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エリザベート嬢はあきらめない
精霊王の怒り
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聖女ロリエッタのお披露目パーティーの会場から、エリザベートが姿を消した直後から、ドリミア王国では『生活魔法』を含む全ての魔法が使えなくなってしまった。貴族達は大騒ぎだ。
朝、昼、夕、の食事の用意も、後片付けも、ドアの開け閉めも、魔法では出来なくなった。生活魔法で身支度を整えることも出来ない。
小さな事を上げたら切りがないほど、今まで生活魔法に頼っていた多くの事が、出来なくなってしまったのだ。
王都学園での生活や、寮生活にも変化があった。瞬間移動が出来ないので、学生達は寮から学園の校舎まで、馬車か徒歩で移動しなければならなくなった。
食堂への瞬間移動もできない。そして何より、魔法学の授業がなくなった。
☆☆☆ 精霊王カイの呼びかけ ☆☆☆
『我が眷族の精霊達よ。古(いにしえ)の昔より、このドリミア王国の民に魔力を貸してきた精霊達よ。
我が愛し子が国を追われた。
我の怒りは大きい。
あのような者達に我らの力を貸す必要はない。
このドリミア王国の民に魔力を貸すことを禁じる』
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
精霊王カイのこの呼びかけに、全ての精霊達が応じた。今回は光の精霊ルミーニと闇の精霊テネーブまでもがカイに従った。
「ルミーニ、あの娘の詠唱には応じるように」
カイが光の精霊ルミーニに言った。
「なぜ彼女だけ?」
「自身の『力』の限界を分らせる為に」
「わかったわ」
ルミーニが頷いた。
それから数日後に、ロリエッタは城の外の、王都から離れて誰も気がつかないような辺鄙(へんぴ)な場所に、瘴気(しょうき)が少しずつ発生し始めている事を言い当てる。
そして、大行列を成してその場所に赴いて瘴気を祓(はら)った。
「聖女さま!」
「ありがとうございます」
「さすが聖女様だ」
「聖女ロリエッタ様、バンザイ!」
彼女に同行した貴族達は彼女を褒め称え、国民達は、ますます彼女を崇めるようになっていった。
だがその頃、ドルマン達は焦っていた。彼らも他の国民と同じように、魔法が使えなくなっていたのだ。
「闇の精霊テネーブ様。我らに力をお貸し下さい」
「どうか我らの詠唱にお答え下さい」
彼らが今まで操っていた瘴気も、繋ぎ止めていた魔力の鎖がなくなり、次々と空気の中に消えていく。
その微々たる瘴気は、放っておけば大気の中に溶け込み浄化されていく事だろう。
けれど、殆ど全ての国民が魔法を使えない中で、魔法騎士団の隊員達は今まで通りに魔法が使えていた。
城の中をアジト(隠れ家)として、我が者顔で振る舞っていた闇魔法の使い手達は、もうすぐ帰ってくるだろうアフレイド達を恐れた。そして城を離れて行った。
国王陛下を見張っていた者達も、早々に立ち去っていった。
ドルマンは立ち去っていく仲間を、繋ぎとめる事が出来なかった。
・・・・・
けれど、実は、魔法騎士団の隊員の他にも、魔法が使えている貴族は何人もいた。
精霊王カイと精霊達は、ドリミア王国の国民全員の魔法詠唱に応じなくなったわけではなかったのだ。
聖女レティシアの加護を持っている者は、以前と同じように魔法が使えていた。
しかし、彼らは自分達だけが魔法を使える事を言わなかった。人々の嫉妬や妬みの恐ろしさを知っていたからだ。
騒ぎ立てずこっそりと、「早く他の人々の魔力も戻りますように」と祈りながら、今まで通りの生活をしているのだった。
「人間とは色々と大変なのだな」
そんな人々を見て精霊王カイがレティシアに言った。
「そうよ。色々と大変な中で人は頑張って生きているの。だから、早く他の人々の詠唱にも応えてあげてね」
