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第八章 『白面の鬼女』 大雪が降る北海道の山頂で繰り広げられる生き残りを賭けたシリアルキラーとの推理戦に白黒探偵が挑む!
8-14.疑わしき三人の来客者達
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「探偵さん、詳しい事は逃げてきた大学生の彼らから事情は聞きました。どうやら行き成り現れた殺人鬼の足止めをしていたようですが、中々戻られないのでかなり心配しましたよ。もう少し来るのが遅かったらここにいる男達を集めて探偵さんを探しに行く所だったんですが、でも無事に戻られてよかったです!」
時刻は二十一時三十分。
白面の鬼女との一方的な戦いにより嫌と言うほど痛めつけられた勘太郎は、なぜか無償で治療をしてくれた狂人・闇喰い狐の助けもあり、どうにか自分の足でロープウェイ乗り場のある待合所へとたどり着く。その入り口で待っていたのは、雪が降る中、懐中電灯を片手に持ちながら大声で叫ぶ、ロープウェイ乗り場の操作室にいた係員のおじさんの姿だった。
土砂崩れの現場を見に行ったまま中々戻らない勘太郎のことを余程心配したのかその係員のおじさんは勘太郎が戻ってきた事に安堵の顔を見せるが、同時に正体不明の殺人鬼の襲撃により町に続く道路が寸断された事で不安と驚きの表情を覗かせる。
勘太郎は本気で心配してくれる係員のおじさんに自分は大丈夫だと明るくアピールすると、登山サークルの部員達・五人の他にこの待合所を訪れた人はいないかを確認する。
すると係員のおじさんは、先に待合所に到着していた三人のお客以外にこの場には誰も来てはいない事を告げると外を警戒しながら玄関の扉をゆっくりと閉める。
(ああ、そう言えば、管理人の小林さんが途中で来るとか言っていた三人のお客さんの事だな。土砂崩れで道が寸断される前に既に来ていたのか)
そんな事を考えながら勘太郎は三人の来訪者の存在に複雑な思いと不安を感じていたが、今はそんな事を考えていても仕方がないと思ったのかお互いの無事を確認し合いながら係員のおじさんと共に待合所の中へと入る。
建屋の中に入ると一番奥の長椅子がある付近で缶コーヒーを持ちながら雑談をしている登山サークルの部員達を発見する。
そんな彼らを溜息交じりに見つめていた勘太郎は、へらへらと笑いながら休憩をしている大石学部長・飯島有・斉藤健吾・田代まさやの四人の登山サークルの部員達の前にその姿を現す。
「登山サークルの皆さん、どうやらみんな無事にこの待合所にたどり着いたようですね。本当によかったです。でも俺だけを一人残して逃げ出すなんて酷いじゃないですか!」
あの探偵はおそらくもう死んでいると思われていたのか圧倒的な力を持つ白面の鬼女からの奇跡的な生還に登山サークルの部員達は正直かなりびっくりしている様子だったが、すぐにことの状況を理解した大石学部長は、申し訳なさそうな素振りを見せながら頭を深々と下げ平謝りをする。
「大変申し訳ありませんでした探偵さん。ついあの白面の鬼女の恐怖に死への恐れと畏怖を抱いてしまって、つい魔が差して逃げてしまいました」
その大石学部長の平謝りを間近で見ていた飯島有がすかさず口を出す。
「仕方がないわよ、あの恐ろしい姿をした白面の鬼女を前にしたら誰だって逃げ出すわよ。大石学部長は……いいえ私達は何も悪くはないわ。そうでしょ、探偵さん」
(それをお前が言うな! 絶対その台詞、大石学部長達と打ち合わせをしていただろう)と思いながら勘太郎は、大いに叫びたい心をグッと押さえながらも大人としての対応を取る。
「まあ……何はともあれ、皆さん無事で何よりです。あの赤いワンピースを着た白髪頭の女性……白面の鬼女は『この私が……』何とか苦心の末に撃退しましたが、その犯人がこちらの方へ逃げ去るのをこの目で目撃しました。もしかしたら何処か近くに隠れていて、皆さんを再び襲撃する機会を密かに伺っているのかも知れません。なのでみなさんここは今すぐに上の山頂にある山荘ホテルに避難をして下さい。天気予報ではもうすぐここは吹雪と嵐で二~三日は止まないとか言っていましたから、食料や燃料や温泉がある山頂のホテルの中の方がまだ安全です!」
その勘太郎の言葉に、怒りに満ちた顔を向けながら飯島有はヒステリックに金切り声を上げる。
「ふざけんじゃないわよ。せっかくあの殺人鬼のいる山から下って来たのに、何でまたあの山頂に戻らないと行けないのよ。嫌よ、嫌よ絶対に、冗談じゃないわ!」
強固なまでに完全否定する飯島有に勘太郎は何故頂上に戻らなくてはならないのかを根気強く説明する。
雪を含んだ土砂崩れで道が寸断し街に戻れる目処が全く経っていない事と、この辺りはもう直ぐ猛吹雪となり後二~三日は雪がやまないと言う事。そしてその吹雪がやむまで肝心の救助隊は来ないという事を皆に説明する。
だがそんな事よりも勘太郎が一番危惧しているのは、一体どうやってかは知らないがあの白面の鬼女が山荘ホテルがある山頂にも、麓にあるロープウェイ乗り場の周辺にも瞬時に瞬間移動で自由にその姿を現すことが出来ると言う事実だ。
その事を踏まえても、下のロープウェイ乗り場で二~三日寒さに震えながらひもじく待つよりも上の山荘ホテルに避難した方が衣・食・住に置いてもよっぽど安心安全であり、白面の鬼女の来襲にもまだどうにか対抗ができると言う事を皆に事細かく伝える。
そんな勘太郎の必死な説得に共感したのかは知らないが話を黙って聞いていた斉藤健吾と田代まさやの二人が、勘太郎に変わり山荘ホテルがある山頂に戻る事を必至に提案する。
「飯島、あの探偵の言っている事は一理あるぜ。町に続く道が寸断された以上ここは大人しく上に戻った方がいいぜ。それにここはもうじき猛吹雪になるらしいしな」
「斉藤先輩の言うとおりですよ。ここは探偵さんの指示に従いましょう。それにあの赤いワンピースを着た白髪頭の女性は上だけでは無くなぜか下にも現れたんですから、もうどっちにいても同じでしょ。ならここは食料も寝る部屋もある山荘ホテルに戻った方が無難ですよ。この掘っ立て小屋のような待合所で二~三日過ごすのは流石に無理がありますからね!」
「も、もう分かったわよ、上のホテルに避難をすればいいんでしょ。下にいても、上に戻ってもあの白面の鬼女が絶えず近くにいるのは何だか気がかりだけど、これじゃどこにいても同じだから上の山荘ホテルの中で助けが来るのを大人しく待つ事にするわ!」
ついに山頂に戻る事を承諾した飯島有の言葉に安堵した勘太郎は、何だか一人……人数が足りない事に気づく。
「ん、陣内さんは……陣内朋樹さんはどこにいるんですか?」
「ああ、あいつならさっき係員のおじさんから救急箱を借りて男子トイレの方へ駆け込んで行ったぜ。トイレで腕の傷の手当をするとか言ってな」
「ええ、確かにその救急箱は私がその陣内さんにお貸ししましたよ。どうやら彼は腕を何かで切られて血を流していましたからね。一応その傷の手当てを手伝おうと彼に提案したのですが、自分一人でやるとか言って男子用トイレの方に向かいました。でもあれから少し時間が経っているので心配ですね。ちょっと様子を見てきましょうか」
「な、なんだって!」
その話を聞いた勘太郎は、すかさずトイレの方へと向かう。
*
待合室から少し離れた男子トイレまで来た勘太郎は大便を用いる個室トイレの扉が全部で三つ程あるのを確認すると、その一つの個室のトイレだけが今も使用中なのに気付き、その個室のトイレのドアに向けて大きな声で陣内朋樹に呼び掛ける。
「陣内さん、陣内朋樹さん、いますか。いたら返事をして下さい!」
ドン・ドン・ドンとドアを叩きながら必死に呼びかけて見たが、内側から鍵をかけているはずの陣内朋樹からは一向に返事が無い。
「陣内さん、腕に受けた傷の具合は大丈夫ですか。陣内さん、陣内さん!」
今度は激しくドアを叩くも、まるで反応が無い事に正直嫌な予感がする。
「ん?」
そう感じた勘太郎だったが、ドアを勢いよく叩き過ぎたせいで施錠が外れたのかは知らないが音を軋ませながら勝手に木製のドアが開き、ゆっくりとした動きでドアが開閉されていく。
ギギ……ギイイイィィィィィィィィィーっ!
