【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

恩田璃星

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「俺がここに来たのは終わりを見届けるためだ」

「終わり…何の…?」

「千歳の…初恋?」

私の長年の想いを嘲るような疑問形の口調にカッとなる。

「私の初恋の終わりって…晴臣も知ってるでしょう?私はただ遼平くんの側にいられればそれでいいの。気持ちを伝えたり、どうにかなりたいわけじゃない。だからこの恋はずっと終わらない。終わったりしない」

「…なあ、そんなの、本当に恋って言えると思うか?」

いつもの、冷ややか視線が私の怒りを焚きつける。

「何よ。ちょっとモテるからって、恋愛マスターにでもなったつもり?」

「まさか。俺だって、今まで好きになったのは一人だけだ。それも、もう随分長いこと全く相手にされてない」

よく言う!あんな何人もの女の子達と付き合っておいて。
という言葉が続かないのは、冷めかけた晴臣の目にまた見慣れない熱が宿るから。

「でも、どんなに我慢していても、本当に好きならいつか必ず、どうしようもなく気持ちを伝えたくなる日が来る」

まるで私と同じくらい、いや、それよりも長い間想いを募らせて来たかの様だ。

「そ、そんなこと、何で晴臣に分かるのよ?」

「俺が、そうだからだ」

晴臣がー?

まさか。
まさかね。
ありえないと思っていても、続きを聞くのが怖い。

「は、晴臣、新しい彼女できたの?」

不自然な質問をした意図を見透かしたように、晴臣はハッキリと言った。

「はぐらかすなよ。いくら鈍くても分かるだろ?千歳のことが好きだって言ってるんだ」

晴臣が
私のことを
好き

「う、嘘―」

ここまで言われても、まだ信じられないでいると、そっと晴臣が私の手を取り、自分の胸の上に重ねさせた。

「これでも信じない?」

スーツの上からでも分かるほど、心臓がドクドクと跳ね上がっている。

いつも澄ました晴臣がー
ピアノのコンクールでも、テニスの試合でも、英語の弁論コンテストでも、大学入試でも顔色一つ変えることのなかった晴臣の心臓が、こんなになるなんて。

「でも…だって、晴臣、色んなコと付き合ってたじゃない」

「それは…千歳が言ったんだろ。『どうせ親が決めた婚約だし、晴臣が適当に遊んでくれた方が、私も心置きなく遼平くんに片思いできる』って」

言った。
確かに言った。

晴臣に、遼平くんへの気持ちを見破られ、問い詰められた時。
永美ちゃんへの罪悪感を誤魔化すために、自分を正当化するために、ほとんど八つ当たりに近い言い方で。

晴臣が彼女をとっかえひっかえし始めたのは、思い返せばその頃からだ。

彼女たちと別れるときに使っていた常套句、『俺には千歳がいるから』は嘘偽りのない、晴臣なりの誠意だった?

と、いうことは、本当の本当に、晴臣は私を好きー?
でも、私はー

「晴臣。私―」

「言うな」

謝ろうとした私の顎を晴臣はクイッと持ち上げると、またもキスで唇を塞いだ。
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