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てぃーぶれーく3
105-会いたいときに君は来る
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【聖王歴128年 赤の月 18日】
<プリシアの部屋>
「はぁ……」
『なにを窓辺で一人頬杖ついて黄昏れてるのさ。どこかの令嬢のマネゴト?』
「何を言ってるのピート……まあ、黄昏れている事は確かですけどね」
ここはプラテナ城。
プリシア姫とお供の聖竜ピートは、今日も街を巡ってから自室へと戻ったのだが、朝からプリシア姫はため息を吐いてばかりで元気がない様子。
『確かに、カナタやサツキが出てってから結構経つもんねえ』
「カナタ様の名前を先に出した事にとても悪意を感じますけど、正直その通りです。はぁ……」
茶化すつもりで言ったのに本当に素で返されてしまい、さすがのピートも困惑している。
いやはや一体どうしたものやらと、彼が内心困り果てていると――
ゴンゴンッ!
「『!?』」
乱暴気味に部屋のドアをノックする音が響いた。
家臣であれば、このように無礼な音を立てるようなコトは絶対にありえない。
『プリシアは下がってて』
ピートは彼女を護るようにして前へ出ると、警戒しながらドアへ向けて構え――
「プリシアちゃん、あーそーぼーっ!!」
やたら脳天気な声が響いて、思わずふたりはずっこけそうになる。
『その呼び方はどうなのさっ!?』
『まあ正常運転っすよね』
『うんうん……いつもどおり』
続いて聞こえてくる声も、聞き覚えのある方々ばかり。
「『……』」
プリシア姫とピートは互いに顔を見合わせ苦笑すると、やたら騒がしいドアへと向かっていった。
◇◇
「やっほー、久しぶり~」
「は、はあ……」
ところが、あれほど会いたいと思っていたサツキが戻ってきたにも関わらず、当のプリシア姫は困惑の表情でオロオロするばかり。
どうして彼女がそんな状況になってしまったのかというと、サツキの連れてきた『男性』に原因があった。
ユピテルのことかって? いやいや、そんなまさか。
ちなみに彼は部屋に入ってすぐに、ピートと一緒に旅の話を――
『えええっ、サツキと婚約だってっ!? なんでそんなことになってんのさ! 絶対ヤメときなって!!』
『オイラもそう思うんだけどさ、なんでだろう……』
……あちらはあちらで色々と積もる話もあるようだ。
さて、話を戻そう。
「あの、サツキちゃん……その方は?」
ついにプリシア姫は、サツキの連れてきた『装束姿の男性』について尋ねた。
彼はフードを深く被って素顔を隠しており、その姿はまるで冒険小説に出てくる悪役や暗殺者のような風貌だった。
体格……というよりも漂う雰囲気からして、この男性がカナタではないのは誰が見ても明らかである。
いつも何を考えているのかサッパリ分からないと実の兄にすら評されるサツキではあるものの、今回ばかりは友人たるプリシア姫にすらその意図がサッパリ理解できない。
「えっとね。この人をジェダイト帝国から連れてきたんだけど、いきなりだと騒ぎになりそうだったから、とりあえずプリシアちゃんに相談しようかなーって思ってさ」
「いきなり? 騒ぎ??? あなたは一体なにを……えっ!」
と、プリシア姫が訝しげな顔で問いかけたタイミングで、男性がフードを脱いで素顔を見せた。
その顔を一目見て、プリシア姫は目を見開いて絶句する。
「お久しぶりでございます、姫様」
「まさか貴方様は……な、なんということでしょう……!」
『誰その人、知り合い?』
パタパタと飛ぶ聖竜ピートの姿に、今度はフードを脱いだ男性も驚きに目を見開いて「おお……」と声を上げた。
互いに驚く姿を見て、サツキは内心「おもしろー」などと失礼なことを考えていたのだが、二人が双方ともに驚くのは無理もない話だった。
「彼の名前はアインツ……かつて中央教会の大司祭だった方です」
『えっ、それって……!!』
ピートは危うく言葉の続きを言いそうになってしまったものの、慌ててそれを飲み込んだ。
そもそも、数週間前にツヴァイの起こしたグレーターデーモン召喚事件が「帝国の陰謀によってアインツが殺されたことが原因」だったのに、その本人が生きていたのだから、話が根底から覆ることになる。
「……サツキちゃん、他にこの事を知っている人はいますか?」
「へ? 帝国の偉い人達は大抵知ってると思うよ」
「ぐはっ! ……それ、帝国軍の関与が確定じゃないですか……はぅぅ」
あっけらかんと言い放つサツキの姿に、プリシア姫は思わず頭を抱えてしまうのであった。
<プリシアの部屋>
「はぁ……」
『なにを窓辺で一人頬杖ついて黄昏れてるのさ。どこかの令嬢のマネゴト?』
「何を言ってるのピート……まあ、黄昏れている事は確かですけどね」
ここはプラテナ城。
プリシア姫とお供の聖竜ピートは、今日も街を巡ってから自室へと戻ったのだが、朝からプリシア姫はため息を吐いてばかりで元気がない様子。
『確かに、カナタやサツキが出てってから結構経つもんねえ』
「カナタ様の名前を先に出した事にとても悪意を感じますけど、正直その通りです。はぁ……」
茶化すつもりで言ったのに本当に素で返されてしまい、さすがのピートも困惑している。
いやはや一体どうしたものやらと、彼が内心困り果てていると――
ゴンゴンッ!
