ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ

文字の大きさ
6 / 86
第一章

彼は騎士?

しおりを挟む
私よりも幾分背が高く年上だろう、腰には騎士団の紋章入りの剣をさし、長いサーコート姿。
茫然とその姿を眺めていると、青年は私に気が付いたのか、おもむろにこちらへ顔を向けた。
月の光が反射し、まるで夜空のように彼の瞳がキラキラと輝いている。
この方……開宴時の挨拶の時、ウィリアム様の隣に並んでいた……確か弟。
武術を極めている彼の家と私の家とはかかわりが薄いため、こうやって直接対面したのは初めてだ。

夜会開宴時、確か紹介があったわね。
私よりも6歳年上で、名はケルヴィン。
長男とは違い、研究者ではなく父と同じ騎士を目指している。
武術の腕前は相当の様で、紹介時に数人の貴族たちから、彼を絶賛する声が耳にとどいていた。
そう確か……既に騎士団への入団は決まっていると話していたわね。

「ごきげんよう、公爵家の長女、シャーロットと申します。この度は多大な功績素晴らしいですわ。おめでとうございます」

私はニッコリと笑みを浮かべると、ドレスの裾を持ち上げそっと頭を下げた。
すると彼は夜空と同じ瞳が細められ、爽やかな笑みを浮かべる。

「ありがとう、僕はウィリアムの弟のケルヴィン。初めまして」

騎士特有の礼をみせる彼に、私はそっと頭を上げると蒼瞳を真っすぐに見据えた。

「息抜きのお邪魔をしてしまったかしら?」

「いえ、そんなことはありません。可愛らしい御令嬢と話が出来るなら嬉しかぎりですよ」

私は扇子を開き口もをヘ当てると、表情を隠す。
やっぱり彼がウィリアムの弟……なら彼と話せば、何かわかるかもしれないわね。

「ふふっ、お上手ですわね。ところで……」

そう話を切り出したが、後の言葉が出てこない。
あら、どう尋ねようかしら?
先ほどのように遠回しで尋ねる?
だけど今は周りに誰もいないわ。
う~んでもねぇ、あぁ難しいわね。

「うん、どうかされましたか?」

「あぁ、いえ、ごめんなさい。その……お兄様とは仲が宜しいのですか?」

「そうだね、悪くはないかな。自慢の兄だよ」

そう答える彼の表情を見つめていると、ふと何か違和感を感じた。

「……そうなのですね。研究の内容はご存知ですか?先ほどお兄様にご挨拶に伺ったのですが……人に囲まれておりまして……」

「あぁ……少しならね……」

私の質問になぜか困った表情を浮かべると、歯切れ悪そうに答える。
そんな彼の様子を気にしながら、論文の話を出してみると、思っていた以上にスラスラと答えが返ってきた。

夜風など気になるなくなる程、夢中で論文について話していると、楽しい気分になってきた。
先ほどウィリアムと話していたときは違い、質問にちゃんとした答えが返ってくるの。
少しならと言ってたけれど……とても熟知しているわ。

「とても勉強になりますわ。では論文にありましたこれは……」

「これは家にある井戸水を使用してみたんだ。それにしてもまだ12歳だというのに、すごいな」

「ふふっ、新しことを学ぶことが好きなだけですわ」

最初は簡単な質問だったが、次第に話が盛り上がってくると、細かいところまで根掘り葉掘りと尋ねてみる。
会話がヒートアップし、彼はとても楽しそうな表情を見せ始めると、まるで自分自身が研究していたかのように、本には載っていないことまで話し始めた。
彼の知識深さに内心驚いていると、ふとあることが頭を過る。
そう……先ほどまで疑問に思っていたその答え、もしかして……。

「そうなのですね、彼の論文は素晴らしいものでしたわ。だけど少し気になることがありましたの……。彼の過去作品をいくつか拝見したのですが、どうも今回の論文と過去の作品とで小さな差異が気になりましたの。筆跡に違いはなかったのですが、なんと言えば……言い回しと言えばいいのかしら、それが他の作品とは違っていて、そう……まるで別の人が書いたような……」

