愛情探偵の報告書

雪月 瑠璃

文字の大きさ
41 / 68
愛するのにも一苦労 第1話

scene final 初日の調査終了と捜査の進展

しおりを挟む
 村田さんのアパートを出ると、夕方になっていた。西の空はオレンジ色に染まっていた。
「今日は一旦ここで終わりかな。続きは明日で」
「明日はどこに行く?」
「中谷さんと村田さんの大学かな。そこでいろいろ話を聞いて、午後はそばとうどんとめんつゆを買ったスーパーで裏を取る」
「分かった。今日はどうもありがとうな」
「報酬は払ってよ。うちの事務所、知り合い割引とかしないから」
「ケチだなあ。ちょっとくらいいいじゃねえか」
「絶対ダメ。ビジネスで探偵業やってるんだから、お金はきっちりいただくよ」
 夏治は肩を落として、僕たちを車に乗せた。
 こうして、調査初日が終了した。

 さて、事務所に帰って来た。
 調査が終わっても、仕事はまだ終わらない。今日の調査の記録を残して、情報整理をしなければならない。手間のかかることだが、仕事の精度を上げるためには必要なことだ。
 僕は真っ白な紙を用意して、今日得た情報を整理した。
 情報は矢印やイコール記号を使って記録する。例として、『A→B』と書いたならば『Aの事柄よりBと言える』という意味になり、『A=B』と書いたならば『Aの事柄とBの事柄は同じ』という意味になる。そうやって書いていくと、バラバラだった情報が一つの図にまとまるのだ。ぱっと見たときに分かりやすく、解決への糸口が見つかるかもしれない。
 矢印やイコール記号以外にも記号を使って整理して、一つの図が完成した。ペンを置いて、それを眺めてみる。
 うむ、とりあえず、被害者の二人はとても仲のいい友人だったということと、そばとうどんとめんつゆは昨日近くのスーパーマーケットで購入したものだということが分かった。
 しかし、今回の依頼は『被害者の死亡方法の解明』だ。今日だけではまだ解決しそうにない。
「お疲れ様。紅茶を淹れたから、今日はこれ飲んで休んで。初日から頑張りすぎちゃだめだよ」
 はるねちゃんは紅茶を持ってきて、言った。彼女のこういう優しさが好きだ。
「ありがとう、はるねちゃん」
「コップは自分で洗っておいてくれるかしら。あたし、夕飯作るから」
「分かった」
 さて、仕事の話はここまでにしよう。考えるのは明日だ。
 夕飯を作るはるねちゃんの後ろ姿を見ながら、紅茶を飲んだ。彼女の淹れた紅茶は美味い。ガムシロップと紅茶そのものがいい感じに混ざり合って、絶妙な甘さになる。味もさることながら、香りもいい。疲れが癒される。仕事のあとの一杯ははるねちゃんの淹れた紅茶に限る。
 こうして、初日の仕事は終わったのであった。
 ――――と、思ったそのときであった。事務所の電話がけたたましく鳴り響いた。
「はい、向日葵探偵事務所」
「創真か! 進展したぞ、捜査が」
 相手は夏治だった。勢いのある声である。
「進展した? どういうことだよ」
「――――中谷マサルの遺書が見つかったんだ」
 夏治はゆっくりと息を吐くように言った。
その夜、夏治の言葉が頭を離れることはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...