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愛より命か、命より愛か
scene final 男子高校生と探偵の後日談
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ここからは、少女飛び降り事件からしばらく経った頃の話。
美沙ちゃんは無事に目を覚ましたらしい。はるねちゃんが言うには、二、三週間もすれば学校に復帰できるそうだ。僕からは、無事で何よりだ、としか言えないが、喜ばしいニュースであることに違いない。
さて、旭くんだが、事件があってから一度も学校に来ていないらしかった。まだ事件から日が浅いし、ショックが大きすぎたのだろう。
僕ははるねちゃんには内緒で、旭くんの自宅を調べて会いに行った。インターホンを押すと、出たのは声変わりしたての少年だった。「君が宮下旭くん?」と聞くと、不審者を見る目で頷かれた。名刺を渡すと、「なんですか」とようやく口を開いてくれた。
「君の友達の花江美沙ちゃん、最近目を覚ましたって聞いて」
「……知ってますよ。わざわざそんなことを言いに来たんですか」
随分荒んでしまったことは、初対面の僕でも分かった。今は誰とも会いたくない、という顔をしている。
「行ってあげた?」
「いいえ。行けるわけないじゃないですか」
「どうして?」
「なんなんですか。美沙の知り合いか何か?」
「彼女の知り合いの知り合いって感じかな」
「じゃあ、帰って下さい。今は何も考えたくないんだ」
旭くんは強引に扉を閉めようとした。しかし、僕が手で押さえた。
「ちょっと待ってよ。僕は別に彼女に会えって言いにきたわけじゃないんだ。ちょっと提案があって」
「……提案?」
「聞いてもらえるかな?」
すると、彼はゆっくり扉から手を離して僕を中に入れた。
彼は僕の話を真剣に聞いてくれた。手作りした資料をちゃんと読み込んで、受け取ってくれた。最後には「……頑張ってみます」と言われた。
僕は「頑張れ」と返して、その家をあとにした。
さらにしばらく経った頃。はるねちゃんの通う学校に新しく委員会が設立されたらしい。その名も『園芸保全委員会』。各クラスから二名ずつ選出されて、毎日クラスごとで花壇を含めた校内の自然を守る委員会らしい。水やりに始まって、雑草抜き、花壇の掃除など、花や草木のために働いているそうだ。
僕はその話を、ドーナツをかじりながら聞いていた。そして、少しニヤニヤしていたかもしれない。
美沙ちゃんは無事に目を覚ましたらしい。はるねちゃんが言うには、二、三週間もすれば学校に復帰できるそうだ。僕からは、無事で何よりだ、としか言えないが、喜ばしいニュースであることに違いない。
さて、旭くんだが、事件があってから一度も学校に来ていないらしかった。まだ事件から日が浅いし、ショックが大きすぎたのだろう。
僕ははるねちゃんには内緒で、旭くんの自宅を調べて会いに行った。インターホンを押すと、出たのは声変わりしたての少年だった。「君が宮下旭くん?」と聞くと、不審者を見る目で頷かれた。名刺を渡すと、「なんですか」とようやく口を開いてくれた。
「君の友達の花江美沙ちゃん、最近目を覚ましたって聞いて」
「……知ってますよ。わざわざそんなことを言いに来たんですか」
随分荒んでしまったことは、初対面の僕でも分かった。今は誰とも会いたくない、という顔をしている。
「行ってあげた?」
「いいえ。行けるわけないじゃないですか」
「どうして?」
「なんなんですか。美沙の知り合いか何か?」
「彼女の知り合いの知り合いって感じかな」
「じゃあ、帰って下さい。今は何も考えたくないんだ」
旭くんは強引に扉を閉めようとした。しかし、僕が手で押さえた。
「ちょっと待ってよ。僕は別に彼女に会えって言いにきたわけじゃないんだ。ちょっと提案があって」
「……提案?」
「聞いてもらえるかな?」
すると、彼はゆっくり扉から手を離して僕を中に入れた。
彼は僕の話を真剣に聞いてくれた。手作りした資料をちゃんと読み込んで、受け取ってくれた。最後には「……頑張ってみます」と言われた。
僕は「頑張れ」と返して、その家をあとにした。
さらにしばらく経った頃。はるねちゃんの通う学校に新しく委員会が設立されたらしい。その名も『園芸保全委員会』。各クラスから二名ずつ選出されて、毎日クラスごとで花壇を含めた校内の自然を守る委員会らしい。水やりに始まって、雑草抜き、花壇の掃除など、花や草木のために働いているそうだ。
僕はその話を、ドーナツをかじりながら聞いていた。そして、少しニヤニヤしていたかもしれない。
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