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レッドが新しい剣を買ってから、もうしばらく経っている。
買ってからというもの、今日もレッドは剣の磨き、欠けたり歪んだりしていないか確認を欠かさない。
買ったばかりであるし、湿気が酷い場所に置きっぱなしにするとか、雨ざらしにしたと言うものでなければ、そこまで入念に気にする必要はない。
雑に取り扱ったと言うなら、それこそ自分で手入れするのではなく、鍛冶屋に持ち込むような話になる。
ただ、新しく手に入れた物と言うのは、意識している間は丁寧に取り扱ったり、普段より手入れに力が入ったりしてしまうもので、レッドの新しい日常は生温かく見守られていた。
「よっし! ギルドに行くか! 今日は良い依頼があるといいな」
剣を拭った布を片付け、レッドが気合を入れながら立ち上がる。
新調した道具は、早く試したくなるか使うのを躊躇うようになってしまいやすいものになるが、剣と言う武器だけにレッドは早く試したくて堪らないらしい。
ここ数日、レッドたちは討伐の依頼を狙っていたのだが、依頼が見つからなかったのだ。
討伐の依頼が少ない時期なのか、レッドたちよりも早く動いていた冒険者たちが手続きしてしまったのかはわからない。
近郊の森は多くの人が出入りし、荒らしてしまったことから今は入ることが禁止されていて、恐らくそれが原因で討伐の依頼が減っているとリベルテは考えていた。
しかし、森に入れなくなったからと言ってここまで討伐の依頼を見かけなくなるとは思えなく、単純に討伐の依頼に縁が無いとしか言いようが無かった。
レッドの姿であるが、ぐるぐるに巻かれていた布はもう外されている。
薬師であるマイの腕は確からしく、手当てが効いてレッドの顔の晴れはだいぶ良くなっていた。
それでも腫れが完全に引いたわけではないので、まだ少し痛々しそうに見え、リベルテはまだレッドには無理をして欲しくなく、討伐の依頼が無いことに実はホッとしていたりする。
レッドにはこれまで、散々に無茶はするなと言ってきているのだが、ちゃんと聞いてもらえていなく、心配仕切りなのだ。
レッドたちがギルドに着くと、少し前ほどではないが、まだちらちらとレッドに目を向けてくる人たちが視界に入る。
さすがに顔を腫らしているのは目立つ上に、レッドたちは冒険者としての年季が長いため、冒険者の中では名前と顔は知られていることが大きかった。
特に騒乱の際、貴族区域で貴族たちを助けて回っていたリベルテと、王都に置いて騒乱の中心と見られる場所で聖職者の服装をした者たち数名と倒れていたレッドが発見されたことが輪をかけていた。
おそらくミルドレイかその護衛の兵たちから広まっただろうリベルテの活躍と、自身が毒に侵されながらもキストの聖職者たち数名を倒したレッドの活躍はしっかりと広まりつつあるようだったのだ。
それに、その毒から復帰したと言うのも一目置かれているようである。
そんなレッドが、騎士団の方と腕試しをして勝ってきた、と言う噂がどこからともなく広まっているため、大怪我をしている人に向けられるようなものから、尊敬とか畏敬のような目が向けられていたのだ。
名前と顔が広く知られるようになってきた中で、レッドが大怪我と言えるようなボロボロの恰好で報酬を受け取りにきたのだから、他の冒険者たちが騒然となっていた、とリベルテは後々から聞いて額に手を当てたくらいである。
それなりに腕が立つと言われるようになっていたレッドがそんな怪我を見せたのだから、他の冒険者たちにすれば、そんな凶悪な敵がいるのかと警戒したのも仕方がないと思える。
それを収めるためなのか、広まったのが先の噂であった。
このような手を打てるのは、ミルドレイだろう、とリベルテは推測している。
ギルマスが動くには相手が騎士団だけに使えないし、何よりそんなことを考え付けるような人に思えないのだ。どちらかと言うと、正面からぶつかっていく人柄なのである。
ミルドレイが手を回した噂に対して、ギルザークも噂について否定しなかったし、騎士団からも苦情など言ってくることもないことから、あっと言う間にこの噂が真実として広まり、レッドを尊敬するような目で見る人が増えていた。