「じ、陣内さん……」
トイレの個室のドアが開いたその中には、便器に頭を突っ込む用な形で両膝を突き、動かなくなっている陣内朋樹の酷たらしい姿があった。
その陣内朋樹の首には鋭利な刃物か何かで切られた用な切り口があり、その傷口からは大量の血が便器の中へと流れ落ちていた。
首筋から流れ落ちるその血の量からして、恐らくは頸動脈をバッサリとその凶器で切られているのだろう。
勘太郎は無言で陣内朋樹のそばに行き本人の死亡を確認すると、携帯電話を手に持ちながらその現場の写真を何枚か撮る。
勿論事件現場の保全と、この酷たらしい惨状をいち早く赤城文子刑事に知らせる為だ。
文章と現場の写真を何枚か送り、直ぐさま黒い革製の手袋を両手にはめた勘太郎は、緊張しながらもそれなりに場数を踏んでいるのか順序よく現場の状況を確認する。
「こ、これはひどいな」
いつになるかは分からないが鑑識が来るまで陣内朋樹の死体やトイレの中をこのままの状態にしたかったので無闇に触ったり動かしたりは出来ないが、目視だけで辺りを調べて見る。
「ん~辺りを見る限り特に犯人が残して行った物は何もないな。指紋も恐らくは出ないだろう。あの白面の鬼女はハンドカバーのようなナイロン繊維製の手袋をはめていたからな」
周りが夜のためか静かで薄暗く不気味さが漂うようなそんな年期の入ったトイレだが、勘太郎はそんなトイレを見ながら陣内朋樹が殺された仮説を立てて見る。
「恐らくは、トイレの中で腕の傷の手当をしていた陣内朋樹はトイレから出ようとした所を隣のトイレで待ち伏せをしていた白面の鬼女の奇襲に合い、声を上げて逃げる間もなく首を鎌で切られて殺害された……まあ、そんな所だろうな。白面の鬼女の奴、案外手際良く人を殺害しているな。彼女にとって今回のこの殺しは当然初めてではないんだろうな」
そんな冷静な判断をしていると、行き成り男子トイレの入り口から現れた、大石学部長・飯島有・斉藤健吾・田代まさやの四人が凄惨極まるトイレにその姿を見せる。
どうやら陣内朋樹の安否を確認しに行った勘太郎が余りにも遅すぎる為に他の登山サークルの部員達が改めて様子を見に来た用だ。
その四人が陣内朋樹の変わり果てた姿を目の当たりにし、驚きと恐怖でその場へと崩れ落ちる。
「きゃああああーああぁぁーっ!」とある者は絶叫し、またある者は「陣内、陣内、陣内ーィィッ」と呟きながら信じられないとばかりにその場へとへたり込む。
「皆さん見てはいけません。残念ですが俺が駆け付けた時にはもう既に陣内朋樹さんは亡くなっていました。彼の遺体は現場の証拠保全の為、警察が到着するまでこのままにしておきます」
「そんな、それじゃ陣内があまりに可哀想過ぎるぜ!」
そう言ったのは陣内朋樹と最も仲が良かった田代まさやである。それ以外の人達は何やら様子が違っていた。
「陣内を殺したのは……陣内朋樹を殺したのは鬼女よ、きっとそうよ。あの赤いワンピースを着た……白面の鬼女がまだ近くにいるはずよ。奴が再び現れる前に早くロープウェイで上へと逃げないと! もう既に死んでしまった陣内の事なんてどうだっていいわ。それにこの冬の寒さじゃ死体の腐敗もかなり押さえられるだろうし、別にそのままにしておいても差し支えは無いんじゃないかしら。だから早くこの場から逃げましょう!」
「そうだな、俺もどう意見だぜ。もう死んでしまった奴の事なんて正直どうでもいいぜ。今肝心なのは、あの白面の鬼女が一体どこにいるのかだ。あいつが今は下にいるのなら早くロープウェイで上へと避難しようぜ。俺も陣内の間抜けのように殺されるのだけはまっぴらごめんだからな。それに俺は四月の春からは大企業に就職する事が既に決まっているんだ。それなのにこんな災難に合うとは思ってもみなかったぜ。そうさ俺はこんな所でむざむざと殺されていい人間ではないんだ。そうだ、こんな意味の分からない殺人鬼に追い込まれて、むざむざと殺されて溜まるか。俺は絶対に……絶対に……生き延びてやるぜ!」
まるで陣内朋樹の死を他人ごとのように言う飯島有と斉藤健吾は、おのが命を守る為に保身へと走る事に決めた用だ。
そんな彼らをかき分けながら大石学部長は愕然としながら泣き続ける田代まさやを見ると、力無く肩を落とす田代まさやの肩に手をやりながら「ほら、探偵さんもああ言っていることだし、とにかく今は探偵さんの指示に従おうじゃないか」と優しくいい、思いやる素振りを見せる。そんな登山サークルの部員達の各々の反応を見ながら勘太郎は白面の鬼女に襲われている彼らにその理由を聞いてみる。
「皆さん、俺が見る限り、あの赤いワンピースを着た白髪の女性……白面の鬼女は、どうやらあなた達を狙っているようです。それについて何か心当たりはありませんか。それは絶対にこの山に関わる何かのはずです。この疑問と謎を解かない限り、あの白面の鬼女の殺人はまだまだ止まりませんよ」
登山サークルの部員達の前に殺人鬼として現れた白面の鬼女と今も行方不明になっている妹の如月妖子を結び付ける遠回しな質問に、大石学部長・飯島有・斉藤健吾・田代まさやの四人はその質問の重さにしばらく沈黙していたが、リーダー格でもある大石学部長が皆の意見を代表するかの用に堂々と口を開く。
「いいえ、何も知りませんよ。俺達には見当もつきませんね」
笑顔で言う大石学部長ではあったが、その後ろで話を聞いていた三人の顔色は明らかに引きつっている……そのように勘太郎には見えた。
「そうですか……ええ、ここにいても拉致があきませんので、取りあえずは山頂のホテルへ戻りましょう。一応警察に連絡をして助けを呼ぶ事は出来たので、雪がやんだら救助ヘリで山頂に救助に来てくれると思いますので、それまで上の山荘ホテルで大人しくしていましょう! それに陣内朋樹さんは白面の鬼女の手によって不幸にも亡くなってしまいましたが、彼の死体の保全の事は麓のロープウェイ乗り場にいる係員のおじさんに全てを頼む事とします。それでよろしいでしょうか」
そう言うと勘太郎は最後に男子用トイレに現れた係員のおじさんに陣内朋樹がもう既に死亡していた事を話すと、その事に大変驚いた係員のおじさんは直ぐに仕事人の顔に戻り冷静になる。
「大体の事情は分かりました、ここに残って男子用トイレにある陣内朋樹さんの死体の保全をしたらいいんですね。任せて下さい。警察が到着するまでこのトイレは立ち入り禁止にします!」
「申し訳ありません……」
「いえ、いいんですよ。これも仕事ですから。それと深夜にこの辺りは猛吹雪になるという話なので、あなた達は今すぐにでも山頂にある山荘ホテルに避難をして下さい。今から最後の便でもあるロープウェイのゴンドラを出しますのでそれに乗って行って下さい。本当は二十一時丁度に最後の便が出発する予定だったのですが、色々と想定外のことがありましたからね。探偵さんが無事に戻られてから最後の便を出発させる事にしていたのですよ。なにせ何者かによる土砂崩れによる妨害で街に続く道路は完全に塞がれてしまいましたからね。なのでここにいても当然皆さんと共に数日間、食い繋げる程の食料はありませんし、長時間暖まれるだけの暖も取れません。でも山頂にある山荘ホテルならその心配はありませんからね。そこで救助が来るのを大人しく待っていて下さい。その方が明らかに安心ですし、安全です。これ以上お客様の身に何かがあってはいけませんからね!」
「でもあなたはどうするんですか。あなたは一緒に行かないの?」
一応は心配しているのか不思議そうに言う飯島有に係員のおじさんはにっと笑顔を見せながら言う。
「このロープウェイ乗り場の機械はここからじゃ無いと動かすことが出来ないんですよ。だから私が残るのです」
「オートモードとかで自動操縦はできないの。あなただけ下に残るだなんて流石に自殺行為だわ。あの殺人鬼がまだこの辺りに潜んでいるかも知れないのに」
「確かにロープウェイの運転を自動操縦にする事も出来ますが、その殺人鬼に運転室の機械を壊されでもしたら山を上っている最中にそのゴンドラが途中で止まってしまうかも知れませんからね。なのでそうなることだけはどうしても避けないといけません。土砂崩れで町へ行く手段が閉ざされた今、ここにいるお客様を安全且つスムーズに上へとお届けするのが私の仕事ですからね」
「係員のおじさん……」
「な~に心配は入りませんよ。私一人分の食料ならここに居ても二~三日はどうにか持ちますし。 そして、そのあなた方が言っていた殺人鬼が現れたら、この金属バットで叩いて追っ払ってやりますよ!」
力強くそう言うと係員のおじさんは傍に置いてある金属バットを持ち上げながら軽くスイングをする真似をする。どうやら係員のおじさんなりにお客さんに心配を掛けさせないようにと気を使っているようだ。
係員のおじさんは持っているバットを力強くフルスイングすると勘太郎達に大丈夫だとアピールする。
そんな係員のおじさんの涙ぐましい行動を見ながら勘太郎は考える。
勘太郎の考えでは、おそらく白面の鬼女は登山サークルの部員達を追ってここまで来ているはずだから、逆に上にあがったら係員のおじさんの身の安全は大丈夫だと考えている。
おそらく登山サークルの部員達が山頂にもどったら白面の鬼女ももれなく付いて来ると想像されるので、むしろこれからの勘太郎達の方が心配である。その白面の鬼女が一体どんな方法で山の山頂と麓を行き来しているかは正直分からないが、ここまで用意周到な犯人なら必ずまたその姿を現す事だろう。そんな気がする。
勘太郎がそんな事を考えていると、係員のおじさんが「あ、」と言いながら何かを思い出したようにゴンドラの方を見る。
「そう言えば、このゴンドラの最終便にはあなた達の他に三人のお客様が上のホテルに上がりますので、後のことはどうかよろしくお願いします。その三人のお客様はもう既にゴンドラの中でお待ちしていると思いますので、あなた方も急いで下さい。十分後に出発します」
