愛情探偵の報告書

雪月 瑠璃

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愛より命か、命より愛か

scene1 探偵見習い、逢坂はるねの帰宅

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 まだ暑い日が続いているある日、我が事務所に仲間入りして二か月の探偵見習いは学校に行っていて不在だった。昨日まで宿題やお菓子作りに追われていた彼女が、急にいなくなると寂しいものだ。彼女と出会ってから、話し相手がいることが日常になっていたから、一人の空間というものがなかった。
 静かな昼下がりだ。
 僕は今、そんな気持ちを抱えながら、デスクに腰を掛けてドーナツをかじっていた。

 ここは向日葵ひまわり探偵事務所――――桜が丘という町にある小さな探偵事務所である。所員は二人、所長にして探偵の僕こと九条創真くじょうそうまと探偵見習いの逢坂おうさかはるねちゃんである。彼女はちょうど一か月前に起こった『マーメイド・ユートピア失踪事件』で出会った少女で、女子高生にして巨大財閥総裁の娘。狭い事務所に舞い込む依頼は、ペット探し、人探し、身辺調査、事件解決など、危険をはらむものもある。日々、それらの依頼をこなして生きているのである。

 確か、はるねちゃんと出逢ったのもこんな感じの日だった。あのときは雨だったけれど、静かで、仕事もなく、暇をしていたときだった。そしたら急に扉が開いて、彼女が入ってきた。
「創真、いるかしら!」
 高圧的な口調が事務所内に響いた。
そうだ、ちょうどこんな風に。
 ここで、僕は我に返った。この声の主ははるねちゃんだ。入り口に立つ彼女は制服姿で、少し息が上がっている。学校からここに直行したらしい。
「おかえり、はるねちゃん」
「おかえり、なんて呑気なこと言ってる場合じゃないわよ! 事件よ、事件!」
 はるねちゃんは、顔を真っ赤にしてデスクに駆け寄ってきた。
「ちょっと落ち着こうよ」
「落ち着いてなんていられないわ! だって、事件が起きたのよ! あたしの目の前で!」
「何があったの?」
「女の子が落ちたのよ、学校の屋上から!」
 はるねちゃんは言葉と同時に、デスクをバン、と叩いた。
 すると、はるねちゃんは事件の顛末を語り始めた。
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