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「どういうことなんだ? 教えてくれ、リベルテ」
レッドが険しい目つきでリベルテに集めた情報の詳細を促す。
「連合軍が敗れたとの報告ですが、最初は帝国が優勢だったようです。連合といっても思惑がそれぞれに違いますから、当然足並みも士気も揃わず、アクネシアから崩れたらしいです」
オルトランドは自国にまで及ばないように帝国を押し留めたく、グーリンデは攻め込まれようとしている国であるため反撃しようと、アクネシアは他と帝国が双方に被害を出したところで漁夫の利を考えていた。
守勢でありたい兵と攻めかえしたい兵と自信の被害を抑えて美味しい所取りしたい兵では、兵を率いる権限を持つ者たちが顔を寄せ合ってもまとまるはずがなく、そのずれを帝国に突かれたということであった。
帝国としてもここで三国の兵を打ち破ることは、帝国の覇道に大きく影響を与えるため、ずっと機会を狙っていた。
対陣が長引けばどちらも糧食、資金と被害が大きくなり、何よりにらみ合ったままと言うのは人間には向いていない。
最初は戦争だからと緊張と何かしらの強い意志を持っているものであるが、何もなく時間だけ過ぎていくとその思いは薄れてしまうものである。
戦いという緊張は慣れてきてしまい、動きも無く変わらない非日常はいつもの日々に帰りたいという意識を強める。
漁夫の利狙いのアクネシアにすればそこまで自分たちが戦うという意志があったわけではないため、一番警戒が緩み、やる気を失ってしまったのだ。
自分たちの国の兵だけであれば全周囲を警戒し続けたかもしれないが、連合を組み、兵の数が多く周囲が味方ということになれば意識は前面だけを向きやすい。
アクネシア側から崩され、側面からなだれ込まれれば、味方のはずの国の兵が邪魔で身動きが取れなくなってしまうのだ。
反攻のために動こうとするが、兵が多いという安心感が兵がやられているという恐怖に変わり、敵を強く錯覚させ、より一層に反攻できなくなってしまい、敗走せざるを得なくなってしまったのが、第一報時の詳細である。
「アクネシアめ……。やはりろくでもない国だな。邪魔しかしない」
レッドは吐き捨てるように言い、今ここにアクネシアの兵がいれば暴れてしまいそうである。
「無能な味方が怖いっていうのはこういうことなんだね……」
オルグラント王国の民というわけではないタカヒロとマイにとっては、まずいことになってるようだくらいの感想しかなく、タカヒロの言葉も他人事であった。
「あれ? でも、帝国を追い返したんですよね?」
リベルテの第一報時の内容で終われば、その後はないはずである。
早く続きを知りたいという好奇心が勝っての質問であった。
「そうですね。帝国に不意をつかれ敗走……と言いましたが、後退して少しでも抵抗しようとオルグラントとグーリンデは動きました。帝国も逃げるアクネシアを追っても、立て直している二国をなんとかしないと危ういと判断して、こちらと交戦を始めたというところまでが確定している報告になります」
「確定って……そこからは曖昧なのか?」
リベルテは困ったようにほっそりとした顎に指を当てて思案したあと言葉を続ける。
「ここからは世界が突然変わってしまったようなんです。想定外の事態が起きたと。報告にきた兵もだいぶ困惑しているようで、今もなお落ち着きを取り戻していないんです。……かなり怪我もされていましたし」
帝国に先手を取られた際の伝令はそこまで怪我をしていなく、またはっきりと報告してきていた。
だが、この後の伝令は怪我を負い、なおはっきりと報告できないほどに困惑した状態であることから、今、戦場は大変なことになっていることがわかる。
レッドは眉間に皺が深く寄っているし、タカヒロとマイもやっと大変なことが近くで起きていることを理解した。
「……で、どういう話なんだ? モンスターを呼び出したってのは」
ここからが本題のため、リベルテの顔も険しさを持ってくる。
「帝国と二国の兵がぶつかり始めた後、両方の側面から何かが襲ってきたそうです。その襲ってきたのがモンスターであり……、統制が取れているように隊を組んでいたと。そして伝令が走る前に見たのは、逃げたアクネシア側から向かってきていて、アクネシアにはモンスターが向かっていなかったということでした」
