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第一章 慧
石蹴り
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「じゃあ行こうぜ」
佑真の声を聞いて我に返る。
リュックを背負い、タンクのような水筒を片手に持つと、彼は進行方向へ顎を突き出した。
「お母さん待たなくていいのか?」
「いいよ。なんか親と歩くの恥ずかしいじゃん」
「たしかに」
親に対して反抗的なのは自分だけではないように思えて、慧は少し安心した。
「これにしよう」
佑真が中庭に落ちていた小さな丸い石を拾って蹴り始める。
最近、帰るときはよく「石蹴り」をしている。
鬼の人が石を蹴りながら進み、他の人の足に当たれば、その人が鬼になるという簡単な遊びだ。
「この石の模様、人の顔みたいに見えないか?」
急に佑真が蹴るのを止めたので、何かと思ったらそんなことを言い始めた。
「ああ、たしかに凹んだ部分がちょうど目みたいになってるな」
「なんか蹴るの申し訳なくなってきた」
言葉ではそう言いながらも、佑真は勢いよく前に蹴り出した。
あるときは小さく、あるときは大きく弾みながら、不安定に転がる。
「今日も公園行って一人で練習するぅのか?」
足元に転がってきた石を避けながら言ったせいで、変なところを伸ばしてしまった。
「もちろん。お前も一緒にどう?」
「いや、今日くらいは休ませてくれ」
彼が回転をかけるように蹴った石は、突然軌道を変えて、左に避けたはずの慧のつま先にぶつかった。
「まあいいや。でも、俺だけうまくなっても文句言うなよ」
「全然いいよ。俺レベルになると休息の方が大事だから」
軽口を叩きながら、今度は慧が石を蹴った。
普通に歩けば10分で家に着くところを、倍近くの時間をかけて帰った。
「この石、なんか気に入ったから持って帰るわ。明日やるときもこれ使おうぜ」
慧の家に着いたとき鬼だった佑真は、その特徴的な石をポケットにしまいこんだ。
「ああ、そうしよう。じゃあまたな」
「バイバイ」
佑真の声を聞いて我に返る。
リュックを背負い、タンクのような水筒を片手に持つと、彼は進行方向へ顎を突き出した。
「お母さん待たなくていいのか?」
「いいよ。なんか親と歩くの恥ずかしいじゃん」
「たしかに」
親に対して反抗的なのは自分だけではないように思えて、慧は少し安心した。
「これにしよう」
佑真が中庭に落ちていた小さな丸い石を拾って蹴り始める。
最近、帰るときはよく「石蹴り」をしている。
鬼の人が石を蹴りながら進み、他の人の足に当たれば、その人が鬼になるという簡単な遊びだ。
「この石の模様、人の顔みたいに見えないか?」
急に佑真が蹴るのを止めたので、何かと思ったらそんなことを言い始めた。
「ああ、たしかに凹んだ部分がちょうど目みたいになってるな」
「なんか蹴るの申し訳なくなってきた」
言葉ではそう言いながらも、佑真は勢いよく前に蹴り出した。
あるときは小さく、あるときは大きく弾みながら、不安定に転がる。
「今日も公園行って一人で練習するぅのか?」
足元に転がってきた石を避けながら言ったせいで、変なところを伸ばしてしまった。
「もちろん。お前も一緒にどう?」
「いや、今日くらいは休ませてくれ」
彼が回転をかけるように蹴った石は、突然軌道を変えて、左に避けたはずの慧のつま先にぶつかった。
「まあいいや。でも、俺だけうまくなっても文句言うなよ」
「全然いいよ。俺レベルになると休息の方が大事だから」
軽口を叩きながら、今度は慧が石を蹴った。
普通に歩けば10分で家に着くところを、倍近くの時間をかけて帰った。
「この石、なんか気に入ったから持って帰るわ。明日やるときもこれ使おうぜ」
慧の家に着いたとき鬼だった佑真は、その特徴的な石をポケットにしまいこんだ。
「ああ、そうしよう。じゃあまたな」
「バイバイ」
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