ積めば違法な手術をしてくれる整形外科関係の闇の獣医が恐らくはいるのだろう。もしかしたらこの異常な体の大きさも本当は違うのかも知れない。いろんな違法な薬物を使い無理矢理に成長させた姿が……この喰人魔獣の姿なのかも知れない?」

 勘太郎は喰人魔獣と呼ばれ恐れられたこの大型犬の不幸な境遇に哀れみを覚えながら、その黒い犬の頭を優しく撫でる。

 暴食の獅子の奴……こんな奇想天外な掟破りの事をされたら動物学者も悩むし、羊野の推理にだって迷いが生じるだろうな。
 この五年間、日本の警察を翻弄し、逃げ延び続けてきたのも頷ける。そしてそれを成し遂げる事の出来たこの犬は、恐らく物凄く頭が良く賢い犬なのだろう。
 凄いのは暴食の獅子の方じゃ無く、目の前にいるこの黒い犬の方だ。

 そんな事を思いながら触っていた右の前足を見てみると、ライオンの毛皮を突き破り、切れ目の付近から微かに血が流れている。
 それを発見した勘太郎は「痛そうだな。ちょっと待っていろよ」と言いながら、携帯用の傷薬を取り出すと、その化膿止めの傷薬を優しく塗ってやり、その後で包帯を巻く。

「よ~し出来たぞ。これで少しは楽になっただろう。本当はこのライオンの毛皮を外してから処置したかったんだが、今は応急処置しか出来ないから、これで我慢をしてくれ。後でちゃんとした獣医にでも見せて傷を診て貰わないとな。そして、お前のことは必ず暴食の獅子の魔の手から解放して助け出してやるからな。安心しろ!」

  勘太郎はその大きな犬をなでながら自分の思いを語っていると、その思いに応えるかの用に喰人魔獣は勘太郎の手をかいがいしく舐める。

「なんだお前、結構かわいいところもあるじゃ無いか。見た目と違って本当は物凄く穏やかで優しい犬なのかも知れないな。しかし、大人しいと言うか、全く吠えない犬だな。ちょっと口を開けてみろよ」

 そう言いながらその黒い犬の口を開けさせて中を見た時、勘太郎はこの非道な狂人の行いに恐怖と怒りで心を震わせる。

「こ、声が出せない用に声帯を切ってやがるのか。だからこの黒い犬は一切吠える事が出来なかったんだな。可哀想に。そして代わりに、この首の辺りに括り付けられている音声器からライオンの遠吠えが流れていたのか。恐らくは暴食の獅子からの無線通信でスイッチ一つでこの黒い犬が宛もライオンの遠吠えを吠えているかのように見せかけていたと言う事か。本当におぞましい事だぜ!」

 そう言いながら勘太郎は首の辺りにある小さなスピーカーの用な機械に触る。

「・・・・・。」

 勘太郎はこの重苦しい気分を変えるかのように立ち上がると、持っていた最後のおにぎりを喰人魔獣に食べさせながら、優しい声で言う。

「そうだ、ここであったのも何かの縁だ。黒いライオンや喰人魔獣という呼び名じゃ流石に可哀想出し言いにくいからな。ここは一つ俺がいい名前をつけてやるよ」

 しばらく腕組みをしながら考えた勘太郎は、黒いたてがみの毛の中に隠されている首輪とそこに書かれていた『56号』という謎の記号を見ながら名前を思いつく。

「よ~し、ゴロ助。お前の名前は今から『ゴロ助だ!』いいな、わかったな。ゴロ助」

 そう言いながら頭を撫でる勘太郎の手をゴロ助と名付けられたその犬は不思議そうに見る。
 そうこれが人々を襲い恐怖のどん底に陥れたと言う、あの黒いライオンこと喰人魔獣の真実の姿だ。

 そんな勘太郎との優しさに触れたゴロ助は短いながらも和やかな時間を共に過ごしたが、木々がざわめく音に混じり何かの音がゴロ助の耳に入ると、そのざわめきを聞いた瞬間ゴロ助は何やら緊張をした面持ちで第二駐車場のある方角を見ながら直ぐさま立ち上がる。

「ん、どうしたんだ。ゴロ助?」

 ザワザワと風に揺れる木々に耳を澄ませながら匂いを嗅ぎ、傍にいる勘太郎のことなどは忘れたかの用にある一点を見つめ走り出そうとする。そんなゴロ助の足を勘太郎がどうにか止める。

「お、おい、待ってくれ」と言いながら勘太郎は咄嗟に緑川章子がリュックサックに入れてくれた一つ古い形のスマートフォンを素早くゴロ助が身にまとっているライオンの毛皮のお腹の隙間の部分にそっと差し込む。何故なら少し見てみたがどうやらこのスマートフォンには、人のいる位置が分かるようにGPS機能が内蔵されているようだ。なのでこのスマホを持っていることによってゴロ助が例えどこに行こうとその位置を見失うことはもう無いだろう。

 そんな勘太郎の咄嗟の機転で発信器の役割を果たすスマートフォンを毛皮の中に差し込まれたゴロ助は、その巨体に似合わぬような速さでまるで風のように素早く闇の中へとその姿をくらます。

