愛情探偵の報告書

雪月 瑠璃

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行き過ぎた愛は嫉妬を生む 第1話

scene1 向日葵探偵事務所での日常

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 雨の音が家の中まで響くような六月のある朝、僕はデスクに座り、テレビに目を向けていた。綺麗な女性アナウンサーが昨日から今朝にかけて起こったニュースを伝えている。
『続いてのニュースです。人気アイドルグループ「ピーターパンボーイズ」のメンバー、坂井修介さんが、違法薬物を使用した疑いで逮捕されました。自宅からは数袋の麻薬が見つかり、坂井さんは容疑を認めているとのことです……』
 全く、最近はこんなニュースばかりだ。男性アイドルだが、僕の好きなグループだった。きっとグループは解散し、人気は急降下するだろう。小さな袋一つで全てが壊れてしまうなんて、恐ろしい。僕はデスクに置かれたドーナツを一口かじった。

 ここは向日葵ひまわり探偵事務所――さくらが丘という町にある小さな探偵事務所である。所員はただ一人、所長にして探偵の僕こと九条創真くじょうそうまだけである。事務所に舞い込む依頼は、ペット探し、人探し、身辺調査、さらに事件解決など、危険をはらむものだってある。日々、それらの依頼をこなして、僕は生きているのである。

 週に一つか二つほど来ない依頼が、先週は四つも来てしまい、町中を駆け回っていた。昨日、ようやくすべてが片付いて今日に至るのだが、休むわけにはいかない。理由は簡単だ、お金がないのである。依頼を四つこなしたところで、入ってくるのは二十万程度だ。多いと思うだろうが、事務所を経費にほとんど使ってしまうので、手元には一万円ほどしか残らない。生活するのもやっとのがくだ。
『続いては、先週、海外進出を発表した逢坂おうさか財閥のニュースです。逢坂財閥総帥、逢坂秋一郎しゅういちろう氏はフランスの有名企業クーヴレールグループの会長、ジネディーヌ氏と会見を開き、共同でリゾート施設の建設を発表しました。日本で最も権力を持っていると言われている逢坂財閥が今後、世界でどんな活躍を見せてくれるのか、楽しみですね。……』
 アナウンサーはコメンテーターの一人に意見を求めた。
 お金持ちはお金に困ったりしないんだろうなあ、とそんななことを考えながら、またドーナツを口に入れた。きっとああいう偉い人は、何十万とする椅子に堂々と座って部下にああやれ、これやれ、って指示を出していればいいんだろうな、いいなあ、僕にも助手とかいてくれればなあ。どうもこういうニュースを見ていると羨ましく思ってしまう。
 もういっそのこと何でもいいから、一気に大金が手に入る仕事に転職してしまおうか。この際、ホストとかやってみたい。女の人とお酒を飲んでいるだけでお金が入ってくるなんて、夢のようだ。しかし、自分がお酒にかなり弱いことを思い出した。僕はお酒が一滴も飲めないのだ。あれは成人式が終わってから居酒屋に行ったときだった。友達に誘われて、初めてお酒を飲んだ。それは店で一番弱いお酒だったらしいのだが、僕は一口飲んで気を失った。もちろん記憶がないだけで、そのあとに浴びるように飲んだのかもしれないが、とにかくお酒は飲んではいけないと思い知ったのである。
 閑話休題。
 地道にチラシ配りをしに行くか。雨の日だから客は来ないだろうし、事務所を空けておいても大丈夫だろう。でも、チラシは山ほど作ってあるから問題はないものの、傘を差しながらチラシ配りは大変だ。どうせ受け取ってくれる人はいないだろうし。結局、一度手に取ったチラシの束を投げるように置いた。面倒になったのだ。
 いいじゃないか、昨日まで頑張っていたんだから、今日くらいゆっくりしよう。僕は残ったドーナツを全部食べた。
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