ある腐男子の妄想

佐野 臣

文字の大きさ
21 / 31
番外編

エイプリルフール

しおりを挟む
4月1日

大学はまだ春休みで、暇だなーと思っている今日この頃。
俺は家でゴロゴロと過ごしていた。

「いやー家で無駄に過ごすこの時間が一番幸せだわー」

そう呟きながらマンガを読んでいる俺に声をかけてくるやつがいた。

「さすがに無駄に過ごしすぎじゃね?兄ちゃん、ちゃんと日光浴びた方がいいよ?」

声をかけてきたのは俺の弟である。
いつも少し生意気なことを言ってくるが、なんだかんだ憎めず可愛いがってしまう。

「なんだよーあ、お兄ちゃんに構って欲しいのかー?」

俺はニヤニヤしながらそう言うと、弟の頬は少し朱くなり、

「は?ちげーよ!もういい!」

と、照れ隠しなのかそっぽを向いて拗ねてしまった。

はぁー俺の弟可愛いわー
まじで、その内彼氏連れて来てくれないかなー?
あ、なんかどっかからブラコンって言葉が聴こえてきた気がする笑
否定はしない!でも、可愛いのは事実だから!
俺は可愛いのに弱いんだ!!

「なぁ、何か失礼なこと考えてない?」
「え!?カ、カンガエテナイヨ...?」
「うわ、それ考えてたやつの反応だから。まぁいいや、どうせ何言ったって兄ちゃんのそれ直んないもんな...」

弟はため息をつき、諦めたような顔をしていた。

「おい、それはお兄様に失礼ではないかね?」
「あーはいはい。そんなことはどうでもいいんだけどさー」
「お兄様にとっては全然良くないぞ!」
「そういえば今日ってエイプリルフールだよね?」
「全スルー!まぁいつものことだけど...そういえばそうだったねー」
「こう何かエイプリルフールってわかると嘘つきたくなるよねー」
「あーわからんでもない」

嘘かーでも改めて考えるとあんまり浮かばないなー
そういえばこういうイベントの日ってよく小説とかで書かれるよなー
「嫌い!」って言っておきながら、「嘘だよ、大好き!」みたいな。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

はっしーside

今日はエイプリルフールだよなー
あ、ねこに嘘つきに言ってやろう!

たまたま、今日はねこと大学で会う予定で、俺は集合場所に向かっていた。

今、俺はさぞかし悪い顔をしていることだろう。
しかし、好奇心は止められないぜ!

何の嘘にしようかな~

そう考えている内に、ねこの姿を発見した。

「あ、ねこー」
「はっしー!おはよう!」
「うん...おはよう」
「?何か元気ないね?大丈夫?」
「ちょっとこの休み中に色々あってさ...」

俺は悲壮感たっぷりの顔を意識して作った。
俺、意外と演技力あるんじゃね?

「え!?それなら無理して来なくても良かったのに!」
「いや、やっぱねことは会いたかったからさ...」

俺は無理して笑っているような表情を浮かべた。
すると、ねこはすごく心配したような表情を浮かべた。

あーねこ可愛いなーこんな嘘でも心配して。
その内悪いやつに騙されるんじゃね?
というか、俺がそうか笑
そろそろネタバラシするかー
もう十分ねこの心配顔も見れたしなー
こんだけ俺のこと思ってくれてるんだと思うと、嬉しい反面、ちょっと罪悪感あるし...

「それは嬉しいけど...でも、本当に大変なら言ってね?」
「あーいや、大丈夫。だって...」

俺は表情を一変して、いつもの明るいトーンで話し始めた。

「嘘だから!今日はエイプリルフールだぞー」

笑いながら言うと、ねこはびっくりした表情をしたあと、俯いてしまった。

え、あれ、もしかしてやりすぎた...?

「ね...ねこ?あの、」
「僕、すごく心配したのに...嘘だったんだ...」
「いや、あの猫宮さん...?」
「会いたかったっていうのも嘘だったんだね...」
「いや!それはちがっ」
「もうはっしーなんて嫌い!」

初めて俺はねこの怒った顔を見た。
想像以上にねこの嫌いという言葉に俺はショックを受けてしばらく固まってしまった。

...どうしよう。え、どうしよう!?
やばい!こんなのでねこと離れるなんて絶対考えられない。
阻止しねーと!

「ねこ!本当にごめん!ちょっと驚いて笑ってくれればと思ってたのに、逆にねこに心配かけちゃって、無駄にして...本当にごめん!あと、会いたかったっていうのは嘘じゃないから!」

俺は必死になって謝った。
これで許してくれなかったら、もう...

