おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記

Imaha486

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最終章 愛しきひとを救う者カナタ

205-世界を救うための闘い

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【テスト完了】
 メインモジュール準備完了。
 フォーマット実行開始までの推定時間 null 秒。
 プログラム実行開始。

 夜空に輝く巨大な天使の翼がつぼみのように閉じた途端、巨大なキャノン砲のような形状へと変化してゆく。
 中央に込められた魔力が地上へと衝突すれば、この世界は無へと還るだろう。

「くそっ……!!」

 勇者カネミツが剣を構えたまま悔しげに空を見上げるものの、彼の仲間達は先の【テスト砲撃】で皆、満身創痍となっていた。
 このまま己の無力さを呪いながら、世界の終わりを――

「そんなこと、許せるはずがないだろうッ!!!」

 勇者は心から女神フローライトへと祈りを捧げた。
 いや、それは祈りというにはあまりにも乱暴な感情だった。
 だって、彼が心で叫んだ言葉は……


「せめて一度くらい、僕の願いを聞けッ!!!」


 その時、彼の構えていた剣が金色の輝きを放った。
 眩い光に驚く勇者の前で、その剣は煌びやかな宝石で装飾された長剣と変化してゆく。
 初めて見るはずなのに、何故かとても懐かしい気持ちがこみ上げてくる。

「こ、これは……!」

 勇者の脳裏には【輝かしい未来】の姿が浮かんでいた。
 自らの剣によって生まれた聖なる光が巨大な魔物の闇を払い、勇敢な仲間達が立ち向かう姿を。

「ありがとうございます」

 かつては生まれの不幸を呪い、心の中では自らの運命を疎ましく感じていた彼が、初めて心から神への感謝の言葉を口にした。
 両手で聖なる剣を頭上に構えたカネミツは、かつての【別の未来】の自分と同じように叫ぶ。

「聖なる剣よ、闇を打ち払え!!」

 刀身から伸びた一筋の光が天を貫き、上空にそびえる砲台を撃ち抜いた。
 闇に覆われた空の一郭から放たれる聖なる光を見つめながら、地上の民はひたすらに祈る。
 続けて大きな爆発が起こり、大空が光に包まれた。
 眩い光が収まった後、そこにあったのは――

「なん……だと……」

 上空でこちらに砲身を向けた巨大な大砲が、そのままの姿で残っていた。
 勇者は愕然としながら、ただただ上空のそれを眺めるしかなかった。

「僕には、世界を救う資格は無いと言うのか……?」

 その呟きは誰に対してのものなのだろう。
 神へ向けた言葉か、それとも自分自身か?
 勇者の心に絶望の色が浮き上がりかけたその時!

「んなコトはねえよ勇者様」

「!?」

 勇者の眼前に一人の男が現れた。
 彼は――……俺はカネミツの肩を軽く叩いてから、近くでコロンとともに横たわるシャロンの頭を撫でてやった。
 どうやら手を上げる気力すら残っていないみたいだけど、ぐったりと脱力しながらもその目は「来るの遅すぎ」と文句を言っているように見える。

「ヒール」

 俺は【エレナからの借り物】のネックレスの力で小さな身体を癒し、空を見上げた。

【フォーマットを開始します】
 進行率 0 %

 天啓に書かれた言葉の意味はわからない。
 だが、空の上のヤツからの攻撃を防ぐことができなければ、きっと全てが無へと還るのだろう。

「おにーちゃん」

 声をかけられて目線を地上へ戻すと、サツキ達が歩み寄ってきた。

「よう、久しぶり」

「えっと…………頑張って。だから……うん」

 俺がひとりで戻って来た姿を見てサツキは何かを察したのか、そこで黙ってしまった。
 悲しげにうつむく妹の頭を……とりあえずチョップしておこう。

「いてっ!?」

「ったく、お前はそこまで気遣わなくていいんだっつーに」

 傍若無人なくせに、昔からこういう時に限って人一倍に気を遣いすぎる愚昧のおかっぱ頭をガシガシと乱暴に撫でつつ、魔王オーカに話しかけた。

「やあ、魔王様」

『貴様はアレ・・をどうにかできるか?』

 開口一番で問われてしまい空を見上げると、大砲の先端に魔力が圧縮されていくのが見えた。
 どうにかできるかと言われたって、シーフである俺がどうこうしようってのがそもそもおかしいんだよなあ。
 けれど……。

「ま、やるっきゃねえさ」

『うむ、期待しておるぞ』

 やたら上から目線で胸を張るオーカの姿に思わず苦笑する。
 時を同じくして、上空から一筋の光の刃が真っ直ぐに聖王都へと飛来してきた。
 街の上層へ張られた防御結界は触れた途端に存在そのものが消滅し、プラテナ城の最上階も根こそぎ消し飛ぶ様子が視界の隅に入る。
 予想通り、とんでもねえシロモノだ。