シンとした空気が流れる。
ありえないことが起きたということがわかるからだ。
モンスターは大量発生して動くということはあるが、列をなしたり、隊を組んで動いたりはしない。
また、人を襲うが片方だけ襲うということもない。道を挟んで両方に人が居たら、両方を襲う。
数が少なければ片側だけということもあるだろうが、隊を組んでという時点でモンスターの数は多いはずである。
また、強そうな相手を避けるという動きはあるが、逃げているアクネシアを無視して戦っているところに乱入するというのもありえなさすぎた。
背を見せている相手と武器を振り回しているところであれば、前者の方が楽に襲える。それくらいはモンスターでもわかるはずであり、モンスターに出会った場合、背を向けて慌てて逃げるのは危険であることは常識とされている。
「アクネシアの近郊にいるモンスターをけしかけたってわけではないんだな?」
念のためという感じでレッドが確認する。
もしそういうことであれば、オルグラント近郊のモンスターを狩れれば、そのような危険は減らせるからである。
だが、リベルテは力弱く首を振る。
「おそらく、それはないかと思います」
「何でですか? モンスターって突然湧いたりするんですか?」
突然湧くのであれば、討伐依頼というのは常態化するし、狩り過ぎたら森の生態がと気にすることはないはずなので、マイもわかっていることを質問する。
「それはありません。そんなものであれば、人はもっと狭いところでしか生きられなくなりますよ」
兵や冒険者が討伐しているから軽く考えてしまう人はいるが、モンスターは強い。
例えばブルートルグリズリーなんかは、国の防具も武器も揃えられていて訓練もこなしている兵に多くの犠牲を出して倒せるだろうモンスターであり、モンスターが弱いのであれば、兵が隊を出して討伐してまわることも、依頼を出して冒険者に討伐させるなんてこともしないのだ。
それが突然湧くものであったなら、人は自分たちが守れるだろう範囲でしか生活できない。そう領土全てを壁で囲いながらのようでなければ。
リベルテがタカヒロたちの方に目を向けた後、落ち着けるように目を瞑り、息を吸って吐く。
「それと、襲ってきたモンスターは見たことが無い姿だったそうです。人のように二足で動いていて、手に武器を持っていたそうです。小さいのと大きいのもいたそうですが……、
タカヒロさんが以前に言われたものに近いのでは、と」
タカヒロが大きく目を開く。
「え? え? そんなモンスター見たこと無いって言ってませんでした?」
レッドとリベルテの顔を交互に見やる。
「ええ、少なくともオルグラント王国で見たことはありませんし、近隣でもそのようなモンスターが居た、という話は商会からも聞いたことはありません」
近隣は戦争する敵国しかないため絶対と言えるほどに情報は入ってこないが、情報に敏い商会も持っていないとなれば、ほぼ存在しないと言って良かった。
帝国より北側であるとか、海の向こうまでは定かではないが、少なくともどちらからもそれらしい噂も無く、襲われた帝国の兵も見たことの無いものに怯え、恐怖していたらしい。
であれば、その知らない異形の者達は誰かに呼び出されたということであり、タカヒロがそれらしいことを知っていることから『神の玩具』がそのような力を持っていて、力を奮ったということにしか考えられなかった。
「さすが、というべきなのか。厄介だな『神の玩具』は。そんな力があれば、一人で国を滅ぼせるだろうな」
意識してタカヒロの方を見ないようにして言葉をこぼす。
タカヒロとてその力を際限無しに奮うのであれば、国一つこの世界から無くすことが出来ると考えているからであり、実際、出来なくはなかっただろうなとタカヒロも思ってしまう。
「アクネシア、なにかあるんでしょうか……」
リベルテの言葉は、タカヒロたちもアクネシア方面から来たものと知っているから出た言葉である。
まだ数名ではあるが、レッドたちが会った事がある『神の玩具』たちはアクネシアに近いところに多いように感じられた。
