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愛より命か、命より愛か
scene2 下校時間の悲鳴と嘆き
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今日は始業式で、午前中で学校が終わったの。あたしは一学期と変わらず、いつも通りに帰ろうとした。
校舎を出て校門の方に歩いていると、野太くて情けない悲鳴が聞こえたの。それは校舎の陰になっている花壇の方から聞こえて、そっちに行ってみると、人だかりができていて、ギャラリーの間から発見者らしい男の子と、花壇の中で倒れている女の子がいたの。
男の子は学校でも何度か問題行動をしている不良くん。腰を抜かしたみたいで、その場に座り込んでいたわ。
倒れていた女の子の名前は、花江美沙ちゃん。一年三組、あたしと同じクラスの子で、真面目で大人しい女の子よ。まもなくして、美沙ちゃんは誰かの通報で呼ばれた救急隊員に運ばれたわ。そのあと警察も来て捜査が始まると、ギャラリーは帰らされちゃったわ。
そういえば、最後まで残って、美沙ちゃんの名前を呼ぶ男の子がいたわね。「……美沙」って言いながら現場を眺めていたわ。
えっと、なんて名前だったかしら。そうだ、宮下旭くんだわ。隣のクラスのサッカー部で、美沙ちゃんとは小学校から同じって言っていたかしら。
彼も警察によって現場から引き離されたけど、帰ろうとはしなかった。彼は、警察官が取り巻く現場をただ茫然と眺めていたの。
「大丈夫?」
あたしが話しかけると、「信じられねえ……」って返された。彼と美沙ちゃんは恋人だっていう噂が流れるくらい仲が良かったから、きっとショックだったのね。
あたしはちょっと慰める意味で、彼を屋上に誘ったの。
うちの学校の屋上は、だいたい教室一つと半分くらいの広さで、昼休みになるとたくさんの生徒が来る場所だけど、放課後のそこは誰もいなかった。
「ここから飛び降りたのか……」
「やめなさい、旭くん!」
旭くんは柵に手をかけて少し身を出したから、あたしは慌てて止めた。
「大丈夫、後追いとかしないから。ただ、美沙がどんなことを思って飛び降りたのかなと思ってさ……痛かったんだろうな」
あたしも同じ気持ちを抱いた。何があったんだろうとか、そんなことよりもただ、なんか悔しかった。
旭くんに倣って、下を覗いてみた。ちょうど美沙ちゃんが見つかったところが見えた。壁には何かの垂れ幕があったかしら。
「こんな高さだったら、死んじゃうよな。自殺……なのかな」
「心当たりでもあるの?」
「ない、こともない」
旭くんはどうもはっきりしない感じで言ったから、あたしはもっと問いただしてみた。すると、「悩んでいたみたいだった」って答えたの。
「何を悩んでいたのかしら?」
「俺も詳しくは知らないけど、困りごとがあったみたいなんだ。話聞く時間くらい、作ってやればよかったな……」
そのあと、旭くんが病院に行きたいって言ったから、ついて行ったの。美沙ちゃんは集中治療室にいて、まだ目を覚ましていなかった。あんな高いところから落ちて、平気なはずはないのは当然だけど、やっぱりなんだか見てはいられなかったわ。
そのあと、あたしは学校に戻って独自で調べ始めたの。旭くんのために何かやってあげたくて、できることをやろうと思ったの。
第一発見者の不良くんがまだ学校にいたから、まずはその子に話を聞いた。すると、こんな発言をしたの。
「俺、花壇でタバコ吸おうと思って、そこで仲間を待っていた。そしたら、突然あいつが落ちてきて」
「周りの悲鳴とか、なかったの?」
「なかった、と思う。気付いたら、俺の後ろにあいつが倒れていて……」
そのあとも聞き込みを続けた。でも、有力な情報は何も得ることができなかった。
校舎を出て校門の方に歩いていると、野太くて情けない悲鳴が聞こえたの。それは校舎の陰になっている花壇の方から聞こえて、そっちに行ってみると、人だかりができていて、ギャラリーの間から発見者らしい男の子と、花壇の中で倒れている女の子がいたの。
男の子は学校でも何度か問題行動をしている不良くん。腰を抜かしたみたいで、その場に座り込んでいたわ。
倒れていた女の子の名前は、花江美沙ちゃん。一年三組、あたしと同じクラスの子で、真面目で大人しい女の子よ。まもなくして、美沙ちゃんは誰かの通報で呼ばれた救急隊員に運ばれたわ。そのあと警察も来て捜査が始まると、ギャラリーは帰らされちゃったわ。
そういえば、最後まで残って、美沙ちゃんの名前を呼ぶ男の子がいたわね。「……美沙」って言いながら現場を眺めていたわ。
えっと、なんて名前だったかしら。そうだ、宮下旭くんだわ。隣のクラスのサッカー部で、美沙ちゃんとは小学校から同じって言っていたかしら。
彼も警察によって現場から引き離されたけど、帰ろうとはしなかった。彼は、警察官が取り巻く現場をただ茫然と眺めていたの。
「大丈夫?」
あたしが話しかけると、「信じられねえ……」って返された。彼と美沙ちゃんは恋人だっていう噂が流れるくらい仲が良かったから、きっとショックだったのね。
あたしはちょっと慰める意味で、彼を屋上に誘ったの。
うちの学校の屋上は、だいたい教室一つと半分くらいの広さで、昼休みになるとたくさんの生徒が来る場所だけど、放課後のそこは誰もいなかった。
「ここから飛び降りたのか……」
「やめなさい、旭くん!」
旭くんは柵に手をかけて少し身を出したから、あたしは慌てて止めた。
「大丈夫、後追いとかしないから。ただ、美沙がどんなことを思って飛び降りたのかなと思ってさ……痛かったんだろうな」
あたしも同じ気持ちを抱いた。何があったんだろうとか、そんなことよりもただ、なんか悔しかった。
旭くんに倣って、下を覗いてみた。ちょうど美沙ちゃんが見つかったところが見えた。壁には何かの垂れ幕があったかしら。
「こんな高さだったら、死んじゃうよな。自殺……なのかな」
「心当たりでもあるの?」
「ない、こともない」
旭くんはどうもはっきりしない感じで言ったから、あたしはもっと問いただしてみた。すると、「悩んでいたみたいだった」って答えたの。
「何を悩んでいたのかしら?」
「俺も詳しくは知らないけど、困りごとがあったみたいなんだ。話聞く時間くらい、作ってやればよかったな……」
そのあと、旭くんが病院に行きたいって言ったから、ついて行ったの。美沙ちゃんは集中治療室にいて、まだ目を覚ましていなかった。あんな高いところから落ちて、平気なはずはないのは当然だけど、やっぱりなんだか見てはいられなかったわ。
そのあと、あたしは学校に戻って独自で調べ始めたの。旭くんのために何かやってあげたくて、できることをやろうと思ったの。
第一発見者の不良くんがまだ学校にいたから、まずはその子に話を聞いた。すると、こんな発言をしたの。
「俺、花壇でタバコ吸おうと思って、そこで仲間を待っていた。そしたら、突然あいつが落ちてきて」
「周りの悲鳴とか、なかったの?」
「なかった、と思う。気付いたら、俺の後ろにあいつが倒れていて……」
そのあとも聞き込みを続けた。でも、有力な情報は何も得ることができなかった。
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