そこで言葉を切ると、彼の反応を窺うように視線を向ける。
パチッと視線が絡むと、彼は目を泳がせ、慌てて私から視線を逸らせた。

「そんなはず……ッッ、どうしてそう思ったの?」

その反応に私は確信めいたものを感じると、ようやく胸につっかえてしこりが綺麗さっぱり消えていくのを感じた。

「ふふっ、その反応、ようやくすっきりしましたわ。あれはあなたが書いたものなのですわね。彼の書いた本には、全て独特の言い回しと言うか、構成と言えばいいのかしら……癖みたいなものを見つけました。けれど今回の書作にはそれがなかった。きっと本人も無意識に出ているものが、簡単になくなるはずがないわ。先ほどお兄様とお話をしてみたら、何かを隠している様子で、どうしても気になってしまったの。でもあなたと話せてやっとわかりました。ご兄弟でしたら筆跡を真似ることは容易いだろうし、それにあなたはあの本に書いていない事柄まで、事細かく答えられる。ここまで揃えばさすがに気が付きますわ。あぁ~これで今日は安眠出来ますわ」

晴れ晴れとした気持ちで一気に話すと、狼狽している彼に向って小さく微笑んむ。

「いえ、違う、その、何を言っているのか……ッッ」

「大丈夫ですわ、このことは今後一切口にしない。まぁ話したとしても、信用してもらえないでしょうけれど……だってあなたは騎士様ですもの」

彼の姿を上から下までゆっくり眺めてみると、おもむろに扇子を閉じる。
私は彼に向って小さくウィンクを見せると、そっと後ろへと下がった。
しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

推しであるヤンデレ当て馬令息さまを救うつもりで執事と相談していますが、なぜか私が幸せになっています。

石河 翠
恋愛
伯爵令嬢ミランダは、前世日本人だった転生者。彼女は階段から落ちたことで、自分がかつてドはまりしていたWeb小説の世界に転生したことに気がついた。 そこで彼女は、前世の推しである侯爵令息エドワードの幸せのために動くことを決意する。好きな相手に振られ、ヤンデレ闇落ちする姿を見たくなかったのだ。 そんなミランダを支えるのは、スパダリな執事グウィン。暴走しがちなミランダを制御しながら行動してくれる頼れるイケメンだ。 ある日ミランダは推しが本命を射止めたことを知る。推しが幸せになれたのなら、自分の将来はどうなってもいいと言わんばかりの態度のミランダはグウィンに問い詰められ……。 いつも全力、一生懸命なヒロインと、密かに彼女を囲い込むヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:31360863)をお借りしております。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる

西野歌夏
恋愛
 ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー  私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。

処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる 生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。 しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。 同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。 「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」 しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。 「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」 これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。

幸せを知らない令嬢は、やたらと甘い神様に溺愛される

ちゃっぷ
恋愛
家族から産まれたことも生きていることも全否定され、少しは役に立てと言われて政略結婚する予定だった婚約者すらも妹に奪われた男爵令嬢/アルサイーダ・ムシバ。 さらにお前は産まれてこなかったことにすると、家を追い出される。 行き場を失ってたまに訪れていた教会に来た令嬢は、そこで「産まれてきてごめんなさい」と懺悔する。 すると光り輝く美しい神/イラホンが現れて「何も謝ることはない。俺が君を幸せにするから、俺の妻になってくれ」と言われる。 さらに神は令嬢を強く抱きしめ、病めるときも健やかなるときも永遠に愛することを誓うと、おでこにキス。 突然のことに赤面する令嬢をよそに、やたらと甘い神様の溺愛が始まる――。

【完結】0日婚の白魔女皇后は呪いの冷酷帝に寵愛される

さわらにたの
恋愛
「冷酷帝」エンジュに皇后として望まれ、政略結婚として輿入れした白魔術師キーラ。 初夜にて「俺は呪われている。本当は皇后などいらん、解呪のためだけにお前を呼んだ」と明かされて解呪に挑むことに……から次第にあれやこれやで結局ハピエンラブラブになるお話です ほんのりと前作「魔力なしの転生少女は天才魔術師様に求婚される」と同じ世界線、時間軸です

【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係

ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________

ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん
恋愛
   アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。  何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。  何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。  「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…

処理中です...