「僕らはどこがどこってのは何も知らないし、選んでここに居るわけじゃないから……」
重い空気が流れる。
タカヒロたちが悪いという話ではないのだが、今現在、『神の玩具』だろう相手によってアクネシア以外の国に被害がでており、その呼び出された異形の者達がどれくらい強いのか、どれだけいるのか定かではない状況に、レッドとリベルテが同じ『神の玩具』のタカヒロたちに目を向けてしまうのも仕方が無かった。
「ね、ねぇ? それでこれからどうするんですか?」
マイがどうにかしたくて漠然と質問する。
誰かにというわけではなく、この場にいるだれでもいいからという内容であった。
「どうするって言われてもな……」
「ええ……。どうすることも出来ませんね」
レッドは天井を仰ぎ、リベルテは地面に目を落とす。
「なんで、ですか?」
雰囲気が良くないことだけは十分に理解しているため、マイの声は弱い。
「そのモンスターをどうすると言っても、戦場には行けないからな。俺らが出るには依頼が来てないと。通行書がないから砦で止められる。それに、俺らだけで行っても、そんな状況変えられないしな」
「で、でも! 私やタカヒロ君がいれば」
思わず声を大きく反論するマイをレッドは手を上げて止める。
「居てどうなる? たしかに二人なら出来るのかもしれない。だが、それでどうする?」
はっきりと目を見返され、マイは言葉に詰まる。
マイの力で怪我をした人を治せるだろうし、タカヒロの力で異形の者達を、ほかの敵兵をすべて倒せるかもしれない。
だが、それからどうなるのか。
マイもタカヒロも全てから狙われることになるだろう。
マイはどの国もどの権力者も欲しがる力だ。特に聖国は信徒を潰し、ほかを殺し続けてでも手に入れようとする可能性が高く、タカヒロもその力を欲しがる者も多いだろうが、殺そうとする者の方が多いだろう。
人は自分に及ばない者を嫌い、手の届かない者に怯える生き物なのだから。
今回のモンスターを呼び出した者も、この後はいい未来は送れないだろうとレッドたちは考えている。
強い力がいつ自分たちに向くかわからないのだ。
これまでに物語に出てくる者達と似たような未来しか思い浮かばなかった。
レッドが険しい目つきでリベルテに集めた情報の詳細を促す。
「連合軍が敗れたとの報告ですが、最初は帝国が優勢だったようです。連合といっても思惑がそれぞれに違いますから、当然足並みも士気も揃わず、アクネシアから崩れたらしいです」
オルトランドは自国にまで及ばないように帝国を押し留めたく、グーリンデは攻め込まれようとしている国であるため反撃しようと、アクネシアは他と帝国が双方に被害を出したところで漁夫の利を考えていた。
守勢でありたい兵と攻めかえしたい兵と自信の被害を抑えて美味しい所取りしたい兵では、兵を率いる権限を持つ者たちが顔を寄せ合ってもまとまるはずがなく、そのずれを帝国に突かれたということであった。
帝国としてもここで三国の兵を打ち破ることは、帝国の覇道に大きく影響を与えるため、ずっと機会を狙っていた。
対陣が長引けばどちらも糧食、資金と被害が大きくなり、何よりにらみ合ったままと言うのは人間には向いていない。
最初は戦争だからと緊張と何かしらの強い意志を持っているものであるが、何もなく時間だけ過ぎていくとその思いは薄れてしまうものである。
戦いという緊張は慣れてきてしまい、動きも無く変わらない非日常はいつもの日々に帰りたいという意識を強める。
漁夫の利狙いのアクネシアにすればそこまで自分たちが戦うという意志があったわけではないため、一番警戒が緩み、やる気を失ってしまったのだ。
自分たちの国の兵だけであれば全周囲を警戒し続けたかもしれないが、連合を組み、兵の数が多く周囲が味方ということになれば意識は前面だけを向きやすい。
アクネシア側から崩され、側面からなだれ込まれれば、味方のはずの国の兵が邪魔で身動きが取れなくなってしまうのだ。
反攻のために動こうとするが、兵が多いという安心感が兵がやられているという恐怖に変わり、敵を強く錯覚させ、より一層に反攻できなくなってしまい、敗走せざるを得なくなってしまったのが、第一報時の詳細である。