厳しい訓練を続け、戦うことを仕事としている騎士相手に、職にあぶれた人たちが就く冒険者が勝ったとなれば、皆が注目するのもわかると言える。
レッドが皆に注目されるのは誇らしくあるが、少しだけ不満でもあるのは、リベルテが誰にも言ったことの無い気持ちであった。
「お、レッドじゃないか。だいぶ怪我は良くなったようだな?」
レッドは怪我をしたからと大人しく寝ていたわけでも無く、冒険者ギルドに来ていたのだから、ギルザークは怪我の状況は知っている。
だから、レッドに掛ける声にからかいが含まれているのがわかる。
しかし、今の他の冒険者たちから注目されている中で、ギルマスから声を掛けられる状況と言うのは、それだけ期待している、注目している、目をかけているということを示し、流れている噂が本当であると後押ししているようだった。
周囲の冒険者たちから、感嘆とも思えるような声が上がる中、やはりリベルテとしては心配事が耐えない。
この話が広まりすぎると、一冒険者に騎士団長が負けたと言うことで、ベルセイスの外聞が悪くなり、より状況が悪くなることで問題が起きそうに思えるのだ。
そんなリベルテの不安は顔に出ていたようで、ギルマスがリベルテを見てニヤリとする。
「騎士団長が訓練により真剣になったそうでな。団長が真剣になれば、その下も真剣にならざるを得ない。元々、キストへ戦争しかけようと言い出してた奴らが居たくらいだ。自分たちを鍛えるって言うのに文句なんか言えんさ」
外に向かう前にまず自分たちを鍛え上げる、と言うのは当然のように思えるが、その期間が延びる分だけこちらから進攻する話にはならない。
だが、そうだからと言って安心するには早すぎる。
「それでも、騎士団長を悪く言う人たちはいますよね?」
貴族であっても平民であっても、どこであろうと他人の足を引っ張ろうとする者は存在するもので、特に身分差で力を持つ場所などそれは著しい。
「そういったやつ等は騎士団長にのされているそうだ。勝ってから文句を言え、ってやつだな。丸っきり歯が立たずに負けてりゃ黙るしかないよなぁ」
ギルザークが負けたらしい連中を想像し、小気味良く笑う。
ギルマスと言う立場上、貴族から迷惑……、難癖をつけられることが多いのだろう。スッとしたような表情になっていた。
「お~、そうだ。レッド。討伐の依頼を探してるんだってな?」
ギルマスが少し悪さを滲ませる笑みに変え、一瞬だけリベルテに目を向けた。
「ん? 良い依頼があるのか?」
「ああ、今は討伐の依頼が少なくなっているのは分かってるだろ? そんな中での依頼だ。どうだ?」
「おう! 手続きを頼む!」
レッドが安請け合いしたことに、リベルテは深いため息を吐いてしまう。
ついこの前に、ギルマスから受けた依頼が、城の思惑を含んだ一冒険者が受けるには大きすぎる無いようだったことを忘れているようだったのだ。
ただ、もう乗り気になっているレッドに言っても聞いてもらえるわけがなく、ため息をこぼすしかなかったのである。
ただ、リベルテに一瞬だけ見せたギルマスの目配せが気になってもいた。
依頼票を持って受付に向かうギルマスを見送っていると、レッドがやる気を滾らせていた。
「やっぱり、手にした剣は試して見ないと! 感覚が掴めないってもんだ」
武器を選ぶ際、自分の直感と言うか感覚が大事であるが、実際に使ってみたら合わなかった、と言う話も良くある。
だからこそ、余裕の持てる依頼で試しておくと言うのは大事なことであり、実戦をと討伐の依頼を熱望するレッドの考えは否定出来なかった。
最近、レッドを心配してばかりになってきているように感じるリベルテであったが、どうしてそう考えてばかりになっているのか、自分でもわからないままだった。
手続きの準備が終わったらしく、ギルマスが手を振っていた。
ギルマスに呼ばれてカウンターに向かった二人を待っていたのは、エレーナだった。
リベルテとそう年齢は違わないのであるが、リベルテから見てもエレーナは相変わらず綺麗な女性で、時折羨ましく思えている。
それでも安心して会えるのは、レッドがエレーナに対して惹かれているような様子を見せていないことだろう。
「レッドさん。ありがとうございます。では、サインお願いします」
「ほいよ」
レッドが鼻歌でもしそうなくらい上機嫌に、内容を良く確認しないでサインする。
リベルテがちらっと目を動かせば、ギルザークが悪い笑みを浮かべていた。
