王国冒険者の生活(修正版)

雪月透

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レッドは呆然と目の前を見ていた。
隣に居たリベルテも驚きを隠せないでいる。
「……なんで、また……」
レッドたちは額に手を当て、そう呟くしかなかった。

オルグラント王国の南西に進むこと5日ほどかかるところに、イドラ湖という大きな湖があり、メレーナ村からでも2日程度で見えてくる湖である。レッドたちはここに仕事のため、来ていた。
事の始まりは、状態を保つ魔道具が改良されたらしく、その新型がまた一部の商会に試用に貸し出されてたことによる。
ラング商会の会頭であるラングが、またレッドたちに声を掛けてきたのだ。
「私はまたウルクまで魔道具の試しがてら向かうのですが、良ければまたご一緒しませんか?」
ラングは笑顔でレッドたちに直接声を掛けてくれたのだが、さすがにあの長旅を思えば、何度も受けたいと思いにくいものだった。
状態を保つ魔道具によって、食べ物を多く持ち込んでも、簡単に傷んだり腐ったりしなくなるため、
食事の心配はぐっと低い旅にはなるのだが、如何せん、馬車の乗り心地は快適なものではない。
ウルクまでは長旅となるのだから、それはそれは、とても疲れるし体が痛くなるものとなるのだ。

「声を掛けていただいたのはありがたいですが、また長く家は空けたく無いので……」
長旅が嫌だとは、はっきり言うわけにはいかないため、少し婉曲的にレッドは断りの文句を述べる。
リベルテも神妙そうに、そして申し訳無さそうに頷いていた。
それを見たラングは無理強いできるものでもないため、すごく残念そうな顔になる。
「そうですか……、残念です。レッドさんたちならば信用できますし、旅の食事も楽しみだったのですが……」
長旅は疲れると言うのもあるが、やはり一番の問題は食事となる。
通常であれば、持ち運べる食材は限られるし、数も多くは持っていけない。
さらに荷物を少しでも減らさないと、馬車に詰め込めなくなってしまいかねないので、持って行ける調理道具など鍋一つくらいだったりする。
それなりに料理が出来る人が居なければ、ただ飢えを満たすためだけの、味はその次の食事になってしまいかねないのだ。
前のウルクまでの旅では、リベルテが腕を奮って料理をしていたため、通常ではありえない良い食事にありつけことになる。
その食事を知ってしまったラングには、レッドたちに声を掛けた一番の理由のようであった。

「……では代わりに、イドラ湖から魚を取ってきてはいただけませんか? 取ってきた魚は商会に持ち込んでいただければ、話を通しておきますので。そうですな……。この箱で二つか三つ分くらいをお願いしたいのですが」
代わりにと言い出した内容は、イドラ湖の魚を魔道具の箱に詰め込んで運んでくると言う配送と言えるもの。レッドとリベルテは報酬と仕事内容、そして掛かりそうな日数を思案する。

イドラ湖は王都から五日ほど掛かる距離である。
ただの箱に詰めたのでは、王都に運ぼうとしても、良い状態で魚を運ぶことが出来なかった。
メレーナ村からイドラ湖は近いが、村なので人口は多くなく、ほとんど畑仕事に従事しているため、イドラ湖に魚を取りに行くことは少なく、釣ってきて塩漬けや日干ししたとしても、王都に流通させるほど数は多くない。
また、メレーナ村からイドラ湖を挟んで反対側にコレニア子爵領があるのだが、コレニア子爵領内であっても、塩漬けや日干しした魚を口にすることがたまにあるかな、と言うくらいなのである。
それに塩漬けするにも大量の塩を使うと言うこともあって、イドラ湖で魚を釣って、塩漬けにする商人はいないし、それならば最初から港のあるウルクから仕入れてきた方がずっと手間がないのだ。
イドラ湖の魚を食べると言うのは、この湖の近くに用があって訪れていた人くらいしかいないものでもあった。

そんな魚事情であるが、この魔道具によって変えられる可能性が生まれたのである。
もっと魚を王都に流通させられないか、と言う試しの話であった。
ラングがレッドたちにイドラ湖で魚を釣って王都に運んでくると言う仕事の話を振ったのは、商会の人間を魚釣りに出せるほど時間が無いと言うのもあるだろうが、試作品であるが、高価な魔道具を貸しだしても良いと思えるほどの、レッドたちへの信頼があったのだ。
ラングの思いを察することが出来た二人は、この魚の配送の依頼を受けることにする。
その信頼に応えたいと思ったのである。
「わかりました。俺たちでよければ」
そして向かったイドラ湖であるが、着いて早々に頭を抱えることとなったのである。

