白い羊と黒鉄の探偵 ~狂人達が暗躍し掲げる不可能犯罪に白い羊と黒鉄の探偵が挑む~

藤田作磨

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第八章 『白面の鬼女』 大雪が降る北海道の山頂で繰り広げられる生き残りを賭けたシリアルキラーとの推理戦に白黒探偵が挑む!

8-26.ある一人の女性の決意、その2(イメージラフイラストあり!)

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                  26



 ピピピピーーィィ……ピピピピーーィィ……ピピピピーーィィ……ピピピピーーィィ!


 時刻は深夜の二時丁度。

 雲一つない闇の空に冷たい冬の風が町や木々を凍り尽かせる、そんな丑三つ時。ある家の寝室のベットの隣にあるスマートフォンの携帯電話がけたたましく鳴り、その着信音の音で、ある一人の初老の男性が眠たそうに目を擦りながらゆっくりと目を覚ます。
 そのなんの飾り気もない呼び出し音に仕方なく部屋の電気をつけたその男は、メタボ気味のお腹をさすりながら音が今も鳴り続けるスマートフォンを持ち上げる。

 ポッチリ。

「もしもし……」

「あ、ボス、いつもこんな夜分にすいません。でもどうしても一度お礼が言いたくて。この前は私の緊急の呼び出しに応じてくれただけではなく、いろいろと影ながらに手を回していただきありがとう御座います。お陰でかなり助かりました」

「こんな深夜に電話が掛かって来たからもしやと思って出てみれば、やはりお前か。言っておくが礼などは入らんぞ。必要な事だと判断したからお前の要求通りに動いただけだ。だがお前からの知らせを聞いた時は正直驚いたぞ。まさかあれを捕まえるとはな。一体どんな方法を使ってあれを捉えたんだ。未だかつてあの謎の組織の者を生きたまま捕らえた事などは一度もなかったからな、正直敵の罠かも知れないと思い、一体どうした物かと考えてしまったぞ。大体奴らはその正体がバレたら、その鉄の掟に従って速やかに自殺をするか……或いはその組織の仲間達に抹殺されてしまうかのどちらかだからな。だからこそ生きたままその組織の関係者を捕らえた事などは一度も無いのだよ。だがお前はそのいかれた謎の組織の仲間の一人をどういう訳か偶然にも倒してしまった。あの百の顔と姿を持つと言われているあのキツネの狂人を一体どのような経緯で……いいや、方法で捉えたのか……その時の事をお前の口から直に聞かせてくれ。お前から貰った報告資料を読んで見たのだが、いまいち状況が分からんかった」

「仕方が無いですね。ではあの時の事を話して聞かせますよ。でもあれは結構偶然に偶然が重なって運良く、奇跡的に倒せただけなんですがね。後私が雪国育ちだから瞬時に奇策を考えついただけですよ」

「ほう、奇策とな、それは面白い。ではその時の事を聞かせてくれ」

 そのボスと呼ばれる中年男性に促され、その女性はあの土砂崩れの起きた麓の道路で見た一部始終を話す。

「今回、黒鉄の探偵こと黒鉄勘太郎が依頼人でもある如月栄子から受けた依頼は、妹の如月妖子の死体を探すという……かなり変わった依頼でした」

「確かに変わった依頼だな。地元の捜索隊や警察がいくら探しても見つける事が出来なかったから、その一年半後に……しかも真冬の一月にわざわざ捜索の手伝いの依頼をして来るとはまずあり得ない状況であり危険極まりない話じゃ無いか。今考えたら怪しさマックスだな。そんな依頼を黒鉄の探偵はよく受けたな」

「その本人の如月栄子が直に黒鉄探偵事務所に来て必死に懇願するかのようにお願いをして来たのでかなり断りずらかった事と、あの白い腹黒羊が案の定面白がってその依頼を勝手に受けてしまったからだと黒鉄の探偵は言っていました」