「はい。それではフォレストディアの討伐をお願いしますね。あのモンスターも繁殖をしているらしくて、保護を始めたはずの森で被害が広がっているそうなのです」
フォレストディアが相手と聞いてリベルテは素早く準備する物を考える。
近づくのが難しいモンスターで弓で遠くから射かけないといけない相手、と言うところでリベルテは、あ、と声をあげてしまった。
レッドに目を向けると、レッドはギルザークを睨んでいた。
フォレストディアに斬りかかるには罠を仕掛けて、掛かるまで待たないといけないが、依頼の日数から見てそんなに待つことは出来ないし、今の森で罠を仕掛けると言うのは、荒れないようにと制限している状況では無理なのだ。
ギルザークはレッドに剣を使わせる気など無かったらしい。
すでに依頼はサインをして手続きが完了してしまっていて、ここから取りやめるには違約金を払わなくてはいけなく、悔しそうにするレッドにリベルテは笑顔を見せる。
「やりたかった討伐の依頼ですね。きっちりやりましょう?」
許可をもらって入った森で、リベルテたちはフォレストディアを四匹射倒した。
レッドが放つ一矢は意思と言うか怒りと言ってしまってよい感情が込められていて、ディアを三匹もたおしてしまったのである。
レッドに弓で後れを取るとは思っていなかったリベルテは、思わず憮然としてしまった。
リベルテよりディアを倒したことでレッドの機嫌は戻っている。
そんな子どもっぽさが残るレッドが、仕方ないなとも、そこがまた良いな、とリベルテは改めて思っている。もちろん、そんなことは誰にも言ったりはしない。
「今日はステーキにしましょうか。お肉祭りです」
「お、良いな! マイも喜ぶだろう。……つか、あいつも食べるとなるともう一匹くらい、こっちの分にもらいたいな」
先ほどまで考えていたことが伝わらないように、食事について口にすれば、レッドが楽しみだと話に乗る。
大きく差がつけられていることが少し悔しくもあり、リベルテはもう一匹狙うことにして、周囲を探っていく。
森にいても吹き抜ける風の冷たさを感じるようになってきており、季節はリベルテが苦手な冬へと入り始めていた。
買ってからというもの、今日もレッドは剣の磨き、欠けたり歪んだりしていないか確認を欠かさない。
買ったばかりであるし、湿気が酷い場所に置きっぱなしにするとか、雨ざらしにしたと言うものでなければ、そこまで入念に気にする必要はない。
雑に取り扱ったと言うなら、それこそ自分で手入れするのではなく、鍛冶屋に持ち込むような話になる。
ただ、新しく手に入れた物と言うのは、意識している間は丁寧に取り扱ったり、普段より手入れに力が入ったりしてしまうもので、レッドの新しい日常は生温かく見守られていた。
「よっし! ギルドに行くか! 今日は良い依頼があるといいな」
剣を拭った布を片付け、レッドが気合を入れながら立ち上がる。
新調した道具は、早く試したくなるか使うのを躊躇うようになってしまいやすいものになるが、剣と言う武器だけにレッドは早く試したくて堪らないらしい。
ここ数日、レッドたちは討伐の依頼を狙っていたのだが、依頼が見つからなかったのだ。
討伐の依頼が少ない時期なのか、レッドたちよりも早く動いていた冒険者たちが手続きしてしまったのかはわからない。
近郊の森は多くの人が出入りし、荒らしてしまったことから今は入ることが禁止されていて、恐らくそれが原因で討伐の依頼が減っているとリベルテは考えていた。
しかし、森に入れなくなったからと言ってここまで討伐の依頼を見かけなくなるとは思えなく、単純に討伐の依頼に縁が無いとしか言いようが無かった。
レッドの姿であるが、ぐるぐるに巻かれていた布はもう外されている。
薬師であるマイの腕は確からしく、手当てが効いてレッドの顔の晴れはだいぶ良くなっていた。
それでも腫れが完全に引いたわけではないので、まだ少し痛々しそうに見え、リベルテはまだレッドには無理をして欲しくなく、討伐の依頼が無いことに実はホッとしていたりする。
レッドにはこれまで、散々に無茶はするなと言ってきているのだが、ちゃんと聞いてもらえていなく、心配仕切りなのだ。
レッドたちがギルドに着くと、少し前ほどではないが、まだちらちらとレッドに目を向けてくる人たちが視界に入る。
