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大人のお遊戯でトラウマ克服編
6
しおりを挟む自分の口内に響く、ちゅくちゅくいう水音が、頭に直接響いて、何も考えられなくなってくる。
さっきまで冬馬のシャツを握りしめていた手は、いつの間にか冬馬の腕に添えるだけになっていた。
蕩けてしまった私に気付いた冬馬が、唾液の糸を光らせながら唇を離そうと体を起こしかけた。
「ヤ…もっと」
冬馬の首に腕を回して引き寄せると、「しょーがねえな」と苦笑いしながら応えてくれた。
ああ、幸せだ。
唇から伝わる熱に、心まで温かいもので満たされる。
キスだけで十分かも、という考えがほんの一瞬、頭を過ぎった。
でもー
私の体の奥底が、この先にある快楽を求めてきゅうっと疼いた。
「冬馬…、触って」
何とか次の指令を絞り出したものの、冬馬からダメ出しのような質問が飛んできた。
「…どこを?」
「…っ、本当に本当の初体験だったらこんなこと絶対言えないよ!!」
「分かってるけど、ちゃんと言わねーと、俺、今もうけっこーヤバイから」
冬馬はそう言いながら下半身を、私の太もも付け根に軽く滑らせた。
それだけで、そこが既にガチガチになってるのが分かって、こちらも思わず身を固くする。
すると冬馬は、蓄積された体の中の熱を出すみたいに、息を深吐き切ってから続けた。
「そんなにビビんなって。かなりキツいけど、この格好のお前から求められるのは、同じくらい嬉しいし。だから、何とか最後まで保たせる」
こんなカッコ付かないセリフに愛おしさがこみ上げるなんて、私もすっかり冬馬に毒されてるな、と心のどこかで呆れながらも、キスを強請ったときよりも自然に口が動いた。
「…胸、触って…欲しい」
口は自然に動いても、消えそうなくらい小さな声。
でも、ちゃんと冬馬の耳には届いていたらしい。
大きな両手が、お世辞にも大きいとは言えない私の胸を柔らかく持ち上げるように揉みしだく。
「…ふっ、んっ、はぁっ」
いつもみたいに性急な手つきとは全然違う、優しい手つきに、吐息に混じって声が漏れてしまう。
「…制服の上から触っても分かるくらい固くなってるな、ココ」
人差し指と親指で、的確に敏感な先端を摘まれると、恥ずかしいくらい体がビクンと震えた。
「あ、あっ、あぁっ!!」
「…このままずっと、直接触らなくていい?」
心なしか、問いかける冬馬の声がさっきより低くなった気がした。
恐怖とは違う種類の戦慄が、背中を駆け抜ける。
「はず、してっ、背中の…ホック」
言い終わったのとほぼ同時に、上半身にあった締めつけ感が消えた。
本当に初体験だったら、こんな、光の速さでブラのホックを外されたら嫌だと思う。
それも、片手で‥。
なんてことを考える余裕があったのは、一瞬だった。
下着ごとたくし上げられ、露《あら》わになった胸の先端を、冬馬は服の上からしたのと同じように、親指と人差指で摘んだ。
「ひゃあぁっ」
くりくりと捏ね回され、強い刺激に背中が勝手に反り返ってしまった。
「…気持ちいい?」
指先の嬲るような動きは止めないまま。馬乗り状態の冬馬が、私を見下ろしながら問いかけてくる。
答えようにも、口から溢れるのは、はしたない喘ぎ超えばかりだ。
「なあ…気持ちいい?」
指の動きが、押しつぶしながら捏ねるものに変わって、もう一度確認するように問われた。
「そ…そんっ、なの!きかなくっ…たって、わかるで…しょっ!!」
「……分かんねーよ。どんなに甘い声で喘いでも、どんなにココ固くしてても…」
ここまで乱しておいてそれはないでしょう!
と、言おうとしたら、これまで執拗に動かされていた冬馬の指がピタリと止まった。
「制服着てるお前のことは、分かんねーことだらけなんだよ」
さっきと言ってることが矛盾してる。
「私の事、ずっと見てたから、色々知ってるんじゃなかったの?」
「それは、観察して分かる範囲のことだけだ。あの日までに、お前に触れられる距離まで近づけたのは、二回だけ。触れたのは一回だけ」
一回は教室で、眠りこけてた私にキスした時って言っていた。
二回目はいつだろう。
「だから、お前のどこがイイのかなんて検討つかなくて…さっき、無理やり犯ったこと、後悔してないって言ったけど、内容的には後悔しかない」
「内容…?」
「…処女に『超つまんなかった』って言わせちまったからな」
さっきまで甘々だった空気が一気に凍りつく。
言った。
確かに言った。
『つまんなかった』って。
当時天下の女たらしだった桐嶋に。
でもー
「い、言ってない!つまんなかったとは言ったけど、『超つまんなかった』とは言ってない」
くっきりと刻まれた眉間の皺が、怖すぎて、体が勝手に冬馬から逃げようとする。
「逃げんな!!」
それを見逃さなかった冬馬が私を抱きしめた。
「…その格好で俺から離れようとするの、止めてくれ」
あまりの力の強さに、体が痛い。
「お前にキレてるんじゃない。自分にムカついてるだけだ」
冬馬の匂いに包まれながら、私の体の痛みは、冬馬の心の痛みかも、なんて考えたりした。
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