イドラ湖に到着したレッドとリベルテは、これからしばらく魚釣りを続けなくてはいけないため、手早く野営の準備を始めていたのだが、その最中に事が起きたのだ。
レッドたちの馬車と湖までの間と言う、凄く狭い間で、突然、黒い球体が現れて、消えたのである。
一瞬の出来事であったが、突然の不可思議な現象に、レッドたちは当然、警戒を強めた。
黒い球体が消えたしばらくした後、その周囲に目を向けて、人が倒れていることに気づいてしまった。
このとてもありえない、人の現れ方。
二人の頭には真っ先に浮かんだのは『神の玩具』。
レッドたちはなんのめぐり合わせか、と額に手を当てて、ため息をつくしか出来なかった。

倒れていた人は少し若く、まだ少年と言えそうな見た目であった。
レッドとリベルテは、その少年をひとまず馬車の近くに立てた野営地に寝かせ、リベルテが警戒を含めて状態を診ることにし、レッドはそのまま釣りの準備を進めることにした。
ひとまず、この少年がどんな人物なのか話をしてみようと考えたのである。

レッドが二人分の釣り竿と簡易的な釣り竿を一つの準備したくらいで、少年が目が覚ました。
寝ぼけているのか、辺りをきょろきょろと見回して、リベルテのところで顔を止める。
「……どちらさまでしょうか?」
リベルテはなるべく優しい顔をと意識して、その少年に微笑む。
「私はリベルテと言います。あなたはこの近くで倒れていたのですが、覚えていますか?」
リベルテの微笑みに少し赤くなった少年は、俯いて落ちつかなそうに手を動かしつつ、ちょこちょこと視線を上げてリベルテの顔を見たりしていて、その様子にレッドは笑いそうになり、必死に堪える。
相手は『神の玩具』であれば、ちょっとしたことでどうなるか分かるものではないのだ。

「……すみません、ここどこですか?」
それから辺りを見回して、まったく覚えが無いと言う少年。
「ここは、オルグラント王国の王都に近い、イドラ湖と言う場所ですよ」
リベルテの言葉にさっぱりとわからないとする少年に、リベルテは少年の後方にいるレッドに目を向け、レッドは頷いた。
ここ辺りについて全く何も知らない。間違いないだろう、と。
「貴方の名前、教えてもらえるかな?」
リベルテがじっと少年の目を見て、優しく問いかける。
「ソウタです」
「ソータ君ですね。よろしくお願いします」
微妙に発音が違うのか眉を動かしたソータ少年であるが、年上の女性であるリベルテの魅力に赤くなって頷く。
発音が違うことなど些細なことだと思うことにしたようだ。

「よろしくな」
間を見てレッドも声を掛けたのだが、リベルテにだけ気を取られていた少年が驚いて転がる。
それを見て堪えきれなくなり、ついには笑い出してしまうレッド。
「……あ~笑った。あ、すまんすまん。俺はレッドだ。よろしくな」
少年は少しむくれつつ、レッドに軽く頭を下げる。
さすがにリベルテ相手とは態度が違った。少年もまた男と言うことである。

「んで、俺たちはこれから魚を釣るんだが、おまえさんもやらないか? 釣った魚はリベルテがちゃんと調理してくれるぞ」
レッドがそう言いながら、簡易な釣竿を少年に投げ渡す。
ソータは周りを見渡し、自分の飲食はどうしたものかと言うことに気づいたらしく、釣竿を手に取る。
そして、イドラ湖に向かって、三人並んで釣り竿を握る。
普段ここで魚を取る人が居ないため、魚の食いつきはとても良かった。
だが、ずっと釣れっぱなしと言う話は無く、静かに待つしかない時間も当然あるものだ。
ゆっくりと話しをするには、これほど良い時間はない。
「ソータ。お前は何しにここに来たんだ?」
いきなりの出会いであり、先ほどまでの話す様子から害意は無さそうだと踏んでいるが、それでも『神の玩具』は過ぎた力を持っている。
そして、違う世界から来たとあれば、何を基準にこの世界に敵意を持つかわからないのだ。
少しでもソータについて知りたかった。
「……わかりません。特に目的とか聞いてませんし」
ソータをこの世界に送りこんだ者が居るような言い方に、リベルテの眉がピクッと動く。
「それは……誰かに言われてここに来たってことか?」
「そうなると思いますけど……。誰から言われたんだっけ?」
自分から言い出したわりに、首をかしげるソータ。
嘘であったり、適当に言っているわけでも無さそうであるが、本当なのか、居たとしたら誰なのか、それは謎のままと言うことになってしまった。
それでも、良く分からなかった『神の玩具』のほんの一旦でも知れたのだ。収穫であった。