さすがに顔を腫らしているのは目立つ上に、レッドたちは冒険者としての年季が長いため、冒険者の中では名前と顔は知られていることが大きかった。
特に騒乱の際、貴族区域で貴族たちを助けて回っていたリベルテと、王都に置いて騒乱の中心と見られる場所で聖職者の服装をした者たち数名と倒れていたレッドが発見されたことが輪をかけていた。
おそらくミルドレイかその護衛の兵たちから広まっただろうリベルテの活躍と、自身が毒に侵されながらもキストの聖職者たち数名を倒したレッドの活躍はしっかりと広まりつつあるようだったのだ。
それに、その毒から復帰したと言うのも一目置かれているようである。
そんなレッドが、騎士団の方と腕試しをして勝ってきた、と言う噂がどこからともなく広まっているため、大怪我をしている人に向けられるようなものから、尊敬とか畏敬のような目が向けられていたのだ。
名前と顔が広く知られるようになってきた中で、レッドが大怪我と言えるようなボロボロの恰好で報酬を受け取りにきたのだから、他の冒険者たちが騒然となっていた、とリベルテは後々から聞いて額に手を当てたくらいである。
それなりに腕が立つと言われるようになっていたレッドがそんな怪我を見せたのだから、他の冒険者たちにすれば、そんな凶悪な敵がいるのかと警戒したのも仕方がないと思える。
それを収めるためなのか、広まったのが先の噂であった。
このような手を打てるのは、ミルドレイだろう、とリベルテは推測している。
ギルマスが動くには相手が騎士団だけに使えないし、何よりそんなことを考え付けるような人に思えないのだ。どちらかと言うと、正面からぶつかっていく人柄なのである。
ミルドレイが手を回した噂に対して、ギルザークも噂について否定しなかったし、騎士団からも苦情など言ってくることもないことから、あっと言う間にこの噂が真実として広まり、レッドを尊敬するような目で見る人が増えていた。
厳しい訓練を続け、戦うことを仕事としている騎士相手に、職にあぶれた人たちが就く冒険者が勝ったとなれば、皆が注目するのもわかると言える。
レッドが皆に注目されるのは誇らしくあるが、少しだけ不満でもあるのは、リベルテが誰にも言ったことの無い気持ちであった。
「お、レッドじゃないか。だいぶ怪我は良くなったようだな?」
レッドは怪我をしたからと大人しく寝ていたわけでも無く、冒険者ギルドに来ていたのだから、ギルザークは怪我の状況は知っている。
だから、レッドに掛ける声にからかいが含まれているのがわかる。
しかし、今の他の冒険者たちから注目されている中で、ギルマスから声を掛けられる状況と言うのは、それだけ期待している、注目している、目をかけているということを示し、流れている噂が本当であると後押ししているようだった。
周囲の冒険者たちから、感嘆とも思えるような声が上がる中、やはりリベルテとしては心配事が耐えない。
この話が広まりすぎると、一冒険者に騎士団長が負けたと言うことで、ベルセイスの外聞が悪くなり、より状況が悪くなることで問題が起きそうに思えるのだ。
そんなリベルテの不安は顔に出ていたようで、ギルマスがリベルテを見てニヤリとする。
「騎士団長が訓練により真剣になったそうでな。団長が真剣になれば、その下も真剣にならざるを得ない。元々、キストへ戦争しかけようと言い出してた奴らが居たくらいだ。自分たちを鍛えるって言うのに文句なんか言えんさ」
外に向かう前にまず自分たちを鍛え上げる、と言うのは当然のように思えるが、その期間が延びる分だけこちらから進攻する話にはならない。
だが、そうだからと言って安心するには早すぎる。
「それでも、騎士団長を悪く言う人たちはいますよね?」
貴族であっても平民であっても、どこであろうと他人の足を引っ張ろうとする者は存在するもので、特に身分差で力を持つ場所などそれは著しい。
「そういったやつ等は騎士団長にのされているそうだ。勝ってから文句を言え、ってやつだな。丸っきり歯が立たずに負けてりゃ黙るしかないよなぁ」
ギルザークが負けたらしい連中を想像し、小気味良く笑う。
ギルマスと言う立場上、貴族から迷惑……、難癖をつけられることが多いのだろう。スッとしたような表情になっていた。
「お~、そうだ。レッド。討伐の依頼を探してるんだってな?」
