婚約破棄の茶番に巻き込まれました。

あみにあ

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それなら……

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ゲームではこんな話はなかった。
ステイシー様は立場上こんな面倒くさい王子の婚約者にさせられて……想い人である彼と結ばれないなんて。

「私と王子の婚約話はともかく、ステイシー様に王子はもったいないです」

「もったいないって、もう少し言い方があるだろう……」

シュンっとする王子を横目に、私は顎に手をつき考え込む。
ハンクはステイシー様を好きなのだろうか。
見るからに堅物そうだし、王子の婚約者のままではステイシー様を好きでも、口にすることはしないだろう。

「あいつらとはさ竹馬の友なんだ。純粋に幸せになってほしいと思っている。俺が見る限りハンクは絶対ステイシーを好きだと思うんだ。そんな二人を見てて、俺も本当の恋ってのを知りたくなった。恋はするものじゃなく落ちるもんだってステイシーに教えてもらったんだ。想い合うあいつらを羨ましかった。その感覚が知りたくて、気になった女に声をかけてたんだが……。そこでお前と出会って、やっとわかりかけてきた」

そうニカっと笑う王子の姿に、思わず見惚れる。
ゲームで知る彼とは違う、無邪気な笑み。
女たらしで自己中だと思っていた彼の新たな一面。
うざい性格は変わっていないが、友達のためにと行動する彼の姿はとても魅力的だった。

私はサッと目を逸らせると、さりげなく赤く染まる頬を隠した。
くぅっ、顔だけは本当にいいんだから……。
それにしても王子が女性を追いかける理由はこれだったのね。
まぁでも婚約者がいる身分で、どうかとおもうけど。

とりあえず彼のことはおいといて、ステイシー様には幸せになってもらいたい。
だってこんな王子の婚約者になってしまったことで、気苦労が絶えなかったはずだし。
ここは……よしっ。

私は王子の前へ進み出ると、二人へ声をかけた。

「あの、ハンク様、婚約の件なのですが……」

様子を窺いながら手を上げると、二人がこちらへ顔を向ける。

「先ほども言いましたが、お二人が想いあっていようがなかろうが、あなたたちの一存で変わることはありません」

彼は私の言葉を遮ると、冷たい瞳をこちらへ向ける。

「彼女の一存ならどうですか?」

「彼女の一存?意味がわかりませんね。あなたは知らないでしょうが、二人は昔馴染み。こんなくだらない遊びができるほど信頼し合っているのですよ。全く知らない相手と婚約させられるより、数段ましだと思いますけどね」

全くステイシーの気持ちに気が付いていないハンクの言葉に、私はステイシーを見ると静かに頷いてみせた。

「ステイシー様、ここまで来たのなら正直になってもいいんじゃないですか?お貴族様は立場とか利権とか、守るべきものがたくさんあって大変なのはわかります。感情を押し殺して駆け引きして、納得しなければいけないこともあったはず。だけどあなたの人生はあなたのものです。時には自分と真っすぐに向かい合うべきではないでしょうか。背負うものがない平民の私がこんなこと言っても説得力はないかもしれませんが、どんな結果になろうとも、後悔しない選択をするべきだと思います」

関係のない私がなんでこんなでしゃべっているのか……王子の変な自信が映ってしまったのかもしれない。
だけど想い合っているのなら、素直になるべきだと思う。

ハンクを見る限り、はっきりと言葉にしなければ伝わらなさそう。
攻略対象者になればと言っていたが、訂正しよう。
超がつくほどの鈍感は見ていてイライラする。

「あなた……ふふっ、私に対してそんな真っすぐにぶつかってきた方は初めてだわ。王子があなたに興味を抱いた気持ちもわかるわ」

彼女は上品に笑ったかと思うと、吹っ切った様子でハンクを真っすぐに見つめた。

「ハンク、回りくどいことはもうやめにしますわ。公爵家という立場でもなく、軍師の立場でもない、ましてや王子の婚約者でもない、私の言葉を聞いていただけないかしら?」

彼は眉を顰めながらステイシーを真っすぐに見つめた。
彼女は深く息を吸い込むと、公爵家の令嬢の顔ではない、年相応の幼い表情で頬を染める。

「私はずっとあなた様をお慕いしております。愛していますわ」

ステイシーの告白に、ハンクは口を半開きのまま固まった。
何が何だかわかっていない様子だが、暫く見守っているとハンクの顔がみるみる赤く染まっていく。

「なっ、なにを!?冗談はおやめください」

クールな仮面が崩れ、これほどまでに人間が狼狽する姿は初めて見た。
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