白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第六章 『不条理の矢』 大雨の日に訪れたペンションでボウガンを持つ謎の人物が勘太郎達に迫る。矢のトリックを操る暗殺者との推理対決です!

6-5.勘太郎、歪んだ人間関係を見る

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 時刻は二十時丁度。


 その移動の途中で勘太郎は先程玄関ロビーで受けた、ある出来事について軽く悪態をつく。

「先程のあの挨拶の時に、ミステリー同好会のみんなが握手を求めて来たから俺も握手で応えたんだが……最後に握手を拒んだあの二人は一体なんなんだ。ちょっと感じが悪かったぞ!」

「確か、畑上孝介さんと一宮茜さんでしたか。畑上さんの方は、恐らくは彼自身が極度の潔癖症なのでしょうね。黒鉄さんとの握手の際は誰はばかる事無く露骨に黒鉄さんとの握手を避けていましたからね。ミステリー同好会の部員達の話では女性との握手の時でさえ、握手後は自分の手に除菌スプレーをかけるとか。そこまでの徹底ぶりだそうです。まあ、私に言わせれば、そんなに潔癖症なら度数100%のアルコールの中にでも浸ってろ。と言うのが見解なのですがね」

「まあ、確かにばい菌は死滅するかも知れないが、普通に人も死滅してしまうだろうがな」

「そして女性の一宮茜さんの方は、ただ単に精神的に男性が嫌いなのでしょうね。こちらも男性と握手をする時は本当に嫌そうな顔をしていましたからね。まあ所謂男嫌いと言う奴です。過去に男性と何かあったのでしょうか?」

「確かに……そう言われてみたら、なんだか俺のことをばい菌を見る様な目で見ていたような気がする。こちらはこちらで、別の意味で失礼極まりない女性のようだな。同じ同性とはあんなに仲がいいのに、男性は例外なくみんな虫扱いかよ」

 何か納得の行かない感じで考え込む勘太郎に、羊野は気分を変えるかの用に話題を変える。

「所で黒鉄さん、ご自身の携帯電話はちゃんと充電器にセットして来ましたか?」

「ああ、バッチリだ。羊野、お前のスマートフォン長々と借りてて悪かったな。もう返すぜ」

 軽く感謝の言葉を言うと勘太郎は羊野から借りていたタッチパネル型の携帯電話を直ぐさま返す。その感謝の気持ちに応えるかの用に羊野は和やかに万遍の笑みを浮かべると、何やら意味ありげに勘太郎にその笑顔を向ける。

「別にいいんですよ。ちゃんと後で貸した受信料は頂きますので。その代金の代わりは、お風呂上がりの缶ジュース一本でいかがでしょうか」

「つまり、俺におごれと言う事か。仕方がないな」

「では約束ですよ。お風呂から上がったら隣のドリンクコーナーの自販機で待っていますから、絶対に逃げないで下さい」

 強く念を押した羊野は勘太郎から受け取ったスマートフォンを浴衣の袖の中に隠すと、白銀に光る長い髪を揺らしながら廊下を歩き出す。

 前を歩く羊野を追いながらゆっくりと東階段を下る勘太郎は、途中一階の食堂前の扉付近で同じく大浴場に向かう物と思われる畑上孝介・堀下たけし・座間隼人・背島涼太の男性四人と遭遇する。
 雑談しながら歩くそんな彼らも二十一時までには入浴を済ませたいと急いでいる用だ。

 大学三年生の座間隼人と背島涼太は勘太郎と羊野を見ると「あ、どうも」と軽く頭を下げ。大学OBの堀下たけしは「けっ!」と言いながらしかめっ面で二人を出迎える。
 そんな彼らを代表するかの用に畑上孝介が、勘太郎と羊野に向けて話しかける。