他の三人の来客がいるという説明に大石学部長が驚きながら答える。
「さ、三人のお客様だって、道はさっきの土砂崩れで完全に全てふさがっていたはずだが?」
「いえいえ、その三人のお客様はあの土砂崩れが起こる前に既にロープウェイ乗り場の待合室や土産物店にいましたので、ここに着てから閉じ込められた形になります」
「そ、そうだったのか……俺達はその三人とは全くすれ違わなかったから、ここには来てはいないと勝手に思い込んでいたが、もう既にみんなゴンドラに乗って待機をしていたのか」
その係員のおじさんと大石学部長の話を聞きながら勘太郎は考える。
(もしも白面の鬼女が陣内朋樹を殺害後に、その三人の誰かになりすましてロープウェイのゴンドラに乗っているのだとしたら、俺達に紛れて一緒に上にあがれるという事になる。だがそれはさすがに考え過ぎだろうか。それとも、俺達がまだ知らない、山を上り下り出来る何らかの方法を持っているのだろうか。とにかくその三人のお客様とやらの顔を拝見しなくては判断がしがたい)
そう考えた勘太郎は、もう既にゴンドラの中で待機をしているという三人の客達の元へと急ぐ。
*
雪がポツポツと降り積もる外へと出て走り、体の痛みと冷たい風に耐えながら夜の闇を照らすロープウェイ乗り場の剥き出しの鉄の階段をどうにか登り切った勘太郎は、緊張しながら大きな窓枠が見えるゴンドラの中へと足を踏み入れる。
「す、すいません、遅くなりました」
続いて大石学部長・飯島有・斉藤健吾・田代まさやらの四人が、後から駆け込んで来る。
「早く、早く上にあげて、早くしてよ!」
「おいまだかよ、このロープウェイおせーぞ!」
周りの迷惑など帰りみずに騒ぎ出す飯島有と斉藤健吾の身勝手な行動に、ゴンドラの中はやたらと騒がしくなる。
そんな中、長椅子に腰を掛ける注目の三人は確かに勘太郎の目の前にいた。
一人目は、黒いサングラスに口の回りに立派な口髭を生やした細身の男性で、頭にはスキー帽をかぶり、手には一眼レフカメラを持っている。
そのワイルドな見た目からして、小汚い中年のカメラマンを連想させる。
年齢は三十代前半と言った感じだ。
二人目と三人目は、どうやら男女のカップルらしく、男性の方は眼鏡をかけたサラリーマン風の真面目なインテリを連想させ、女性の方は茶色く染めた長い髪と厚化粧が印象的な水商売系の匂いを漂わせる。
こちらの二人も体つきは意外と細身で、見た目から推測した年齢は二~三十歳前後だと思われる。そんな二人は青と赤の色違いのスキーウエアを仲良く着込んでいて、見るからに仲むづまじいのだが、ゴンドラに入って来るなり騒ぎ出した登山サークルの部員達に一体何事かといった感じで怪訝な目を向ける。
そんな二人のバカップルの意見を代表するかのように、状況を見ていた口髭を生やしたグラサンの男が、金切り声を上げながら騒いでいる大学四年の飯島有を睨みつけながら声を張り上げる。
「あんたら、いい加減に静かにせんか。ここの客はお前らだけじゃ無いんだぞ! このゴンドラに備え付けられてあるスピーカーからのアナウンスで聞いた係員のおじさんの話だと外にある男子用の公衆トイレで何やら殺人事件が起きたようだが、こんな時こそ冷静に状況を把握して的確に行動をせんといかんだろ。ここで騒いだって状況が改善される訳じゃないんだからな!」
その口髭を生やしたグラサン男の剣幕と指摘に、さすがの飯島有も仕方なくただ謝るしか無いようだ。
「す……すいませんでした」
その飯島有の態度に釣られるように、大石学部長・斉藤健吾・田代まさやの三人が慌てて謝り出す。
どうやらその男のワイルドな見た目から怖い人だと認識したようだ。だが四人が直ぐに謝った事で気をよくしたその男はニッと行き成り笑顔を向けながら軽快に喋り出す。
「うむ、人は常に素直な心と平常心を持っていないといかんぞ。感情のままに騒ぐのは冷静さと糖分が足りないからだ。このチョコレートをお前達にあげよう、みんなで仲良く分けて食べなさい!」
そう言うと口髭を生やしたその男はチョコレートの入った袋を開けると小分けになっている包み紙にくるまれたチョコレートを登山サークルの部員達に手渡す。
その差し出されたチョコレートに四人はまるで競い合うように群がると我先にとそのチョコレートを口に入れる。その貪欲な光景から察するに登山サークルの部員達四人は度重なる緊張と恐怖と疲労が相まってかなり糖分とカロリーに飢えていたようだ。
そんな登山サークルの部員達の姿を見ながら勘太郎は、その口髭を生やした男にお辞儀をしながらお礼の言葉を述べる。
「貴重なチョコレートをありがとう御座います。みんないろいろあって肉体と精神共にかなり疲弊していましたから、正直チョコレートの差し入れは助かります。そのチョコレートのお陰でみんな幾分かは元気を取り戻しました」
「はははは、いいって事よ。困った時は助け合わないとな。そら、お前も食えよ。何だかお前が一番つらそうな顔をしているぞ。何だか歩き方も変だし、お前どこか怪我でもしているんじゃないだろうな」
「心配してくれてありがとう御座います。でも俺は大丈夫ですから……」
「そうか、ならいいんだが。ああ、そう言えば俺の名前をまだ名乗ってはいなかったな。俺の名前は『江田俊一』だ。職業は自然の山々を撮るフリーの山岳カメラマンをやっている。まあ短い間だが、よろしく頼むわ!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。では行き成りですが一分だけ俺に時間をくれないでしょうか。この事件を引き起こした殺人鬼があなた方三人の中に、もしかしたらいるかも知れないのであなた方の身分を提示する物と荷物をチェックしたいと思います」
「俺達を疑っているのか?」
「はい、そう言う事になります。大変失礼なのは重々承知してはいますが、これも皆さんに対する疑心暗鬼の払拭と身の回りの安全を考えての事なので、どうかご協力の程をよろしくお願いします」
「いいぜ、俺達の荷物を調べたいんなら調べろよ。まあ何も出ては来ないだろうがな」
「後、このゴンドラの中も軽く調べたいと思いますので、そこの所もご了承ください」
そう言うと勘太郎はみんながいるゴンドラの中を調べ始める。
(正直言ってこのゴンドラの中で隠れられそうな所はハッキリ言ってどこにもないようだ。それはこのゴンドラの中を一目見ただけでも充分に分かる事だぜ。そのゴンドラの中にあるのは、外が見えるように四方に作られた壁のような窓ガラスとそのゴンドラの回りを囲むように配置されているシンプルな長椅子だけだ。まあ、強いて隠れられそうな所があるとするならば……それは……)
そんな事を考えていた勘太郎の思考を読んだかのように登山サークルの部員達が皆一斉にゴンドラの床の中心を指さす。
「探偵さん、もしかしたらここにあの赤いワンピースを着た女が隠れているんじゃないのか。俺達と一緒にこのゴンドラに乗って来たのなら、あの白面の鬼女が隠れられそうな所はもうこのゴンドラの床の真ん中にあるこのハッチのような扉しかないぜ」
「ああ、実は俺もこの中央にあるハッチは気になっていたんだ。この床にある扉は一体何なんだ?」
「よく学校や大きな施設にある排水管を確認する為にあるハッチにも似ているが、ここはゴンドラの中だしな。一体なんのハッチなんだろうな。気になるぜ」
「な、なら開けて確かめて見ましょうよ。正方形にして縦横共に50センチのこんな所に人が入れるとは思えないけどね」
そう言うと大石学部長・斉藤健吾・田代さやか・飯島有の四人はその床のハッチに注目しながらゆっくりとハッチを開ける。
緊張しながら開けたハッチの中には緊急用の防災グッズと毛布に救急箱が納められていた。どうやらこのゴンドラに閉じ込められた時に使う緊急用の品々のようだ。
「そうか、この床のハッチには緊急用に毛布や救急箱が納められているのか。その他に人が入れるスペースはどこにもないようだな。縦横50センチで……深さは30センチの正方形の穴だ」
ぶつくさと独り言を言いながら勘太郎がそのハッチの中から毛布や救急箱や緊急用のリュックなどを一つづつ取り出していくとそのハッチの下から見える光景にハッとしながら驚く。なぜならそのハッチの中の底はガラス張りになっていてゴンドラの下に広がる光景がハッキリと見えるからだ。
「この床のハッチの下の底はガラス張りになっているぞ。おそらくはぶ厚い特殊なガラスか何かだろうが、なんでこんな所に防弾ガラスがあるんだよ。それも緊急用の荷物が置いてあるハッチの床底にだぜ?」
勘太郎がガラスから見える下を眺めていると、サングラスを掛け口髭を生やした江田俊一と名乗る男が勘太郎の前まで来る。
「あ、そう言えば前に山荘ホテルに来た時に誰かに聞いた事があるぜ。このロープウェイのゴンドラの中には下が見えるように作られたガラス張りの床があって、ここのホテルのオーナーが隠しイベントの目玉として作らせたらしいが、当時の客の一人がこの床のハッチの中に落ちて怪我をしてからは、主に荷物置き場として使っているとのことだぜ。まあ、ゴンドラの中は意外と揺れるからな」
「なるほど、その事件があってからはこの床のハッチは主に荷物置き場になっていると言う事ですか。まあ、この床のハッチ下の荷物を全て取り出したとしてもこの中に人は当然隠れることはできないし、ここでは無いと言う事か。なら白面の鬼女はこのゴンドラの中には隠れてはいないと言う事になるな」
ゴンドラの中に人が隠れられそうな所がない事を改めて知った勘太郎は両腕を組みながら必死に考える。
(だとするならば、俺達よりも早く上り下りするための何らかの移動方法が他にもあると言う事になるな。分からない……いくら考えても奴の移動方法が全く分からないぜ!)
