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その後編6

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家に帰ると、ソレルはいつも通り、椅子に座ってぼーっとしていました。

テーブルの上の食料がなくなって、お皿だけが置いてあったので、ちゃんとひとりでも食べてくれたことに安心しました。

ソレルが、ひとりでご飯が食べられなければ、仕事に行くのが難しくなるところでした。

それから、いつもの通り、お湯で濡らした布巾で体を拭いてあげながら、今日あったことと、明日から仕事に出かけること、ひとりで留守番をお願いすることをソレルに話しました。

ちゃんと伝わってるといいんだけどなぁ。



次の日の朝から私は出勤し始めました。

他の職員の皆さんへの自己紹介もそこそこに、すぐに仕事を頼まれ、急いで、作業を開始します。

はじめの1ヶ月くらいは、仕事を覚えるだけで精一杯で、すごく疲れてしまい家に帰ると、ソレルの面倒を見る暇もなく、すぐに眠ってしまう日もあるくらいでした。

私の仕事は主に雑用で、洗濯や掃除、料理の手伝い、資料の整理、その他の雑事諸々といったもので、昼休憩のときに、昼食の賄いも出るので、忙しすぎるのに目をつむれば、わりといい職場だと思いました。

だけど2ヶ月過ぎた頃でしょうか、私は少し体調を崩し始めました。

食べ物などの匂いで気持ちが悪くなり、時には食べたものを吐き出してしまうこともありました。

赤ちゃんのこともあるので、原因不明の体調不良が不安でしたが、ちょうど職場が医院だったので、心配した同僚が医師先生に頼んでくれて、診察をしてもらうことになりました。

先生の診断は妊娠による悪阻でした。

やっぱり赤ちゃんはいたんだ、と私は体調は悪くとも、嬉しい気持ちになりました。

前に医師に診察を受けた際は、まだはっきりとは、わからないが、おそらく妊娠しているのでは、とだけ言われていたので、本当はお腹の中に赤ちゃんなんていないんじゃないか、と私は不安だったのです。

よかった。

私の赤ちゃん。

私とソレルの赤ちゃん。

早く元気に産まれてきますように。
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