「まさか、風に混じって微かに聞こえていた音は……まさか『犬笛か?』確か何かの本で読んだ事がある。犬笛は16000HZから~22000HZの音が出せるが、人の耳は20000HZの音までしか聞き取る事が出来ない。なので犬のトレーナーは音を出す周波数を微かに変える事で人間にも聞こえる音と・或いは聞こえない音を使い分けて犬の躾や訓練に活用しているとも聞くけど、実際に犬笛を使っている人を見た事はまだ無いな。もしその犬笛を使い(世間から喰人魔獣と呼ばれていた)ゴロ助を遠くから操っていたのだとしたら、その奇っ怪な黒いライオンの単独行動の謎も説明がつくと言う物だ」

 ゴロ助が走り去った闇の方角をじ~と眺めていた勘太郎は、自分が持つガラケーの携帯電話を手に持つと直ぐにインターネットに繋げ、グーグルマップから今現在ゴロ助がいる位置を確認する。

「よかった、この柄系の携帯電話からでもゴロ助に仕込んだスマートフォンの位置を確認する事が出来るのか。どうやらゴロ助は緑川がいる第二駐車場の方へと逃げていったようだな。よし、このままゴロ助の後を追うぞ!」

 そう意気込みながら走り出そうとした時、勘太郎の耳に男の悲鳴のような叫び声が一瞬聞こえる。

「ぎゃあぁぁぁ!」

「な、なんだ、今の悲鳴は?」

 その声はどうやらあのゴロ助が向かった方角から聞こえてきたようで勘太郎はその声のした方角に急ぎ走り出す。

「この先には確かフィットネス広場があったんだよな。そしてあの声は間違いなく城島茂雄さんの声だ!」

 勘太郎が途中自転車で追い越してしまった城島茂雄のピンチを知り、その逸る焦りをペダルを漕ぐ力へと変える。

 もう人が誰一人としていないフィットネス広場に到着した勘太郎はよく目を凝らして見てみると、地面には人が一人歩けるくらいの黒くそして長い布きれが敷かれ、その布きれはどうやら第二駐車場の方まで伸びているようだ。

「まさかゴロ助はこの細長い布きれの上を歩いて飼い主の所に戻ったんじゃないだろうな。この布きれの上を渡れば、例え警察犬が足の裏の摩擦痕から臭いを追撃しようとしても、その布きれを直ぐにロールのように巻いて回収すれば、その摩擦痕から足の臭いを嗅ぎ取る事はまず出来なくなるからな。と言う事はあの駐車場に止まっていた冷凍車がかなり怪しいと言う事になる。あのおにぎりの入っていたタッパーのように、何処かにあのゴロ助が一匹丸ごと入れるようなケースが何処かに隠されていて、その箱の中に隠れたゴロ助を箱事回収し冷凍庫の中に納める事が出来れば、冷凍車の倉庫の中事態をいくら探してもそこからライオンの体毛や掻き傷となる証拠は何一つとして見つけることは出来ないだろうからな。そして当然その箱とは温度調整機能がある箱にまず間違いはないんだ。ゴロ助はライオンの毛皮を着ているとはいえその本体は紛れもなく犬だ。だからこそ暴食の獅子はこの犬の証拠を一切残さない為に体の毛を全て短くカットをしているからな。そう考えるとやはりあの冷凍庫の中はかなりキツかったと想像されるな」

 そう言いながら勘太郎は、白い布きれが伸びている方角に向けて歩き出す。

「それに犬にはシングルコートと言う寒さに適応しない毛を持つ犬と、ダブルコートと言う寒さに適応した毛を持つ犬の二種類がいると前に羊野から聞いたことがある。その犬種や育ってきた地域や環境によっても様々だが。冬にも適応が出来るダブルコートと呼ばれている毛を持つ犬は長い毛のオーバーコートと密集した短めの毛のアンダーコートという保温力の高い被毛を持っているとの事だ。そして平均的な大型犬の体の温度は37℃から~38℃と言われているが、だが体毛を駆られているゴロ助には必ず何らかの寒さ対策が必要なはずだ。そうでないとあの冷凍車の中には入れないからな。しかしゴロ助は一体なんの犬種なんだ。ライオンの毛皮を被っているし、その体も手術でかなり弄ってあるから、その本来の原型が分からない。羊野の奴ならもしかしたら分かるだろうか?」

 そんな事を小声で呟きながらその布きれの後を追っていると、途中でうつ伏せで倒れている一人の男を発見する。
 その大きな体や身につけている物から推察するに、その人物が神奈川県の警察犬を預かる飼育員でもある城島茂雄だと思った勘太郎は、その顔を確認しようとその男の元へと静かに歩み寄る。

「城島茂雄さん、大丈夫ですか。生きていますか?」

 携帯電話に内蔵されているライトの光を当てながら城島茂雄と思われるその男に近づこうとしたその時、行き成り勘太郎の首筋に激しい衝撃と電流が流し込まれる。
 その威力と効果はまさに殺人的で、何処かの闇に隠れていた犯人からの襲撃を背後から受けた勘太郎はなすすべ無くその場へと倒される。

 バチバチ……ビリビリ……ビリビリ……バチバチ!

「ぐわぁぁぁぁーっ!」

 し、しまった。油断をした。暴食の獅子の接近に気付かず後ろを取られるだなんて……俺としたことが……最後の最後に判断を誤ってしまった。せめて……せめて……暴食の獅子の顔を見てやるぜ。

 そう思い勘太郎は暴食の獅子の姿を一目見ようと後ろを振り返ろうとするが、もう既に体の自由が利かなくなっていた勘太郎は目の前が真っ暗になり、そのまま意識を失うのだった。
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