「探偵さん……どうしたんだ。なんだか顔色が悪いみたいだが……」
「いえ、なんでもないです。そんな事よりです、申し訳ありませんがあなた達の腕や体を見せてくれませんか。どうやら俺達を襲ったその殺人鬼は物凄い腕力と握力を持っている用でしたから、俺が思うにその殺人鬼の体はかなりの細マッチョだと推察されます。そんな訳でここにいる三人の体を調べてもよろしいでしょうか」
「まあ、俺は別に構わないが、あのカップルの内の女性の方は一体どうするつもりなんだよ。まさかあの女性にここでストリップでもさせるつもりなのか」
その江田俊一のがさつな言葉に後ろの長椅子で話を聞いていたその厚化粧の女性が「嫌だあぁ、勘弁してよ!」と言いながら露骨に嫌な顔をする。
「あ、大丈夫です、そんな事はしませんよ。その女性の方を調べるのは俺達男性ではなく、ここにいる女性の飯島有さんに見て貰いますから」
「な、なんで私がそんな事をしないといけないのよ!」
「だってこのゴンドラに彼女以外の女性はあなたしかいませんから。これも犯人を……いいえ白面の鬼女を一早く見つけだす為には絶対に必要な事ですから、どうかよろしくお願いします」
「し、仕方が無いわね。わかったわよ、やってやるわよ。やればいいんでしょ!」
ぶつくさと文句を言いながら飯島有は、その茶髪の髪がよく似合う水商売風の女性の体を緊急用の毛布で隠しながら調べ始める。
「向こうの女性達も調べ始めましたから、江田俊一さんに……あなたは?」
「東京で医療器具を売る仕事をしている『宮鍋功』と言う者です。そして向こうの女性が、エアロビクスのジムで働くインストラクターの『島田リリコ』です」
「医療器具メーカーの販売員とエアロビクスのインストラクターですか。そして先ほど紹介のあった江田俊一さんはフリーの山岳カメラマンでしたよね。ではあなた方二人はここで上半身だけ服を脱いでその体を見せてください」
「ま、マジかよ、雪が降る夜のゴンドラの中はこんなに寒いのに!」
「まったくだぜ!」
「一・二秒ほど上半身の裸を見るだけじゃないですか。皆さんの疑いを晴らす為にもどうかよろしくお願いします」
「仕方がないな!」
そう言いながら粗暴そうな江田俊一とインテリ風の宮鍋功の二人は冬用のウエアやシャツを脱ぎながらその上半身を見せる。
想像していたように江田と宮鍋の体は意外と細マッチョで、あの白面の鬼女と同じ体のラインをしていた。
「体が細い割には意外と筋肉質ですね。何かスポーツか格闘技かでもやっているんですか。江田さん、どうですか?」
「俺は特に何かをしている訳では無いが職業がら山に登る事が多いからな、その山への移動の行き来で体を鍛えているよ。後は軽く毎日の運動だな。俺の仕事は体の健康が基本だからな」
「宮鍋さんは……」
「そうですね、私は趣味で空手の道場に通っているくらいでしょうか。ちなみに階級は空手二段です」
「そうですか、だから二人とも体のラインが細い割には筋肉質なんですね。ではそちらの女性の方はどうでしょうか。飯島有さん、どうですか?」
その勘太郎の呼びかけに飯島有が答える。
「こ、この人凄いわ。体がこんなに細いのに物凄い細マッチョよ。エアロビクスのインストラクターらしいけど、絶対に他にも何かしているわよ。そうでしょ!」
「ええ、趣味でボディビルダーをやっているわ。運動をして筋肉をつけて、美しい体を作るのが好きだからね」
「好きだからねって……あの白面の鬼女も見た目は女性だからあなたが一番その白面の鬼女に近い存在って事になるわ。その細い体のラインや、その筋肉質な体を見たら、あの馬鹿怪力な白面の鬼女に一番告示している事になるからね。あなたが……あなたが一番怪しいわ!」
そう言いながら恐々離れる飯島有の態度に島田リリコが怒りながら答える。
「私がその殺人鬼な訳がないじゃない。たまたまその殺人鬼と同じ体のラインをしているだけでその犯人だと思われたくはないわね。正直それだけで私を疑うだなんて迷惑この上ないわ。もう少しちゃんとした証拠や根拠があるのならそれらを並べてから疑ってくださいよ。ほんと失礼しちゃうわ!」
「いいえ、あなたよ。そんな凄い細マッチョな体を見せつけられたら、あの白面の鬼女の物凄い腕力による怪力も説明が付くと言う物じゃ無い。彼女よ、彼女が白面の鬼女で間違いないわ!」
「いい加減にしなさいよ、あなた。大体その白面の鬼女という殺人鬼が本当に女性かどうかは分からないという話じゃない。だったらその正体は男性と言う事も考えられるわ。そう言うことでしょ!」
「そ、そうだけど……」と言いながら飯島有を始めとした大石学部長・斉藤健吾・田代まさやの四人が、細いながらも筋肉質な体を持つ江田俊一と宮鍋功の二人にその疑心暗鬼な視線を向ける。
「わ、私は断じて違うぞ。このゴンドラには島田リリコと二人で一早く乗ったしな。なあ、リリコ、そうだろ!」
「そうよ、私達はその殺人鬼じゃないわ。宮鍋さんと一緒にこのゴンドラにいたんだから人を殺せる時間なんてある訳がないじゃない!」
「なら当然俺もその犯人ではないな。俺はこの二人の男女の後にこのゴンドラに乗ったんだが、それまでは外で暗視カメラを使って森の木々の写真を撮っていたからな。その写真にはちゃんと日付や時間が書いてあるから俺のアリバイを証明する上での十分な証拠になると思うぜ!」
その江田俊一の主張を聞きながら勘太郎は思う。
この三人は考えようによっては皆疑わしいが、そもそも麓に降りる際は俺達にその姿を見せること無く下に降りているはずだから、その謎の移動方法でまた山の山頂の上へと移動している物とも考えられる。そう考えるのならあの白面の鬼女がわざわざこの三人の中の一人の客になりすまして上へと登る意味などどこにもないのだ。
(この中に白面の鬼女がいるのか……それとももう既に何か別の方法で上へと戻っているのか……それが分からない。くそぉぉー、くそぉぉー、一体どっちなんだ。全く分からないぜ!)
