3 / 86
第一章
妹の変化
しおりを挟む
シンシアが変わってしまったきっかけ……それは一体何だったのか、今でもわからない。
とりあえず謝ってみても、機嫌を取ろうとしてみてもダメだった。
シンシアに直接聞いてみても、理由は教えてはくれないまま……。
あれから数日後、あの日と同じように妹はまた突然私の元へやってきた。
無言で部屋へ入ってきたかと思うと、妹は何を思ったのか、私を打った。
あまりに突拍子な出来事で、一瞬何が起こったのかわからなかったわ。
チリチリと痛みを感じ、唖然とする。
恐る恐るに顔を上げシンシアへ視線を向けると、今にも泣きだしそうな表情を浮かべていた。
どうして殴った妹がそんな顔をするの、なぜこんな事をするの……?
私は痛みを堪えながら、妹を刺激しないよう笑みを浮かべてみせると宥めてみる。
けれどその様が気に入らなかったようで、妹は涙を堪えながら私を強く睨みつけた。
「……ッッ、なんで……どうして怒らないの……?やっぱり……」
やっぱり?
そう震える声で呟くと、ひどく傷ついた表情を浮かべ、逃げるように部屋から出て行った。
それから妹はどんどん変わっていったわ。
私が声をかけるとあからさまに無視をしたり、突然部屋にやってきたかと思えば室内を荒らしたりと……嫌がらせの数々。
そしてその度に、怒らないのかと問いかけてくる。
妹の望み通り、怒った振りをしようかと、考えたこともあったけれど……自然な怒りがよくわからない。
大人の世界で育って怒る人はたくさんみてきたわ。
でもその人たちは、周りから敬遠されたり爪弾きにされたり……。
それにね、何をされても怒りなんて感じないの、むしろ……恐怖と煩わしさが入り混じる。
とりあえずなぜ怒らせたいのか、皆目見当もつかないけれど、妹は躍起になっていった。
そんな妹がある日私の元へやってくると、ネックレスが欲しいとそう言った。
そのネックレスは母からお城に上がった記念にと、頂いた水晶のネックレス。
キラキラと半透明に光る水晶が美しく、子供の私にはまだ似合わない。
だから大人になるまで、と大事にしまってあったのだけれども……妹はいつ見つけたのかしら?
渡したくない、そう思ったが……先日まで仲が良かった私たちの変化に、母がとても心配していた。
これ以上いらぬ気苦労をかけるわけにはいかない、だから私は大事なそのネックレスをあげたの。
だけど妹は納得できないとの表情をみせながらも、ネックレスを奪い取った。
そして暫くすると、妹はネックレスに興味をなくしたのか……部屋の隅に乱雑に置いたまま見向きもしない。
そんな妹に何とも言えぬ感情が芽生える。
怒りではない、悲しみ……恐怖……?
私は改善する兆しはない姿に深く息を吐き出すと、遠くからじっとシンシアの姿を眺めていた。
そうして暫くすると、妹はまた私のところへやってきて、私のメイドが欲しいとそう言った。
次から次へと、私の物を欲しがる妹に頭が痛い。
もちろん妹にも専属のメイドが付いている、試しに諭してみるが、私のも欲しいのだとごねはじめる。
そんな妹に両親も困り果てて、壊れものを扱うように接しているわ。
私付きのメイドは、幼いころからずっと世話をしてくれた、第二の母のような存在。
勉強面でも強くてね、彼女にはとても世話になったわ。
だけど私は寂しさをグッと堪えると、両親の様子を覗いながら笑みを浮かべ、いいわよ、とシンシアに差し出した。
御付きのメイドが居なくなったことで、日替わりにメイドがやってくる。
だけど何だかしっくりこないから、何でも自分でするようになったわ。
普通ならすぐに新たな御付きのメイドをつけるのだが、また妹が欲しがれば同じこと。
だから私は御付きのメイドはいらないと、断っているの。
そんな私を気に入らないのか……シンシアは不貞腐れた様子で私を見つめたかと思うと、頬を膨らませプィッとそっぽを向いた。
