古の物語

某勇者

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003.旅立ち

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~前回までのあらすじ~
1.突如として異世界に来たハルト。
生活に慣れたと思いきや、
突如魔王軍がやってきた!
2.魔王軍の強い奴と戦うハルト。
自身と相手の強さを知りながら、
作戦に誘導する!

「大事なことを忘れた?この俺が?」
「ああ。」
ここからは調整だ。
を実行するには男の気をこっちに向ける必要がある。
「うーん、そうだな…『お前がバカなこと』か?」
「いや、違うな。確かにお前には俺がバカに見えるかもしれないけど、それがお前の死因にはならないだろ。もっと別のことだ、別の。」
「ふん、どうせそうやって適当な話をして、油断したところに突撃してやるつもりだろ?」
「違うな。」
「それじゃあ、一体何だ?」
よし、後少しでやれる。
それじゃ、この一手で詰ませる。
俺は剣を男に向け、問う。
「改めて問題だ。お前の忘れている大事なことは何だ?」
「ふん、お前が不意をつく可能性に決まってる。」
「ファイナルアンサー?」
「………ファイナルアンサーだ。」


俺は奴の動向に注目している。
「……………」
汗をかき始めた。
「……………」
奴は、言った。
「不正解だ。」
「ふん、だから何だ?」
「正解発表と行こう。正解は、」
「これよ!」
「ぐっ!?」
突如腹に激痛が走り、その拍子に姫を手放してしまう。
何だ、何が起きた?
そこで、奴が言った。
「正解は、『捕虜の反抗』だ。」
俺は見下ろす。
そこには、俺の腹に刺さったグリップがあった。
「気づいたか?」
「…なるほど、姫がナイフを隠し持っていたのか。」
「正解。それが俺のピースだ。でも、気づくのが遅かったな。」
「新しいピース?」
「そのナイフは、俺の調理用ナイフだ。アイツに剣を持って来させた時に、姫が独断で隠し持ってきたんだ。そのおかげで、この作戦ができた。」
「私、凄いでしょ?」
「ああ、本当によくやった。」
…はは、舐めすぎたか。
ちとまずい存在がいたな。
「ヘル様!大変だ、ヘル様!」
「これはまずい、私達はどうすれば?」
「もういい、俺はほっといて魔王に報告しろ。『始まりの村からかなりの危険分子が現れた』とな。」
「………了解!」
「ヘル軍の魔物全員に告げる、急いで撤退だ!」
その号令に、全ての魔物が一気に退却する。
「…私達、助かったの?」
「何言ってるかわからねぇが、多分撤退した。」
…俺はもうダメだ。
魔王には怒られるだろうが…
情報を得ただけマシだと信じたい。
私は幹部の中でも1番弱いと言われた。
なら、他の幹部は俺より強い。
………他の幹部によって苦しむがいい、姫よ。


「………間違いなく死んだな。」
「良かった!」
その瞬間、歓声が湧き上がる。
「ありがとう、ハルト!」
「お前は英雄だ!姫とこの村の英雄だ!」
「バカやろう!勝手に姫の英雄にするな!」
「でも姫を救ったんだぜ?」
そんな歓声の中、村長が来た。
「………」
魔王襲来対策に唯一反対したのが彼だ。
だけど村長という立場の関係上、俺達は村長に従うしか無かった。
その村長の登場に、歓声が止んだ。
「…まずは、本当にすまなかった。」
その言葉には、意外にも心がこもっていた。
「私は、魔物の存在を認めたく無かった。そんなのは誰かが面白がって作った偽りの歴史だと思い込んでいた。そう思いたかった…魑魅魍魎ちみもうりょう跋扈ばっこしている光景なんて、想像したくも無かったからだ。だから、ただひたすらに拒絶した。王都ラジオで言われても。」
…つまり、村長はケチじゃ無かった。
魔物が来るという事実を拒絶したい。
だからあんな適当な理由を並べて、魔物対策をしなかった。
よっぽど嫌だったんだろうな。
でも、よく考えたらそうだ。
人類のほとんどを殺した魔王と、その手下である魔物達が来るかもしれないなんて言われたら、「そんなのは嘘だ」と拒絶したくなる。
「そして、ありがとう。君が裏で対策していなかったら、間違いなく姫は魔王軍にやられていた。」
「………鵜呑みにするのも良くないから、今後は王都ラジオと村民の意見をしっかり参考にしてくれると助かる。」
「ああ。もうこんなことはしないし、したくない。今ここで、約束しよう。」
「よかった、これでひとまず安心ですね。」
「ま、魔王軍は間違いなくまた俺と姫を狙いに来るだろうな。」
「私はわかりますけど、あなたも?」
「自分で言うのもアレだけど、魔王軍を撃退したのは俺と姫だ。姫はもちろんのこと、俺も警戒されるはず。」
「なるほど!」
「ふう、まずは…村復興だな。」

その後は少しずつ村を復興させた。
姫も手伝ってくれたのは驚いた。
さすが、『歴史上1番国民に寄り添った姫』だ。
村民全員で協力した結果、3時間程でできた。
被害が少なかったのが幸いした。
さてと…荷物はこれでいいな。
そんじゃ、なるはやで…
「何で急いでいるんですか?」
「うわっ!?」
俺がそれとなく村から出ようとすると、急に後ろから姫が話しかけてきた。
後ろを振り返ると、村民全員の姿が…
「くっそ、バレてたかw」
「なーにそそくさと出ようとしてんだよ、英雄さん!」
「せめて、お見送りくらいはさせてほしい。」
「ありがとよ…姫はどうする?」
「私はもちろん、英雄さんについて行くよ?」
「え!?」
「英雄さん頼りになるし、ずっと同じとこにいたら危ないし。」
「俺と同じ考えか…あとさらっと言ってるけど、いつのまにか俺『英雄』って言われてるよね?」
「だって、英雄だもん!」
「………なんか、本当にフランクだな、姫は。」
「最初はそれでよく怒られたけど、今じゃ王様も認めてくれてるし。」
「それじゃ、姫も荷物を…」
「まとめたよ?」
「一緒に行く気満々じゃん。」
「ふふふ!」
「よし…それじゃ皆、ありがとよ!」
「行ってきまーす!」
「2人とも頑張れよー!」
「頑張りまーす!」
「近隣の町には色々伝えてある、安心しろ!」
「助かる!」
そして、俺と姫は始まりの村から旅立った。
「そういえば、目的はどうする?」
「目的?そうだな…決めた!」
「私も!いっせーので言おう?」
「ほんと幼馴染のように接してくるな…」
「嫌?」
「嫌じゃない。それじゃ、いっせーの…」
「「魔王討伐!」」
「やっぱりな!」
「やっぱりね!」
目標、魔王討伐。
無謀かどうかは知らないけど、やる価値あり!
そうして、俺達の冒険が始まる。
………忘れがちだけど、俺には目的がもう一つ。
元の世界に帰ること、なんだけどな………
これじゃ元の世界に帰りたくなくなるかもな…




あとがき
なんか普通の物語の流れだな。
まあそれがポイントなんだけど。
とりあえず案の定文字数大盛り。
コメントしてくれるとめちゃくちゃ助かる。
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