勘太郎は更に増えた三人の謎の来客と登山サークルの四人の部員達を交互に見つめながら、白面の鬼女の謎に頭を悩ますのだった。
「探偵さん、詳しい事は逃げてきた大学生の彼らから事情は聞きました。どうやら行き成り現れた殺人鬼の足止めをしていたようですが、中々戻られないのでかなり心配しましたよ。もう少し来るのが遅かったらここにいる男達を集めて探偵さんを探しに行く所だったんですが、でも無事に戻られてよかったです!」
時刻は二十一時三十分。
白面の鬼女との一方的な戦いにより嫌と言うほど痛めつけられた勘太郎は、なぜか無償で治療をしてくれた狂人・闇喰い狐の助けもあり、どうにか自分の足でロープウェイ乗り場のある待合所へとたどり着く。その入り口で待っていたのは、雪が降る中、懐中電灯を片手に持ちながら大声で叫ぶ、ロープウェイ乗り場の操作室にいた係員のおじさんの姿だった。
土砂崩れの現場を見に行ったまま中々戻らない勘太郎のことを余程心配したのかその係員のおじさんは勘太郎が戻ってきた事に安堵の顔を見せるが、同時に正体不明の殺人鬼の襲撃により町に続く道路が寸断された事で不安と驚きの表情を覗かせる。
勘太郎は本気で心配してくれる係員のおじさんに自分は大丈夫だと明るくアピールすると、登山サークルの部員達・五人の他にこの待合所を訪れた人はいないかを確認する。
すると係員のおじさんは、先に待合所に到着していた三人のお客以外にこの場には誰も来てはいない事を告げると外を警戒しながら玄関の扉をゆっくりと閉める。
(ああ、そう言えば、管理人の小林さんが途中で来るとか言っていた三人のお客さんの事だな。土砂崩れで道が寸断される前に既に来ていたのか)
そんな事を考えながら勘太郎は三人の来訪者の存在に複雑な思いと不安を感じていたが、今はそんな事を考えていても仕方がないと思ったのかお互いの無事を確認し合いながら係員のおじさんと共に待合所の中へと入る。
建屋の中に入ると一番奥の長椅子がある付近で缶コーヒーを持ちながら雑談をしている登山サークルの部員達を発見する。
そんな彼らを溜息交じりに見つめていた勘太郎は、へらへらと笑いながら休憩をしている大石学部長・飯島有・斉藤健吾・田代まさやの四人の登山サークルの部員達の前にその姿を現す。
「登山サークルの皆さん、どうやらみんな無事にこの待合所にたどり着いたようですね。本当によかったです。でも俺だけを一人残して逃げ出すなんて酷いじゃないですか!」
あの探偵はおそらくもう死んでいると思われていたのか圧倒的な力を持つ白面の鬼女からの奇跡的な生還に登山サークルの部員達は正直かなりびっくりしている様子だったが、すぐにことの状況を理解した大石学部長は、申し訳なさそうな素振りを見せながら頭を深々と下げ平謝りをする。
「大変申し訳ありませんでした探偵さん。ついあの白面の鬼女の恐怖に死への恐れと畏怖を抱いてしまって、つい魔が差して逃げてしまいました」
その大石学部長の平謝りを間近で見ていた飯島有がすかさず口を出す。
「仕方がないわよ、あの恐ろしい姿をした白面の鬼女を前にしたら誰だって逃げ出すわよ。大石学部長は……いいえ私達は何も悪くはないわ。そうでしょ、探偵さん」
(それをお前が言うな! 絶対その台詞、大石学部長達と打ち合わせをしていただろう)と思いながら勘太郎は、大いに叫びたい心をグッと押さえながらも大人としての対応を取る。
「まあ……何はともあれ、皆さん無事で何よりです。あの赤いワンピースを着た白髪頭の女性……白面の鬼女は『この私が……』何とか苦心の末に撃退しましたが、その犯人がこちらの方へ逃げ去るのをこの目で目撃しました。もしかしたら何処か近くに隠れていて、皆さんを再び襲撃する機会を密かに伺っているのかも知れません。なのでみなさんここは今すぐに上の山頂にある山荘ホテルに避難をして下さい。天気予報ではもうすぐここは吹雪と嵐で二~三日は止まないとか言っていましたから、食料や燃料や温泉がある山頂のホテルの中の方がまだ安全です!」
その勘太郎の言葉に、怒りに満ちた顔を向けながら飯島有はヒステリックに金切り声を上げる。
「ふざけんじゃないわよ。せっかくあの殺人鬼のいる山から下って来たのに、何でまたあの山頂に戻らないと行けないのよ。嫌よ、嫌よ絶対に、冗談じゃないわ!」
強固なまでに完全否定する飯島有に勘太郎は何故頂上に戻らなくてはならないのかを根気強く説明する。
雪を含んだ土砂崩れで道が寸断し街に戻れる目処が全く経っていない事と、この辺りはもう直ぐ猛吹雪となり後二~三日は雪がやまないと言う事。そしてその吹雪がやむまで肝心の救助隊は来ないという事を皆に説明する。
だがそんな事よりも勘太郎が一番危惧しているのは、一体どうやってかは知らないがあの白面の鬼女が山荘ホテルがある山頂にも、麓にあるロープウェイ乗り場の周辺にも瞬時に瞬間移動で自由にその姿を現すことが出来ると言う事実だ。
その事を踏まえても、下のロープウェイ乗り場で二~三日寒さに震えながらひもじく待つよりも上の山荘ホテルに避難した方が衣・食・住に置いてもよっぽど安心安全であり、白面の鬼女の来襲にもまだどうにか対抗ができると言う事を皆に事細かく伝える。
そんな勘太郎の必死な説得に共感したのかは知らないが話を黙って聞いていた斉藤健吾と田代まさやの二人が、勘太郎に変わり山荘ホテルがある山頂に戻る事を必至に提案する。
「飯島、あの探偵の言っている事は一理あるぜ。町に続く道が寸断された以上ここは大人しく上に戻った方がいいぜ。それにここはもうじき猛吹雪になるらしいしな」
「斉藤先輩の言うとおりですよ。ここは探偵さんの指示に従いましょう。それにあの赤いワンピースを着た白髪頭の女性は上だけでは無くなぜか下にも現れたんですから、もうどっちにいても同じでしょ。ならここは食料も寝る部屋もある山荘ホテルに戻った方が無難ですよ。この掘っ立て小屋のような待合所で二~三日過ごすのは流石に無理がありますからね!」
「も、もう分かったわよ、上のホテルに避難をすればいいんでしょ。下にいても、上に戻ってもあの白面の鬼女が絶えず近くにいるのは何だか気がかりだけど、これじゃどこにいても同じだから上の山荘ホテルの中で助けが来るのを大人しく待つ事にするわ!」
ついに山頂に戻る事を承諾した飯島有の言葉に安堵した勘太郎は、何だか一人……人数が足りない事に気づく。
「ん、陣内さんは……陣内朋樹さんはどこにいるんですか?」
「ああ、あいつならさっき係員のおじさんから救急箱を借りて男子トイレの方へ駆け込んで行ったぜ。トイレで腕の傷の手当をするとか言ってな」
「ええ、確かにその救急箱は私がその陣内さんにお貸ししましたよ。どうやら彼は腕を何かで切られて血を流していましたからね。一応その傷の手当てを手伝おうと彼に提案したのですが、自分一人でやるとか言って男子用トイレの方に向かいました。でもあれから少し時間が経っているので心配ですね。ちょっと様子を見てきましょうか」
「な、なんだって!」
その話を聞いた勘太郎は、すかさずトイレの方へと向かう。
*
待合室から少し離れた男子トイレまで来た勘太郎は大便を用いる個室トイレの扉が全部で三つ程あるのを確認すると、その一つの個室のトイレだけが今も使用中なのに気付き、その個室のトイレのドアに向けて大きな声で陣内朋樹に呼び掛ける。
「陣内さん、陣内朋樹さん、いますか。いたら返事をして下さい!」
ドン・ドン・ドンとドアを叩きながら必死に呼びかけて見たが、内側から鍵をかけているはずの陣内朋樹からは一向に返事が無い。
「陣内さん、腕に受けた傷の具合は大丈夫ですか。陣内さん、陣内さん!」
今度は激しくドアを叩くも、まるで反応が無い事に正直嫌な予感がする。
「ん?」
そう感じた勘太郎だったが、ドアを勢いよく叩き過ぎたせいで施錠が外れたのかは知らないが音を軋ませながら勝手に木製のドアが開き、ゆっくりとした動きでドアが開閉されていく。
ギギ……ギイイイィィィィィィィィィーっ!
