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モブ女子、他キャラとそれ以外の色々な出逢い
守護者ができました!
しおりを挟む『我を呼んだか?我がーーーーー主よ』
目の前の龍の形をした燃え盛る炎が円を描きながら中心に集まって行き、その炎は大きな人の形を作っていく。
そして、肌は見る角度で赤くもオレンジにも、深くも明るくも見える不思議な色をし、肩までくらいの髪の毛は炎そのもので後ろに流れ、上半身は無駄な脂肪が一切ない筋肉でおおわれ、見事な逆三角形を誇るすばらしい肉体美だ。
「・・・・すごい」
下半身は金色に輝く裾が大きく広がった服に包まれ、足元は中に浮き、紅きオーラを放つその姿はあまりにも神々しくて瞬きすらも忘れてしまう。
その姿を見たときにクローディアがイメージしたのは、アラビアンナイトの話に出てくる魔人だった。
『我が名は、ボルケーノ』
「!!??」
金色と赤が入り混じった切れ長の鋭い眼差しが、まっすぐクローディアを射抜いている。
『主よ、そなたの名はなんという?』
「く、クローディア=シャーロットです」
『クローディア、我が力の封印を解いてくれたこと、まず礼をいう』
3メートルはあるかというような大柄で威圧感を強く感じるこの魔人?が、組んでいた手をとき、私に向かって頭を下げた。
「え、封印?呪いじゃなくてッ!?」
すぐさまルークの方を見て、何これ?と説明を求めて視線を向けるが、ルークはニコニコ笑っているだけで何も言わない。
る、ルークさんッ?
これは一体なんなんですかッ!!!
私が持たされたのは呪いの杖ですよね?
呪いのランプじゃないですよねッ?
叶えてくれる願いは3つでしたっけ?
『我は、今から何百年も昔に闇の魔導士に不意をつかれて、力と命とを封印されていたのだ』
「や、闇の魔導士ッ!?」
『闇の魔導士』の部分に反応して、思わずルークを見てしまうが、ルークはニコニコしながら一言。
心なしか、冷たい空気が流れてる気がする。
「生まれてません♪」
「で、ですよね~~~」
ついつい見てしまったことは悪かったが、きっと同じことを他の人だってするはずだ。
『我は火の神、ボルケーノ。我が主よ、解放してくれた礼として、そなたに火の加護を授けよう』
「えぇぇぇっ!か、神様ッ!?加護ッ!?ちょっとルーク、本当にどうなってんのッ!?」
いきなりの急展開に、頭が本気でパニックだ。
そんな私をほっといてボルケーノが両手を広げて手のひらから炎を生み出すと、私の体を大きな火炎が包む。
「!!??」
だが、不思議と少しも熱くはなく、むしろその炎が紅いオーラととともにキラキラ光る様に思わず見とれてしまった。
『炎の加護は、そなたを寒さから守る』
つまり、いつでも自動温熱ヒーター??
『そなたが望めば、いつでもその手から火炎が出せよう』
つまり、いつでも火炎放射器ですか??
『どうした、主よ??変な顔をしているな』
「・・・・・いえ、すごいことになったな、と」
『それだけのことをしたのだ。胸をはるがいい』
「い、いえ、私は手に持って、怒りのままに天井へと投げつけただけです!」
杖を壊したと怒られることはあっても、まさかお礼を言われることはしてません。
『いや、そなたの力だ』
「へっ??」
炎の魔人ボルケーノは私の間近にくると、その強面の顔にニッと力強い笑みを浮かべた。
『そなたの魔力が我を封印せし杖の中に一気に流れ込み、封印の魔力を打ち消したのだ』
「えぇ!?そんなことできたのッ!?」
すごいですね、私の魔力!!!
でも、私にはその恩恵を一切向けてくれないんですが、いつ仲直りできるでしょうか!!
『そして、それを全て承知の上で我を封印する杖を主へと託したのだろう??』
そしてボルケーノの鋭く力強い視線は、そのまま私の隣にいる彼の方へ。
『なぁ、古の血を引く魔導師よ?』
「る、ルーク、まさかこれ全部知ってたのッ!?」
私の視線も彼へと向かう。
2つの視線が集中したルークは少しだけ真顔になった後、いつものニッコリ笑顔を浮かべた。
「さぁ、どうでしょう?」
「どうでしょう?って、ルーク!!」
『ククッ!まぁいい。それよりも古の血を引く魔導師よ、アイリスは元気か?』
「!?」
笑みを浮かべたルークの顔が、一瞬強張る。
「ルーク??」
「えぇ、変わらずですよ」
『そうか。よろしく伝えておいてくれ』
「はい♪」
もう、今は普段の笑顔と変わらない。
「る、ルーク??」
「よかったね♪火の神の加護があれば、死の山の吹雪の中も無事に歩けるんじゃない?」
死の山は雪山で、天気が悪いと猛吹雪になることもあると聞いた。
寒さに強くない自分は一体どれだけ着込んでいけばいいのかと、正直頭を抱えていたことだった。
「えっ?あ、そっか!それは確かにありがたい!!」
『死の山だと?もしや、白の魔女か?』
腕を組んで余裕の笑みを浮かべていたボルケーノの表情が歪む。
「ご、ご存知なんですか??」
『まぁな。あいつめ、まだ悪さをしているのか』
何百年も封印されていた神様と知り合いとは、白の魔女は一体どんな存在なのか。
クローディアの中では雪女か雪の女王のイメージでいるのだが、あまり心臓に悪くない見た目を希望したい。
『それなら、我の力が役に立つだろう』
「よ、よろしくお願いします」
『我と主の契約は名を交換することで交わされた。我は主とともに在る。いつでも、必要とあれば呼ぶがいい』
えっ?あれ、契約だったんですがッ!?
ただの自己紹介だと思って、あっさり交わされましたよね?!
契約を交わすのって、もっと荘厳な儀式っぽい感じでやるんだとばかり思ってました!
契約だと言ってくれれば、私も心の準備ができたのに!!
『聞いてるのか?我が主よ』
「す、すいません!わかりました!!」
ずいっとボルケーノの顔が近づき、その強面の顔と威圧感に緊張が全身に走って、思わずビシィーーーーーーッと敬礼のポーズで応えてしまう。
『ではな、我が主よ』
「へっ??」
私の周りを包む炎とともに、ボルケーノの姿がぼやけ空気に溶け込むようにして音も立てずに消えた。
「・・・・・・・」
後に残された私はといえば、その光景が消えた後もしばらくポカーーーンと、唖然とした表情で見つめ続けていた。
「大丈夫?」
ルークはクローディアを楽しそうに見つめると、何もない空間に向かっていつもとは違う笑みを浮かべた。
「久しぶりに会えたなら、良かったね」
紫の瞳には、優しげな光が宿っていた。
「・・・・・アイリス」
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