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1章
兄妹
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少女は息を切らしながらある村のはずれの小屋まで颯太を背負いながら走った。
一定のリズムで小屋の扉をノックすると颯太と同じ位の歳の男が扉から顔を覗かせると笑みを浮かべて、
「お帰りー、以外と早かったね。で、どうだった初の貴族家への侵入と窃盗は上手くいったのか?どうせエリカの事だから墓地の場所も分からず……えっと、そちらのぐったり寝込んでるお客さんは?」
男はエリカの皮肉を言おうとしたが、エリカが背負っている颯太を見て、エリカに説明を求めた。
****************
彼はあきれ顔で目の前の少女に言った。
「全く、今日朝早くから支度して張り切ってたのに……どこで人を盗み出すスキルを習ったのかなエリカちゃん」
エリカは盛大な盗みっぷりを指摘されて一瞬声が詰まったが咄嗟に反撃にでた。
「ぐっ……そ、それならこの前兄貴だって女物の下着取ってきたじゃないか」
兄はギクッと肩を揺らた。一瞬のうちに立場が逆転、兄は慌てて口元に手をそえて追求した。
「お、おいエリカな、なぜそれを知っている」(あの特殊任務は秘密裏に行われた筈だ。決してバレる様なことはしていない筈なのに……なぜバレたし!?)
「兄貴さ、盗んだものはすぐ取引しに行くのに一度だけ早く帰って来たことあったでしょ、おかしいと思ってその日家中を漁ったんだ。そしたら案の定そこの藁の下に女物の下着があって納得したよ」
妹の鋭い詮索能力に完敗した兄は、一歩下がりサッと頭を下げて言い訳をした。
「ほんっとすみませんでした。仕事中、聖物が目に入ってしまった瞬間、体が流れるように動きだし気づいたときにはこの手の中に……」
直に謝ったからかエリカは、はぁと溜め息をついて、
「分かった許そう。ただし今後こんなことは絶対しないと誓う?」
「はい、誓います!これからはちゃんと買いに行きます!」
「──わかってないだろうがぁー!!」
兄のバカ発言にエリカは、こめかみに怒マークをつけて怒鳴りながら兄を蹴飛ばした。
****************
兄妹の騒音で颯太は目を覚ますと腹を殴られた痛みが今まで忘れていたかのように襲ってきた。
「うっ──こ、ここは……」
颯太は気付くと藁の上で寝かされていた。起き上がるとエリカは颯太に気付き心配したように話しかけた。
「あまり動かないで。もっと痛むから……」
「エリカ……兄に対してはそんな優しくしてくれないのに……」
おいおいと物悲しげに嘆く兄を無視して、
「……さて、聞きたいことがあるんだけど。……あなた名前なんて言ったっけ」
颯太は固唾を飲み、
「岩波、颯太だ」
「じゃあ、ソウタ、あなたはなぜあんなところに入っていたの?」
エリカは鋭い目付きで颯太を睨んだ。その瞳は嘘をついても無駄だとでも言いたげだった。
「俺は──」
颯太はここに来させられるまでの経緯を話した。一度は死んだこと、天使に会ったこと、墓盗みの少女に殴られたこと。
「おいおい、そんな夢物語のようなことあんのかよ。死んだ奴が生き返るなんて聞いたことねぇな」
「うん、信じがたい話だわね」
「おい、俺は嘘なんかついてないぞ」
確かに経験したものでしか理解出来ない話、だがそれでも信じてもらわなければ話が進まなかった。
颯太は納得させる言葉を探した、だがこの状況はどうにもならなそうだった。
颯太は思考していると思わぬ所から助け船が入った。
「でもね兄貴、ソウタは嘘を一つも付いていない。ほら、兄貴も持ってるあの小さい水晶あるでしょ、見てみてよ」
兄は「おっとそうだった」と言い、服の内ポケットにある水晶を取り出した。
「黒くない……ってことは、嘘を付いていない……おいおい本当かよ、壊れたんじゃないの?」
兄は遂に自分の道具も信用できなくなったのか妹の方を向いた。
エリカは無言で自分の水晶も見せた。
それを見て兄はその場で沈黙した。
エリカは「こほん」と一つ咳払いをして続けた、
「疑り深い兄貴が失礼しました。それで話を聞く限りソウタは行く宛て無くてで困っていると──なら仕方ないね、当分ここに居候する?」
居候というワードを聞いて光彩を取り戻した兄が、
「はっはっは、何を言っている我が妹よ、こんな奴家に居ても何の役にも……」
「兄貴、黙れ」
「はぃ……」
……黙った。
「いいのか?俺なんか本当に何の役にもたたないかもしれないのに……」
「大丈夫、これから馴れてけばいいよ。それまで色々教えてあげるから」
****************
「それじゃあさっきあなたのことを聞いたから今度は私たちが自己紹介する番──」
エリカ──女・十六歳・黒髪ボーイッシュ・少し丸みのある顔・吊り目がちの目・橙色の瞳、身長一五〇いかない位
タクマ──男・十八歳・前髪を上げた黒髪・シャープな輪郭・垂れがちの目・青色の瞳、身長一七〇超える位、ちなみにシスコンである。
そして二人には大きな共通点があった。
犬のような耳が生えていて、ゆっさゆっさと大小の尻尾が揺れている。
颯太はこの二人を見たときに直ぐ理解した。
──こいつら犬属でも猫属でもない……狼属だ。
一定のリズムで小屋の扉をノックすると颯太と同じ位の歳の男が扉から顔を覗かせると笑みを浮かべて、
「お帰りー、以外と早かったね。で、どうだった初の貴族家への侵入と窃盗は上手くいったのか?どうせエリカの事だから墓地の場所も分からず……えっと、そちらのぐったり寝込んでるお客さんは?」
男はエリカの皮肉を言おうとしたが、エリカが背負っている颯太を見て、エリカに説明を求めた。
****************
彼はあきれ顔で目の前の少女に言った。
「全く、今日朝早くから支度して張り切ってたのに……どこで人を盗み出すスキルを習ったのかなエリカちゃん」
エリカは盛大な盗みっぷりを指摘されて一瞬声が詰まったが咄嗟に反撃にでた。
「ぐっ……そ、それならこの前兄貴だって女物の下着取ってきたじゃないか」
兄はギクッと肩を揺らた。一瞬のうちに立場が逆転、兄は慌てて口元に手をそえて追求した。
「お、おいエリカな、なぜそれを知っている」(あの特殊任務は秘密裏に行われた筈だ。決してバレる様なことはしていない筈なのに……なぜバレたし!?)
