3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

文字の大きさ
3 / 74

3話 有馬和樹 「どうやって逃げるか」

しおりを挟む
視点、もう一度戻ります。有馬和樹。
めんどうでサーセン!<(_"_)>

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 じめじめとした地下通路で待たされた。

 扉が開く。おれは、クラスのみんなに待っているように伝え、扉をくぐった。

 やはり! 外は闘技場だった。歴史の授業で習ったローマと同じ。何万人という観衆が騒いでいる。その大歓声が聞こえたんだろう。みんなが扉から出てきた。

 言葉を失い、立ち尽くしている。冷静なのは誰か? 清士郎は大丈夫だ。やつは今、周囲を見まわし、状況と環境をつかもうとしている。

 日出男が女子の誰かと話をしている。姫野ひめの美姫みきか。歩きながらコソコソと話をしている。おれは目立たないように二人に近づいていった。

「何か策はあるか?」

 姫野は空中に目を走らせている。姫野のスキルって何だろう?

「考えてるけど、ちょっと待って」

 やっぱり、何かあるんだな。姫野はクラスで一番頭がいいと言われている。胸の栄養が頭に行ってるからだ、と男子は陰で言うが、それは本人には言えない。そして一番頭がいいのは別なんだが、まあそれは今はいいだろう。

「日出男は大丈夫か?」
「ふふふ」

 日出男は眼鏡を上げた。

拙者せっしゃ、何十、何百のラノベを読破したと? 想定内でござるよ」

 もう一度、眼鏡を上げた。その手が震えているのに気づいた。強がりか。それでもいい。今は必要だ。

 ほかの扉から、バケモノみたいなのが出てきた。この状況、このさき何があるかは、もうバカでもわかる。

「今日は皆さんに殺し合いをして貰います」

 そんなセリフの映画は何だったっけ? 通常なら、そうなるかもしれないが、このクラスはちょっと変わっている。おそらく、大人が思うようにはならないはずだ。

 ドンドン! ドンドン! 太鼓が打ち鳴らされた。

「戦闘を開始してください。最後の一名が勝者です」

 場内放送が聞こえた。

 向こうの方で、大きな人型が殴り合いを始めた。動きが鈍そうなのは、トロールか。もう一方は……ギリシャ神話に出てくる巨人ギガンテスそっくりだ!

 はっ! と気づいて振り返る。おれたちの集団の少し離れたところ。見た目はトカゲだが、人間と同じように二足で立っている。剣を腰に指し、背中には盾と弓。おれらの世界の寓話で言うと「リザードマン」だ。腕を組み、立っているだけ。いや、気配を断って戦況を眺めている。

 おれと目が合い、苦笑いした。この人とは戦いになりそうにない。少し危険だが、近づいてみた。

有馬ありま和樹かずきと言います」

 自分の方から名乗ってみる。

「俺はジャムザウール。その身のこなし、武闘家か?」

 おお、言葉が通じる。そして、すごいな。一発で見抜いた。この世界でも武闘家はいるのか。

「はい。有馬流古武術、というのを父から習っています。見ただけでわかるのですか?」
「歩き方がな。踵から入らない。そして気配を断っている」

 すごい。そしておそらく、おれより強いだろう。

「どこから? と聞いていいですか?」
「別の世界だ。この世界のことを教えてくれるか?」

 なるほど。おれは、ここの人間と見た目が同じだ。

「いえ、おれも、あの集団も別の世界からで、何もわかりません」

 おれはクラスメートを指差す。ジャムザウールと名乗ったリザードマンは、それを見て顔を曇らせた。

「そうか。皆、若いのに気の毒に」
「どうにか、助かる手はないでしょうか?」
「ないだろう。助かったとしても奴隷と変わらん」

 そう言ってジャムザウールは首の鉄輪を叩いた。そして、おれのほうを見て笑う。

「今、どいつと戦って散るべきか考えている。だが、お前のような若者とは戦いたくないな。勝っても負けても、後味は悪かろう」

 なんだろう、この人。戦う相手かもしれないが、ものすごく尊敬できそうな気がする。

「なんとかなるかも、しれません」

 ジャムザウールさんは、おれの言葉に首を傾げたが、一緒にクラスメートのもとに帰った。

 戦闘は続いている。

 バケモノたちに比べれば、おれもリザードマンもずいぶんと小さい。バケモノどもは、おれらのことは丸無視だ。最弱と見なしているのか。

「姫野、どうにかなりそう?」
「和樹くん、ちょっとそれ」

 おれの後ろを指差している。

「ああ、知り合ったジャムザウールさんだ。できれば一緒に行動したい」
「そ、そう。まあ、和樹くんがそう思ったんなら、正解かも」

 姫野の指示で、ひとつに固まった。

 うまくいって欲しい。おれのせいなのに、今はおれの力じゃ守れない。

 姫野、頼むぞ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。 そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。 両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。 気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが…… 主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...