ねこは俯いたまま、ポツリポツリと話し始めた。

「...じゃあ、はっしーは僕と会いたかったってこと...?」

改めて言われると恥ずかしいな...でも、

「そうだよ。ねこに会いたかったよ。」

俺は恥ずかしくても正直に話した。

「そっか...うん、ならいいよ。」

そう言いながら、ねこは顔を上げ、笑みを浮かべていた。

「僕も、嘘ついちゃった!本当ははっしーのこと好きだよ!」

ねこは満面の笑みを浮かべて、俺に抱きついてきた。

あー可愛い...少し焦ったけど、よかったわー

俺はねこを抱きしめ返しながら、もう絶対にねこを怒らせないようにしようと心に誓って、この幸せを噛みしめた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ねこくんside

今日は、はっしーと会う予定で、僕は集合場所ではっしーを待っていた。

はぁー早く来ないかなー

しばらくして、はっしーの呼ぶ声が聞こえてきた。

「あ、ねこー」
「はっしー!おはよう!」
「うん...おはよう」

はっしーの表情も声もいつもと違って、全体的に暗く感じた。

明るくないはっしーなんて初めて見たかも...
何かあったのかな...?

「?何か元気ないね?大丈夫?」
「ちょっとこの休み中に色々あってさ...」

やっぱり、何かあったんだ...
でも、なんだろう...微妙に違和感を感じるんだけど...

「え!?それなら無理して来なくても良かったのに!」
「いや、やっぱねことは会いたかったからさ...」

はっしー、いつもこんなこと言わないのに...
怪しい...けど、本当に何かあったなら心配だな...

「それは嬉しいけど...でも、本当に大変なら言ってね?」
「あーいや、大丈夫。だって...嘘だから!今日はエイプリルフールだぞー」

はっしーは表情を一変していつもの明るいトーンで話した。

あ、そういえば今日、エイプリルフールだったなー
だから、違和感を感じたのか...
でも、さすがにこれは...

僕は俯いて、思った。

早めに釘を打っておかないと、またやりそうだな...

と。だから、僕も少し嘘をつくことにした。

やっぱり、身をもって知った方が早いよね...

「ね...ねこ?あの、」
「僕、すごく心配したのに...嘘だったんだ...」
「いや、あの猫宮さん...?」
「会いたかったっていうのも嘘だったんだね...」
「いや!それはちがっ」
「もうはっしーなんて嫌い!」

僕は怒ったフリをしてはっしーにそう言うと、はっしーは固まっていた。

もしかして、結構ショック受けてる...?
でも、僕の心配を無駄にしたんだからこれくらいは受けてもらわないと!

しばらくすると、はっしーは途端に慌て出して、必死に僕に謝り始めた。

「ねこ!本当にごめん!ちょっと驚いて笑ってくれればと思ってたのに、逆にねこに心配かけちゃって、無駄にして...本当にごめん!あと、会いたかったっていうのは嘘じゃないから!」

うーん、まぁ誠意を感じるし、ここら辺で許してあげるか...
というか、僕が限界...あまりにも必死だから笑いそうになっちゃう...

「...じゃあ、はっしーは僕と会いたかったってこと...?」

最後にそう聞くと、はっしーは躊躇うことなく、

「そうだよ。ねこに会いたかったよ。」

と、言った。

普段じゃ聞かないから、ちょっと照れちゃうな...

「そっか...うん、ならいいよ。」

そう言いながら、僕は顔を上げてネタバラシをした。

「僕も、嘘ついちゃった!本当ははっしーのこと好きだよ!」

僕は赤くなっているだろう顔を見られないようにはっしーに抱きついた。

でも、嘘だとしても、もう嫌いなんてはっしーに言いたくないな...
本当に好きだから...

はっしーも抱きしめ返してくれて、僕の心は嬉しさで一杯になった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あ、やべーはっしーとねこくんで妄想したらねこくんの破壊力がヤバイ...
でも、ちょっとねこくんのキャラが崩壊している気がしなくもないけど、まぁいっか!
だって、結局可愛いことに変わりはないからね!

あ、また妄想しちゃう...
まさにやめられない、止まらないだわ笑

「...い。ぉーい。おい!兄ちゃん!」
「はっ!え、何!?」
「...兄ちゃん、今どっかに思考が飛んでたでしょ...」

弟は呆れた視線を俺に向けてきた。

「あははーいや、まぁいいじゃないか!弟よ、ネタを提供してくれてありがとう!」

俺は上機嫌で弟の肩を叩いて、自分の部屋に戻っていった。

その様子を始終、弟は呆れた目で見ていたことを俺は知らない...訳ではない!バッチリ自覚してるよ!

でも、そうじゃなきゃ俺じゃないんだよね!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

エイプリルフールものです。
急ピッチで書いたので、文章が変になっていたらすみません。
ギリギリ間に合わなかった!悔しい!
次、イベントとかあったら間に合うようにしたい...
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募するお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...