おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記

Imaha486

文字の大きさ
81 / 209
エクストラステージ ふぇありーていまーず!

081-サツキちゃんとゆかいな仲間たち

しおりを挟む
 聖王都プラテナの東の森へ巨人が出現した事件からさかのぼること一週間――

【聖王歴128年 黄の月 11日 昼前】

<聖王都プラテナ 北街商店エリア>

「というわけで~……さすがに二人きりにすれば少しくらい関係が進展するでしょ大作戦スタートぉー、パフパフーッ!!」

『はあ』

 あたしの宣言に対し、早速ユピテルは空返事である。
 なんて失礼なヤツだ。

『でも、二人きりにしたくらいでどうにかなるもんすかね?』

『あれは……子宝の神ですら……さじを投石器で射出するレベル』

 頭の後ろから左右ステレオで早速ネガティブな答えが聞こえてきたけど、あたしは鼻で笑い飛ばしてやった。

「なあに、ああいう純情を気取ってるヤツらほど、ちょっと勢いつけてやればポーンッてやっちまうもんさ」

『表現が下品すぎるっ!!』

「ま、これで帰ってチューのひとつもしてなかったら、とっちめてやるさ!」

 そんなこんなで兄上殿の男気に期待しつつ、あたしは本題に入る事にする。

「そんじゃ、まずはエメラシティ観光に行こうと思うけどどうかな?」

『なんでさっ!? 実家に帰るんじゃなかったのっ!!』

 そう、予定ではこれから実家のあるハジメ村に帰るのだけど、ぶっちゃけ真っ直ぐに帰るのは面白くない。
 最速で行けば聖王都から実家までの道のりは、エメラシティ経由で一泊二日。
 しかも帰路はフルルの空間転移で一発。
 つまり十八日までに帰るとしても、なんと五日間も余裕があるのだ。
 これで何もしないなんて、たとえ天地が許しても、このサツキちゃんは許しまへんで!

「なので、あたし達はおにーちゃんの日記にない、新たなルートを開拓するのです!」

『はあ』

 ホントこの小僧ときたら、若者のくせに活気も冒険心も足りんね。
 この旅でその性根を叩き直してやるとするかな!
 あたしはユピテルの首根っこを掴むと、新天地……じゃないけど、心新たに懐かしの我が家へ向けて出発するのであった。


◇◇


「馬車の旅っては暇だねえ」

 おにーちゃんからそこそこ旅費をゲットできたので、相乗りではない馬車を借りたけど、よくよく考えると見知らぬ旅人と話す機会を逃したようなものだ。
 くっ、あたしとした事が不覚っ!

『オイラ、エメラシティに行くのは初めてだけど、どんなトコなんだい?』

「んー、魔法学校の生徒ばっかり歩いてて、街並みは聖王都を少しショボくして白くした感じ? あと、屋台飯が美味い」

『それ、街の人が聞いたら怒るよっ! まあ、ご飯が美味しいってのは楽しみだけど――……ん?』

 ユピテルが何かに気づいたのか、ショートボウに矢をつがえると、御者さんに一声かけてから遠くへ一矢を放った!

『ギーギーッ!?』

 微妙に鳴き声が可愛くない角の生えたデカい鳥が、慌てた様子でどこかへ飛んでいった。
 アレはたしかクレイジバードとかいう、少しアレな名前の鳥型モンスターだったかな。
 気性が荒いうえに倒してもロクな素材が手に入らないので、むやみに殺生せずに遠くへ追い払うほうが良い~とか、おにーちゃんが言ってた気がする。

「おお、ありがとうなボウズ。追い払う手間か省けたぜ」

『へへっ、こんなの朝飯前さっ』

 褒められて一切謙遜することなく、自信満々に喜んじゃうなんて、やっぱりまだまだ子供だねえ~。

『サツキちゃん、何ニヤニヤ笑ってるのさ……』

「んー、さすが良い腕だな~って思ってただけだよ♪」

『むー……』

 あたしの返事に対し、ユピテルは全く信用してないオーラ全開でジト目を向けてきた。
 あたしとて君の腕に関しては認めておるというのに、まったく失礼なヤツだな。

「しかしお前さん、若いのに良い腕してんな。ってことは、お前さん達はエメラシティで行われる弓技大会に出るのかい?」

「『えっ!?』」

 あたしとユピテルの驚く顔を見て、御者さんはガハハと豪快に笑った。

「その様子じゃ、どうやら知らねえみたいだな。魔法都市エメラシティは今でこそ魔法学校の学生さん達で賑わってる街だが、あの辺は獲物も多く、かつては狩りが盛んな弓手アーチャーの聖地だった時代があるんだ。その頃の名残で、当時からの祭りは今も残ってるのさ」