「ふう~っ、また白い腹黒羊か。あいつは不可思議で危険な謎には何にでも飛びつくな」

「話を進めます。その如月栄子なる人物が持ち込んだ事件なのですが、その妹さんが行方不明になった場所は北海道の山々にある大雪山周辺の一つの山の山頂であることが分かりました。そしてその山には昔から古くから伝わる民間の伝説が合って、その伝説がその北海道の大雪山周辺に巣くうという鬼女伝説なのだそうです。そしてその伝説をまるで擬えるかのように地で行く現代に突如として現れた鬼女が白面の鬼女と呼ばれている正体不明の殺人鬼です。その鬼女は山の周辺の至る所に出没し、他の一般人にも目撃されるようになりました。勿論その鬼女による不可思議な殺人も幾つかあったそうですが、その殺しの方法も正体も分からず存在自体がかなり不可解だったので、当然逮捕には至らなかったそうです。しかもここ最近は何故か赤いワンピースを着て大雪山周辺を闊歩し出没していたみたいでしたから、その恐ろしい異様な姿に更なる恐怖が増したと、その白面の鬼女を見たという目撃者達は皆言っていました」

「一年半前からその赤いワンピースを着て行動をしていたのは、一年半前にその山荘ホテルを訪れた如月妖子に大石学部長が『この赤いワンピースを試着して見てくれ』と、スマートフォンを構えながら、ねちっこく……気持ち悪く……しつこく……何度も食い下がっている姿を彼が目撃していたからだな。だからこそ約一年半の間、山荘ホテルのオーナーは如月栄子の闇の依頼を受けた時に赤いワンピースを着て、宛も如月妖子が白面の鬼女の正体だと登山サークル部の部員達に思わせるようにしたのだな。それこそが数年前から突如として大雪山周辺に現れた白面の鬼女と名乗る怪しげな山の怪異の正体だ。その神出鬼没でまず常人ではあり得ない移動を繰り返す事からこの山に現れる鬼女は人間ではないのではという噂がまことしやかに囁かれていたんだったな。よ~く覚えているよ」

「でも私は北海道の大雪山周辺に巣くう鬼女伝説の話を聞いた時に直ぐにピンと来ましたよ。この事件にはあの不可能犯罪を掲げる謎の秘密組織、円卓の星座が必ず関わっている事を。一ヶ月前にボスから貰った新たな狂人の極秘の調査資料には白面の鬼女の名前とその特徴がしっかりと書かれていましたからね。だから予め知っていたのですよ。ボサボサの長い白髪頭で……目も・鼻も・口もない神出鬼没で瞬間移動を操る鎖鎌を持った狂人と言ったら、それは間違いなく大雪山周辺を縄張りとする円卓の星座の狂人……白面の鬼女以外に考えられませんからね。そう思ったからこそ私も急遽北海道に住む古い友人に会いに行くという設定で、今回の狂人ゲームに影ながらに参加をすることにしたのですよ」

「そうか、お前は私から見せて貰った新たなルーキーの狂人に関する極秘の情報を知っていたんだったな。白い羊と黒鉄の探偵の、次なる狂人ゲームの対戦相手を事前に知っていたからこそ、その大雪山周辺に現れると言う赤いワンピースを着た女性が白面の鬼女かも知れないと思った訳か。だからこそお前も影ながらについて行った訳だな」

「はい、そういう事です」

「そしてこの情報はあの元円卓の星座の狂人でもある羊野瞑子ですら知り得ない情報だからな、だからこそお前はその確信を胸にあの二人について行った訳だろ。大雪山周辺の何処かで白い羊と黒鉄の探偵を密かに待ち構えているはずの狂人・白面の鬼女に直接会って、円卓の星座、始まりの六人が一人、狂人・震える蝿の情報を何としてでも聞き出す為にな……そうだろう。だからお前はわざわざごく自然を装って北海道旅行に行く振りをし、函館空港で黒鉄の探偵と別れてからは、その後ろをこっそりと付けて、黒鉄の探偵の行き先を尾行していたのだな」

「まあ、そういう事です。そもそも白面の鬼女でもある如月栄子に呼ばれて北海道行きのチケットを渡されたのは黒鉄の探偵と白い腹黒羊の二人だけでしたから、ついでに新たな同行者としてついて行くのはなんだか不自然だと思いましたからね。だからこそ後をこっそりとつける事にしたのですよ」

