惑星だった僕が異世界転生して人として生きるときに語ること

来麦さよのすけ

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第15話 宿屋

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 リーシアさんが門番さんと話しているあいだ、エミーさんはずいぶんとおとなしかった。
 通行証を取り出すときのしぐさも妙に奥ゆかしく、「私はしがない弱々よわよわヒーラーですぅ」という感じを装っている——ようにみえる。
 ここに来るまでのはっちゃけぶりとは、ずいぶん雰囲気が様変わりしていた。

「さてさてっ。久しぶりのお宿ですし~? 今日はふかふかお布団でぬっくぬく。あったかいごはんもぱっくぱく♪」

 門を抜けてからのエミーさんの様子はこんな感じ。うん、態度がずいぶん変わるなあ。

「——ところで、あの門番さん、なかなかのものでしたね~?」
 ちらりと目線を背後の門に送りながらエミーさんは笑っている。するとリーシアさんも同意した。

「うん、戦士としてふさわしいたたずまいだった。おそらくかなりの手練だろう」
 えっ、そうなの?

「あのおじさん、すごく強いってことですか?」
 素人感丸出しの僕の質問に、

「村の守りの最前線に立つ人ですからね。当然といえば当然でしょう」
「そうだな」
 と二人でうなずきあっている。そうなんだ……。
 そんな話をしながら歩いていく。

 小さな村だ。

 そもそも平坦のスペースがとぼしいようで、木々のある斜面にそうように、段々に家々が立ち並んでいるのが特徴的だった。
 きょろきょろと見回していると、ふと目についたものがあった。家々の上、斜面のさらに上、木々の高さにあわせるようにして、人工物が組み上げられている。なんだろう?

「ああ、あれはたぶん物見のためのやぐらだな。うまいこと目立たなくしてある。うまいな」
「そうですね。警戒は必要ですし。あそこには目のいい人が常駐しているはずです」
 リーシアさんとエミーさんの意見が一致していた。

「わたしたちが近づいてくるのも、あそこから見えていたはずだ。たぶんなんらかの伝達手段があって、門番に伝えたのだろうな」
 リーシアさんはじっとやぐらを観察しながら推測した。なるほど……。

 そういえば門番さんは、僕らが来るのを待っている雰囲気だった。そのからくりは、こういうことか。

 村に入っていった道が、そのままメインストリートと思われる通りにつながっている。
 お店もちらほらある様子で、たぶんこの通りだけで買い物とかの必要な用事はすませられる感じ。

 ほかに気づいた点といえば、お店の名前のプレートや入口ドアとかの装飾がきれいで、センスいいなと感じるものが多いこと。ここは辺境っぽいし、一般に「小さな村」というと、素朴というか雑然としたイメージがあるけれど、この村は不思議な統一感がある。

「あれでしょうか」
 とエミーさんが指さした建物もそうだった。

 〈ヒルッカ・グリル 宿とお食事〉という看板も、洒落た感じでセンスがいい。うん、僕でも文字は読める。読み書きは問題ないみたいでよかった。

 宿はまわりよりいくぶん大きめの家屋だ。
 横長の店構え。
 軒下に真鍮プレート。
 入口ドアは内外どちらから押しても開くスイング式で、上下の空間があいているから外からちょいとのぞくだけで中の様子がよくわかりそう。
 外に面した窓の下にはベンチが置いてあって、村のおばあちゃんがおしゃべりしている。
 一階は食堂かな。とすると二階が宿で、あの並んでいる窓が宿泊用の部屋かもしれない。

「こんにちは」
「こんにちは~」
 リーシアさんとエミーさんがベンチのおばあちゃんたちに挨拶すると、

「あんれ、こんにちは。いい天気だねぇ」
「いらっしゃいな」
 しわしわの顔で、にっこりと笑いかけてくれた。ほっこり。

 店内に入る。
 はじめは薄暗く感じたけど、すぐに目がなれてきた。なれると窓からの光だけでもけっこう明るいな。
 ゴトゴトとした木床の音。古びてるけど使い込まれた様子の椅子とテーブル、カウンター。そしてキッチンからのおいしそうな匂い……。じゅる。

「おや、いらっしゃい」
 カウンターから声がかかった。恰幅のいいおばちゃんだ。

「こんにちは、世話になる」
 リーシアさんは言いながら、僕を椅子に座らせていいか目線でおばちゃんに許可をとった。僕が椅子に座っているあいだに、エミーさんが宿泊の手続きを進める。

「三名ですけど、よろしいですか?」
「ああ、もちろんいいよ。お連れさんどうしたね? 足かい?」
「ええ、ちょっと……」

「ふーん……」
 おかみさんは僕ら三人をあらためて一瞥いちべつし——おそらくそのチラ見とわずかな会話だけで、僕らの人間関係を把握したらしい。

「じゃ部屋は一つの方がいいさね? そっちのほうが何かと都合がいいだろうしさ」
「「「え」」」

「ベッドの大きさは問題ないからね? 安心しときな。あっはっはっ」
「「「え」」」

 と僕らは、あれよあれよと話に流されていった。

「荷物を置いたら下りておいで。食事を用意しておくよ」

 ということで、とりあえず部屋に向かうことになった。
 やや狭い階段をのぼり、廊下をしばらく進む。

 指定の部屋の前。
 鍵を開ける。

 カチャ、キイィィィ……。
 ドアが開くとそこには——

「「「なっ!?」
 三人同時に驚きの声を——
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