「兄貴さ、盗んだものはすぐ取引しに行くのに一度だけ早く帰って来たことあったでしょ、おかしいと思ってその日家中を漁ったんだ。そしたら案の定そこの藁の下に女物の下着があって納得したよ」
妹の鋭い詮索能力に完敗した兄は、一歩下がりサッと頭を下げて言い訳をした。
「ほんっとすみませんでした。仕事中、聖物が目に入ってしまった瞬間、体が流れるように動きだし気づいたときにはこの手の中に……」
直に謝ったからかエリカは、はぁと溜め息をついて、
「分かった許そう。ただし今後こんなことは絶対しないと誓う?」
「はい、誓います!これからはちゃんと買いに行きます!」
「──わかってないだろうがぁー!!」
兄のバカ発言にエリカは、こめかみに怒マークをつけて怒鳴りながら兄を蹴飛ばした。
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兄妹の騒音で颯太は目を覚ますと腹を殴られた痛みが今まで忘れていたかのように襲ってきた。
「うっ──こ、ここは……」
颯太は気付くと藁の上で寝かされていた。起き上がるとエリカは颯太に気付き心配したように話しかけた。
「あまり動かないで。もっと痛むから……」
「エリカ……兄に対してはそんな優しくしてくれないのに……」
おいおいと物悲しげに嘆く兄を無視して、
「……さて、聞きたいことがあるんだけど。……あなた名前なんて言ったっけ」
颯太は固唾を飲み、
「岩波、颯太だ」
「じゃあ、ソウタ、あなたはなぜあんなところに入っていたの?」
エリカは鋭い目付きで颯太を睨んだ。その瞳は嘘をついても無駄だとでも言いたげだった。
「俺は──」
颯太はここに来させられるまでの経緯を話した。一度は死んだこと、天使に会ったこと、墓盗みの少女に殴られたこと。
「おいおい、そんな夢物語のようなことあんのかよ。死んだ奴が生き返るなんて聞いたことねぇな」
「うん、信じがたい話だわね」
「おい、俺は嘘なんかついてないぞ」
確かに経験したものでしか理解出来ない話、だがそれでも信じてもらわなければ話が進まなかった。
颯太は納得させる言葉を探した、だがこの状況はどうにもならなそうだった。
颯太は思考していると思わぬ所から助け船が入った。
「でもね兄貴、ソウタは嘘を一つも付いていない。ほら、兄貴も持ってるあの小さい水晶あるでしょ、見てみてよ」
兄は「おっとそうだった」と言い、服の内ポケットにある水晶を取り出した。
「黒くない……ってことは、嘘を付いていない……おいおい本当かよ、壊れたんじゃないの?」
兄は遂に自分の道具も信用できなくなったのか妹の方を向いた。
エリカは無言で自分の水晶も見せた。
それを見て兄はその場で沈黙した。
エリカは「こほん」と一つ咳払いをして続けた、
「疑り深い兄貴が失礼しました。それで話を聞く限りソウタは行く宛て無くてで困っていると──なら仕方ないね、当分ここに居候する?」
居候というワードを聞いて光彩を取り戻した兄が、
「はっはっは、何を言っている我が妹よ、こんな奴家に居ても何の役にも……」
「兄貴、黙れ」
「はぃ……」
……黙った。
「いいのか?俺なんか本当に何の役にもたたないかもしれないのに……」
「大丈夫、これから馴れてけばいいよ。それまで色々教えてあげるから」
****************
「それじゃあさっきあなたのことを聞いたから今度は私たちが自己紹介する番──」
エリカ──女・十六歳・黒髪ボーイッシュ・少し丸みのある顔・吊り目がちの目・橙色の瞳、身長一五〇いかない位
タクマ──男・十八歳・前髪を上げた黒髪・シャープな輪郭・垂れがちの目・青色の瞳、身長一七〇超える位、ちなみにシスコンである。
そして二人には大きな共通点があった。
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