「じ、陣内さん……」
トイレの個室のドアが開いたその中には、便器に頭を突っ込む用な形で両膝を突き、動かなくなっている陣内朋樹の酷たらしい姿があった。
その陣内朋樹の首には鋭利な刃物か何かで切られた用な切り口があり、その傷口からは大量の血が便器の中へと流れ落ちていた。
首筋から流れ落ちるその血の量からして、恐らくは頸動脈をバッサリとその凶器で切られているのだろう。
勘太郎は無言で陣内朋樹のそばに行き本人の死亡を確認すると、携帯電話を手に持ちながらその現場の写真を何枚か撮る。
勿論事件現場の保全と、この酷たらしい惨状をいち早く赤城文子刑事に知らせる為だ。
文章と現場の写真を何枚か送り、直ぐさま黒い革製の手袋を両手にはめた勘太郎は、緊張しながらもそれなりに場数を踏んでいるのか順序よく現場の状況を確認する。
「こ、これはひどいな」
いつになるかは分からないが鑑識が来るまで陣内朋樹の死体やトイレの中をこのままの状態にしたかったので無闇に触ったり動かしたりは出来ないが、目視だけで辺りを調べて見る。
「ん~辺りを見る限り特に犯人が残して行った物は何もないな。指紋も恐らくは出ないだろう。あの白面の鬼女はハンドカバーのようなナイロン繊維製の手袋をはめていたからな」
周りが夜のためか静かで薄暗く不気味さが漂うようなそんな年期の入ったトイレだが、勘太郎はそんなトイレを見ながら陣内朋樹が殺された仮説を立てて見る。
「恐らくは、トイレの中で腕の傷の手当をしていた陣内朋樹はトイレから出ようとした所を隣のトイレで待ち伏せをしていた白面の鬼女の奇襲に合い、声を上げて逃げる間もなく首を鎌で切られて殺害された……まあ、そんな所だろうな。白面の鬼女の奴、案外手際良く人を殺害しているな。彼女にとって今回のこの殺しは当然初めてではないんだろうな」
そんな冷静な判断をしていると、行き成り男子トイレの入り口から現れた、大石学部長・飯島有・斉藤健吾・田代まさやの四人が凄惨極まるトイレにその姿を見せる。
どうやら陣内朋樹の安否を確認しに行った勘太郎が余りにも遅すぎる為に他の登山サークルの部員達が改めて様子を見に来た用だ。
その四人が陣内朋樹の変わり果てた姿を目の当たりにし、驚きと恐怖でその場へと崩れ落ちる。
「きゃああああーああぁぁーっ!」とある者は絶叫し、またある者は「陣内、陣内、陣内ーィィッ」と呟きながら信じられないとばかりにその場へとへたり込む。
「皆さん見てはいけません。残念ですが俺が駆け付けた時にはもう既に陣内朋樹さんは亡くなっていました。彼の遺体は現場の証拠保全の為、警察が到着するまでこのままにしておきます」
「そんな、それじゃ陣内があまりに可哀想過ぎるぜ!」
そう言ったのは陣内朋樹と最も仲が良かった田代まさやである。それ以外の人達は何やら様子が違っていた。
「陣内を殺したのは……陣内朋樹を殺したのは鬼女よ、きっとそうよ。あの赤いワンピースを着た……白面の鬼女がまだ近くにいるはずよ。奴が再び現れる前に早くロープウェイで上へと逃げないと! もう既に死んでしまった陣内の事なんてどうだっていいわ。それにこの冬の寒さじゃ死体の腐敗もかなり押さえられるだろうし、別にそのままにしておいても差し支えは無いんじゃないかしら。だから早くこの場から逃げましょう!」
「そうだな、俺もどう意見だぜ。もう死んでしまった奴の事なんて正直どうでもいいぜ。今肝心なのは、あの白面の鬼女が一体どこにいるのかだ。あいつが今は下にいるのなら早くロープウェイで上へと避難しようぜ。俺も陣内の間抜けのように殺されるのだけはまっぴらごめんだからな。それに俺は四月の春からは大企業に就職する事が既に決まっているんだ。それなのにこんな災難に合うとは思ってもみなかったぜ。そうさ俺はこんな所でむざむざと殺されていい人間ではないんだ。そうだ、こんな意味の分からない殺人鬼に追い込まれて、むざむざと殺されて溜まるか。俺は絶対に……絶対に……生き延びてやるぜ!」
まるで陣内朋樹の死を他人ごとのように言う飯島有と斉藤健吾は、おのが命を守る為に保身へと走る事に決めた用だ。
そんな彼らをかき分けながら大石学部長は愕然としながら泣き続ける田代まさやを見ると、力無く肩を落とす田代まさやの肩に手をやりながら「ほら、探偵さんもああ言っていることだし、とにかく今は探偵さんの指示に従おうじゃないか」と優しくいい、思いやる素振りを見せる。そんな登山サークルの部員達の各々の反応を見ながら勘太郎は白面の鬼女に襲われている彼らにその理由を聞いてみる。
「皆さん、俺が見る限り、あの赤いワンピースを着た白髪の女性……白面の鬼女は、どうやらあなた達を狙っているようです。それについて何か心当たりはありませんか。それは絶対にこの山に関わる何かのはずです。この疑問と謎を解かない限り、あの白面の鬼女の殺人はまだまだ止まりませんよ」
登山サークルの部員達の前に殺人鬼として現れた白面の鬼女と今も行方不明になっている妹の如月妖子を結び付ける遠回しな質問に、大石学部長・飯島有・斉藤健吾・田代まさやの四人はその質問の重さにしばらく沈黙していたが、リーダー格でもある大石学部長が皆の意見を代表するかの用に堂々と口を開く。
「いいえ、何も知りませんよ。俺達には見当もつきませんね」
笑顔で言う大石学部長ではあったが、その後ろで話を聞いていた三人の顔色は明らかに引きつっている……そのように勘太郎には見えた。
「そうですか……ええ、ここにいても拉致があきませんので、取りあえずは山頂のホテルへ戻りましょう。一応警察に連絡をして助けを呼ぶ事は出来たので、雪がやんだら救助ヘリで山頂に救助に来てくれると思いますので、それまで上の山荘ホテルで大人しくしていましょう! それに陣内朋樹さんは白面の鬼女の手によって不幸にも亡くなってしまいましたが、彼の死体の保全の事は麓のロープウェイ乗り場にいる係員のおじさんに全てを頼む事とします。それでよろしいでしょうか」
そう言うと勘太郎は最後に男子用トイレに現れた係員のおじさんに陣内朋樹がもう既に死亡していた事を話すと、その事に大変驚いた係員のおじさんは直ぐに仕事人の顔に戻り冷静になる。
「大体の事情は分かりました、ここに残って男子用トイレにある陣内朋樹さんの死体の保全をしたらいいんですね。任せて下さい。警察が到着するまでこのトイレは立ち入り禁止にします!」
「申し訳ありません……」
「いえ、いいんですよ。これも仕事ですから。それと深夜にこの辺りは猛吹雪になるという話なので、あなた達は今すぐにでも山頂にある山荘ホテルに避難をして下さい。今から最後の便でもあるロープウェイのゴンドラを出しますのでそれに乗って行って下さい。本当は二十一時丁度に最後の便が出発する予定だったのですが、色々と想定外のことがありましたからね。探偵さんが無事に戻られてから最後の便を出発させる事にしていたのですよ。なにせ何者かによる土砂崩れによる妨害で街に続く道路は完全に塞がれてしまいましたからね。なのでここにいても当然皆さんと共に数日間、食い繋げる程の食料はありませんし、長時間暖まれるだけの暖も取れません。でも山頂にある山荘ホテルならその心配はありませんからね。そこで救助が来るのを大人しく待っていて下さい。その方が明らかに安心ですし、安全です。これ以上お客様の身に何かがあってはいけませんからね!」
「でもあなたはどうするんですか。あなたは一緒に行かないの?」
一応は心配しているのか不思議そうに言う飯島有に係員のおじさんはにっと笑顔を見せながら言う。
「このロープウェイ乗り場の機械はここからじゃ無いと動かすことが出来ないんですよ。だから私が残るのです」
「オートモードとかで自動操縦はできないの。あなただけ下に残るだなんて流石に自殺行為だわ。あの殺人鬼がまだこの辺りに潜んでいるかも知れないのに」
「確かにロープウェイの運転を自動操縦にする事も出来ますが、その殺人鬼に運転室の機械を壊されでもしたら山を上っている最中にそのゴンドラが途中で止まってしまうかも知れませんからね。なのでそうなることだけはどうしても避けないといけません。土砂崩れで町へ行く手段が閉ざされた今、ここにいるお客様を安全且つスムーズに上へとお届けするのが私の仕事ですからね」
「係員のおじさん……」
「な~に心配は入りませんよ。私一人分の食料ならここに居ても二~三日はどうにか持ちますし。 そして、そのあなた方が言っていた殺人鬼が現れたら、この金属バットで叩いて追っ払ってやりますよ!」
力強くそう言うと係員のおじさんは傍に置いてある金属バットを持ち上げながら軽くスイングをする真似をする。どうやら係員のおじさんなりにお客さんに心配を掛けさせないようにと気を使っているようだ。
係員のおじさんは持っているバットを力強くフルスイングすると勘太郎達に大丈夫だとアピールする。
そんな係員のおじさんの涙ぐましい行動を見ながら勘太郎は考える。
勘太郎の考えでは、おそらく白面の鬼女は登山サークルの部員達を追ってここまで来ているはずだから、逆に上にあがったら係員のおじさんの身の安全は大丈夫だと考えている。
おそらく登山サークルの部員達が山頂にもどったら白面の鬼女ももれなく付いて来ると想像されるので、むしろこれからの勘太郎達の方が心配である。その白面の鬼女が一体どんな方法で山の山頂と麓を行き来しているかは正直分からないが、ここまで用意周到な犯人なら必ずまたその姿を現す事だろう。そんな気がする。
勘太郎がそんな事を考えていると、係員のおじさんが「あ、」と言いながら何かを思い出したようにゴンドラの方を見る。
「そう言えば、このゴンドラの最終便にはあなた達の他に三人のお客様が上のホテルに上がりますので、後のことはどうかよろしくお願いします。その三人のお客様はもう既にゴンドラの中でお待ちしていると思いますので、あなた方も急いで下さい。十分後に出発します」