ギルマスが少し悪さを滲ませる笑みに変え、一瞬だけリベルテに目を向けた。
「ん? 良い依頼があるのか?」
「ああ、今は討伐の依頼が少なくなっているのは分かってるだろ? そんな中での依頼だ。どうだ?」
「おう! 手続きを頼む!」
レッドが安請け合いしたことに、リベルテは深いため息を吐いてしまう。
ついこの前に、ギルマスから受けた依頼が、城の思惑を含んだ一冒険者が受けるには大きすぎる無いようだったことを忘れているようだったのだ。
ただ、もう乗り気になっているレッドに言っても聞いてもらえるわけがなく、ため息をこぼすしかなかったのである。
ただ、リベルテに一瞬だけ見せたギルマスの目配せが気になってもいた。
依頼票を持って受付に向かうギルマスを見送っていると、レッドがやる気を滾らせていた。
「やっぱり、手にした剣は試して見ないと! 感覚が掴めないってもんだ」
武器を選ぶ際、自分の直感と言うか感覚が大事であるが、実際に使ってみたら合わなかった、と言う話も良くある。
だからこそ、余裕の持てる依頼で試しておくと言うのは大事なことであり、実戦をと討伐の依頼を熱望するレッドの考えは否定出来なかった。
最近、レッドを心配してばかりになってきているように感じるリベルテであったが、どうしてそう考えてばかりになっているのか、自分でもわからないままだった。
手続きの準備が終わったらしく、ギルマスが手を振っていた。
ギルマスに呼ばれてカウンターに向かった二人を待っていたのは、エレーナだった。
リベルテとそう年齢は違わないのであるが、リベルテから見てもエレーナは相変わらず綺麗な女性で、時折羨ましく思えている。
それでも安心して会えるのは、レッドがエレーナに対して惹かれているような様子を見せていないことだろう。
「レッドさん。ありがとうございます。では、サインお願いします」
「ほいよ」
レッドが鼻歌でもしそうなくらい上機嫌に、内容を良く確認しないでサインする。
リベルテがちらっと目を動かせば、ギルザークが悪い笑みを浮かべていた。
「はい。それではフォレストディアの討伐をお願いしますね。あのモンスターも繁殖をしているらしくて、保護を始めたはずの森で被害が広がっているそうなのです」
フォレストディアが相手と聞いてリベルテは素早く準備する物を考える。
近づくのが難しいモンスターで弓で遠くから射かけないといけない相手、と言うところでリベルテは、あ、と声をあげてしまった。
レッドに目を向けると、レッドはギルザークを睨んでいた。
フォレストディアに斬りかかるには罠を仕掛けて、掛かるまで待たないといけないが、依頼の日数から見てそんなに待つことは出来ないし、今の森で罠を仕掛けると言うのは、荒れないようにと制限している状況では無理なのだ。
ギルザークはレッドに剣を使わせる気など無かったらしい。
すでに依頼はサインをして手続きが完了してしまっていて、ここから取りやめるには違約金を払わなくてはいけなく、悔しそうにするレッドにリベルテは笑顔を見せる。
「やりたかった討伐の依頼ですね。きっちりやりましょう?」
許可をもらって入った森で、リベルテたちはフォレストディアを四匹射倒した。
レッドが放つ一矢は意思と言うか怒りと言ってしまってよい感情が込められていて、ディアを三匹もたおしてしまったのである。
レッドに弓で後れを取るとは思っていなかったリベルテは、思わず憮然としてしまった。
リベルテよりディアを倒したことでレッドの機嫌は戻っている。
そんな子どもっぽさが残るレッドが、仕方ないなとも、そこがまた良いな、とリベルテは改めて思っている。もちろん、そんなことは誰にも言ったりはしない。
「今日はステーキにしましょうか。お肉祭りです」
「お、良いな! マイも喜ぶだろう。……つか、あいつも食べるとなるともう一匹くらい、こっちの分にもらいたいな」
先ほどまで考えていたことが伝わらないように、食事について口にすれば、レッドが楽しみだと話に乗る。
大きく差がつけられていることが少し悔しくもあり、リベルテはもう一匹狙うことにして、周囲を探っていく。
森にいても吹き抜ける風の冷たさを感じるようになってきており、季節はリベルテが苦手な冬へと入り始めていた。
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