「……そんじゃあ、これからどうするんだ?」
「どうすればいいでしょうか?」
これからどうしたいのか、どう生きたいのかを尋ねてみるが、逆に質問されたレッドはリベルテを見る。レッドに目を向けられても、リベルテも困るだけだった。
マイたちと会った時は、彼女たちは王都に行きたい、冒険者になってみたい、と自分から何をしたいのか言ってきた。
この少年は、この世界に来てまだ間もないため、何も分からないからかもしれないが、あの二人とまるっきり違い、掴みどころの無さに困るしかなかったのだ。
これは『神の玩具』に限らず、他の人と話して、その人の人生をどうしたら良いか聞かれても、答えようが無い話である。他人の人生を、責任も何も持てない者が口に出せるわけが無いのだ。

どうしたものかと考えていると、少年からお腹の鳴る音が聞こえる。
見れば、少年は少し恥ずかしそうに、そして困ったようにリベルテを見ていた。
「……ご飯にしましょうか。火を熾してきますね」
リベルテが野営地に戻ると、レッドもソータを促して野営地に戻る。
「準備くらいは手伝えよ」
レッドは釣り上げた魚を掴み挙げ、短剣を突き入れて腸を取り出す。
さすがに魚の腸は食べられないため、近くに穴を掘って捨てていく。
ちゃんと処理しないと、それを目当てにモンスターが寄ってきてしまうことがあるし、いつ居てしまって、この場所を縄張りとしてしまう可能性が出てしまうためである。
後片付けは大事なのである。

レッドの手さばきをじっと眺めていたソータに、レッドは短剣を渡す。
「ほら、おまえもやってみろよ。何もしなかったら食わしてやれないぞ」
実際、ソータも何匹かは釣り上げているのだが、擦れていない魚でだったから簡単に掛かっただけであり、ソータだからと言うわけではないのだ。
しかし、短剣を渡されそうになったソータは、心底に嫌がった。
「嫌です。出来ませんし、やりたくもないです。気持ち悪いし……」
マイやタカヒロは、剣を持つことに躊躇いも戸惑いも無かった。冒険者の登録をする前に、嬉々として手に取っていたくらいである。
それに、倒したモンスターを運んだりもしていたものだが、ソータは真逆であった。
さすがに本気で嫌がっているソータに無理強いさせても、その時間がもったいないし、これが切っ掛けで力を振るわれても困るため、残りも次々とレッドが手を入れていく。
リベルテが薪のついでで集めていた枝を整えて串にして、腸を取った魚を刺して、塩とハーブ類を少し振りかけて火の近くに立てていく。
焦げないように見つつ、時折、向きを変えて焼いていくと、徐々に脂の焼ける良い匂いが漂い始める。
これまた食欲をそそる匂いであった。

ソータ少年はレッドから離れていたのだが、匂いに釣られるように寄ってくる。
ソータ少年が食べてもいいかとリベルテを見るが、まだまだとリベルテに手で制される。
ここだけを見ればとても長閑な時間である。
そして頃合だと、リベルテがレッドとソータそれぞれに串を手渡す。
串に刺さった魚をじっと見るだけで、ソータ少年は食べようとしなかった。
つい先ほど、食べたそうにリベルテを見ていたはずなのに、である。
「どうした?」
「え、と。いえ……。どうやって食べるんですか?」
ソータが困ったように言うのだが、レッドはそれを聞かされて目が点になる。
「いや……、そのままかぶりつけよ」
「あ! それでいいんですね」
レッドが呆れて言うと、小さくお腹辺りにかじりつく。
「こういう風に食べることも無い生活なのか?」
「どうでしょうか? マイさんたちとこのように魚を食べたことはなかったですし……」
コソッと小声で話をするレッドとリベルテであったが、改めてレッドたちもソータたちの世界を、生活を知らないことに気づかされる。
おぼろげにはまったく違う世界なのだろうことと、技術や知識はあちら側が進んでいるのだろうことだけはわかっているくらいであった。

「どうしたもんかな……」
レッドも魚にかぶりつきながら、この後どうするかと頭を悩ませる。
「事が終わるまで一緒に居て、しばらく面倒をみましょうか。この子もまた、どうするか全く分かりませんし」
「……それしかないよなぁ……」
『神の玩具』であるマイたちは、なんとかこの世界に合わせて生きようとしてくれた二人であったが、この少年はマイとタカヒロより子どもであり、何をしでかすかわからない。
モンスターを呼び出せる者、魔の薬を作っていた者、魔道具を作れるハヤト。
そしてまた新たな『神の玩具』だろうソータが現れたことになる。
これほどまでに多く『神の玩具』が現れていることに不安を感じ始めるレッドとリベルテ。
今だけは、春の陽気さが恨めしく思えた。
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