「よう、探偵さん達もこれからお風呂かい」

「ええ、夕食前に一っ風呂浴びようかと思いまして」

「なるほど、そうでしたか。まあ今日は来る途中にいろいろとあったみたいですから、一度湯船で疲れを癒して気分をスッキリさせてから夕食を頂いた方が食事も美味しいですよ」

「ええ、楽しみにしています」

「なら、途中まで一緒に行きましょうか。どうせ俺達も行くところは一緒ですから。お風呂に入りがてら、探偵のお仕事の話でも聞かせて下さいよ」

「ええ、かまいませんよ、私の話でよろしければ」

 勘太郎が社交辞令的な言葉を返していると、やはり気になっていたのか畑上孝介が羊野の容姿をマジマジと見ながら不思議そうに話し出す。

「それにしても、何というか……髪の色も肌の色も真っ白な人が本当にいたんですね。これってアルビノって奴ですよね。しかもこんなに美しい女性が身近にいるだなんて……失礼とは思いましたがまるでおとぎ話に出て来る妖精か何かだと思いましたよ」

 その畑上孝介の言葉に羊野は静かに笑う。

「ホホホ、口が上手いですわね。この体質と姿のせいでよく好奇の目で見られたりするので余りこの姿を人に見せたくはないのですが、でもまあ褒めてくれてありがとう御座います」

「何を言いますか。そんなに美しいのなら他の男達がほっとかないでしょうに!」

 明らかに羊野を口説こうとしている畑上孝介に対し、勘太郎ではなく、隣にいた堀下たけしが慌てて畑上孝介を止める。

「畑上、そいつは駄目だ。大人しそうな容姿をしてはいるがこいつは超危険ないかれたサイコ女だ。関わったらろくな事にならないぜ!」

「そうか、俺はいけると思うんだけどな。あの男の探偵とはどうやら恋人同士ではないみたいだし……」

「こんないかれた女を連れ歩いているこの探偵の男の方も異常なんだよ。俺はこの女に本を顔に投げ付けられたばかりか包丁を首に突きつけられたが、この探偵はこの女を諫めるばかりで騒ぎはしなかったからな。恐らくはこんな事は日常茶飯事だからこそ騒がなかったんだろうぜ。本当に危険な奴らだぜ!」

(不味い、そのような認識を持たれてしまっていたか。確かに羊野が包丁を振り回すシーンは至る所で普通に見ているからな。ついつい当たり前の光景になれてしまっていたようだ。これは大いに反省せねばな。)

 そんな事を勘太郎が思っていると話を聞いていた羊野がニコニコしながら堀下たけしに向けて話し出す。

「ホホホホ、堀下たけしさん。停留所での初見ではあんなに弾けるくらいに私達仲がよかったのに随分と連れないじゃないですか。もし堀下さんさえよければ、二人っきりでお茶くらいはお相手しますよ」

