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行き過ぎた愛は嫉妬を生む 最終回
scene1 最後の晩餐
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屋敷に戻ったのは午後六時半頃だった。使用人たちはすでに通常業務に戻っていて、ダイニングでは夕食の準備が整えられていた。食事の用意は三人分、僕とはるねちゃんと菜々穂さんの分が用意されていた。
「おかえりなさいませ、九条様。七瀬様」
「ただいまです、菊野さん」
「……これが、逢坂家の食事? 何だか高級レストランみたいね!」
菜々穂さんがここで食事するのは初めてだったか。が、このはしゃぐ姿は知り合いとして恥ずかしい。僕は少し彼女を牽制して席に座った。
しばらくすると、はるねちゃんが顔を出した。警察の対応をしていたのか、顔色が少し悪いような気がした。彼女は椅子にどっぷりと座ると、小さく息を吐いた。
「疲れてるね、はるねちゃん」
「そりゃあ疲れるわよ。同じこと何度も聞かれるし、部屋を見つけるたびに『ここは何の部屋だ』とか聞かれるし、それで見つけた本人はどこか行っちゃうし、もうヘトヘトよ」
そういえば彼女に行き先を言っていなかった。桐原さんの部屋で別れたきり、会ってさえいなかった。
「それは申し訳なかったね」
「まあいいわ。どうせ調査に行ってくれていたんでしょ。何も言わないわ」
彼女はいただきます、と小さく言って食事を始めた。僕たちも続いて食べ始めた。
前菜。
僕は運ばれてきた料理を口に運びながら、報告を始めた。
「はるねちゃん、さっき桐原さんと連絡を取れた」
「本当に?」
「うん。健康体とは言えないけど、誰かに何かされたっていう感じではなかったよ」
「よかった……」
はるねちゃんは今にも泣きそうな声で呟く。
スープ。
「桐原、何か言ってた? どこにいるとか」
「それは言わないでくれって言われちゃった。けど、今晩中にも帰ってくるって。明日のお昼までは部屋で休むから、それまで休暇を下さいって伝言も預かってるよ」
「もう、いくらでも休ませてあげるわよ。しっかり面倒見てあげるんだから」
「僕は今日中にも荷物をまとめて、明日出て行くよ。ここにいる必要はなくなったし」
「ええ、そうね。明日、朝食が終わったら車を手配させるわ」
「ありがとう」
魚料理。
「ところで、はるねちゃん」
「何かしら」
「まだ桐原さんの部屋を開けておいてもらえるかな。パソコンを勝手に持ち出しちゃったから片付けないと」
「ええ。構わないわ。助けてくれたんだもの。桐原だって、それくらい許すわ」
「夕飯が終わったらすぐに片付けるよ。ありがとう」
肉料理。
「さあ、今宵は最後の晩餐よ。存分に味わいなさい、創真」
「うん。こんな美味しい料理、ここぐらいでしか食べられないからね。しっかり噛みしめるよ」
「じゃあ、私さっきのスープおかわり!」
「僕ももらおうかな」
こうして、僕の最後の晩餐は最高に盛り上がっていた。そして、同時に僕の胸はかつてないほどに脈を打っていた。
「おかえりなさいませ、九条様。七瀬様」
「ただいまです、菊野さん」
「……これが、逢坂家の食事? 何だか高級レストランみたいね!」
菜々穂さんがここで食事するのは初めてだったか。が、このはしゃぐ姿は知り合いとして恥ずかしい。僕は少し彼女を牽制して席に座った。
しばらくすると、はるねちゃんが顔を出した。警察の対応をしていたのか、顔色が少し悪いような気がした。彼女は椅子にどっぷりと座ると、小さく息を吐いた。
「疲れてるね、はるねちゃん」
「そりゃあ疲れるわよ。同じこと何度も聞かれるし、部屋を見つけるたびに『ここは何の部屋だ』とか聞かれるし、それで見つけた本人はどこか行っちゃうし、もうヘトヘトよ」
そういえば彼女に行き先を言っていなかった。桐原さんの部屋で別れたきり、会ってさえいなかった。
「それは申し訳なかったね」
「まあいいわ。どうせ調査に行ってくれていたんでしょ。何も言わないわ」
彼女はいただきます、と小さく言って食事を始めた。僕たちも続いて食べ始めた。
前菜。
僕は運ばれてきた料理を口に運びながら、報告を始めた。
「はるねちゃん、さっき桐原さんと連絡を取れた」
「本当に?」
「うん。健康体とは言えないけど、誰かに何かされたっていう感じではなかったよ」
「よかった……」
はるねちゃんは今にも泣きそうな声で呟く。
スープ。
「桐原、何か言ってた? どこにいるとか」
「それは言わないでくれって言われちゃった。けど、今晩中にも帰ってくるって。明日のお昼までは部屋で休むから、それまで休暇を下さいって伝言も預かってるよ」
「もう、いくらでも休ませてあげるわよ。しっかり面倒見てあげるんだから」
「僕は今日中にも荷物をまとめて、明日出て行くよ。ここにいる必要はなくなったし」
「ええ、そうね。明日、朝食が終わったら車を手配させるわ」
「ありがとう」
魚料理。
「ところで、はるねちゃん」
「何かしら」
「まだ桐原さんの部屋を開けておいてもらえるかな。パソコンを勝手に持ち出しちゃったから片付けないと」
「ええ。構わないわ。助けてくれたんだもの。桐原だって、それくらい許すわ」
「夕飯が終わったらすぐに片付けるよ。ありがとう」
肉料理。
「さあ、今宵は最後の晩餐よ。存分に味わいなさい、創真」
「うん。こんな美味しい料理、ここぐらいでしか食べられないからね。しっかり噛みしめるよ」
「じゃあ、私さっきのスープおかわり!」
「僕ももらおうかな」
こうして、僕の最後の晩餐は最高に盛り上がっていた。そして、同時に僕の胸はかつてないほどに脈を打っていた。
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