3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

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24-1話 飯塚清士郎 「疫病研究室」

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 里の人数が一気に増えた。

 俺の家なら「出ていけ」と言うところだが、そうもいかない。

 独り身の者には、木の上の空き家をあてがった。狭いが男には特に好評らしい。

 家族がいる者には山すそに小屋を建てた。

 だんだん冬が近づいている。もう野宿ができる気温ではない。工作班は朝から晩まで小屋作りに追われていた。

 このまま増え続けるとやっかいだ。自分たちの生活が圧迫されかねない。

 先日、キングが行ったウルパという村からは半分近くが移り住んだ。ゴカパナ村長がここに住む! と言ったからだ。

 ジジイのわがままってのは、子供と一緒だな。言い出したら聞かない。

 昨日は昨日で、小さな集落から十人ほどの生き残りを助けた。

 一応、この村に入る前に念は押してある。しばらくは里から出れないと。無断で出ようとすれば、ケルベロスが噛みつくぞ!と脅してもいた。

 来ない者には里の場所は教えない。だが、交流の跡は残る。

「やばい状況か……」

 本の部屋でベッドにもたれていた。元はドクのために置いたベッドだ。

「やばいって何が?」

 地図に線を引いていた姫野美姫が振り向いた。

「俺らの存在が知れわたるってこと」
「あー、まあね。でも、わたしらだけ助かるって線はないんでしょ?」

 疫病が収まるまで、ここでじっとしておく。それが賢い選択だ。賢いが、我らが王は無理だろうな。

 今日も変わらず、近隣の村に出発したところだ。

「キング殿は、もう出立されたのか!」

 部屋にカラササヤさんが入ってきた。

「さっき、出ましたよ」
「ぬう、このカラササヤが案内つかまつると申し上げたのに!」

 カラササヤさん、すっかりキングの護衛役気取りだ。

「今日は、グローエンさんの知り合いがいる集落なので、グローエンさんが案内で、戦闘班はキングとゲンタが行ってます」
「そうでありますか……」

 肩を落として帰っていく。代わりに入ってきたのはゴカパナ村長だ。

おさは今日もおられぬか?」
「ええ、しばらく日中は村々を回るかと」
「左様か。長がおらぬと、アマラウタ様もお姿を見せぬゆえ……」

 ゴカパナ村長が、しょんぼり帰っていく。

 姿を見せないのはキングがいないというより、じいさんに捕まると話が長いからではないか? とは言えない。

 さきほどの話だが、あきらめるしかないだろう。キングが動くと人が増える。それは昔からだ。裏表もなく情に厚い。人が惹きつけられる性格だと思う。

 だが、キングは周りの人間を大切にするが、自分のやりたい事も曲げない。その性格が、後に大きな損失にならなきゃいいが。

 俺らがつるんでいた頃は三人だった。俺とキングとゲスオ。たまにドクが入っても四人。それが今や何十という人の命がのしかかる。

「あっ、そういや、ゲスオは?」

 今日、いや昨日から姿を見かけない。

「疫病の研究室に行ってたと思うけど」

 とつぜん、部屋に誰かが飛び込んできた。

「吉野?」

 吉野由佳子。疫病の研究室にいたはずだ。

「花ちゃん、花ちゃんいない?」

 花森千香のことだ。花森を探しているってことは、回復のスキルがいるってことだ。このあわてぶりだと、命に関わる。

「ったく、ゲスオの行くところ、ろくなことが起きないな!」

 俺はベッドから飛び起きた。キングたちは今日、花森たちを連れて行かなかった。里にいるはずだ。

 外に出ると妖精が飛んできた。

「ハネコ!」

 女子の間から名前をつけてあげれば?と言われたので、ハネコとつけた。羽の子でハネコだ。

 何度も呼んでいると自分のことだとわかったようだ。最近は、ハネコと呼ぶと飛んでくる。

「花森を知らないか?」

 聞いてみた。意外に妖精はこっちの言葉を理解している気がする。

 何かピーチクパーチクと鳴いた。あいかわらず何を言っているのか、わからない。

 飛び出したので追いかける。ハネコは畑へ向かった。畑の隅にある大きな龜の前に花森がいた。なるほど、生ゴミを捨てにきてたのか。生ゴミは発酵させると良い肥料になるらしい。

「花森!」

 呼ぶと、びくっと振り返った。おどろかせてしまったらしい。

「疫病の研究室が大変らしい。来てくれ!」

 花森はすぐに駆けてきた。ちょうどいい所に、進藤の馬なし馬車が通る。呼び寄せて手早く事情を説明した。

「よっしゃ! プリンス、サイレン鳴らして!」

 サイレン? 指差すほうを見ると、御者台のハンドルとは別に、取っ手のついた鐘のような物がある。

 回すと「ウー!」とサイレンの音が鳴った。

「ほんとのサイレンかよ!」
「工作班が作ってくれた。エマージェンシーな時に使えって」

 工作班の連中、街に出てはガラクタを買い漁っていた。それは案外、無駄ではなかった!

「ウー!ウー!」

 とサイレンの音を鳴らし馬車を飛ばすと、サイレンの意味がわからなくても「どけ!」というのは伝わるらしい。しかしこれ、もはや馬車じゃない。車だ。

 途中で友松あやを見つけた。

「友松!」
「プリンス、なにごと!」
「疫病の研究室に行く。乗れ!」

 友松を乗せて馬車を走らせる。疫病の研究室に着いた。近寄らないようにしていたので、来たのはこれで二度目だ。

 研究室の横にある牧場には、牛と鶏だけでなく、色々な動物が増えていた。

 疫病の研究室に入ると、吉野由佳子は戻っていた。全員の顔を手で払う。何かが付いた感触があった。吉野のマスクスキルか。

「こっちへ」

 机やイスが置かれた部屋から隣部屋に案内された。

 隣の部屋は、壁に沿って長机が置かれ、実験器具のような物が置かれていた。その中央にベッドが三つ。

 ゲスオとドク、それにノロさんこと野呂爽馬が寝ていた。

 ベッドの側には、顕微鏡のスキルを持つ土田清正が立っている。入ってきた俺らの顔を見て、悲痛の声を上げた。

「ドクとゲスオの意識がない」

……まじかよ!
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