「だってよ、堀下お前、この誘いに乗って見ろよ。お前ならいろんな意味でいけるんじゃねえの。このまま行ったら狩れちゃうんじゃねえの!」

 その申し出に嬉しがる畑上孝介だったが、堀下たけしは体を震わせながらみるみる青い顔になる。

「じょ、冗談じゃねえぜ。間違ってもこの女とは密室で二人っきりには絶対にならないぜ。恐らくこの女には勝てないし、逆に狩られるのは俺の方だぜ!」

「お前、たった一人の女性に、なに本気でビビってんだよ。元不良の特攻隊長が聞いて呆れるぜ!」

「とにかくあの女は駄目だ。俺の恫喝にも全くひるむこと無く、逆に俺に刃物をちらつかせて脅してくるくらいだから、こいつには常識という道徳が効かない人種と見たぜ!」

「まあ、お前の強い人と弱い人とを嗅ぎ分ける観察眼は目を見張る物があるからな。今日はお前の意見に従っておくか」

「ああ、そうした方が無難だぜ。それに今年の獲物はもう用意してあるからな」

「フフフフ、獲物か……そいつは楽しみだな」

 その獲物と言う言葉に反応した勘太郎はその言葉の真意を聞き返す。

「その獲物とは一体なんの事ですか?」

 その勘太郎の言葉に畑上孝介と堀下たけしがお互いに顔を見合わせながら不気味にニヤリと笑う。

「ハハハハ、テレビゲームの狩りの話ですよ。モンスターハンティングて言うゲームの中で、今日の深夜に、ある貴重なモンスターを討伐しに二人で行くんですよ」

「ああ、ゲームの話ですか。あのオンラインゲームの事なら俺も知っています。中々人気のあるゲームですよね。俺はクリアーが出来ずに途中で直ぐに挫折してしまいましたが」

「あの世界の獲物は、最初は泣き叫んでよく暴れますからね。でも仲間達で力を合わせて囲んで抑えつけて集中攻撃をしてやればやがてはおとなしくなって、獲物の材料を簡単にゲットできるのですよ。その快感と刺激がどうしても忘れられずに今も堀下たけしとはこのペンションであってたまに狩りをしているんですよ」

 その畑上孝介の話に、堀下たけしはプッと吹き出しながら、笑いをこらえるようにしてほくそ笑む。

「それって……モンスターハンティングの話なんですよね」

「ええ、そうですよ。当然モンスターハンティングの話ですよ。なにか別の話にでも聞こえましたか」

 畑上孝介が話すなんとも言えない違和感と、その話を聞いて何やら複雑な表情を浮かべる座間隼人と背島涼太を見比べながら勘太郎は、今はとにかく話を合わせる事にしたようだ。

 畑上孝介の言葉に愛想良く返しながら勘太郎は男達の輪の中に混じりゆっくりと歩き出す。その少し後ろを物言わぬ羊野がニコニコしながら付いて来ているが、特に何か話し掛けてくる訳ではないので機嫌がいいのか悪いのかは今の勘太郎には分かるはずもない。
 そんな微妙な雰囲気を漂わせながら廊下を歩く中、畑上孝介が隣を歩く背島涼太に向けて話しかける。

「背島、お前に今まで貸した金の代金、ちゃんと後で払えよな。借金の期限がもう迫って来ているぞ!」

「ええ、それはもう必ずお返ししますから、でも今はまだバイト代が入ってはいないのでもう少しだけ待ってもらえないでしょうか。バイト代が入ったら近いうちに必ず返します」と言いながら背島涼太は畑上孝介の耳元で静かに言い訳の言葉を並べる。

 一方堀下たけしと座間隼人の方では、とぼとぼと歩く座間隼人の肩に腕を回しながら堀下たけしがまるで絡むかのように、ねちっこく話しかける。

「座間、今度東山まゆ子を誘って遊園地へ三人で遊びに行こうぜ。車は俺が出すからさ。そんでもって程よい時間になったらお前は先に帰ってもいいぜ。彼女は俺が送っていくからよ。だからそのセッティングをしてくれ。なあ、いいだろう。先輩の俺がこんなに頼んでるんだぞ、まさか断りはしないよな!」

 邪な言葉を並べる堀下たけしは、下を向きながら悩む座間隼人に向けて蛇の用に絡む。
 そんな光景を目の当たりにし、こいつら本当に大丈夫かと思いながらも赤の他人が余り軽々しく口を挟む事ではないと思った勘太郎は仕方なく何も聞かない振りをしながらミステリー同好会の部員達の後ろを羊野と共に歩く。

 特に喋る事も無かったので適当に話を合わせながら一階ロビーや備え付けのエレベーター前を歩いていると、程なくコインランドリーがあるフロア前を通りかかる。その中には自らの衣類を洗濯している杉田真琴と東山まゆ子の二人の姿があった。

