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奇襲
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言葉のナイフで、頭から真っ二つに引き裂かれたような感覚。
頭も心もぐっちゃぐちゃで、まともに動かない。
「そんな…そんなワケないわよね?違うならちゃんと否定しなさいってば、静花」
瑞希に優しく諭されたって、唇を動かすことすらできない。
「伊藤サンでしたっけ?あなたもお気の毒ね、こんな女に騙されて。でもまあ、仕事の上だけでの付き合いしかない相手に、いちいち身の上話なんてしないか」
いつもの瑞希だったら、絶対に『私と静花は高校時代からの親友です!!』と言い返してくれるはず。
でも、その言葉は聞けなかった。
他の誰でもない。
全部、全部、私のせいだ。
「これは忠告ですけど、母娘して平気で人のものを盗ったり騙したりするような人間は、早く辞めさせたほうがいいですよ?そのうち会社も乗っ取られたりして」
言いたいことを言うだけ言って、森永さんがLove Birdsを去って行った後も、社長室には長い長い沈黙が横たわっていた。
最初に口を開いたのは、瑞希だった。
「今の話……、本当なの?」
こんなに動揺している声は、初めてで。
頭の中で、言い訳が浮かんでは宙に消え、何も言葉にならない。
怖くて、怖くて、瑞希の顔を見ることすらできず─
気が付いたら会社を飛び出していた。
最悪だ。
最悪な形で瑞希に知られてしまった。
耳の奥にこびりついて離れない、瑞希の声。
きっと、軽蔑されてしまった。
ずっと騙してたことも怒ってるに決まってる。
こんなことになるくらいだったら、高嶺くんに再会した時点で全部ちゃんと打ち明けていれば良かった。
そうだ、高嶺くん。
高嶺くんにももう会えない。
森永さんの言うとおり、お母さんのせいで高嶺くんのご両親が離婚したんだったら、どの面下げて高嶺くんに会えるっていうの?
万一高嶺くんが赦してくれているとして、その上で私を好きだと言ってくれていたら─
余計に私自身が許せない。
まるで高校のときと同じだ。
また居場所がなくなってしまった。
でもあの時は、すぐに瑞希に出会えたから、なんとかここまでやって来れた。
そして、高嶺くんにも再会できた。
二人とも大好きで、大切で。
私にとって、眩しすぎる宝石のような。
誰にも代わりのきかない、かけがえのない存在。
なのに、もう会えない。
ねえ、これ。
もう私、生きてる意味、なくない?
強い衝動が、車の流れる車道に向けて私の足を突き動かす。
けたたましくクラクションを鳴らしながら迫りくるトラックに、固く目を瞑り、身を委ねた。
頭も心もぐっちゃぐちゃで、まともに動かない。
「そんな…そんなワケないわよね?違うならちゃんと否定しなさいってば、静花」
瑞希に優しく諭されたって、唇を動かすことすらできない。
「伊藤サンでしたっけ?あなたもお気の毒ね、こんな女に騙されて。でもまあ、仕事の上だけでの付き合いしかない相手に、いちいち身の上話なんてしないか」
いつもの瑞希だったら、絶対に『私と静花は高校時代からの親友です!!』と言い返してくれるはず。
でも、その言葉は聞けなかった。
他の誰でもない。
全部、全部、私のせいだ。
「これは忠告ですけど、母娘して平気で人のものを盗ったり騙したりするような人間は、早く辞めさせたほうがいいですよ?そのうち会社も乗っ取られたりして」
言いたいことを言うだけ言って、森永さんがLove Birdsを去って行った後も、社長室には長い長い沈黙が横たわっていた。
最初に口を開いたのは、瑞希だった。
「今の話……、本当なの?」
こんなに動揺している声は、初めてで。
頭の中で、言い訳が浮かんでは宙に消え、何も言葉にならない。
怖くて、怖くて、瑞希の顔を見ることすらできず─
気が付いたら会社を飛び出していた。
最悪だ。
最悪な形で瑞希に知られてしまった。
耳の奥にこびりついて離れない、瑞希の声。
きっと、軽蔑されてしまった。
ずっと騙してたことも怒ってるに決まってる。
こんなことになるくらいだったら、高嶺くんに再会した時点で全部ちゃんと打ち明けていれば良かった。
そうだ、高嶺くん。
高嶺くんにももう会えない。
森永さんの言うとおり、お母さんのせいで高嶺くんのご両親が離婚したんだったら、どの面下げて高嶺くんに会えるっていうの?
万一高嶺くんが赦してくれているとして、その上で私を好きだと言ってくれていたら─
余計に私自身が許せない。
まるで高校のときと同じだ。
また居場所がなくなってしまった。
でもあの時は、すぐに瑞希に出会えたから、なんとかここまでやって来れた。
そして、高嶺くんにも再会できた。
二人とも大好きで、大切で。
私にとって、眩しすぎる宝石のような。
誰にも代わりのきかない、かけがえのない存在。
なのに、もう会えない。
ねえ、これ。
もう私、生きてる意味、なくない?
強い衝動が、車の流れる車道に向けて私の足を突き動かす。
けたたましくクラクションを鳴らしながら迫りくるトラックに、固く目を瞑り、身を委ねた。
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