他の三人の来客がいるという説明に大石学部長が驚きながら答える。
「さ、三人のお客様だって、道はさっきの土砂崩れで完全に全てふさがっていたはずだが?」
「いえいえ、その三人のお客様はあの土砂崩れが起こる前に既にロープウェイ乗り場の待合室や土産物店にいましたので、ここに着てから閉じ込められた形になります」
「そ、そうだったのか……俺達はその三人とは全くすれ違わなかったから、ここには来てはいないと勝手に思い込んでいたが、もう既にみんなゴンドラに乗って待機をしていたのか」
その係員のおじさんと大石学部長の話を聞きながら勘太郎は考える。
(もしも白面の鬼女が陣内朋樹を殺害後に、その三人の誰かになりすましてロープウェイのゴンドラに乗っているのだとしたら、俺達に紛れて一緒に上にあがれるという事になる。だがそれはさすがに考え過ぎだろうか。それとも、俺達がまだ知らない、山を上り下り出来る何らかの方法を持っているのだろうか。とにかくその三人のお客様とやらの顔を拝見しなくては判断がしがたい)
そう考えた勘太郎は、もう既にゴンドラの中で待機をしているという三人の客達の元へと急ぐ。
*
雪がポツポツと降り積もる外へと出て走り、体の痛みと冷たい風に耐えながら夜の闇を照らすロープウェイ乗り場の剥き出しの鉄の階段をどうにか登り切った勘太郎は、緊張しながら大きな窓枠が見えるゴンドラの中へと足を踏み入れる。
「す、すいません、遅くなりました」
続いて大石学部長・飯島有・斉藤健吾・田代まさやらの四人が、後から駆け込んで来る。
「早く、早く上にあげて、早くしてよ!」
「おいまだかよ、このロープウェイおせーぞ!」
周りの迷惑など帰りみずに騒ぎ出す飯島有と斉藤健吾の身勝手な行動に、ゴンドラの中はやたらと騒がしくなる。
そんな中、長椅子に腰を掛ける注目の三人は確かに勘太郎の目の前にいた。
一人目は、黒いサングラスに口の回りに立派な口髭を生やした細身の男性で、頭にはスキー帽をかぶり、手には一眼レフカメラを持っている。
そのワイルドな見た目からして、小汚い中年のカメラマンを連想させる。
年齢は三十代前半と言った感じだ。
二人目と三人目は、どうやら男女のカップルらしく、男性の方は眼鏡をかけたサラリーマン風の真面目なインテリを連想させ、女性の方は茶色く染めた長い髪と厚化粧が印象的な水商売系の匂いを漂わせる。
こちらの二人も体つきは意外と細身で、見た目から推測した年齢は二~三十歳前後だと思われる。そんな二人は青と赤の色違いのスキーウエアを仲良く着込んでいて、見るからに仲むづまじいのだが、ゴンドラに入って来るなり騒ぎ出した登山サークルの部員達に一体何事かといった感じで怪訝な目を向ける。
そんな二人のバカップルの意見を代表するかのように、状況を見ていた口髭を生やしたグラサンの男が、金切り声を上げながら騒いでいる大学四年の飯島有を睨みつけながら声を張り上げる。
「あんたら、いい加減に静かにせんか。ここの客はお前らだけじゃ無いんだぞ! このゴンドラに備え付けられてあるスピーカーからのアナウンスで聞いた係員のおじさんの話だと外にある男子用の公衆トイレで何やら殺人事件が起きたようだが、こんな時こそ冷静に状況を把握して的確に行動をせんといかんだろ。ここで騒いだって状況が改善される訳じゃないんだからな!」
その口髭を生やしたグラサン男の剣幕と指摘に、さすがの飯島有も仕方なくただ謝るしか無いようだ。
「す……すいませんでした」
その飯島有の態度に釣られるように、大石学部長・斉藤健吾・田代まさやの三人が慌てて謝り出す。
どうやらその男のワイルドな見た目から怖い人だと認識したようだ。だが四人が直ぐに謝った事で気をよくしたその男はニッと行き成り笑顔を向けながら軽快に喋り出す。
「うむ、人は常に素直な心と平常心を持っていないといかんぞ。感情のままに騒ぐのは冷静さと糖分が足りないからだ。このチョコレートをお前達にあげよう、みんなで仲良く分けて食べなさい!」
そう言うと口髭を生やしたその男はチョコレートの入った袋を開けると小分けになっている包み紙にくるまれたチョコレートを登山サークルの部員達に手渡す。
その差し出されたチョコレートに四人はまるで競い合うように群がると我先にとそのチョコレートを口に入れる。その貪欲な光景から察するに登山サークルの部員達四人は度重なる緊張と恐怖と疲労が相まってかなり糖分とカロリーに飢えていたようだ。
そんな登山サークルの部員達の姿を見ながら勘太郎は、その口髭を生やした男にお辞儀をしながらお礼の言葉を述べる。
「貴重なチョコレートをありがとう御座います。みんないろいろあって肉体と精神共にかなり疲弊していましたから、正直チョコレートの差し入れは助かります。そのチョコレートのお陰でみんな幾分かは元気を取り戻しました」
「はははは、いいって事よ。困った時は助け合わないとな。そら、お前も食えよ。何だかお前が一番つらそうな顔をしているぞ。何だか歩き方も変だし、お前どこか怪我でもしているんじゃないだろうな」
「心配してくれてありがとう御座います。でも俺は大丈夫ですから……」
「そうか、ならいいんだが。ああ、そう言えば俺の名前をまだ名乗ってはいなかったな。俺の名前は『江田俊一』だ。職業は自然の山々を撮るフリーの山岳カメラマンをやっている。まあ短い間だが、よろしく頼むわ!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。では行き成りですが一分だけ俺に時間をくれないでしょうか。この事件を引き起こした殺人鬼があなた方三人の中に、もしかしたらいるかも知れないのであなた方の身分を提示する物と荷物をチェックしたいと思います」
「俺達を疑っているのか?」
「はい、そう言う事になります。大変失礼なのは重々承知してはいますが、これも皆さんに対する疑心暗鬼の払拭と身の回りの安全を考えての事なので、どうかご協力の程をよろしくお願いします」
「いいぜ、俺達の荷物を調べたいんなら調べろよ。まあ何も出ては来ないだろうがな」
「後、このゴンドラの中も軽く調べたいと思いますので、そこの所もご了承ください」
そう言うと勘太郎はみんながいるゴンドラの中を調べ始める。
(正直言ってこのゴンドラの中で隠れられそうな所はハッキリ言ってどこにもないようだ。それはこのゴンドラの中を一目見ただけでも充分に分かる事だぜ。そのゴンドラの中にあるのは、外が見えるように四方に作られた壁のような窓ガラスとそのゴンドラの回りを囲むように配置されているシンプルな長椅子だけだ。まあ、強いて隠れられそうな所があるとするならば……それは……)
そんな事を考えていた勘太郎の思考を読んだかのように登山サークルの部員達が皆一斉にゴンドラの床の中心を指さす。
「探偵さん、もしかしたらここにあの赤いワンピースを着た女が隠れているんじゃないのか。俺達と一緒にこのゴンドラに乗って来たのなら、あの白面の鬼女が隠れられそうな所はもうこのゴンドラの床の真ん中にあるこのハッチのような扉しかないぜ」
「ああ、実は俺もこの中央にあるハッチは気になっていたんだ。この床にある扉は一体何なんだ?」
「よく学校や大きな施設にある排水管を確認する為にあるハッチにも似ているが、ここはゴンドラの中だしな。一体なんのハッチなんだろうな。気になるぜ」
「な、なら開けて確かめて見ましょうよ。正方形にして縦横共に50センチのこんな所に人が入れるとは思えないけどね」
そう言うと大石学部長・斉藤健吾・田代さやか・飯島有の四人はその床のハッチに注目しながらゆっくりとハッチを開ける。
緊張しながら開けたハッチの中には緊急用の防災グッズと毛布に救急箱が納められていた。どうやらこのゴンドラに閉じ込められた時に使う緊急用の品々のようだ。
「そうか、この床のハッチには緊急用に毛布や救急箱が納められているのか。その他に人が入れるスペースはどこにもないようだな。縦横50センチで……深さは30センチの正方形の穴だ」
ぶつくさと独り言を言いながら勘太郎がそのハッチの中から毛布や救急箱や緊急用のリュックなどを一つづつ取り出していくとそのハッチの下から見える光景にハッとしながら驚く。なぜならそのハッチの中の底はガラス張りになっていてゴンドラの下に広がる光景がハッキリと見えるからだ。
「この床のハッチの下の底はガラス張りになっているぞ。おそらくはぶ厚い特殊なガラスか何かだろうが、なんでこんな所に防弾ガラスがあるんだよ。それも緊急用の荷物が置いてあるハッチの床底にだぜ?」
勘太郎がガラスから見える下を眺めていると、サングラスを掛け口髭を生やした江田俊一と名乗る男が勘太郎の前まで来る。
「あ、そう言えば前に山荘ホテルに来た時に誰かに聞いた事があるぜ。このロープウェイのゴンドラの中には下が見えるように作られたガラス張りの床があって、ここのホテルのオーナーが隠しイベントの目玉として作らせたらしいが、当時の客の一人がこの床のハッチの中に落ちて怪我をしてからは、主に荷物置き場として使っているとのことだぜ。まあ、ゴンドラの中は意外と揺れるからな」
「なるほど、その事件があってからはこの床のハッチは主に荷物置き場になっていると言う事ですか。まあ、この床のハッチ下の荷物を全て取り出したとしてもこの中に人は当然隠れることはできないし、ここでは無いと言う事か。なら白面の鬼女はこのゴンドラの中には隠れてはいないと言う事になるな」
ゴンドラの中に人が隠れられそうな所がない事を改めて知った勘太郎は両腕を組みながら必死に考える。
(だとするならば、俺達よりも早く上り下りするための何らかの移動方法が他にもあると言う事になるな。分からない……いくら考えても奴の移動方法が全く分からないぜ!)