 東山まゆ子は勘太郎達の姿を見るなりなんだか気恥ずかしそうにしながらも下を向いていたのに対し、杉田真琴の方は一瞬嫌悪の顔を見せながらも直ぐにその顔を笑顔に戻す。

(なんだ、今一瞬見せたあの表情と違和感は……)そんな事を思いながら男達の輪の中を歩く勘太郎は、続いて隣のフロアにあるドリンクコーナーに差し掛かる。

 自販機の前には、缶コーヒーを飲みながらスマホの携帯電話を弄る一宮茜が男達の接近に顔をこわばらせながら直ぐさま距離を取るが、その一宮茜との視線が偶然にも勘太郎と合うと、視線に気付いた一宮がニッコリと勘太郎に向けて微笑む。

「あら、男性達はみんなでお風呂ですか。それに探偵さんのお二人も一緒とは、もう仲良くなられたのですか」

「今そこで男子達とバッタリ会いましてね、一緒にお風呂に行く所なんですよ。一宮さんはもうお風呂には入られたのですか」

「このペンションに皆さんよりも早く到着していた私と杉田さんの二人は、先にお風呂はもう頂いています。今女性でお風呂に入っているのは赤城さんと夏目先輩の二人だけです」

「赤城先輩達は流石に早いですね。でもなんで東山まゆ子さんはお風呂には入らないのですかね。たった今そこのコインランドリーの所にいたのをチラリと見たのですが?」

「ああ~東山まゆ子先輩の話ではこのペンションに来る前に家でお風呂に入られたみたいで、今はこの雨で湿気と汗を含んだ衣服を洗濯する方が最優先だと言っていました。それにお風呂はなにもこの露天風呂だけでは無いですからね。その気になったら各個室にもシャワールームがある見たいですし、もしかしたら深夜にでもその個室に備え付けられてあるシャワールームでゆっくりと一人で入られるつもりじゃないでしょうか」

「なるほど、そう言う事ですか。だけどせっかく露天風呂が目の前にあるのになんだかもったいないですね。でもまあ、今日入らなくても明日も有りますし、そんなに急ぐ事もないのかもな。じゃ俺達は急いで一っ風呂浴びてきますよ」

「ええ、そうした方がいいと思いますよ。風呂にゆったりと浸かって疲れを洗い流して来てください。夕食会は二十一時からですから充分に間に合うでしょう」

 そう言うと一宮茜は勘太郎と羊野に視線を向けながら小さく笑う。

 最初に彼女を見た時は気の強そうなインテリ風の女性だと思っていたが、投げかけた優しい言葉に勘太郎は彼女に対するイメージを少し変える。何故ならそのはにかむようなぎこち無い優しい笑顔に少し安心感を感じたからだ。

(まあ、挨拶の時に俺の握手を拒んだ事は未だに傷付いてはいるがな……。)

 そんな事を考える勘太郎の小さな心をまるで見透かしたかのように羊野が小さな声で「女性の微笑みにだまされないで下さい。どうせ彼女なりの社交辞令ですよ」と言いながら耳元で囁く。

 缶コーヒーを啜りながら再びスマホ携帯に視線を戻す一宮茜に勘太郎は軽く頭を下げると、そのまま隣のフロアにある大浴場へと歩き出す。

 廊下を挟んでトイレと迎え合わせになっている大浴場の入り口を確認した勘太郎は、男湯・女湯と書かれた看板をマジマジと見る。

「ここが、大浴場だな」

「そうです、ここが大浴場です。さあ、早く入りましょう」

 足早に次々と脱衣所の中へと消えて行く男達を見つめながら、勘太郎と羊野はそれに習うかのようにその場で別れ、大浴場の中へと消えて行く。

 脱衣所の中に入るとそこには昭和初期を思わせる杉の木で出来た昔ながらの光景が広がる。だがそこには古めかしさは無く、全てが綺麗に磨き上げられた、掃除の行き届いた脱衣所になっていた。
 衣服を入れる木製のロッカーは割とシンプルで、ロッカーの番号とプラスチック製の腕バンドの付いた鍵をお好みのロッカーの鍵穴から引っこ抜き、腕に備え付けるタイプの代物のようだ。
 この手のロッカーは普通のレジャー施設を構えている銭湯には結構あり、鍵を入れた鍵穴を回す事で内側の鉄板のバーが下がり施錠できると言う結構シンプルな作りになっている。