「あの震える蝿の情報を少しでも掴む為とは言え、恐ろしい執念だな。お前に協力をしている者としては頭が下がる思いだよ」

「でもまさか旭川市の麓からロープウェイを使って更に山を登って行くだなんて思っても見ませんでしたから。麓のロープウェイ付近で立ち往生をしてしまいました」

「ああ、どうやらそのようだな。資料ではその山荘ホテルに行くには1400メートルの山を登らないといけないようだし、しかも冬の季節はそのロープウェイでのみしかその山荘ホテルに行く移動手段がないみたいだからな」

「ええ、そうなんですよ。構わずにロープウェイで上に登ったら黒鉄の探偵に絶対に見つかってしまいますし、白い腹黒羊には必ず怪しまれますからね。そうなれば私の事も疑って掛かりますし、その正体もばれてしまう恐れがありますから迂闊にロープウェイで上に登ることが出来なかったのですよ。だからこそ私は仕方なく、谷のトンネルのある……今回土砂崩れが起きた森の奥に点在する幾つかの廃墟に向かったのですよ。でも案の定、特に可笑しな所は何もなかったですし、なんの収穫も得られませんでした。もしかしたら白面の鬼女が一時的に使っている隠れ家かも知れないと思い丹念に調べて見たのですが、当てが外れてしまいました。でもこの廃墟を事前に訪れていたお陰で、この後闇喰い狐に追撃されてもどうにか助かる事ができたのですがね」

 電話越しに届くその女性の言葉を聞きながらその中年男性は引き出しから取り出した報告書をマジマジと見る。

「お前から貰った報告書によれば、黒鉄の探偵と対峙をしていたのは白面の鬼女だけでは無く、あの狂人・闇喰い狐もいたそうだが、なぜあの二人が一緒にいたんだ。本来狂人ゲームは仲間内でも正体が互いにバレないように一人の狂人のみで行うはずだし、そもそも白面の鬼女のテリトリーはこの大雪山周辺のはずだ。そんな所に部外者の狂人を入れるなど、本来なら先ず絶対にあり得ないし、考えられないことなのだが?」

「私は調べていた廃墟で土砂崩れの音を聞いてその現場へと向かった訳ですが、そこでたまたま黒鉄の探偵と二人の狂人が対峙をしているところに遭遇したのですよ。そしてその遠くの木の陰から彼らの話を盗み聞きしていたのですが、断片的ではありますがいろんな事が分かりました。闇喰い狐の話ではダイナマイトで土砂崩れを起こして、誰も逃げられないようにする為のお手伝いに来ただけだったようです。でも手伝って貰った白面の鬼女の方は自分のテリトリー内で余計な事はするなと言った感じでした」

「まあ、その闇喰い狐の方も壊れた天秤に言われたから仕方なく爆弾を仕掛けて土砂崩れを起こし、誰もロープウェイ乗り場に近づけないようにするという仕事を手伝っただけで、その行動は闇喰い狐の本意ではないだろう。そもそも狂人達は同じ組織に属しているとはいえ、仲間意識はないだろうし、本来はみんな自意識過剰で自分本位だからな」

「そんな邪悪さ溢れる二人の狂人に我らが上司の黒鉄の探偵が完膚なきまでに叩きのめされて殺されそうになっていましたからつい体が動いてしまって、気がついた時にはいつの間にか小石を白面の鬼女に目がけて投げつけてしまっていたんですよ。いくら黒鉄の探偵の危機だったとはいえ、軽率な事をしてしまいました。私の軽率な行動で、あの狂人・闇喰い狐に真っ先に命を狙われる羽目になってしまいましたからね。あの闇喰い狐が物凄い勢いで追いかけて来た時には流石にもう駄目かと思いましたよ。黒鉄の探偵を助けようとしたお陰で私まで殺されてしまったら目的は当然果たせないですし、本末転倒ですからね。なのでもし闇喰い狐に追いつかれたら確実に殺されると本気で思いましたよ」

