平凡が征くVRMMO記録(更新停止)

どうしようもない

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『第2の街シドネス』

26.大地潰し

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『ワールドオーバー』。
 プレイヤーキラーの根源。樹木が生える為の”大地”と化した全ての元凶。

 樹形図の奥底に眠る黒幕。養分、水分、日光、全てを際限無く吸収し続ける。
 そうして”枝”は生え続け、分岐点は増えている。しかし、そんな枝たちは『ワールドオーバー』という”大地”が無くなればたちまち統率力を失くし、崩壊を始める。

 統率者を失くしてしまったんだから、当たり前だ。
 ”枝”たちは統率者が強者故に生えていく。
 統率者が一度でも弱者になってみろ。”枝”は枯れ始める。
 後は時間の問題だろう。統率者と”大地”、そして枝。全ては一本の樹として成り立っているが、中身は腐食され始めている。

 その腐食の原因と言ったら――――、


「そう、例えばお前だよ。白黒の兎。お前が全ての鍵となる」

「―――――――は?」

 目の前にいるプレイヤーは俺が復活した時、目の前にいた。まるで俺がここに来るのが分かっていたように。

「兎。お前が腐食させるんだ。『ワールドオーバー』を」

「な、なあ、お前何やってんの?”テイル”」

「………………ふしょk」

「―――何やってんの?」

「………はあ…」

 目の前のプレイヤー、テイルは俺の方を凝視し呆れたような目を向けてくる。

「もう少し空気読もう?せっかくシリアスな雰囲気出したのにさ」

 テイルは「呆れた」と言った感情を顔の全面に再現しながら、そう言ってくる。というか、まずシリアスな雰囲気を出す理由が分からない。

「まず、疑問に思っていることを一つずつ教えていってあげよう」

 そう言ってテイルは俺が先程から疑問に思っていることを全て解説しだした。まあ、まずこの状況自体が理解しがたいんだけどな…

「なぜ俺がここにいるか。それは掲示板でお前とサイコパス野郎が戦っているのが実況されていたからだ。お前とあいつは相性が悪い。お前が負けると見て、ココに待機しておいた」

 おいおい……友人の勝利くらい信じておいてくれよ……

「サイコパス野郎について。アイツはヤバい。そんだけ。いつか詳しく話す」

 情報少ないなぁ……サイコパス野郎って多分エスカの事だろ?確か二つ名は…『爆音スター』だっけ…?

「次に『ワールドオーバー』。全ての元凶のプレイヤーキラーギルドの事。強者との戦いにおいては、最後のキメ台詞として『ワールドオーバーだ』と口にしている」

 ワールドオーバー…ね…。ゲームオーバーみたいなもんか。おしゃれな言い方してんなー。

「そんで、そんな説明がどう最初の意味深な文章へと繋がるんだ?」

「お前は鍵なんだ。キーだよ、キー」

 つまり…ドユコト?
 テイルは説明してくれているが全く、意図が見えてこない。こいつは何がしたいんだろ。

「『水操騎士』『ゆる獣』『虹の魔師』『大剣狂』『データ猫』…有名なプレイヤー達は皆、口を揃えてこう言ってるんだ。『終焉スキラー、終焉兎だけは敵に回したくない』…と」

「へぇ~、嬉しいな。良い友好関係が築けそうじゃないか。それがどうかしたか?」

 俺はテイルの一言一言を聞いて、そういう感想を抱いた。しかし、どうやらテイルは違うらしい。

「『爆音スター』『キラーテイマー』を除く、現時点の有名プレイヤーがお前にそう言う。つまり――」

「つまり?」

 テイルはゴクリと喉を鳴らした。鳴らす必要性は皆無だが、きっと気分だろう。

「グリーンプレイヤー側最強は現在お前となっているんだ」

「いや、違うだろ」

 俺は即座に否定する。
 それは無い。ありえない事だ。まず、俺はまだ一度もスキル進化さえもしていない。それなのに最強なんて言われたら廃人プレイヤーの立場なんてクソくらえだ。




「―――あ、ばれた?」

 唐突に緊張感があった空気が崩れだす。

「一番強いのは『虹の魔師』、次が『ゆる獣』、その次くらいがお前だよ。多分な」

「それも過剰評価な気がするが…」

「まあ、とりあえずここ出ようぜ」

 先程からずっと教会内で会話をしている。流石にそろそろ邪魔になって来るだろう。俺はテイルのその提案に賛成し、その場を離れた。



「ちなみに皆お前の事、『愛すべき馬鹿』って言ってたぞ」

「えっ…………」

 * * * * * * * * * * * * * 


「お前が鍵になるっていうのは本当だぞ」

「んじゃ、その理由を教えろよ」

 シドネスをテイルと共に練り歩きながら先程の続きだ。途中で買ったソフトクリームを舐めながら、テイルが人差し指を俺に突き付けながら話し出す。

「エスカと戦ったことがあるヤツは沢山いるが、いつもこちらが何もできないうちに終わるんだ。それに反してお前はエスカに一矢報いたし、どういう戦い方か分かったろ?」

 テイルはソフトクリームのコーン部分を齧る。サクッと音を立てながら、口へと入れるがその破片が地面へと落ちてゆく。

「というか、エスカって何者なんだ?さっきから色々と言っているが」

 テイルはわざわざ落ちてしまったコーンの破片を拾いゴミ袋に入れながら、こちらを向き「呆れた」と言ったような表情で答える。

「はぁ?エスカは『ワールドオーバー』のギルドマスターだ。そして副ギルドマスターが『キラーテイマー』、その他幹部が数人、それが『ワールドオーバー』の構成らしい。全部『データ猫』情報だ」