 そして板張りの広場の周りには身だしなみを整える事のできる鏡の付いた洗面台が各場所に設置してあり、隅の方には冷水が飲める給水器が勘太郎の喉の渇きを掻き立てる。
 だが何よりも一番目に映っていたのは、中央の奥に配置されてある三台の電動マッサージ機チェアーである。
 みんながいそいそと着替え出す中、茶毛頭の背島涼太が一人マッサージチェアーへと座り出す。

「お、俺、何だか肩が張っているのでマッサージチェアーで体をほぐしてから行きます。だから皆さんは先にお風呂へ入っていて下さい」

 愛想笑いを浮かべながら言う背島涼太に、堀下たけしと畑上孝介は「お前に言われんでも入るわ。夕食が待っているしな」……「マッサージチェアーに座っている時間なんてあるのか。夕食は二十一時からなんだぞ!」と馬鹿にした用に冷ややかに応える。

 心無い先輩達の発言にも関わらず背島涼太が愛想笑いを浮かべながら頭を下げていると、それを見かねた座間隼人が「まあまあ~大目に見てあげて下さいよ、堀下先輩。畑上先輩。背島は前々から肩が凝ると言っていましたからマッサージ機チェアーを試したいのだと思いますよ。満足したらその内飽きてお風呂に入って来ますよ。そんな事よりも畑上先輩、昨日の巨人VSヤクルト戦は見ましたか、あの試合は凄かったですよね」と言いながら畑上孝介と堀下たけし、ついでに勘太郎をもお風呂場の中へと先導する。

「お前が野球に興味があったとは初耳だな」と言いながら畑上孝介は少し首を傾げたが、野球の話は嫌いではなかったらしく、昨日の試合の話を座間隼人と語り始める。
 そんな中、堀下たけしが一番風呂とばかりに扉を開けて大浴場の中へと入っていく。大浴場の中に入って見ると、湯気で立ちこめる風呂場の中には当然人は誰一人として入ってはおらず、人がいた形跡も何処にも無かった。
 それもそのはず、今日のこのペンションにはミステリー同好会の人達以外は誰もおらず、文字通りの貸し切り風呂だったからだ。

 いつもは予約があったお客さんに限り定額で宿として貸している用だが、今回はこの日のために畑上孝介がわざわざ日にちを空けて全てを貸切状態にしてくれたので誰にも気を遣うこと無く気兼ねなくこのペンションで過ごせるようにしてくれたようだ。その誰もいない大浴場の中にミステリー同好会の関係者達と一人の探偵が足を踏み入れる。

 白い湯気が立ち上るその床には綺麗に磨き上げられた真新しい白いタイルが清々しく広がり、体を洗う近代的なシャワーにお湯が出る綺麗な蛇口が数十個ほど均等に並ぶ。
 大きな浴槽があるのは勿論のこと、サウナ風呂や外には露天風呂などのお風呂もあるので、個人的にゆっくりとするにはかなり充実したお風呂になっていた。

「俺達以外は誰もいないからな、ゆっくりと入れるぜ」

「つまり貸し切りと言う訳か」

「いいですね。それ」

 そんな事を話しながら、畑上・堀下・座間の三人はお風呂場の中へと入っていく。

「よし、じゃ俺も入るか」

 その後に勘太郎も続き、暖かい湯気が逃げないようにと入浴場の扉を静かに閉めようとする。その瞬間ゾッとした寒気を背中に感じた勘太郎は不意に後ろを振り返る。
 蛍光灯に照らされるその真下で背島涼太の顔が一瞬邪悪に歪んだ用に見えたからだ。だが……まあ、恐らくは俺の気のせいだろうと、その時の勘太郎はそう解釈するのだった。
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