妹が何を考え、何が望みなのかさっぱりわからない。
最初は構ってほしいのかと思ったけれど、どうも違うようだ。
関りを減らし放っておけば、直に戻るだろう……と安直に考えていたけれど、その気配もない。
外では友人が沢山いて、ニコニコと屈託のない笑みを浮かべて遊んでいるみたいなんだけどね……。
私の前だけ笑ってくれなくなってしまった。
楽しく話もしなくなってしまった。
妹のあの屈託ない笑顔が懐かしいわ。
もう見れないのだと思うと、とても悲しいの。
だけどどうすれば元に戻るかなんてわからない。
間違いなく、原因は私にあるのだろう。
両親や友達、私以外の人間には、あんな可笑しな態度は見せないもの。
だけどその理由について、全く見当がつかないのよね。
だってあぁなる前日まで、仲良くおしゃべりして笑いあっていたのよ。
まぁ……どうにしろ、手を打つことも出来ないのなら、諦めるほうがいい。
それは大人たちの世界で学んできたこと。
性格が気に食わない、態度が気に食わない、そんな理由ならなおさらどうすることも出来ないのだから。
両親も親族も、城の人間も、私というイメージが出来上がっている
突然豹変すれば、両親の心配事を増やすだけになってしまうだろう。
だから笑って受け流すのが一番いいのでしょう。
私は妹へ対する感情を胸の奥へ奥へと閉じ込めると、ニッコリと笑みを浮かべてみせた。
とりあえず謝ってみても、機嫌を取ろうとしてみてもダメだった。
シンシアに直接聞いてみても、理由は教えてはくれないまま……。
あれから数日後、あの日と同じように妹はまた突然私の元へやってきた。
無言で部屋へ入ってきたかと思うと、妹は何を思ったのか、私を打った。
あまりに突拍子な出来事で、一瞬何が起こったのかわからなかったわ。
チリチリと痛みを感じ、唖然とする。
恐る恐るに顔を上げシンシアへ視線を向けると、今にも泣きだしそうな表情を浮かべていた。
どうして殴った妹がそんな顔をするの、なぜこんな事をするの……?
私は痛みを堪えながら、妹を刺激しないよう笑みを浮かべてみせると宥めてみる。
けれどその様が気に入らなかったようで、妹は涙を堪えながら私を強く睨みつけた。
「……ッッ、なんで……どうして怒らないの……?やっぱり……」
やっぱり?
そう震える声で呟くと、ひどく傷ついた表情を浮かべ、逃げるように部屋から出て行った。
それから妹はどんどん変わっていったわ。
私が声をかけるとあからさまに無視をしたり、突然部屋にやってきたかと思えば室内を荒らしたりと……嫌がらせの数々。
そしてその度に、怒らないのかと問いかけてくる。
妹の望み通り、怒った振りをしようかと、考えたこともあったけれど……自然な怒りがよくわからない。
大人の世界で育って怒る人はたくさんみてきたわ。
でもその人たちは、周りから敬遠されたり爪弾きにされたり……。
それにね、何をされても怒りなんて感じないの、むしろ……恐怖と煩わしさが入り混じる。
とりあえずなぜ怒らせたいのか、皆目見当もつかないけれど、妹は躍起になっていった。
そんな妹がある日私の元へやってくると、ネックレスが欲しいとそう言った。
そのネックレスは母からお城に上がった記念にと、頂いた水晶のネックレス。
キラキラと半透明に光る水晶が美しく、子供の私にはまだ似合わない。
だから大人になるまで、と大事にしまってあったのだけれども……妹はいつ見つけたのかしら?
渡したくない、そう思ったが……先日まで仲が良かった私たちの変化に、母がとても心配していた。
これ以上いらぬ気苦労をかけるわけにはいかない、だから私は大事なそのネックレスをあげたの。
だけど妹は納得できないとの表情をみせながらも、ネックレスを奪い取った。
そして暫くすると、妹はネックレスに興味をなくしたのか……部屋の隅に乱雑に置いたまま見向きもしない。
そんな妹に何とも言えぬ感情が芽生える。
怒りではない、悲しみ……恐怖……?