「アクネシアめ……。やはりろくでもない国だな。邪魔しかしない」
レッドは吐き捨てるように言い、今ここにアクネシアの兵がいれば暴れてしまいそうである。
「無能な味方が怖いっていうのはこういうことなんだね……」
オルグラント王国の民というわけではないタカヒロとマイにとっては、まずいことになってるようだくらいの感想しかなく、タカヒロの言葉も他人事であった。
「あれ? でも、帝国を追い返したんですよね?」
リベルテの第一報時の内容で終われば、その後はないはずである。
早く続きを知りたいという好奇心が勝っての質問であった。
「そうですね。帝国に不意をつかれ敗走……と言いましたが、後退して少しでも抵抗しようとオルグラントとグーリンデは動きました。帝国も逃げるアクネシアを追っても、立て直している二国をなんとかしないと危ういと判断して、こちらと交戦を始めたというところまでが確定している報告になります」
「確定って……そこからは曖昧なのか?」
リベルテは困ったようにほっそりとした顎に指を当てて思案したあと言葉を続ける。
「ここからは世界が突然変わってしまったようなんです。想定外の事態が起きたと。報告にきた兵もだいぶ困惑しているようで、今もなお落ち着きを取り戻していないんです。……かなり怪我もされていましたし」
帝国に先手を取られた際の伝令はそこまで怪我をしていなく、またはっきりと報告してきていた。
だが、この後の伝令は怪我を負い、なおはっきりと報告できないほどに困惑した状態であることから、今、戦場は大変なことになっていることがわかる。
レッドは眉間に皺が深く寄っているし、タカヒロとマイもやっと大変なことが近くで起きていることを理解した。
「……で、どういう話なんだ? モンスターを呼び出したってのは」
ここからが本題のため、リベルテの顔も険しさを持ってくる。
「帝国と二国の兵がぶつかり始めた後、両方の側面から何かが襲ってきたそうです。その襲ってきたのがモンスターであり……、統制が取れているように隊を組んでいたと。そして伝令が走る前に見たのは、逃げたアクネシア側から向かってきていて、アクネシアにはモンスターが向かっていなかったということでした」
シンとした空気が流れる。
ありえないことが起きたということがわかるからだ。
モンスターは大量発生して動くということはあるが、列をなしたり、隊を組んで動いたりはしない。
また、人を襲うが片方だけ襲うということもない。道を挟んで両方に人が居たら、両方を襲う。
数が少なければ片側だけということもあるだろうが、隊を組んでという時点でモンスターの数は多いはずである。
また、強そうな相手を避けるという動きはあるが、逃げているアクネシアを無視して戦っているところに乱入するというのもありえなさすぎた。
背を見せている相手と武器を振り回しているところであれば、前者の方が楽に襲える。それくらいはモンスターでもわかるはずであり、モンスターに出会った場合、背を向けて慌てて逃げるのは危険であることは常識とされている。
「アクネシアの近郊にいるモンスターをけしかけたってわけではないんだな?」
念のためという感じでレッドが確認する。
もしそういうことであれば、オルグラント近郊のモンスターを狩れれば、そのような危険は減らせるからである。
だが、リベルテは力弱く首を振る。
「おそらく、それはないかと思います」
「何でですか? モンスターって突然湧いたりするんですか?」
突然湧くのであれば、討伐依頼というのは常態化するし、狩り過ぎたら森の生態がと気にすることはないはずなので、マイもわかっていることを質問する。
「それはありません。そんなものであれば、人はもっと狭いところでしか生きられなくなりますよ」
兵や冒険者が討伐しているから軽く考えてしまう人はいるが、モンスターは強い。
例えばブルートルグリズリーなんかは、国の防具も武器も揃えられていて訓練もこなしている兵に多くの犠牲を出して倒せるだろうモンスターであり、モンスターが弱いのであれば、兵が隊を出して討伐してまわることも、依頼を出して冒険者に討伐させるなんてこともしないのだ。
それが突然湧くものであったなら、人は自分たちが守れるだろう範囲でしか生活できない。そう領土全てを壁で囲いながらのようでなければ。