「でもお前は死ななかった。いや、それどころか逆に闇喰い狐を返り討ちにしてしまった。一体どうやってあの闇喰い狐から逃げ切り、そしてついでに倒すことができたんだ」

「土砂崩れの音を聞く前に、私は幾つか別荘のある廃墟内にいて、いろいろとその建屋を調べて回っていましたからね。だからこそあることに気付いたのですよ。私が調べていた廃墟は二階建てで屋根には氷の塊と化した雪がびっしりと積もっていた事を。しかも表玄関の屋根はかなり古く壊れていて、二階の屋根の雪が下に落ちたらその衝撃と重みに支えられずに必ず壊れて表玄関の前に落ちると踏んでいました。まあ雪国出身の人ならその経験上どのくらい雪が屋根に降り積もったら落ちてくると大体の感覚と注意深さで分かるのですが、その屋根の雪の積もり具合を気にしない人は毎年必ず屋根の雪の下敷きに合って死傷しています。そうです屋根から落下して来る雪は本来はかなり危険な物なのですよ。そして屋根の雪の恐ろしさを知らない……降り積もるほどの雪を経験したことのない人なら尚更その恐ろしさには疎いです」

「そうか、ようやく話が見えてきたぞ。お前はその雪が屋根に降り積もっている廃墟内に逃げ込んで、家具を使って表玄関前まで来た闇喰い狐の足止めをして、その隙にスコップを持って二階の屋根に上がっていたのか」

「ええ、そうです。でも二階の屋根でスコップを刺して雪を表玄関の下に落とそうとしたら必ず音で気付かれてしまいますので、大音量にしたスマートフォンの音楽で闇喰い狐の注意を引きつつも、雪を下へと落とす音を音楽の音でかき消しながら闇喰い狐を表玄関の下に上手く誘導したのですよ。そして案の定、闇喰い狐は屋根から落ちて来た雪の下敷きに合って大怪我をする羽目になりました。そしてその時にはもう既に闇喰い狐は意識を失い気絶をしていましたので、そこから逃げる事も、ましてや自害をする事もできません。屋根の雪にスコップで亀裂を入れてやれば、後は勝手に下に落ちる事を私は屋根の雪下ろしの経験がありましたから、そのやり方も知っていましたからね。上手く屋根の雪を下に落とすことが出来て良かったですよ」

「そうか、だから大怪我をした闇喰い狐を雪の中から救出した時に闇喰い狐の両足は完全に折れていたのか。大きな氷と化した雪の塊の下敷きになってしまったから。そしてお前は闇喰い狐の敗北を皮切りにある計画がひらめいたのだな。だから敢えて闇喰い狐からそのマスクを奪って狂人・闇喰い狐として、また白面の鬼女と黒鉄の探偵のいる現場へと舞い戻ったのだな。黒鉄の探偵を助け、ついでに白面の鬼女から……狂人・震える蝿の情報を聞き出す為に」

「でも白面の鬼女は、震える蝿の事については何も知らないみたいでしたけどね。せっかく命がけで白面の鬼女をだましきったのに、非常に残念です」

 その電話の女性は残念そうに声のトーンを落とす。

「まあ、そんなに残念がる事はないさ。あの円卓の星座の狂人の一人を生きたまま捉えることができたのだからな。これはある意味大収穫だ。もしかしたら円卓の星座の今まで知らなかったいろんな情報を、あの闇喰い狐から聞き出せるかも知れない」

「そうですね、望みは薄いですが、何か知っている事があるかも知れませんね。でもボスに緊急の電話をしたら直ぐに行動に移ってくれて本当に助かりました。まさか公安警察を動かしてくれて、尚且つ救助ヘリを出して私を助けてくれるだなんて、正直驚きましたよ」

「あの闇喰い狐という手土産を人知れず……速やかに回収しなくてはいけなかったからな。だから救助ヘリだけでは無く、公安も動かしたのだよ。円卓の星座側には闇喰い狐を捕らえた事は絶対に知られる訳には行かなかったからな。まさに時間との勝負だったのだよ。お前が考えた囮捜査をこれから実行すると言うのなら、その安全の為にも闇喰い狐が捕獲された事は絶対に知られてはならない禁じられた情報だからな。だからこそ秘密裏に動いたのだよ。それに今回動かしたあれはただの公安警察ではない。秘密裏に円卓の星座の事を探る為に作られた裏の組織だ。つまりお前の新たな仲間と言う訳だ。表の捜査は警視庁捜査一課特殊班の三人の刑事達と黒鉄探偵事務所の面々に任せ、円卓の星座の狂人達に知られること無く動きたい時は裏の公安チームが動くことになったのだよ。この組織の事は一部の上層部の人間しか知り得ない特別なチームだ。勿論特殊班の刑事達も……円卓の星座の狂人達もその存在は掴めてはいないはずだ。そう……お前の存在のようにな」