私は改善する兆しはない姿に深く息を吐き出すと、遠くからじっとシンシアの姿を眺めていた。
そうして暫くすると、妹はまた私のところへやってきて、私のメイドが欲しいとそう言った。
次から次へと、私の物を欲しがる妹に頭が痛い。
もちろん妹にも専属のメイドが付いている、試しに諭してみるが、私のも欲しいのだとごねはじめる。
そんな妹に両親も困り果てて、壊れものを扱うように接しているわ。
私付きのメイドは、幼いころからずっと世話をしてくれた、第二の母のような存在。
勉強面でも強くてね、彼女にはとても世話になったわ。
だけど私は寂しさをグッと堪えると、両親の様子を覗いながら笑みを浮かべ、いいわよ、とシンシアに差し出した。
御付きのメイドが居なくなったことで、日替わりにメイドがやってくる。
だけど何だかしっくりこないから、何でも自分でするようになったわ。
普通ならすぐに新たな御付きのメイドをつけるのだが、また妹が欲しがれば同じこと。
だから私は御付きのメイドはいらないと、断っているの。
そんな私を気に入らないのか……シンシアは不貞腐れた様子で私を見つめたかと思うと、頬を膨らませプィッとそっぽを向いた。
妹が何を考え、何が望みなのかさっぱりわからない。
最初は構ってほしいのかと思ったけれど、どうも違うようだ。
関りを減らし放っておけば、直に戻るだろう……と安直に考えていたけれど、その気配もない。
外では友人が沢山いて、ニコニコと屈託のない笑みを浮かべて遊んでいるみたいなんだけどね……。
私の前だけ笑ってくれなくなってしまった。
楽しく話もしなくなってしまった。
妹のあの屈託ない笑顔が懐かしいわ。
もう見れないのだと思うと、とても悲しいの。
だけどどうすれば元に戻るかなんてわからない。
間違いなく、原因は私にあるのだろう。
両親や友達、私以外の人間には、あんな可笑しな態度は見せないもの。
だけどその理由について、全く見当がつかないのよね。
だってあぁなる前日まで、仲良くおしゃべりして笑いあっていたのよ。
まぁ……どうにしろ、手を打つことも出来ないのなら、諦めるほうがいい。
それは大人たちの世界で学んできたこと。
性格が気に食わない、態度が気に食わない、そんな理由ならなおさらどうすることも出来ないのだから。
両親も親族も、城の人間も、私というイメージが出来上がっている
突然豹変すれば、両親の心配事を増やすだけになってしまうだろう。
だから笑って受け流すのが一番いいのでしょう。
私は妹へ対する感情を胸の奥へ奥へと閉じ込めると、ニッコリと笑みを浮かべてみせた。
1
あなたにおすすめの小説
推しであるヤンデレ当て馬令息さまを救うつもりで執事と相談していますが、なぜか私が幸せになっています。
石河 翠
恋愛
伯爵令嬢ミランダは、前世日本人だった転生者。彼女は階段から落ちたことで、自分がかつてドはまりしていたWeb小説の世界に転生したことに気がついた。
そこで彼女は、前世の推しである侯爵令息エドワードの幸せのために動くことを決意する。好きな相手に振られ、ヤンデレ闇落ちする姿を見たくなかったのだ。
そんなミランダを支えるのは、スパダリな執事グウィン。暴走しがちなミランダを制御しながら行動してくれる頼れるイケメンだ。
ある日ミランダは推しが本命を射止めたことを知る。推しが幸せになれたのなら、自分の将来はどうなってもいいと言わんばかりの態度のミランダはグウィンに問い詰められ……。
いつも全力、一生懸命なヒロインと、密かに彼女を囲い込むヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:31360863)をお借りしております。
一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。
甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。
だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。
それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。
後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース…
身体から始まる恋愛模様◎
※タイトル一部変更しました。
処刑された王女は隣国に転生して聖女となる
空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる
生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。
しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。
同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。
「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」
しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。
「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」
これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
幸せを知らない令嬢は、やたらと甘い神様に溺愛される
ちゃっぷ
恋愛
家族から産まれたことも生きていることも全否定され、少しは役に立てと言われて政略結婚する予定だった婚約者すらも妹に奪われた男爵令嬢/アルサイーダ・ムシバ。
さらにお前は産まれてこなかったことにすると、家を追い出される。
行き場を失ってたまに訪れていた教会に来た令嬢は、そこで「産まれてきてごめんなさい」と懺悔する。
すると光り輝く美しい神/イラホンが現れて「何も謝ることはない。俺が君を幸せにするから、俺の妻になってくれ」と言われる。
さらに神は令嬢を強く抱きしめ、病めるときも健やかなるときも永遠に愛することを誓うと、おでこにキス。
突然のことに赤面する令嬢をよそに、やたらと甘い神様の溺愛が始まる――。
ルンルン気分な悪役令嬢、パンをくわえた騎士と曲がり角でぶつかる。
待鳥園子
恋愛
婚約者である王太子デニスから聖女エリカに嫌がらせした悪事で婚約破棄され、それを粛々と受け入れたスカーレット公爵令嬢アンジェラ。
しかし、アンジェラは既にデニスの両親と自分の両親へすべての事情を説明済で、これから罰せられるのはデニス側となった。
アンジェラはルンルン気分で卒業式会場から出て、パンをくわえた騎士リアムと曲がり角でぶつかって!?
【完結】0日婚の白魔女皇后は呪いの冷酷帝に寵愛される
さわらにたの
恋愛
「冷酷帝」エンジュに皇后として望まれ、政略結婚として輿入れした白魔術師キーラ。
初夜にて「俺は呪われている。本当は皇后などいらん、解呪のためだけにお前を呼んだ」と明かされて解呪に挑むことに……から次第にあれやこれやで結局ハピエンラブラブになるお話です
ほんのりと前作「魔力なしの転生少女は天才魔術師様に求婚される」と同じ世界線、時間軸です
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる