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異世界へ行った彼女の話:第十八話
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月に照らされた彼の横顔に思わず見惚れる中、私はゆっくりと彼の傍へ近づいていくと、透き通ったエメラルドの瞳がこちらへと向けられた。
その姿になぜか胸が小さく高鳴ると、頬が微かに熱を持つ。
そんな自分の変化に戸惑う中、私は胸をギュッと握りしめ、小さく息を吸い込むと、そっと彼の隣へ腰かけた。
「お誕生おめでとう。私からプレゼントはどうだったかな……?」
そう笑みを浮かべながらに問いかけてみると、エルヴィンは慌てた様子で視線を逸らせる。
「いや……とても綺麗だった……あっ、ありがとう。ところであれは一体なんだ?初めて見た。魔術を利用して作ったのか?」
「そうなの!いやぁ~作るの大変だったんだ。あれはね、私の世界で花火と呼ばれるものでね。こういったイベントごとでよくやるパフォーマンスなんだけれど、別名夜空に咲く大輪。綺麗でしょう?あの丸い形はね、どこから見ても同じように見えるようになっているんだよ」
「ほう……魔術であんな物も作れるんだな。どうも研究していると、あぁいった発想はなかなか思いつかない。あのハナビの色は、魔術を展開するときに発生する色を使ったのか?空へ魔術を映し出すのはどうやったんだ?それにあの音はなんだ?」
彼の問いかけに応えていく中、気が付けば花火の話から魔術の話へと変わっていった。
それはいつも彼と過ごす塔と同じ光景で……。
最初タキシード姿の彼を見た時は知らない人みたいで……男らしく、大人っぽくてドキマギしてしまっていたけれど、こうやって楽しそうに魔術の事を話す変わっていない彼にどこかほっとする自分がいる。
そう思うと先ほど感じていた胸の高鳴りは消え、いつもの私へと戻っていった。
そうやってテラスで魔術についての話で盛り上がる中、突然に辺りがガヤガヤと騒がしくなる。
どうしたのだろうと思い立ち上がってみると、庭には何人もの騎士立ちが集まっていた。
何事なのかと戸惑う中、先ほどの花火が頭をよぎる。
あっ、もしかして……花火を打ち上げたから……?
騎士たちは辺りをキョロキョロ見渡し警戒した様子でこちらへ走ってくると、私たちの周りを囲んでいった。
「ベネット様、異世界の姫様ご無事でしょうか?こちらで何か大きな音がすると、不可思議な模様が空に浮かんでいるとの情報がありまして……」
大きな音に不可思議な模様……やっぱり花火のせいだ……。
慌てて前に進み出ようとすると、エルヴィンが私を止めるように腕を掴んだ。
「隊長、辺りを探してみましたが何も見つかりません」
「こちらも異常はありません」
庭のあちらこちらから大きな声が轟く中、エルヴィンへ視線を向けてみると、下がっていろと言わんばかりに首を軽く振った。
その姿に私はそっと口を閉ざすと、自分のしでかしたミスに頭を抱える。
あぁ、どうしよう……こんな大事になるとは……。
いやいや……普通に考えればわかることだった……。
この世界にはない花火を打ち上げるんだから、突然にあんな大きな音が庭から響いたらビックリしますよね……。
しかも何回も打ち上げたし……はぁ……やっちゃったなぁ……。
私は自分自身に呆れながらに、深く息を吐き出し肩を落とす中、エルヴィンはいつもの無表情へ戻ると、集まってきた騎士たちの方へ歩いていく。
そして何かコソコソと話したかと思うと、騎士たちは敬礼を見せながらに、慌てた様子でその場を去っていった。
はぁ……よかった。
エルヴィンはなんて説明したんだろう……。
それよりも、今度何かする時は気を付けないといけないね……。
「ごめんなさい、あんな大きな音を鳴らせばこうなることは予測できたのにね……」
私は申し訳なさげに視線を反らせると、深く頭を下げる。
するとエルヴィンは私の傍へ戻ってくると、ボソボソと小さな声でつぶやいた。
「いや……あんたの暮らしていた世界の事を知れて……ハナビを見れて嬉しかった……。魔術をあんなふうに使えば、人を感動させることも出来るんだな。……あんたと居ると本当に飽きないな……」
エルヴィンはそう話しながらに私の手を取ると、柔らかい表情を浮かべて見せる。
その姿に自然と頬が緩むと、私は握られた手を包みこんだ。
「へへっ、喜んでもらえてよかった。少しね……不安だったんだ。会場でたくさんの宝石や高級なプレゼントをもらっていたから……。それに比べたら私のプレゼントは魔術板数枚だし……何も残らない。お金も全然かかってないしね。だから他のプレゼントに比べたら大分おちてしまうと思って……」
そう自分の気持ちを素直に伝えてみると、エルヴィンは焦った様子で顔を上げ、エメラルドの瞳が真っすぐに向けられる。
その瞳をじっと覗き込むと、彼の頬が微かに赤く染まった。
「そんなことないあるはずない……ッッ。残らなくても、あんな宝石なんかと比べ物にならないほどに価値があった。……今まで貰ったどんなプレゼントよりも……俺は嬉しかった。だから……また見せてくれないか……?」
そう一気に話したエルヴィンの顔は、見ている自分が照れてしまうほどに、真っ赤に染まっている。
そんな彼の様子に私は満面の笑みを浮かべると、もちろんだよと深く頷いてみせた。
****お知らせ****
第十六話にて挿絵を追加致しました。