『へ~~!』

 さすが弓が得意と自負するだけあってか、弓手の祭りと聞いてユピテルは少しワクワクしているようだ。

「飛び入り参加も出来るらしいし、せっかくだから腕試しのつもりでやったらどうだ?」

「うんうん、それが良いよ。今度こそ汚名返上できるチャンスだよユピテルっ!」

『ちょっと待って! 参加するのは良いけど、オイラいつどこで汚名なんて献上してたのさっ!?』

 む、名誉挽回だっけな?
 まあそんなのどっちでもいいや。

「なんだか楽しそうな旅になってきたよーっ! わくわくっ!!」

『うーん、オイラは先行きが思いやられるよ……』


【同日 夕刻】


<魔法都市 エメラシティ>

「んじゃ、頑張れよボウズ達~」

「ありがとうおじさんっ」

 てなわけで、日が沈む前に無事エメラシティへ到着~っ。
 それにしても、前は都会に来たばかりのテンションアゲアゲで気づかなかったけれど、夕暮れ時は白を基調とした街が夕日で光ってて、なかなかロマンチックな風景である。
 また今度余裕がある時に、おにーちゃんとエレナさんを連れてきて、二人きりで街に放り出してやろうっと。

『サツキちゃんったら、また何か悪巧み考えてる顔してる……』

 悪巧みではなく、いずれ家族になるであろう精霊ひとを導く「恋のキューピット」という重要な使命ミッションなのだけどなー。
 自分でも理由は分からないけど、誰かの恋路が上手く行くのを見ると、とても気分が良いのである。
 ……と、そんな事を思っていると、リュックサックの中からハルルとフルルがポンっと顔を出してきた。

『ふぃー、よく寝たっす』

『充電満タン……パワー爆発』

 やたら静かだと思っていたけど、どうやらふたりともグッスリ爆睡していたらしい。
 結構揺れの激しい馬車だったのに、なかなかタフだなぁ。

『んで、これからどうするんすか?』

「実は……かくかくしかじか……ってわけでユピテルが弓の腕自慢大会? に出るのだけど、まずは宿探しかな?」

 今の時期は日が長いけれど、悠長にしているとすぐに暗くなってしまう。
 これでもしも宿が取れずじまいになろうものなら、このままフルルにプラテナに連れて帰ってもらうことになり「さすがに二人きりにすれば少しくらい (以下略)大作戦」が初日から台無しになってしまうので、それだけは絶対に回避しなければならない。

「それじゃ早速、前に泊まったのとは違う宿を探してみよー」

『なんでわざわざ……』

「やはり冒険といえば未知への挑戦だからねっ」

『どんどん帰省が遠のいてゆく……』

「それはそれっ!」

『え、えええぇー……』

 それからあたしは、情けない顔で肩を落とすユピテルの手をギュッと握り、宿屋の並ぶエリアへと踏み出したのであった!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す

さとう
ファンタジー
大陸最大の王国である『ファーレン王国』 そこに住む少年ライトは、幼馴染のリリカとセエレと共に、元騎士であるライトの父に剣の稽古を付けてもらっていた。 ライトとリリカはお互いを意識し婚約の約束をする。セエレはライトの愛妾になると宣言。 愛妾を持つには騎士にならなくてはいけないため、ライトは死に物狂いで騎士に生るべく奮闘する。 そして16歳になり、誰もが持つ《ギフト》と呼ばれる特殊能力を授かるため、3人は王国の大聖堂へ向かい、リリカは《鬼太刀》、セエレは《雷切》という『五大祝福剣』の1つを授かる。 一方、ライトが授かったのは『???』という意味不明な力。 首を捻るライトをよそに、1人の男と2人の少女が現れる。 「君たちが、オレの運命の女の子たちか」 現れたのは異世界より来た『勇者レイジ』と『勇者リン』 彼らは魔王を倒すために『五大祝福剣』のギフトを持つ少女たちを集めていた。    全てはこの世界に復活した『魔刃王』を倒すため。 5つの刃と勇者の力で『魔刃王』を倒すために、リリカたちは勇者と共に旅のに出る。 それから1年後。リリカたちは帰って来た、勇者レイジの妻として。 2人のために騎士になったライトはあっさり捨てられる。 それどころか、勇者レイジの力と権力によって身も心もボロボロにされて追放される。 ライトはあてもなく彷徨い、涙を流し、決意する。 悲しみを越えた先にあったモノは、怒りだった。 「あいつら全員……ぶっ潰す!!」

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...