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『始まりの街』

9.インゴット作成

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『忘れ去られた採掘場』の中は松明が所々に設置されており、比較的明るかった。一応、昔は採掘場だったため整備はそこそこされていたから歩きやすかったが、上から所々に蔦が伸びてきており、少々邪魔くさかった。

 しかも、壁にも蔦がびっしりとついていおり《採掘》スキルを発動するにはいちいち蔦を千切る必要があっる様だった。

 俺は周りを《盗賊》スキルのアーツ、〈気配察知〉と〈罠探索〉で常時警戒しながら進んでいるのだが、全くと言っていいほど何の気配もないし罠も無い。

『採掘場』だからモンスターや罠は無いようにプログラミングされているのかもしれない。

 俺はそんなことを思考しながら、奥へ奥へと臆することなくズンズン進んでいく。最初の方の通路は、整備されていると言う事はもう鉱石を掘り尽くしたと言う事だ。なら奥へ行くのみである。…面倒臭いが…

 俺は奥に大量の鉱石が眠っていることを願い、どんどんと進んでいった。



 ―――――――しばらく歩いただろうか?
 中々に広い場所に出た。もうこの先に、道などは見当たらないからここが一番奥と言う事でいいのだろうか?俺は、【古びたツルハシ】を取り出し、装備する。そして、適当なところの蔦を引きちぎり、ツルハシでカツンカツンと掘ってみる。

「…大丈夫っぽいな」

 先程掘った力が弱かったからか少ししか削る事が出来なかったが、掘れることがこれで証明された。【古びたシリーズ】の道具でもしっかり機能することを確認すると、再びグッとツルハシを握った。

 そして思い切り、ツルハシを上へ振り上げそのまま重力に従うように一気に振り下ろした。

 ガツン!!

 良い音がした。
 多分、使い方はコレで合っているのだろう。まあ、間違っていてもスキルによるスキルアシストが発動して大体いつかはしっかりと掘れるようになるんだけどな。全部ヘルプで書いてあったことだけど…

 俺はガツン!ガツン!とどんどん岩壁にツルハシを直撃させながら掘り進めていく。道具が。【古びたツルハシ】だからなのか、普通に俺のスタミナが無いだけなのか、中々キツイものがある。腕が辛い…

 でも、弱音を吐き続けている暇はない。ココが発見されたことは公開したから、プレイヤー全員がもう知っている。多分、すぐにみんなここを見つける事だろう。

 何せここの名前は”南の最奥”『忘れ去られた採掘場』である。”南の最奥”って部分だけで大体のプレイヤーは南の森林のどこかにここがあるってことに気付くはずだ。多分、もう行動に移しているプレイヤーが多い。

 そんなプレイヤー達が来る前に、早めに集めてそそくさと帰らなくては。

 俺はいきなり手からすっぽ抜けない様にしっかりとツルハシを握り、どんどん掘っていく。

 そうしてしばらく、鉱石が少しずつ出始めた。やはり表面の岩壁の部分では鉱石は中々で出てこなかったが奥へ行くとどんどん出てくる。このくらいになってくると楽しくなってくる。

 一回振り下ろすと鉱石が、もう一回振り下ろすと鉱石が、と言う勢いでどんどん鉱石が出てくるのである。まるで無限に湧き出る水の様だ。コレを楽しいと言わずしてなんという。

 無邪気にずっと掘り進める。ガツンガツン、カツンカツン、音が採掘場に大きく響く。ふと気付くとかなり鉱石が溜まっていた。

 俺は一度耐久度がかなり減っている【古びたツルハシ】をアイテムボックスにしまい、採掘した鉱石を確認していく。

【銅鉱石】×12
【鉄鉱石】×8
【銀鉱石】×6
【エルマント鉱石】×5
【グライム鉱石】×5  が取れた。

 ちなみに硬さ順は【グライム鉱石】←【エルマント鉱石】←【鉄鉱石】←【銅鉱石】←【銀鉱石】だそうだ。一番、【グライム鉱石】が硬いんだな。

 だけど、物価は【鉄鉱石】や【銅鉱石】より【銀鉱石】の方が高いらしい。装飾品とかによく使われるとかナントカ…。まあつまり、硬さが全てじゃないってことだ。

 俺はその後、お目当てのモノが回収できたのでもう用がなくなった、『忘れ去られた採掘場』を後にした。……途中で結構な数のプレイヤーに会った。生産組かな?




