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本当の嘘
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高嶺くんはまた仕事が立て込んでいるらしく、私が高嶺くんの事務所を訪れてからあっという間に2週間が経ち、外の景色もすっかり秋めいてきた。
その間、マメに…とまでは行かないけれど、何度か高嶺くんからメッセージが届いていた。
内容はもちろん『好き』とか『早く会いたい』といった甘い類のものではなく、『会議が長い』とか、『研修がだるい』とか、何気ないものが主だった。
でも、時々『他の男のレッスンとか入れてないだろうな?』なんてものも来たり。
私は常に首からスマホをぶら下げて待機→即読→即レスしていたら、
「顔、必死過ぎ」
と、東海林くんに笑われてしまった。
「…ってソレ、もしかして、弁当ですか?」
かばんと一緒に持ち上げた手荷物を指摘される。
「うん。ちょっとリクエストされちゃって」
そう。
昨日の夜高嶺くんからやっと仕事が一段落ついたと連絡があり、張り切って作って来たのだ。
今は待ち合わせについての連絡を取り合っていたところだ。
裁判が終わって、もう結構近くまで来ているらしい。
「じゃあ、行ってきます」
と立ち上がった瞬間─
視界に半分靄がかかった。
まずい。
そう思ったと同時に、今度は足元で何かが砕けた感触。
片目からコンタクトレンズが落ちて、自分で踏んづけて割ってしまったのだった。
“誠に申し訳ございません。急遽行けなくなりました”
裸眼の方の目だけを瞑って、何とか高嶺くんにメッセージを送った私を、瑞希が責めたてる。
「だーーからあれほどさっさとソフトレンズに変えなって言ったのに!黒目も盛れるし!!」
「近視だけならソフトでもいけるけど、私は乱視も酷いから無理なんだってば」
ちょっと反論できちゃうのは、既に反対側のコンタクトも外してしまった目では、瑞希の迫力ある美人顔も見えないからだ。
ちなみに、こんなことは初めてで、予備のコンタクトもメガネも会社には置いていない。
それでも外したのは、左右の見え方の違いが大き過ぎて、気持ちが悪くなってしまうから。
自慢じゃないけど、それくらい、目が悪い。
なにせ瑞希に出会うまでは瓶底眼鏡をかけていたくらいだ。
「今日は仕事になんないから、もう帰っていいわよ」
「ありがとう。そうさせてもらう」
声のする方に向かってお礼を言って歩き始めればお約束。
三歩も歩かないうちに配線カバーに蹴躓いた。
「わあぁっ!!」
「…っぶな!!」
顔で着地しかけた私を華麗に抱きとめてくれた声の主は、東海林くんだった。
そして無駄のない動きで私を真っ直ぐ立たせながら、続けた。
「送っていきますよ。俺、どうせ今日の予約までちょっと時間あるんで。静花さん、俺の腕に掴まって」
これはきっと、瑞希の前でいいところ見せたいんだな。
「じゃあ、お願いします」
ニヤニヤしてしまうのを我慢しながら、お言葉に甘えることにした。
その間、マメに…とまでは行かないけれど、何度か高嶺くんからメッセージが届いていた。
内容はもちろん『好き』とか『早く会いたい』といった甘い類のものではなく、『会議が長い』とか、『研修がだるい』とか、何気ないものが主だった。
でも、時々『他の男のレッスンとか入れてないだろうな?』なんてものも来たり。
私は常に首からスマホをぶら下げて待機→即読→即レスしていたら、
「顔、必死過ぎ」
と、東海林くんに笑われてしまった。
「…ってソレ、もしかして、弁当ですか?」
かばんと一緒に持ち上げた手荷物を指摘される。
「うん。ちょっとリクエストされちゃって」
そう。
昨日の夜高嶺くんからやっと仕事が一段落ついたと連絡があり、張り切って作って来たのだ。
今は待ち合わせについての連絡を取り合っていたところだ。
裁判が終わって、もう結構近くまで来ているらしい。
「じゃあ、行ってきます」
と立ち上がった瞬間─
視界に半分靄がかかった。
まずい。
そう思ったと同時に、今度は足元で何かが砕けた感触。
片目からコンタクトレンズが落ちて、自分で踏んづけて割ってしまったのだった。
“誠に申し訳ございません。急遽行けなくなりました”
裸眼の方の目だけを瞑って、何とか高嶺くんにメッセージを送った私を、瑞希が責めたてる。
「だーーからあれほどさっさとソフトレンズに変えなって言ったのに!黒目も盛れるし!!」
「近視だけならソフトでもいけるけど、私は乱視も酷いから無理なんだってば」
ちょっと反論できちゃうのは、既に反対側のコンタクトも外してしまった目では、瑞希の迫力ある美人顔も見えないからだ。
ちなみに、こんなことは初めてで、予備のコンタクトもメガネも会社には置いていない。
それでも外したのは、左右の見え方の違いが大き過ぎて、気持ちが悪くなってしまうから。
自慢じゃないけど、それくらい、目が悪い。
なにせ瑞希に出会うまでは瓶底眼鏡をかけていたくらいだ。
「今日は仕事になんないから、もう帰っていいわよ」
「ありがとう。そうさせてもらう」
声のする方に向かってお礼を言って歩き始めればお約束。
三歩も歩かないうちに配線カバーに蹴躓いた。
「わあぁっ!!」
「…っぶな!!」
顔で着地しかけた私を華麗に抱きとめてくれた声の主は、東海林くんだった。
そして無駄のない動きで私を真っ直ぐ立たせながら、続けた。
「送っていきますよ。俺、どうせ今日の予約までちょっと時間あるんで。静花さん、俺の腕に掴まって」
これはきっと、瑞希の前でいいところ見せたいんだな。
「じゃあ、お願いします」
ニヤニヤしてしまうのを我慢しながら、お言葉に甘えることにした。
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