おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記

Imaha486

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第九章 東の国の白竜スノウ

114-想定外の遭遇

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 その後、泣き崩れるレネットをどうにか勇者パーティが泊まっている宿へと連れ帰ったのだが……。

『シクシクシク……』

「うーん、どうしたものか」

 カネミツが困惑した様子で呟くものの、さすがにこればかりはどうしようもない。
 なんたって、最愛の弟ユピテルと久しぶりに再会したかと思いきや、人間の小娘サツキにタコ殴りにされていたうえ、その殴打していた当人と婚約済みときたもんだ。
 そんな強烈な一撃を受け止めきれないままユピテルを連れて行かれてしまったのだから、その絶望的な表情はまるでこの世の終わりのようである。

「き、気を取り直して話の続きをしようか。どこまで話したっけ……」

「聖王都に戻るためにエルフの村を経由した~って話のあたりかな」

「ああ、そうだった! それで、僕達は再び戻ってきて、これからリティス女王へ会いに行くところだったんだよ。なにやら頼みがあるって、使いの人がやってきてさ」

 その言葉にエレナがハッとした顔で、カネミツに問いかける。

『あっ、あのっ。私達も御一緒させて頂けませんか!』

「えっ! うーん……僕は構わないけど、女王リティスはとても厳格な方だと聞いているし、失礼の無いように気をつけてくれるかい?」

『もちろんです! 本当にありがとうございますっ!』

 エレナの真剣な様子に冗談で言っているわけではないと察したのか、クニトキとシズハの二人も納得してくれているようだ。
 もしもここにサツキが居たらあまり良い顔はされなかっただろうし、下手すると断られた可能性もあったかもしれない。
 ヤツが猪突猛進ぶりを発揮して飛び出して行ってくれたのは、本当にナイスタイミングだったと言えよう。
 さて、これで勇者パーティ四人のうち三人の合意は得られたけれど、最後の一人はというと……。

『うっ、うっ、ユピテルちゃんぅぅ……ひぅぅ……うえーんっ!』

「だめだこりゃー」


◇◇


 結局レネットが泣き疲れて寝入ってしまったため、俺達五人だけで城へと向かうことになってしまった。

「レネットがあんなに取り乱すなんて、本当に驚いたよ……」

「ですね。しっかり者のおねーさんって感じで、私も頼りっぱなしだったんですが……。もしかすると、かなり無理をしていたのかもしれませんね」

「うむ。拙者達もレネット殿の負担にならぬよう、各々で彼女を助ける配慮も必要であろう」

 クニトキの言葉にカネミツとシズハともにウンウンと頷く。
 仲間想いな言葉の数々にエレナは嬉しそうに微笑んでいるけれど、きっと俺やシャロンが同じ場面に出くわしたとしても、こういう流れにはならなかっただろうなぁ。

「それにしても女王様じきじきのお願いって、なんなのでしょうねぇ」

「わざわざ僕達に言うくらいだからね。凶暴な魔物を退治してほしいとか、そういう依頼だと思うんだけど」

 さすが勇者、なかなか良い勘をしている。
 厳密に言うと魔物どころか、ホワイトドラゴンの討伐なのだけども。
 かつて俺が見た世界では「シャロンが偶然放ったフレアストームが直撃!」という謎すぎるラッキーパンチで倒せたものの、今回のメンバーではどうなるやら……。
 そして、城門前までやってきたところで、俺達の姿に気づいた衛兵が駆け寄ってきた。

「ようこそおいでくださいました勇者様! さあさあ、こちらへどうぞ!」

 そのまま謁見の間へと案内された俺達は、ついに女王リティスのもとへ~……って、あれ?

「じ~……」

 なにやら物陰から熱い視線を感じる。
 俺がそちらへ目を向けると、視線の主は慌てて柱の後ろに隠れてしまった。
 ……えーっと。

「あの、どうされました?」

「わあっ!?」

 柱を覗き込むように話しかけたところ、相手は驚きのあまり悲鳴を上げて飛び退いてしまった。

「驚かせてすみません。俺達に何か用がありそうな感じですけど……?」

「えっ、あのっ、その……!」

 相手が衛兵や常駐の神官であればフランクに話しかけるところだが、今回は相手が相手だけあって、丁重に応対しております。
 だって、この方は――

「いきなりジロジロ見るような無礼、大変申し訳ありません! 私はシディアと申します……」

 彼の名を聞いて、カネミツが「えっ!」と驚きの声を上げた。

「その名前! もしかして、君はリティス女王の?」

「勇者カネミツ殿にご存知頂けているとは、大変光栄です」

 そう言いながら、イケメンパワー全開で微笑む彼の笑顔がなんとも懐かしい。
 てなわけで、彼の正体は女王リティスの実子――つまり、この国の王子様である!
 なんだか気弱でオドオドしている印象はあるものの、そこにイケメンという要素が付与されるだけで、なんとビックリ「護ってあげたい男子」が爆誕するわけである。

「カナタと同じ質問をするけど、僕達に何か用事かい?」

 カネミツから問われた王子は、何故か一瞬だけ俺の方へチラリと目線を向けてから事情を話し始めた。

「母が勇者様に頼み事があると伺いまして……。きっと、北の山に住むホワイトドラゴンを退治してほしいというお願いだと思うのです」

「ドラゴンだって!?」

 ……あれ?

「はい。ホワイトドラゴンはとても獰猛どうもうでして……。私達のような小さな人間など、一呑ひとのみで食べられてしまうでしょう」

「ひぇ~~っ」

 シディア王子の言葉に、シズハがおかしな悲鳴を上げる。
 それから彼はホワイトドラゴンの危険性を色々と説明してくれてる……んだけど、なんだかおかしい。

『カナタさんカナタさんっ!』

 エレナも気づいたのか、小声で呼びかけながら俺の鞄の紙束をめくると、一文を指差してヒソヒソ声を話し始めた。

『あの方が合流するのは明日ですっ。一日早いですっ』

「分かってるよ。しかも、王子が討伐に全然乗り気じゃないのもおかしい。俺ん時は、一緒に討伐に行かせてくれとまで言ってたのに」

『ですですっ!』

 本来ならば、この後ホワイトドラゴン討伐を引き受けた勇者パーティは宿へと戻り、翌日出発の直前に彼と出会うはずだった。
 その時はホワイトドラゴンが危険なんて一言も言わなかったし、むしろ山頂へ急いで向かおうとしていたくらいだ。

「それに、ホワイトドラゴンのうろこは鋼鉄よりも堅いのです! 我が国の兵士では誰も太刀打ちできません!」

「はあ……」

 そんなこんなで、俺とエレナがナイショ話をしている最中も、シディア王子はただひたすら「ホワイトドラゴンの怖さ」を延々と語るのであった……。
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