3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

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12話 友松あや 「ゴブリン」

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視点変わります。あやちゃんこと友松あや
ほか今話登場人物(呼び名)
高島瀬玲奈(セレイナ)
蛭川日出男(ゲスオ)
姫野美姫(ヒメ)

-・-・-・-・-・-・-・-・



 がんばっても寝れないので、起きることにした。

 寝ころんで服が汚れた所に掃除スキルをかける。このスキルって、ほんとに便利。

 焚き火のとこに行って、適当に新しい木をくべた。ぼう! と火が強くなる。

 昔、よく弟たちのホラー映画に付き合わされたことがあった。そんな時は眠れなくなった。けど、あれより今の現実のほうが怖い。

 でも映画の主人公より、うちらは恵まれているのかもしれない。なんせ、クラスのみんながいる。頼りになるキングとプリンスもいる。

 あれ? そう思ったらキングとプリンスがいない。

 あとのみんなは寝ている。起きているのは「ヒメ」こと姫野美姫ぐらい。ヒメは、自分の表計算スキルで何かしているようだった。

「あやちゃん、キョロキョロして、どうしたの?」

 声をかけてきたのは、高島たかしま瀬玲奈せれいなだ。

「キングとプリンスがいないなって」
「ああ、プリンスは盗賊退治、キングはさっき村を見てくるって」

 あ、そうだった。プリンスは、ジャムパパたちと掃討作戦だった。

「セレイナも寝れない?」
「うん」

 切なげに笑って髪を耳にかけた。

 うーん、やっぱり、女子から見ても色っぽい。背の高さ順で並ぶと、うちかセレイナが最後だ。

 デッカイ二人だけど、月とスッポン。いや、クルーザーとダンプ。もちろん、うちがダンプ。ほっとけ。デブではない。ぽっちゃりだ。

 胸の大きさでは勝ってんだけどな。両手でつかんで持ち上げてみる。ただ、肩がこるのよねぇ。

「むっ! 悪寒がする!」
「……あやタン、弱った拙者に、そんなセクシーショットを見せて」
「見せてねえぞ!」
「おふぅ。口が悪い。全国のぽっちゃり愛好家が嘆きますぞ」
「殺すぞ」
「はい。僕ちゃん寝まーす」

 まったく、ゲスオは油断も隙もない。

 うん? やっぱり、ぽっちゃりなのか。ちと安心。

 セレイナがくすりと笑った。

「あやちゃん、うらやましい」
「ええっ! どこが?」
「たくましいとこ。事務所の人間に言ってみたいわ。殺すぞ!」

 ああ、芸能事務所ね。

 なかなか思うようにいかないと、前に嘆いていた。歌のほうに行きたいのに、グラビア撮れって。美人にも悩みってあるもんだわ。

「……なにか、音が違う」

 セレイナが両耳に手を当てた。うちも耳をすましたが、何も聞こえない。彼女、音楽やってるから耳がいいのだろうか。

「あやタン、みんな起こして」

 ゲスオまで起きてきた。これはやばそう。

 見張りは? そう思って探す。見張り役の男子は木の下で居眠りしてた。もう!

 みんなを起こし、焚き火を背に輪になって固まる。その外側に武器を持った男子。

「みんな、ためらわず切って! 迷うと死ぬわよ!」

 そう言ってヒメも剣を抜いた。

 ガサッガサッっと、草をかき分ける音が近づいてくる。

「ひっ!」

 セレイナが、口に手を当てて指差した。その方向を見る。赤い目だ。

 木々の間から赤い目が見える。赤い目はどんどん増えた。囲まれてる。

「セレイナ!」

 突然、ヒメが大声を上げた。みんながビクッとする。

「ア、アタシ?」
「セレイナ、歌!」
「う、歌?」
「みんなを鼓舞して!」

 敵が見えるところに出てきた。小さい身体。緑色の皮膚。尖った耳に、キザキザの歯。

 こいつは、弟がやってたゲームで見たことある。ゴブリンだ。

「セレイナ、歌!」

 隣のセレイナは、完全に動揺している。

「だいじょうぶよ! 歌うまいんだから!」
「あやちゃん、なに歌えば……」
「戦歌? 軍歌?」
「そんなの知らないし!」

 ゴブリンがじりじり寄って来た!

「セレイナ!」

 ゴクリと生唾を飲んで、手を前に組み、歌い始めた。

 ♪~幸せは~歩いてこない~♪

 まさかの水○寺清子!

 ゲスオがセレイナに駆け寄った。

「お茶目な落書き!『響く声』を『心に響く声』に!」

 ♪~だから歩いて行くんだね~一日一歩三日で散歩~♪

「三歩進んで二歩下がるーっと!」

 うちも口ずさんだ。焚き火から火の点いた一本を持ち上げる。

 ♪~人生はワンツーパンチ!~♪

「おおお! アゲ来たぁぁぁ!」

 剣を持った男子の一人が叫んだ。

 ♪~腕を振って~足を上げて~♪

「ワンツー! ワンツー!」
「ワンツー! ワンツー!」

 全員で叫んだ。ゴブリンが後退る。

「突撃!」

 ヒメの声に全員がゴブリンに向かう!

 ゴブリンが逃げた。小っちゃいのに、なんて足の早いやつ!

「待てゴルァ!」

 火を持って追いかける。なかなか追いつけない。

 ♪~蛍の光~窓の雪~♪

 違う歌が聞こえた。冷静になって足を止める。

 ♪…本日の戦闘は終了いたしました。ヒメちゃん、これいる?

 あはは。セレイナのしゃべる声まで心に響く。
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