「だけど、私の加護を持つ人々の魔力を奪わないでくれて有難う。カイ」
そのレティシアの言葉に、精霊王カイは静かに笑いながら頷いたのだった。
朝、昼、夕、の食事の用意も、後片付けも、ドアの開け閉めも、魔法では出来なくなった。生活魔法で身支度を整えることも出来ない。
小さな事を上げたら切りがないほど、今まで生活魔法に頼っていた多くの事が、出来なくなってしまったのだ。
王都学園での生活や、寮生活にも変化があった。瞬間移動が出来ないので、学生達は寮から学園の校舎まで、馬車か徒歩で移動しなければならなくなった。
食堂への瞬間移動もできない。そして何より、魔法学の授業がなくなった。
☆☆☆ 精霊王カイの呼びかけ ☆☆☆
『我が眷族の精霊達よ。古(いにしえ)の昔より、このドリミア王国の民に魔力を貸してきた精霊達よ。
我が愛し子が国を追われた。
我の怒りは大きい。
あのような者達に我らの力を貸す必要はない。
このドリミア王国の民に魔力を貸すことを禁じる』
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
精霊王カイのこの呼びかけに、全ての精霊達が応じた。今回は光の精霊ルミーニと闇の精霊テネーブまでもがカイに従った。
「ルミーニ、あの娘の詠唱には応じるように」
カイが光の精霊ルミーニに言った。
「なぜ彼女だけ?」
「自身の『力』の限界を分らせる為に」
「わかったわ」
ルミーニが頷いた。
それから数日後に、ロリエッタは城の外の、王都から離れて誰も気がつかないような辺鄙(へんぴ)な場所に、瘴気(しょうき)が少しずつ発生し始めている事を言い当てる。
そして、大行列を成してその場所に赴いて瘴気を祓(はら)った。
「聖女さま!」
「ありがとうございます」
「さすが聖女様だ」
「聖女ロリエッタ様、バンザイ!」
彼女に同行した貴族達は彼女を褒め称え、国民達は、ますます彼女を崇めるようになっていった。
だがその頃、ドルマン達は焦っていた。彼らも他の国民と同じように、魔法が使えなくなっていたのだ。
「闇の精霊テネーブ様。我らに力をお貸し下さい」
「どうか我らの詠唱にお答え下さい」
彼らが今まで操っていた瘴気も、繋ぎ止めていた魔力の鎖がなくなり、次々と空気の中に消えていく。
その微々たる瘴気は、放っておけば大気の中に溶け込み浄化されていく事だろう。
けれど、殆ど全ての国民が魔法を使えない中で、魔法騎士団の隊員達は今まで通りに魔法が使えていた。
城の中をアジト(隠れ家)として、我が者顔で振る舞っていた闇魔法の使い手達は、もうすぐ帰ってくるだろうアフレイド達を恐れた。そして城を離れて行った。
国王陛下を見張っていた者達も、早々に立ち去っていった。
ドルマンは立ち去っていく仲間を、繋ぎとめる事が出来なかった。
・・・・・
けれど、実は、魔法騎士団の隊員の他にも、魔法が使えている貴族は何人もいた。
精霊王カイと精霊達は、ドリミア王国の国民全員の魔法詠唱に応じなくなったわけではなかったのだ。
聖女レティシアの加護を持っている者は、以前と同じように魔法が使えていた。
しかし、彼らは自分達だけが魔法を使える事を言わなかった。人々の嫉妬や妬みの恐ろしさを知っていたからだ。
騒ぎ立てずこっそりと、「早く他の人々の魔力も戻りますように」と祈りながら、今まで通りの生活をしているのだった。
「人間とは色々と大変なのだな」
そんな人々を見て精霊王カイがレティシアに言った。
「そうよ。色々と大変な中で人は頑張って生きているの。だから、早く他の人々の詠唱にも応えてあげてね」
「だけど、私の加護を持つ人々の魔力を奪わないでくれて有難う。カイ」
そのレティシアの言葉に、精霊王カイは静かに笑いながら頷いたのだった。
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