「探偵さん……どうしたんだ。なんだか顔色が悪いみたいだが……」
「いえ、なんでもないです。そんな事よりです、申し訳ありませんがあなた達の腕や体を見せてくれませんか。どうやら俺達を襲ったその殺人鬼は物凄い腕力と握力を持っている用でしたから、俺が思うにその殺人鬼の体はかなりの細マッチョだと推察されます。そんな訳でここにいる三人の体を調べてもよろしいでしょうか」
「まあ、俺は別に構わないが、あのカップルの内の女性の方は一体どうするつもりなんだよ。まさかあの女性にここでストリップでもさせるつもりなのか」
その江田俊一のがさつな言葉に後ろの長椅子で話を聞いていたその厚化粧の女性が「嫌だあぁ、勘弁してよ!」と言いながら露骨に嫌な顔をする。
「あ、大丈夫です、そんな事はしませんよ。その女性の方を調べるのは俺達男性ではなく、ここにいる女性の飯島有さんに見て貰いますから」
「な、なんで私がそんな事をしないといけないのよ!」
「だってこのゴンドラに彼女以外の女性はあなたしかいませんから。これも犯人を……いいえ白面の鬼女を一早く見つけだす為には絶対に必要な事ですから、どうかよろしくお願いします」
「し、仕方が無いわね。わかったわよ、やってやるわよ。やればいいんでしょ!」
ぶつくさと文句を言いながら飯島有は、その茶髪の髪がよく似合う水商売風の女性の体を緊急用の毛布で隠しながら調べ始める。
「向こうの女性達も調べ始めましたから、江田俊一さんに……あなたは?」
「東京で医療器具を売る仕事をしている『宮鍋功』と言う者です。そして向こうの女性が、エアロビクスのジムで働くインストラクターの『島田リリコ』です」
「医療器具メーカーの販売員とエアロビクスのインストラクターですか。そして先ほど紹介のあった江田俊一さんはフリーの山岳カメラマンでしたよね。ではあなた方二人はここで上半身だけ服を脱いでその体を見せてください」
「ま、マジかよ、雪が降る夜のゴンドラの中はこんなに寒いのに!」
「まったくだぜ!」
「一・二秒ほど上半身の裸を見るだけじゃないですか。皆さんの疑いを晴らす為にもどうかよろしくお願いします」
「仕方がないな!」
そう言いながら粗暴そうな江田俊一とインテリ風の宮鍋功の二人は冬用のウエアやシャツを脱ぎながらその上半身を見せる。
想像していたように江田と宮鍋の体は意外と細マッチョで、あの白面の鬼女と同じ体のラインをしていた。
「体が細い割には意外と筋肉質ですね。何かスポーツか格闘技かでもやっているんですか。江田さん、どうですか?」
「俺は特に何かをしている訳では無いが職業がら山に登る事が多いからな、その山への移動の行き来で体を鍛えているよ。後は軽く毎日の運動だな。俺の仕事は体の健康が基本だからな」
「宮鍋さんは……」
「そうですね、私は趣味で空手の道場に通っているくらいでしょうか。ちなみに階級は空手二段です」
「そうですか、だから二人とも体のラインが細い割には筋肉質なんですね。ではそちらの女性の方はどうでしょうか。飯島有さん、どうですか?」
その勘太郎の呼びかけに飯島有が答える。
「こ、この人凄いわ。体がこんなに細いのに物凄い細マッチョよ。エアロビクスのインストラクターらしいけど、絶対に他にも何かしているわよ。そうでしょ!」
「ええ、趣味でボディビルダーをやっているわ。運動をして筋肉をつけて、美しい体を作るのが好きだからね」
「好きだからねって……あの白面の鬼女も見た目は女性だからあなたが一番その白面の鬼女に近い存在って事になるわ。その細い体のラインや、その筋肉質な体を見たら、あの馬鹿怪力な白面の鬼女に一番告示している事になるからね。あなたが……あなたが一番怪しいわ!」
そう言いながら恐々離れる飯島有の態度に島田リリコが怒りながら答える。
「私がその殺人鬼な訳がないじゃない。たまたまその殺人鬼と同じ体のラインをしているだけでその犯人だと思われたくはないわね。正直それだけで私を疑うだなんて迷惑この上ないわ。もう少しちゃんとした証拠や根拠があるのならそれらを並べてから疑ってくださいよ。ほんと失礼しちゃうわ!」
「いいえ、あなたよ。そんな凄い細マッチョな体を見せつけられたら、あの白面の鬼女の物凄い腕力による怪力も説明が付くと言う物じゃ無い。彼女よ、彼女が白面の鬼女で間違いないわ!」
「いい加減にしなさいよ、あなた。大体その白面の鬼女という殺人鬼が本当に女性かどうかは分からないという話じゃない。だったらその正体は男性と言う事も考えられるわ。そう言うことでしょ!」
「そ、そうだけど……」と言いながら飯島有を始めとした大石学部長・斉藤健吾・田代まさやの四人が、細いながらも筋肉質な体を持つ江田俊一と宮鍋功の二人にその疑心暗鬼な視線を向ける。
「わ、私は断じて違うぞ。このゴンドラには島田リリコと二人で一早く乗ったしな。なあ、リリコ、そうだろ!」
「そうよ、私達はその殺人鬼じゃないわ。宮鍋さんと一緒にこのゴンドラにいたんだから人を殺せる時間なんてある訳がないじゃない!」
「なら当然俺もその犯人ではないな。俺はこの二人の男女の後にこのゴンドラに乗ったんだが、それまでは外で暗視カメラを使って森の木々の写真を撮っていたからな。その写真にはちゃんと日付や時間が書いてあるから俺のアリバイを証明する上での十分な証拠になると思うぜ!」
その江田俊一の主張を聞きながら勘太郎は思う。
この三人は考えようによっては皆疑わしいが、そもそも麓に降りる際は俺達にその姿を見せること無く下に降りているはずだから、その謎の移動方法でまた山の山頂の上へと移動している物とも考えられる。そう考えるのならあの白面の鬼女がわざわざこの三人の中の一人の客になりすまして上へと登る意味などどこにもないのだ。
(この中に白面の鬼女がいるのか……それとももう既に何か別の方法で上へと戻っているのか……それが分からない。くそぉぉー、くそぉぉー、一体どっちなんだ。全く分からないぜ!)
勘太郎は更に増えた三人の謎の来客と登山サークルの四人の部員達を交互に見つめながら、白面の鬼女の謎に頭を悩ますのだった。
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