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よくできた異世界で俺は
よくできた異世界で俺は【全編】
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目を覚ますと、俺は荒野に立っていた。
空はやけに青く、見たこともない形の山々が、歪んだ影を落としている。
「あ、これ……」
腰に目をやると、剣があった。
軽い。
身体も、やけに軽い。
息を吸うだけで、力が湧いてくるのがわかる。
「異世界転生、ってやつか」
そう納得した瞬間、周囲の空気がざわついた。
人影が、にじむように現れる。
兵士の鎧。役人の服。書類の束。
「スキル保持者、確保しました」
「転生受理、確認を」
「スキル内訳、剣術と魔法。両立型です」
俺は質問する暇もなく、流れ作業のように王都へ連れて行かれた。
試験と称して剣を振らされ、魔法を使わされた。
一振りで岩が割れ、詠唱一つで風が渦を巻く。
どよめき。囁き声。
「国家級だ」
「Sランク認定」
拍手が起きた。
立派な部屋を与えられ、
勇者だの、守護者だの、聞こえのいい称号をいくつももらった。
「そりゃそうだ、よくできてる!異世界転生はこうでなくちゃ。もちろん、ハーレム展開だって期待しちゃうぜ!」
――でも、それからが大変だった。
世界は、忙しかった。
魔王。
反乱。
資源不足。
魔物討伐。
災害の鎮圧。
紛争地域への派遣。
――そしてまた、魔王。
呼ばれたら行く。
行けば終わる。
そして、繰り返される。
「さすがです」
「あなたがいて助かりました」
感謝の言葉と、拍手と、勲章だけが増えていった。
女性の羨望の眼差しは、確かにあった。
だが、平和維持活動に追われ、夜は書類と報告書に埋もれる。
何度も。
何度も、何度も。
ある日、俺は気づいた。
世界の各地に、同じ境遇の者がいる。
剣の者。
魔法の者。
未来を読む者。
全員、忙しそうだった。
国からのクエストで偶然一緒になった他の転生者は、乾いた笑いを浮かべて言った。
「気づいた? 俺たち、代替可能なんだよ」
別の日、疑問を口にした俺に、役人が穏やかに告げた。
「治安維持のためです」
「うん、まぁ、わかるけど。でも、忙しすぎるだろ」
俺の不満も聞いてくれ。
「おっしゃる通り。確かに、最近討伐した“魔王”の数、多すぎると思いませんか?
“魔王”とは、国家管理外の転生者の総称です」
「魔王化した際の末路は、身をもって知っているはずですよね。――その駆除にあたるのは、他の従順な転生者です」
「へ……?」
そのとき、腑に落ちた。
「余計な仕事はしたくないですよね、お互いに。かしこさステータスの高いあなたなら、ご理解いただけるでしょう」
と、彼は言った。
国家が転生者を利用するのは、当たり前。
転生者には、義務がある。
もし反抗すれば――
“魔王”という役割が与えられる。
だから俺たちは、働く。
疑問を持たず、感情を殺し、世界のために使われ続ける。
ふと街で、一般市民の女性と目が合った。
その視線は、かつての俺が社会で向けられていたものと同じだった。
底辺で働く者を、冷ややかにさげすむ視線。
決して、羨望などではなかった。
役に立つ間は称賛され、
立たなくなった瞬間、切り捨てられる。
俺は、剣を握る。
もし、ここで「嫌だ」と言えば。
もし、自由を求めれば。
次の討伐対象は――俺だ。
モテることもなく、
英雄として讃えられながら、
こき使われ続ける。
異世界は、よくできた社会だった。
逃げ道が最初から用意されていない俺たち転生者を、
国が、効率よく消費する。
空はやけに青く、見たこともない形の山々が、歪んだ影を落としている。
「あ、これ……」
腰に目をやると、剣があった。
軽い。
身体も、やけに軽い。
息を吸うだけで、力が湧いてくるのがわかる。
「異世界転生、ってやつか」
そう納得した瞬間、周囲の空気がざわついた。
人影が、にじむように現れる。
兵士の鎧。役人の服。書類の束。
「スキル保持者、確保しました」
「転生受理、確認を」
「スキル内訳、剣術と魔法。両立型です」
俺は質問する暇もなく、流れ作業のように王都へ連れて行かれた。
試験と称して剣を振らされ、魔法を使わされた。
一振りで岩が割れ、詠唱一つで風が渦を巻く。
どよめき。囁き声。
「国家級だ」
「Sランク認定」
拍手が起きた。
立派な部屋を与えられ、
勇者だの、守護者だの、聞こえのいい称号をいくつももらった。
「そりゃそうだ、よくできてる!異世界転生はこうでなくちゃ。もちろん、ハーレム展開だって期待しちゃうぜ!」
――でも、それからが大変だった。
世界は、忙しかった。
魔王。
反乱。
資源不足。
魔物討伐。
災害の鎮圧。
紛争地域への派遣。
――そしてまた、魔王。
呼ばれたら行く。
行けば終わる。
そして、繰り返される。
「さすがです」
「あなたがいて助かりました」
感謝の言葉と、拍手と、勲章だけが増えていった。
女性の羨望の眼差しは、確かにあった。
だが、平和維持活動に追われ、夜は書類と報告書に埋もれる。
何度も。
何度も、何度も。
ある日、俺は気づいた。
世界の各地に、同じ境遇の者がいる。
剣の者。
魔法の者。
未来を読む者。
全員、忙しそうだった。
国からのクエストで偶然一緒になった他の転生者は、乾いた笑いを浮かべて言った。
「気づいた? 俺たち、代替可能なんだよ」
別の日、疑問を口にした俺に、役人が穏やかに告げた。
「治安維持のためです」
「うん、まぁ、わかるけど。でも、忙しすぎるだろ」
俺の不満も聞いてくれ。
「おっしゃる通り。確かに、最近討伐した“魔王”の数、多すぎると思いませんか?
“魔王”とは、国家管理外の転生者の総称です」
「魔王化した際の末路は、身をもって知っているはずですよね。――その駆除にあたるのは、他の従順な転生者です」
「へ……?」
そのとき、腑に落ちた。
「余計な仕事はしたくないですよね、お互いに。かしこさステータスの高いあなたなら、ご理解いただけるでしょう」
と、彼は言った。
国家が転生者を利用するのは、当たり前。
転生者には、義務がある。
もし反抗すれば――
“魔王”という役割が与えられる。
だから俺たちは、働く。
疑問を持たず、感情を殺し、世界のために使われ続ける。
ふと街で、一般市民の女性と目が合った。
その視線は、かつての俺が社会で向けられていたものと同じだった。
底辺で働く者を、冷ややかにさげすむ視線。
決して、羨望などではなかった。
役に立つ間は称賛され、
立たなくなった瞬間、切り捨てられる。
俺は、剣を握る。
もし、ここで「嫌だ」と言えば。
もし、自由を求めれば。
次の討伐対象は――俺だ。
モテることもなく、
英雄として讃えられながら、
こき使われ続ける。
異世界は、よくできた社会だった。
逃げ道が最初から用意されていない俺たち転生者を、
国が、効率よく消費する。
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