3人用声劇台本「ないものねだり」

ないものねだり

男　「あーあ、つまんねぇ。なんかおもしれぇことねぇかなあ…？」
？　『どうしてそんなにつまらなそうにしているんだい？』
男　「俺はもう飽きちまったんだよ。自分で言うのもなんだが、俺は今までの人生、苦労したためしがねえ。勉強だって、運動だって、俺にかなう奴はいねえんだ。俺は完璧なんだ。でも、完璧ってのはつまんねぇんだ。」
？　『キミは完璧なのが嫌なのかい？』
男　「ああ、嫌だね。」
？　『ならボクがキミをダメ人間にしてあげるよ。』
男　「は？」

女　「何してんの？早く来ないと置いてくよ！」
男　「待てよ！………あれ、追いつかねぇ。あいつあんなに足速かったっけ？」
？　『ダメ人間にしてあげるよ。』
男　「まさか、な。」
女　「ほら、本気で走れ！じゃなきゃ遅刻するよ！あたし先に行くからね。」
男　「くそっ！なんで追いつかねぇんだ。いつもならもうとっくに追い抜いてるってのに…。」
女　「ねえ、あんた今日どうしたの？あたしに追いつけないし、変なミスばっかりするし、絶対変だよ。」
男　「まさか…。」
？　『完璧は嫌だと言っただろう？』
男　「まさか、本当に…？！」
女　「熱でもあるの？」
男　「俺は完璧じゃなくなったのか。そうか…。は、はは、ははははは！最高じゃねぇか。」
女　「どうしちゃったの？ねぇってば！」
男　「わりぃ。何でもねえんだ。」
女　「そう？ならいいんだけど。あんたがミスするところなんて初めて見たから心配しちゃった。もしかしたら、今日は厄日なのかもね。まあせいぜい気をつけなよ。」
男　「ああ。…………………………身体が思うように動かねえ。鉛みてえだ。これがダメ人間ってやつなのか。ははは、おもしれぇ。ダメ人間ライフ、エンジョイしてやるぜ！」


？　『どうだい？完璧でなくなった気分は。』
男　「最低だ！なんだよこの身体！ノロマでドジなダメ人間になっちまった。おかげであいつには全く勝てねぇし、しょっちゅうドジやらかすせいで身体中痣だらけだ。」
？　『キミが望んでいた通りだろう？』
男　「こんなの俺が望んだもんじゃねえよ！ふざけんな！ダメ人間っていったって限度があるんだよ！元に戻せ！」
？　『キミは自分勝手だね。ダメ人間にして欲しいと望んだのはキミだと言うのに、今更何を言っているんだい？』
男　「お前が勝手にやったんだろ！」
？　『キミには失望したよ。もう少しおもしろいと思っていたのに、がっかりだ。じゃあね、せいぜい苦労して生きなよ。』
男　「おい、ふざけんな！待てよ！おい！！」


男　「あーあ、つまんねえな。」
？　『何がつまらないんだい？』
男　「俺にはなんの才能もねえんだ。何にもできねえ。こんなおもしろくないことあるか？せめてなにかひとつでも才能があれば…。」
？　『ならボクがキミを完璧な存在にしてあげるよ。』
男　「は？」
？　『今度はせいぜい、ボクを楽しませておくれよ。』