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『始まりの街』
0.プロローグ
しおりを挟む走って走って、とにかく全力疾走する。
今俺は電車から降りた瞬間に、全力疾走を始めた変人として見られたことだろう。だがそんなことを気にしている場合ではない程に気分は高揚していた。
自宅のマンションに着くと、すぐに靴を脱ぎ、いつもなら綺麗に整えてから中に入るところをまるで少年の様に放り出したままリビングへ向かっていく。
そして、そのリビング机の上に置いてある大きめの箱を持ち、すぐに自分の部屋に行く。その動作をするだけでもワクワクが止まらない。
部屋に着くと箱をベッドの上に置き、カッターで段ボールをどんどん開けていく。
発泡スチロールやら、衝撃吸収材やらを急ぎ退けて、その目当ての モノを手に持つ。
まるでそれはヘッドギアの様な形をした機械だった。察しが良い人ならわかるだろう。そう『VRMMORPG』をプレイするための機械だ。
俺は幼い頃からゲームというモノが好き…いや、大好きだった。あの幻想的な世界に、現実ではありえない事に、魅力的すぎるキャラクター達に、全てに憧れ、焦がれ続けてきた。
もちろん、だからと言っては何だがゲームは沢山プレイした。
まあ、しかしゲームの進行具合などは他の子よりも少し速いくらいに収まっていた。しかしやり込み要素は人一倍、いや人何十倍もやった。周りがそのゲームをやめても俺だけはやり続けた。
それ程までにゲームというモノが好きだった。
そうして、幼い頃そんな日々を送ってきた俺は必然的にこんな夢を抱いた。
『ゲームの中に入ってみたい』
小さい頃、誰もが一度は思う夢かもしれないが普通はすぐに諦める夢だ。しかし、俺はそう簡単に諦められなかった。色々試した…が全てうまくいかなかった。
小さい頃からずっと夢見てきた『ゲームの世界に入りたい』という夢。
それが叶う機会が今、目の前にある。大変だった…凄く大変だった。それに高かった…とんでもない高さだ…まあ、それ程までに凝っているという事なのだろう。
本当ならβ版をプレイしたかったのだが、抽選には残念ながら落ちてしまった。あの時は一週間ずっと落ち込んでいた。
そして昨日から、やっと正式サービスが来たのだ。
本当は正式サービスが始まった瞬間にログインしたかったのだが残念ながら俺には仕事がある。といってもしっかり休みがあるとってもホワイトな会社だ。
しかしそのためすぐにはログインすることが出来なかった。これは悔やんでも悔やみきれない。
俺ももう29歳…そろそろゲームなんてやめた方が良いのかもしれない…そう思っていた時にこのVRMMOが発表された。小さい頃の夢が叶うのだ。我慢ができるハズなんてない。
何が何でも手に入れてやろう。そう思った。
俺はすぐにβ版に応募した。…が先程言ったように抽選には落ちてしまった。
しかし代わりに絶対にこのヘッドギア型機械だけは買ってやろうと心に誓ったのだ。その誓い通り、俺の会社の同僚と協力してだが、どうにかして買うことはできた。
これほど嬉しい事は無かった。手に入れた瞬間は俺と同僚は狂喜に満ちていたと言っても過言ではない程の精神状態だった。
そして今、そのヘッドギア型機械を落とさないように慎重に持ち上げ、俺の頭に装着する。そしてベッドに横たわり、ヘッドギア型機械の左右にあるボタンを同時に押し、数秒待つ。
頭の中に声が聞こえてくる。俺はその声を聞きながら、静かに意識を落としていった。
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