「『!?』」
乱暴気味に部屋のドアをノックする音が響いた。
家臣であれば、このように無礼な音を立てるようなコトは絶対にありえない。
『プリシアは下がってて』
ピートは彼女を護るようにして前へ出ると、警戒しながらドアへ向けて構え――
「プリシアちゃん、あーそーぼーっ!!」
やたら脳天気な声が響いて、思わずふたりはずっこけそうになる。
『その呼び方はどうなのさっ!?』
『まあ正常運転っすよね』
『うんうん……いつもどおり』
続いて聞こえてくる声も、聞き覚えのある方々ばかり。
「『……』」
プリシア姫とピートは互いに顔を見合わせ苦笑すると、やたら騒がしいドアへと向かっていった。
◇◇
「やっほー、久しぶり~」
「は、はあ……」
ところが、あれほど会いたいと思っていたサツキが戻ってきたにも関わらず、当のプリシア姫は困惑の表情でオロオロするばかり。
どうして彼女がそんな状況になってしまったのかというと、サツキの連れてきた『男性』に原因があった。
ユピテルのことかって? いやいや、そんなまさか。
ちなみに彼は部屋に入ってすぐに、ピートと一緒に旅の話を――
『えええっ、サツキと婚約だってっ!? なんでそんなことになってんのさ! 絶対ヤメときなって!!』
『オイラもそう思うんだけどさ、なんでだろう……』
……あちらはあちらで色々と積もる話もあるようだ。
さて、話を戻そう。
「あの、サツキちゃん……その方は?」
ついにプリシア姫は、サツキの連れてきた『装束姿の男性』について尋ねた。
彼はフードを深く被って素顔を隠しており、その姿はまるで冒険小説に出てくる悪役や暗殺者のような風貌だった。
体格……というよりも漂う雰囲気からして、この男性がカナタではないのは誰が見ても明らかである。
いつも何を考えているのかサッパリ分からないと実の兄にすら評されるサツキではあるものの、今回ばかりは友人たるプリシア姫にすらその意図がサッパリ理解できない。
「えっとね。この人をジェダイト帝国から連れてきたんだけど、いきなりだと騒ぎになりそうだったから、とりあえずプリシアちゃんに相談しようかなーって思ってさ」
「いきなり? 騒ぎ??? あなたは一体なにを……えっ!」
と、プリシア姫が訝しげな顔で問いかけたタイミングで、男性がフードを脱いで素顔を見せた。
その顔を一目見て、プリシア姫は目を見開いて絶句する。
「お久しぶりでございます、姫様」
「まさか貴方様は……な、なんということでしょう……!」
『誰その人、知り合い?』
パタパタと飛ぶ聖竜ピートの姿に、今度はフードを脱いだ男性も驚きに目を見開いて「おお……」と声を上げた。
互いに驚く姿を見て、サツキは内心「おもしろー」などと失礼なことを考えていたのだが、二人が双方ともに驚くのは無理もない話だった。
「彼の名前はアインツ……かつて中央教会の大司祭だった方です」
『えっ、それって……!!』
ピートは危うく言葉の続きを言いそうになってしまったものの、慌ててそれを飲み込んだ。
そもそも、数週間前にツヴァイの起こしたグレーターデーモン召喚事件が「帝国の陰謀によってアインツが殺されたことが原因」だったのに、その本人が生きていたのだから、話が根底から覆ることになる。
「……サツキちゃん、他にこの事を知っている人はいますか?」
「へ? 帝国の偉い人達は大抵知ってると思うよ」
「ぐはっ! ……それ、帝国軍の関与が確定じゃないですか……はぅぅ」
あっけらかんと言い放つサツキの姿に、プリシア姫は思わず頭を抱えてしまうのであった。
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