大好きな恋愛ゲームの世界に転生したらモブだったので、とりあえず全力で最萌えキャラの死亡フラグをおっていきたいと思います!

赤蜻蛉

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モブ女子、いざ騎士院へ!

まさかの自分の死亡フラグが立ちそうです

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「ルンルン~♪ル、ルンルン~~♪」



騎士院へと向かう道のりでご機嫌な私は、鼻歌を歌いながら軽やかな足取りで歩き続けていた。

背中には30人以上分もの巨大バーガーである、ビッグ・ララが積まれているが今はその重さも全く気にならない。


だって、これからあの愛しの団長・ジークフリート様に会えるんだから!!



「あぁ~~生きてるって、なんて素晴らしいんだろう!!神様、女神ナーサディア様!本当に感謝です!!」



澄み渡るどこまでも続く青空に向かって、キラッキラの目と顔をさせた私が突然太陽に向かっていい笑顔で祈り出す。

周りに歩いていた町の人達がかわいそうなものを見る目で見ていたが、そんなことは知るもんか!!




「君・・・・ずいぶん、面白い魂を持ってるね」



「んぎゃーーーーー!!!」  




突然背後から耳元に囁かれて、思わず変な声で叫びその場を飛び退く。

慌てて振り返ると、目の前には紺の全身を覆う大きなマント?ローブのようなものを着たこの国の魔導師と言われる姿の人が立っていた。

背は私よりも少し大きく、ローブについているフードからかいま見える顔はけっこう若い。




「フフ。驚かしてしまってすみません。ずいぶん不思議な色の魂が見えたもので」

「た、魂?魂の色って、普通に見えるんですか?」

「あれ?・・・・これは面白い!」

「え?」



何かを見つけたのか、子どものように嬉しそうな笑顔になった様子の魔導師様が、クローディアに向かってずんずんと近づいてくるとローブから出た手がすっとクローディアの顔に触れる。



こ、これは?

まさかの顎くい!!

は、初めてされましたーーーーーー!!



でも、なんで?
トキメキ場面なのにも関わらず、全身が悪寒で震えています。



「これは、魔力かな?こんなに周囲に垂れ流しにしてるのに、君の魔力の源はほとんど減っていく形跡が見られないなんて」

「あ、あの?」

「こんな不思議な魔力、初めて見たよ。君、名前は?」

「ク、クローディア=シャーロットです」



多分、このいつ発動してるんだか分からない自動回復機能のことを言ってるんだろう。 

突然の顎くいに心臓をドキドキさせながら、ってこれはあくまで緊張だからね!



団長、緊張のドキドキですからね!!

恋愛じゃないですよ?
だってなんだか、悪寒が止まらないですからね!!



何かに脅えるように震えながらも、目の前の魔導師様の方にちらっと目を向けてみると、そこにはこの世のものとは思えないほどの美しい顔がそこにあった。



「こんなに面白い存在が、こんな近くにいたなんて。おかしいな?この僕が見逃すはずがないんだけど」  


「・・・・・あぁっ!あなたは!!」



たった今、思い出した!

透き通るような真っ白な肌に光が当たると反射してキラキラ輝く銀色の髪を持ち、基本は穏やかな笑顔で目がないんじゃって感じのビューティースマイル。

そして今は、目が開眼して深い紫の目が私の目をまっすぐ見ている。 


そう、この美しい姿と顔と声には見覚えと聞き覚えがある!


画面の中ではいつだってニコニコしているのに全く癒されずにいたどころか、この笑顔に油断するとたまに殺されかけてバットエンドに向かいそうになったのだ。

でもそんなところがむしろとても人気で、熱狂的なファンがついていた腹黒魔導師!!

そうだ。
この顎くいイベントは、彼とヒロインの出会いのスチルで見たことがある。

最初の不思議な魂うんぬんも、聖女としていきなり顕現したローズに向かっていったあの言葉じゃないか!!




そう!彼の名はーーーーーーー!!