 ギルドマスター…ねぇ…。じゃあもし俺があそこで倒せていたら………もしかして…

「倒されたことが『ワールドオーバー』のメンバーたちに知られていたらギルド内で崩壊してたかもな」

 どうやら心の声が外に漏れていたらしい。心で呟いた言葉にテイルは応答する。後悔という感情が一瞬にして心を支配する。あの時、違うアーツを使っていれば…後悔は止まない。

「まあ、いまさらそんなこと言っても始まらないぞ」

「そう、だな」

 俺は心にしこりを残しながらも、テイルの前向きな言葉に同意した。

「そんで、俺が話したいのはこれからの事だ」

「これからの、こと?」

 テイルは「そう、これからの事」と言いながらソフトクリームを全て食べ終え、指を舐める。

「『ワールドオーバー』は危険だ。早めに”大地”を腐らせ、樹木を朽ちさせなくちゃ駄目だ。その為には協力してほしい人材がいる。今はそいつを勧誘しているんだ」

「つまり、どういう事だ?」

 どうやら、テイルは大きなことを成そうとしているようだ。それに協力しない手はない。

「『ワールドオーバー』、”大地”を―――――潰す」

「――――だと思った」

 俺はにこりと笑った。仮面のせいで表情は見えないだろうが、別に構わない。
 昔からこいつはバトルジャンキーなところがあると思ったが、ここまで活発に動くとは思わなかった。

「人材がそろったら連絡する。今のところのメンバーは教えておく」

 そういってテイルは俺に一冊の赤い本を渡してきた。赤い本には〔大地侵食作戦〕と書かれている。

 開くと様々な項目が載っているが、あまり気にせずにメンバーの項目を開く。


 〔メンバー〕
 ・テイル(近接アタッカー)
 ・ベア(タンク)
 ・わんこ(ヒーラー)
 ・ギルティ(近接アタッカー)
 ・森人(遠距離アタッカー)
 ・ノア(近接アタッカー)
 ・キョウ(中距離アタッカー)
 ・マリー(ヒーラー兼遠・中距離アタッカー)
 ・ロックス(タンク)
 ・勧誘中多数………



「とりあえず分かった」

 俺は本を閉じながら言う。
 実際のところテイル以外のプレイヤーは全然知らない人たちばかりなのでどうしろとも言えないしな。

「んじゃ、よろしくな」

 テイルは本をしまいながら言う。

「ああ」

 一応、返事をして別れた。

「”大地”…『ワールドオーバー』…プレイヤーキラー……ああ…面倒臭い事に巻き込まれているんじゃなかろうか…」

 俺はがっくりと肩を落とした。


 * * * * * * * * * * * * * 


「おいエスカ。お前大丈夫だったのか?」

 ギルドホールに帰ると、彼は一人のプレイヤーに声を掛けられた。そのプレイヤー、『キラーテイマー』は頭の上にもふもふとした不思議な生物を乗せている。不思議な生物は眠っているのか鼻ちょうちんが膨らんでいる。

「あ?何がだよ?」

 エスカは『キラーテイマー』にそう言いながら、顔だけをそちらに向けた。

「掲示板見たぞ。お前、手を抜くにもほどがあるぞ」

『キラーテイマー』はエスカを叱咤するようにそう言う。頭の上の不思議な生物もいつ起きたのかは定かでは無いが、「がうがう!」と見た目に合わない鳴き声を上げる。

「手を抜く…ねぇ…」

 エスカは心の中で言う。

(抜いたつもりは無かった。確かに最初は手を抜いたがすぐに本気でやったはずだ)

 そんな中、『キラーテイマー』はエスカにグチグチと先程までの戦いに口を出す。

「大体、お前はそんなんだから……今回で配下ギルドの奴らの信頼は消えた可能性があるぞ……まぁ、相手が『終焉スキラー』だったから良かったものの……いや、待てよ…?『終焉スキラー』を倒したことによりこのギルドの価値が上がったのか…?だが完膚なきまでの勝利でn―――――――」

「うるっせぇなぁ!!」

 エスカの大声がギルドホールに響く。『キラーテイマー』はそんな声を聞いた瞬間―――、

「全く自分が居ないとどうなっていた事か……なぁ?ガウラ」

「がるがう~♪」

 頭部に乗っているモフモフの不思議な生物、ガウラは嬉しそうに声を上げる。『キラーテイマー』は持ち物から肉を取り出し、ガウラに渡しながらエスカの元を離れていった。

「………チッ…」

 エスカは先程まで居た青年の顔を思い浮かべながら、心で毒づいた。そして、また思考の海へと潜る。

(…あの動きと判断力、尋常じゃねぇ…念の為、音を身体内に仕込んで無かったら最後の一撃はそのまま心臓貫かれてた……それを可能とする動きと狙い…常軌を逸している)

「バケモンがよぉ―――――ッ!!」

 彼の呟きは静かなギルドホールに消えていった。その悲痛な叫びを聞く者はいない。



【スキルレベルの上昇が無い為、ステータスは表示されません】


 * * * * * * * * * * * * * 

―――テイルが持っていた赤い本〔大地侵食作戦〕について―――
この本は《書記》スキルや《細工》職人、《革職人》に《絵師》が協力して出来上がった。テイルが作ったギルド『サンシャイン』のギルドメンバーが必死で制作した一品。アイテム名はテイル命名【太陽の本〔大地侵食作戦〕】と言い、生産職一同はこの本を作り終えると深い眠りについたという。
ちなみにこの本は「必要情報自動書記」という破格の特殊効果が付随されている。
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