リベルテがタカヒロたちの方に目を向けた後、落ち着けるように目を瞑り、息を吸って吐く。
「それと、襲ってきたモンスターは見たことが無い姿だったそうです。人のように二足で動いていて、手に武器を持っていたそうです。小さいのと大きいのもいたそうですが……、
タカヒロさんが以前に言われたものに近いのでは、と」
タカヒロが大きく目を開く。
「え? え? そんなモンスター見たこと無いって言ってませんでした?」
レッドとリベルテの顔を交互に見やる。
「ええ、少なくともオルグラント王国で見たことはありませんし、近隣でもそのようなモンスターが居た、という話は商会からも聞いたことはありません」
近隣は戦争する敵国しかないため絶対と言えるほどに情報は入ってこないが、情報に敏い商会も持っていないとなれば、ほぼ存在しないと言って良かった。
帝国より北側であるとか、海の向こうまでは定かではないが、少なくともどちらからもそれらしい噂も無く、襲われた帝国の兵も見たことの無いものに怯え、恐怖していたらしい。
であれば、その知らない異形の者達は誰かに呼び出されたということであり、タカヒロがそれらしいことを知っていることから『神の玩具』がそのような力を持っていて、力を奮ったということにしか考えられなかった。
「さすが、というべきなのか。厄介だな『神の玩具』は。そんな力があれば、一人で国を滅ぼせるだろうな」
意識してタカヒロの方を見ないようにして言葉をこぼす。
タカヒロとてその力を際限無しに奮うのであれば、国一つこの世界から無くすことが出来ると考えているからであり、実際、出来なくはなかっただろうなとタカヒロも思ってしまう。
「アクネシア、なにかあるんでしょうか……」
リベルテの言葉は、タカヒロたちもアクネシア方面から来たものと知っているから出た言葉である。
まだ数名ではあるが、レッドたちが会った事がある『神の玩具』たちはアクネシアに近いところに多いように感じられた。
「僕らはどこがどこってのは何も知らないし、選んでここに居るわけじゃないから……」
重い空気が流れる。
タカヒロたちが悪いという話ではないのだが、今現在、『神の玩具』だろう相手によってアクネシア以外の国に被害がでており、その呼び出された異形の者達がどれくらい強いのか、どれだけいるのか定かではない状況に、レッドとリベルテが同じ『神の玩具』のタカヒロたちに目を向けてしまうのも仕方が無かった。
「ね、ねぇ? それでこれからどうするんですか?」
マイがどうにかしたくて漠然と質問する。
誰かにというわけではなく、この場にいるだれでもいいからという内容であった。
「どうするって言われてもな……」
「ええ……。どうすることも出来ませんね」
レッドは天井を仰ぎ、リベルテは地面に目を落とす。
「なんで、ですか?」
雰囲気が良くないことだけは十分に理解しているため、マイの声は弱い。
「そのモンスターをどうすると言っても、戦場には行けないからな。俺らが出るには依頼が来てないと。通行書がないから砦で止められる。それに、俺らだけで行っても、そんな状況変えられないしな」
「で、でも! 私やタカヒロ君がいれば」
思わず声を大きく反論するマイをレッドは手を上げて止める。
「居てどうなる? たしかに二人なら出来るのかもしれない。だが、それでどうする?」
はっきりと目を見返され、マイは言葉に詰まる。
マイの力で怪我をした人を治せるだろうし、タカヒロの力で異形の者達を、ほかの敵兵をすべて倒せるかもしれない。
だが、それからどうなるのか。
マイもタカヒロも全てから狙われることになるだろう。
マイはどの国もどの権力者も欲しがる力だ。特に聖国は信徒を潰し、ほかを殺し続けてでも手に入れようとする可能性が高く、タカヒロもその力を欲しがる者も多いだろうが、殺そうとする者の方が多いだろう。
人は自分に及ばない者を嫌い、手の届かない者に怯える生き物なのだから。
今回のモンスターを呼び出した者も、この後はいい未来は送れないだろうとレッドたちは考えている。
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