「ル、ルーク=サクリファイス!!」




「あれ?僕のこと知っててくれたんだ。普通の平民にまで広がってるなんて、嬉しいな♪」

「な、なんでこんな昼間から外に?!」

「へぇ~~僕が滅多に外に出ないことまで知ってるなんて君、すごいね」
 


『ルーク=サクリファイス』


ゲーム攻略者の1人で、この国一番の知識も実力もピカイチの天才魔導師。

普段は自分の魔法院から滅多に外には出ず、攻略中も自分から会いに行かなければ遭遇すらせずにゲームを終えてしまうこともあるぐらい、自分からは動かない。

ヒロインとのデートだって自分からはテコでも動かず、気に入らないとデート中ですらも帰ってしまう気分屋。

しかも何を考えているのか全くその笑顔からは分からず、自分の目的の為には笑顔で自分以外のものを平気で利用できる腹黒魔導師だ!


彼のせいで、何度団長の死亡フラグがたってしまったことか!!!
 



「あの、わ、私は本当に普通の平民ですので、どうかお気になさらず!!」




どうか神様、女神様!!

こんなところで、私の死亡フラグを立てないでください。

私はただのモブ、町民Aでございます!!




「普通の平民?フフ。面白いなぁ~~♪こんな変な魔力を持った平民なんて、僕が見逃すわけないじゃないか」
 


でーすーよーねーーーー!!!
 


あぁ~~~なんていい笑顔!!!

こんな美しい人の笑顔なら、普通ならキャーーー!!とか、そうは言っても顔がいい!とかトキメキに身悶えるんでしょうが。
私には団長の死亡フラグを密かにおり続ける!という大事な使命があるんです。


こんなところで、自分の死亡フラグを一本でも立てている場合じゃない!!




「君の体の中はどうなってるんだろう?魔力の流れも興味深いし、ぜひ魔法院でいろいろ実験して調べてみたいな~~~♪」

「ひぃぃぃーーーー!!け、けっこうです!!」

「!?」



自分にまっすぐ向かってくる死亡フラグのあまりの怖さに、勢いよくルークの手を掴んで自分の顔から外させると、その瞬間全身に何か熱いものが走り特にルークの手首を掴んでいた手の平が一気に熱を持つ。



「あ、あつっ!!」

「・・・これはっ」



熱い鉄板をうっかり間違えて触ってしまったかのような衝撃が一瞬手の平に走り、すぐにルークの手首からも手を離すとルーク自身も笑顔が消えて彼にしてはとても珍しい、ショックを受けたような顔をしていた。

そういえば、ゲームでも彼のこんな顔は見たことがない。

ゲームと現実の違いだろうか?




「る、ルーク様、ごめんなさい!腕は大丈夫ですか?そんなに強く握った覚えはないんですが」


「・・・・・・」



自分の手の平を見ても、あんなに熱い衝撃が走ったのにも関わらずケガやヤケドなどは特に見られなかった。 

ルークの方も大丈夫だったかと声をかけてみたが、ルークは先ほどと同じようにショックを受けた顔で自分の手のひらを見つめている。



「る、ルーク様?だ、大丈夫ですか?」

「フフ。君、本当に面白いね」

「え?いや、あの、すみませんでした!先を急ぎますので私はこれで失礼します!!」



とりあえずルークの手をみても大丈夫そうだったので、早くこの場を立ち去る為に頭を軽く下げてから、重たい荷物を持っていることなど忘れて全力で逃げるように騎士院へと向かう。


いや、実際に逃げてるんですけどね。


そんな私の後ろ姿を見つめながら、ルークはいつものように微笑みを浮かべた。






「クローディア=シャーロット、か」



その微笑みが先ほどクローディアに掴まれた手に向かう。


「うまく逃げたつもりなんだろうけど。
この僕が、一度見つけたものを見逃すわけないじゃないか」



紺のローブに隠れていた腕には何かの文様のような深い紫の痣が刻まれており、先ほどクローディアが触った部分の前でその痣が不自然な形で終わっていた。



「また君に会うのが今から楽しみだよ、クローディア」



もうクローディアの後ろ姿すらも見えなくなった道の先にそう呟くと、ルークは踵を返して自らが住む魔法院へと足を向けた。


その顔に太陽の光が射し、ただでさえ白く美しい肌が明るく映える。



その顔にはいつもと少し違う笑顔が浮かび上がり、彼の横を通り過ぎる者たちが皆あまりの美しさに動きを止めてしばし見入ってしまったという。
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