エルヴィン、ライト、主人公のイラストです(*'ω'*)
エルヴィンのとある表情が個人的にかなり萌えました……(*´Д`)
その姿になぜか胸が小さく高鳴ると、頬が微かに熱を持つ。
そんな自分の変化に戸惑う中、私は胸をギュッと握りしめ、小さく息を吸い込むと、そっと彼の隣へ腰かけた。
「お誕生おめでとう。私からプレゼントはどうだったかな……?」
そう笑みを浮かべながらに問いかけてみると、エルヴィンは慌てた様子で視線を逸らせる。
「いや……とても綺麗だった……あっ、ありがとう。ところであれは一体なんだ?初めて見た。魔術を利用して作ったのか?」
「そうなの!いやぁ~作るの大変だったんだ。あれはね、私の世界で花火と呼ばれるものでね。こういったイベントごとでよくやるパフォーマンスなんだけれど、別名夜空に咲く大輪。綺麗でしょう?あの丸い形はね、どこから見ても同じように見えるようになっているんだよ」
「ほう……魔術であんな物も作れるんだな。どうも研究していると、あぁいった発想はなかなか思いつかない。あのハナビの色は、魔術を展開するときに発生する色を使ったのか?空へ魔術を映し出すのはどうやったんだ?それにあの音はなんだ?」
彼の問いかけに応えていく中、気が付けば花火の話から魔術の話へと変わっていった。
それはいつも彼と過ごす塔と同じ光景で……。
最初タキシード姿の彼を見た時は知らない人みたいで……男らしく、大人っぽくてドキマギしてしまっていたけれど、こうやって楽しそうに魔術の事を話す変わっていない彼にどこかほっとする自分がいる。
そう思うと先ほど感じていた胸の高鳴りは消え、いつもの私へと戻っていった。
そうやってテラスで魔術についての話で盛り上がる中、突然に辺りがガヤガヤと騒がしくなる。
どうしたのだろうと思い立ち上がってみると、庭には何人もの騎士立ちが集まっていた。
何事なのかと戸惑う中、先ほどの花火が頭をよぎる。
あっ、もしかして……花火を打ち上げたから……?
騎士たちは辺りをキョロキョロ見渡し警戒した様子でこちらへ走ってくると、私たちの周りを囲んでいった。
「ベネット様、異世界の姫様ご無事でしょうか?こちらで何か大きな音がすると、不可思議な模様が空に浮かんでいるとの情報がありまして……」
大きな音に不可思議な模様……やっぱり花火のせいだ……。
慌てて前に進み出ようとすると、エルヴィンが私を止めるように腕を掴んだ。
「隊長、辺りを探してみましたが何も見つかりません」
「こちらも異常はありません」
庭のあちらこちらから大きな声が轟く中、エルヴィンへ視線を向けてみると、下がっていろと言わんばかりに首を軽く振った。
その姿に私はそっと口を閉ざすと、自分のしでかしたミスに頭を抱える。
あぁ、どうしよう……こんな大事になるとは……。
いやいや……普通に考えればわかることだった……。
この世界にはない花火を打ち上げるんだから、突然にあんな大きな音が庭から響いたらビックリしますよね……。
しかも何回も打ち上げたし……はぁ……やっちゃったなぁ……。
私は自分自身に呆れながらに、深く息を吐き出し肩を落とす中、エルヴィンはいつもの無表情へ戻ると、集まってきた騎士たちの方へ歩いていく。
そして何かコソコソと話したかと思うと、騎士たちは敬礼を見せながらに、慌てた様子でその場を去っていった。
はぁ……よかった。
エルヴィンはなんて説明したんだろう……。
それよりも、今度何かする時は気を付けないといけないね……。
「ごめんなさい、あんな大きな音を鳴らせばこうなることは予測できたのにね……」
私は申し訳なさげに視線を反らせると、深く頭を下げる。
するとエルヴィンは私の傍へ戻ってくると、ボソボソと小さな声でつぶやいた。
「いや……あんたの暮らしていた世界の事を知れて……ハナビを見れて嬉しかった……。魔術をあんなふうに使えば、人を感動させることも出来るんだな。……あんたと居ると本当に飽きないな……」
エルヴィンはそう話しながらに私の手を取ると、柔らかい表情を浮かべて見せる。
その姿に自然と頬が緩むと、私は握られた手を包みこんだ。
「へへっ、喜んでもらえてよかった。少しね……不安だったんだ。会場でたくさんの宝石や高級なプレゼントをもらっていたから……。それに比べたら私のプレゼントは魔術板数枚だし……何も残らない。お金も全然かかってないしね。だから他のプレゼントに比べたら大分おちてしまうと思って……」
そう自分の気持ちを素直に伝えてみると、エルヴィンは焦った様子で顔を上げ、エメラルドの瞳が真っすぐに向けられる。
その瞳をじっと覗き込むと、彼の頬が微かに赤く染まった。
「そんなことないあるはずない……ッッ。残らなくても、あんな宝石なんかと比べ物にならないほどに価値があった。……今まで貰ったどんなプレゼントよりも……俺は嬉しかった。だから……また見せてくれないか……?」
そう一気に話したエルヴィンの顔は、見ている自分が照れてしまうほどに、真っ赤に染まっている。
そんな彼の様子に私は満面の笑みを浮かべると、もちろんだよと深く頷いてみせた。
****お知らせ****
第十六話にて挿絵を追加致しました。
エルヴィン、ライト、主人公のイラストです(*'ω'*)
エルヴィンのとある表情が個人的にかなり萌えました……(*´Д`)
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