『始まりの街』に帰ってくるとまずは、生産作業場へ行って鍛冶をすることにした。早速鉱石をインゴットにしたいしな。

 俺は生産作業場に到着すると、50セルトをすぐに払い個人鍛冶スペースに入った。そして、俺は先程獲得した鉱石たちをすべて机の上に並べる。ちなみにスペース設定で、周りからの視線は完全シャットアウトしている。まあ、気分だな。

 こういうところに居る鍛冶師たちは、NPCから鉱石を購入しているらしい。しかし、かなり高い額らしく、「やりくりが大変だ」と掲示板で呟いているのを見かけた。

 でもあの採掘所が見つかれば、だいぶ楽になるだろうな。プレイヤー全てに公開したし、さっきもあんなに帰る時にすれ違ったからすぐに発見されるだろう。鍛冶師や他の生産職が喜ぶ様が目に浮かぶ。

 俺は生産職たちが喜ぶ姿を想像しながら、机に並べてある鉱石を一つずつインゴットへと変えていく。

 この作業はかなり大変で、ハンマーで叩いては炉に入れ熱し、叩いては熱しを繰り返す。

 カンカン!カンカン!

 どことなく心地よい音が俺の耳に響く。しかし俺は汗だくだ。ピチョンピチョンと汗が床に落ちていく。どうしてこういうところを細かく作るかなぁ…運営は…

 さすがに熱いと感じてきたので、閉鎖空間になっていた自分の鍛冶スペースの”視線遮断”設定を解除し、しきりを失くす。実際は熱さなど変わらないのだが、やはり場所の広さが窮屈だと、心までも狭く持ってしまう。

 ……うん!こっちの方が良いな!

 周りから丸見えの状態になったが、またインゴット作成を再開する。
 そうこうしている内に最後のインゴット作成だ。俺は【グライム鉱石】のインゴット作成に取り掛かる。

 途中で、隣の鍛冶師が「その鉱石ってなんだ?」と聞いてきたが「近いうちに分かるぜ」と返しておいた。その鍛冶師はそれ以上は詮索しなかったが随分とコチラを気にしているようだった。まあ、当たり前っちゃ、当たり前だろうな。きっと見たことない鉱石なんだろうし。

 さて、そんなことより【グライム鉱石】だ。俺は先程からやっているようにハンマーを持ち、耐熱手袋をはめ、鉱石を炉で熱する。十分に熱で柔らかくなったら、叩く。叩く。叩く。

 叩いて叩いて叩きまくる。そして炉で熱するのを繰り返すが……

「今までのヤツより、随分と硬いなぁ」

 何回も何回も、ハンマーで鉱石を叩きまくっているのだが中々きれいなインゴットの形に変形しない。う~ん……難しい…

 どうにか格闘すること、数十分。やっと一つ、インゴットが完成した。どうやら《鍛冶》スキルのLvが足りていないため、難しかったようだ。スキルLvが適性のLvまで行ったらもっと楽になるのかもしれない。

 さすがに、まだ残っている【グライム鉱石】の全てをインゴットにするのはきついので、あと一つだけインゴットにして、今回のインゴット作成はお終いにした。

 さて、ここからは武器を造るお時間だ。

「最高の武器を造ってやる…」

 静かにそう呟いた。


プレイヤー:ノア
【スキル一覧】
《短剣》Lv18《体術》Lv18《闇魔法》Lv15《盗賊》Lv16《隠蔽》Lv22
《視覚強化》Lv18《鍛冶》Lv16(↑7UP)《調薬》Lv12
《採掘》Lv10(↑9UP) 

スキルポイント:11

【二つ名】
終焉スキラー


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 《鎌》
鎌を扱えるようになるスキル。まるで死神のように大きい鎌から、草刈りで使うような小さい鎌で自由自在。ただし、非常に扱い方が難しい為、上級者向け。ただし扱えるようになったらとんでもない破壊力、全武器屈指のリーチで敵を追い詰め、屠ることが可能となる。。

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