上 下
1 / 3

最後の会話。

しおりを挟む


高校を卒業して高校の親友のヤマと同じ隣市の企業へ就職し
いざ社会人生活、
新しい生活に期待と不安を抱えつつも 職に就いて2か月。
馴れもしない新しい毎日の作業を 模索しながら

このご時世だ すぐに辞めて馬鹿にされるもんか。一生この会社で食ってってやる。と、
学のない僕らは、そんな思いで日々に打ち込んでいた。

昨晩は休みで、俺は地元の幼馴染らと一緒に カラオケへ足を運んでいた。

「にしても久しぶりだよな!こうやって年を重ねてからも男女関係なく普通に遊べる関係性を築けたことにあらためて感謝だよ!」

和気あいあいとそれぞれの近々報告、コイバナ、夢や目標の話で盛り上がった。18の頃だった。



初心者マークの付いた幼馴染の車で自宅の近くまで送ってもらい
「今日はありがとう!足になってもらってわるかったんな。おくってくれてさんきゅ!また遊ぼう」

そんなやり取りをしながら友人らの乗った車を手を振りながら見送った直後
後ろから兄が車を運転しながら窓をおろした。

「今帰り?」
「ただいま。お出かけかい?」
「ちょっと行ってくる。なんかいる?」
「お。んー。えー…今浮かばないからなんかあったら電話しようかな。曇ってるから気をつけて」


「あいよ、行ってくる」


「気を付けてねー行ってらっしゃい。」


・・・

これが、これだけが



十数年間一緒に暮らして、遊んで、喧嘩もして、おふざけが過ぎて危うく殺されかけたり、同じテレビを見て笑ったり、同じお風呂に入って
同じ部屋の布団で寝て、
母の作るご飯を食べて育った。

そんなミツキとの一生で最後の会話は、こんなにも日常的で、たわいも無い会話だった。


朝、AM8:00頃
第一発見者は土地の地主

人気のない丘の見晴らしのいい梅林横の一本の木で、ミツキは見つかった。

僕の誕生日の1週間前の出来事だった。
しおりを挟む

処理中です...