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1章
糸
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突然の出来事に固まる二人。
口端をつり上げ不敵に嗤う黒いローブの男。
「エリカ、こいつを頼むぞ」
「え、あ……うん」
いち早く状況を察したタクマはエリカに颯太を預ける。
そうタクマは怒っていた。
盗人が物を盗まれたことによる傷心と何より妹の所有物を盗まれ、これから行われるであろう妹のファッションショーを台無しにされるからだ。
タクマは両手の袖口に手を入れて、黒いローブを追いかけた。
かなり遅れをとって走りはじめたタクマは黒いローブが曲がり見失った角で一度停止する。
深呼吸した後両袖口から手を出し、手のひらを地面に叩き付ける。
すると地面と手のひらの隙間から何本もの細い糸が勢い良く飛び出し、入り組んだ街中をまるで生きているかのような動きで広がっていく。
ある程度広げたところで全ての糸を固定させ、黒いローブが走り去った時に生じる風で糸が揺れるのを頼りにタクマはしゃがみながら待つ。
「──発見」
左手の一本だけ布が揺れて生じる微かな風を捕らえタクマは黒いローブの居場所を特定する。
その一本を残し他全ての糸を巻き戻しするように回収、残った一本は黒いローブを追跡させる。
「さてと、いっちょやりますか」
タクマはゆっくり立ち上がり、右手で支えた左手を糸が伸びている方向に向けた。
左手に力を込めながらゆっくり開くと黒いローブを追跡している糸が波打ち始める。
「──捕獲」
そう言って強く念じながら左手首を四十五度左に傾け、空虚を掴む仕草をすると、波打っていた糸が次第に太くなり、ロープほどの大きさになった所で走っている黒いローブの男の足首に絡み付き進行を止める。
黒いローブの男が地面に顔を強打したところで、後から放った何本もの糸が追い付き黒いローブの男をがんじがらめにする。
黒いローブの男は身体をひねって糸をほどこうとするが糸はほどける様子もなく、さらに縛る強さが上がり男の抵抗力を削いだ。
後から追い付いたタクマは黒いローブの男が顔を強打したときにこぼれ落ちた小袋を拾い、中身を確認する。
中身は金貨六枚。だがそれは見た目の話。タクマは金貨一枚を指で弾き、空中の金貨を右手からでる糸で一刀両断して見せた。
外見は金貨そのものだが、中は鈍く輝く銅であった。
この世界の金貨は純金でできている。ましてや混入、偽造等は罰せられる対象である。
「ほいっ、偽装確認完了。あんた、走りながら中身を入れ換えるなんて器用な真似出来んのか。まぁそれはそれとして話聞こうか」
タクマはがんじがらめにされた男を引きずりながらエリカの元へ戻った。
******************
──夢を見た
夢のなかは真っ暗で自分がどこにいるのかも分からない。
そんな暗闇のなか微かに、だか確かに極小の光を見つける。
今にも消えてしまいそうなその光は、ゆらゆらと浮遊して近づく。
近づいてさえも小さい光は、ポワッと瞬き徐々に小さくなり消えた。
光が消えた矢先、聞き覚えのある声が暗闇に響いた。
『えー……その……無事、転生おめでとうございます。あの……私事で転生させてご迷惑をおかけします。それでですね……私が勝手に転生させたことが上司にバレてしまいまして……私、アルミルがそちらの世界に行って颯太様のサポートをすることになりました。天使が世界に降り立つのは前代未聞らしく、そちらの世界に行くには時間がかかるそうなのです。正確な時間は分からないのですが2週間以内には着くそうです。ではこれで私は失礼します』
これ以上は何も聞こえず、ただただ暗闇が晴れるのを待った。
口端をつり上げ不敵に嗤う黒いローブの男。
「エリカ、こいつを頼むぞ」
「え、あ……うん」
いち早く状況を察したタクマはエリカに颯太を預ける。
そうタクマは怒っていた。
盗人が物を盗まれたことによる傷心と何より妹の所有物を盗まれ、これから行われるであろう妹のファッションショーを台無しにされるからだ。
タクマは両手の袖口に手を入れて、黒いローブを追いかけた。
かなり遅れをとって走りはじめたタクマは黒いローブが曲がり見失った角で一度停止する。
深呼吸した後両袖口から手を出し、手のひらを地面に叩き付ける。
すると地面と手のひらの隙間から何本もの細い糸が勢い良く飛び出し、入り組んだ街中をまるで生きているかのような動きで広がっていく。
ある程度広げたところで全ての糸を固定させ、黒いローブが走り去った時に生じる風で糸が揺れるのを頼りにタクマはしゃがみながら待つ。
「──発見」
左手の一本だけ布が揺れて生じる微かな風を捕らえタクマは黒いローブの居場所を特定する。
その一本を残し他全ての糸を巻き戻しするように回収、残った一本は黒いローブを追跡させる。
「さてと、いっちょやりますか」
タクマはゆっくり立ち上がり、右手で支えた左手を糸が伸びている方向に向けた。
左手に力を込めながらゆっくり開くと黒いローブを追跡している糸が波打ち始める。
「──捕獲」
そう言って強く念じながら左手首を四十五度左に傾け、空虚を掴む仕草をすると、波打っていた糸が次第に太くなり、ロープほどの大きさになった所で走っている黒いローブの男の足首に絡み付き進行を止める。
黒いローブの男が地面に顔を強打したところで、後から放った何本もの糸が追い付き黒いローブの男をがんじがらめにする。
黒いローブの男は身体をひねって糸をほどこうとするが糸はほどける様子もなく、さらに縛る強さが上がり男の抵抗力を削いだ。
後から追い付いたタクマは黒いローブの男が顔を強打したときにこぼれ落ちた小袋を拾い、中身を確認する。
中身は金貨六枚。だがそれは見た目の話。タクマは金貨一枚を指で弾き、空中の金貨を右手からでる糸で一刀両断して見せた。
外見は金貨そのものだが、中は鈍く輝く銅であった。
この世界の金貨は純金でできている。ましてや混入、偽造等は罰せられる対象である。
「ほいっ、偽装確認完了。あんた、走りながら中身を入れ換えるなんて器用な真似出来んのか。まぁそれはそれとして話聞こうか」
タクマはがんじがらめにされた男を引きずりながらエリカの元へ戻った。
******************
──夢を見た
夢のなかは真っ暗で自分がどこにいるのかも分からない。
そんな暗闇のなか微かに、だか確かに極小の光を見つける。
今にも消えてしまいそうなその光は、ゆらゆらと浮遊して近づく。
近づいてさえも小さい光は、ポワッと瞬き徐々に小さくなり消えた。
光が消えた矢先、聞き覚えのある声が暗闇に響いた。
『えー……その……無事、転生おめでとうございます。あの……私事で転生させてご迷惑をおかけします。それでですね……私が勝手に転生させたことが上司にバレてしまいまして……私、アルミルがそちらの世界に行って颯太様のサポートをすることになりました。天使が世界に降り立つのは前代未聞らしく、そちらの世界に行くには時間がかかるそうなのです。正確な時間は分からないのですが2週間以内には着くそうです。ではこれで私は失礼します』
これ以上は何も聞こえず、ただただ暗闇が晴れるのを待った。
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