「ええ、まだ味方にも……ましてや敵にも私の正体を探らせる訳には行きません。あの狂人・震える蝿の正体を突き止めるまでは……」

「そうか、だからこそ、その為に新たな偽りの姿を手に入れた訳だな。円卓の星座の狂人・闇喰い狐……物凄く都合のいい偽りの姿を手に入れたではないか。だがその姿と性格と能力を演じるには、かなり命がけになる事と思うがな。その狂人の全てを演じるには余りにも危険が大き過ぎる。報告書にはその計画の内容が事細かく書かれていたが、本当にやるつもりなのか」

「ええ、やりますとも。都合のいいようにこの狂人・闇喰い狐は百の顔と姿を持つとされる狂人です。つまりその本当の姿は誰にも分からないと言う事です。そしてそれはあの壊れた天秤も例外ではありません。円卓の星座を運営する壊れた天秤は狂人・闇喰い狐を狂人としてスカウトする時にその正体を……その素顔を当然見ているはずだと思いますが、その見せてくれた素顔は果たして彼の本当の素顔だったのでしょうか。その皆が抱く疑心暗鬼と闇喰い狐の特性を生かして、私がそれを利用するのです」

「つまりお前が……狂人闇喰い狐となって、円卓の星座の内部に潜入しようというのか。余りにも無謀で危険が大き過ぎる。大体お前は緑川章子として顔がばれているんだぞ。もしも壊れた天秤にそのマスクを外してみろと言われたらどうするつもりだ」

「例えこの顔が緑川章子だったとしてもそれがなんだというのですか。あの闇喰い狐の特殊メイクを生かした変装技術なら、緑川章子に化ける事も出来るとは思いませんか。そう思わせて疑心暗鬼にできるからこそ、闇の秘密組織・円卓の星座の潜入には、偽りの顔を幾つも持つとされる狂人の存在は物凄くうってつけなのですよ。そんな訳で直ぐに特殊メイク技術を持ったプロの人と、プロの声優さんと、名女優並みの演技を教えてくれるプロの演技講師を今すぐに……秘密裏に用意をしてください。その特殊メイクの技術と、声の声質を自由に変えられる技術と、舞台俳優並みのプロの演技力の三つの技術を大至急学ばないといけなくなりましたからね」

「お前は、あの男になりきる為にその変装技術を習得するつもりか。あくまでもあの変装の達人たる変幻自在の狂人を演じ切る為に」

「はい、そういう事です。今日から私が『狂人・闇喰い狐です……』この新たに奪い取った姿で、闇の秘密組織・円卓の星座の謎に迫ります!」

「分かった、もう止めはせんよ。三人のプロの講師を密かに手配して置いてやるから、完璧に狂人・闇喰い狐を演じきるんだぞ」

「分かっていますよ、ボス。絶対に失敗はしません、信じて下さい。私はどんな手を使ってでも必ず……狂人・震える蝿の正体を突き止めて、彼を刑務所に叩き込まないといけないのですから。だからそれまでは絶対に死ねません。このまま何も出来ずに死んで溜まる物ですか。絶対にです!」

「そうか、だが何度も言うが、無茶だけはするなよ。あくまでも慎重にな!」

「ええ、分かっていますよ。では失礼しますね、ボス!」

 そう力強く言うとその電話の女性は思いを新たに電話を切るのだった。


                            白面の鬼女、終わり。

 円卓の星座の狂人・闇喰い狐です。百の顔と変幻自在の姿を持つというトリッキーな狂人です。その残忍さで緑川章子を追い詰めますが逆に返り討ちにされ、今は厳重な警察の監視化にあるどこかの施設で監禁され密かに治療を受けています。
 その狂人・闇喰い狐になりすました緑川章子がこの後一体どんなおとり捜査で円卓の星座の内部に潜入するのか、その波乱の話はまだまだ先の事です。
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