「――来いッ!!!」

 俺は右手を天に掲げて叫んだ。
 拳に向けて魔力が集約し――
 
 




【】



【】



【……Now loading】



【ユニークスキル 全てを奪う者】
アンロックに成功しました。スキル使用可能です。


 直後、自分の背丈の数十倍もあろうかという超巨大な光の刃が頭上にズドンとのしかかる!
 光に触れた建造物は全て虹色の光を放ちながら三角やら四角の破片となって飛び散り、宙へと四散してゆく。
 俺は魔力を帯びた右手を高く突き上げ、光の刃を思いきり殴――あまりの衝撃に意識がぶっ飛びそうになった!?

「やっべえなコレ……」

 光の刃に触れた建物が容赦なく消し飛んだ状況から察していたけれど、いま眼前に迫っている光には殺意も悪意もない。
 ただ純粋に、全てを終わらせることだけを目的とした殺意の塊だった。

「くっ…………そ…………」

「お兄ちゃん……」

 サツキが心配そうに問いかけてくるものの、応える余裕はない。
 視界がまるで、砂嵐に襲われたかのようにざらついてゆく。
 だけど……だけどな!!

「あんだけ大口叩いて負けるなんて、クソ格好悪いだろうがッ!!」

 俺は右手の拳で光の刃を殴りつけたまま、空いた左手に魔力を込める。
 そして……最愛のひとを消し去った呪いの言葉を口にした。

「Process Termination!!!」

 左手から放たれたそれが光の刃に当たった途端、空を埋め尽くしていたそれは砕けて虹となって消えた。
 暗闇に覆われていた空へ陽光が戻り始めた様子に、皆から感嘆の声が漏れる。

「やったか……!」

 ライナス殿下の呟きに対して何故かサツキが舌打ちした直後、空の向こうに新たな天啓が現れた。


【システムメッセージ】
 フォーマットに失敗しました。
 再試行しますか? (Y/n)Y
 準備中です。


「再試行って……」

『もう一回撃つ……という意味かの?』

「だよな」

 巨人は砲台のような姿から人型へと戻り、再び魔力を集め出した。
 だが長期戦に持ち込まれると、俺の魔力が切れた時点で負けが決まる。
 それじゃ、一体どうすれば良いんだ!?
 次の一手が思い浮かばないまま困惑していた矢先、目の前に金色の光の門が出現した。
 そこから出てきたのは、二人組の天使セツナとディザイア、妖精ハルルとフルルであった。

『ぎりぎり……セーフ』

 どうやら先の光の刃に巻き込まれそうになったところを、フルルの空間転移で回避できたらしい。
 ハルルは妹と再開できた喜びからか、涙やら鼻水でベショベショになっていて、フルルは無表情ながらも微妙にゲンナリとした表情をしているのはさておき。
 続いて光の門から現れたセツナが、白い翼をひるがえしながら空を指差したかと思いきや、意外な言葉を口にした。

『みんな! 空に向けて、ありったけの魔法を叩き込んで!』

「えっ?」

『さっき勇者クンの剣が放った光の力で、防壁は全てリジェクト……じゃなくて、無効化されてるの! 今なら全員の力を合わせればヤツを倒せるわ!!』

「……ッ!!」

 一瞬だけ周囲が静寂に包まれ、それから大きな喊声かんせいが上がった!

「これで助かるのか!」

『ククク、我が全力を見せてやろうぞ!』

「私も頑張るっ!」

 セツナの言葉を受け、世界の終わりが来るのかと打ちひしがれていた者達が一斉に立ち上がった。
 そして上空に向けて凄まじい数の魔法が一斉に放たれてゆき、まるで大量の花火を打ち上げたかのように光で染まってゆく。


【繧キ繧ケ繝�Β繧ィ繝ゥ繝シ】
 縺ェ繧薙〒蠕ゥ蜈�r隧ヲ縺励※繧九�縲�


「なんか天啓がおかしくなってるんだけど……」

『なるほど……わかる』

「なんでアレでわかるんだよ」

 けれど、これでようやく終わりが見えてきた。
 このままヤツを撃ち落とすことができれば、俺達の……!

「あれ?」

 膨大な数の魔法と爆発によって真っ白に染まった視界の隅に一つ、小さな天啓が見えた。
 一瞬思い出せなかったけど、これは危機感知スキルの警戒の言葉だ。
 そこに書かれていたのは――


【危機感知】
 即死リスク 極大
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