ひとりぼっちの嫌われ獣人のもとに現れたのは運命の番でした

angel

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5章

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「食事はお口に合いましたでしょうか」

 幕が閉じられたアヌノク移動式住居の中は俺とアルゼと千早ちはやとラフの4人だけだ。

「こぇ、おいちいやった!こぇも」

 空になった器を指さすアルゼをニコニコと見ているラフは、昨日見た時に感じた通り、やはり俺と同じ種族と思わせる姿形をしている。

「こちらの風土の食事が間に合いませず申し訳ありませんでした。けれどお口に合うものがあって良かったです」

 昨日は疲れからすぐに眠ってしまって、ラフの話す黒の王だのなんだのの話について考える暇がなかった。
 これから俺たちはどうなるのか…

「村の皆は?」
「皆様、いつも通りの生活に戻られておられます」

 大勢のクテニ族が村を監視しているがそのことはラフは告げなかった。


「こちらの外套と深靴をお召しになっていただけますか?外にご挨拶したいと参っているものがおります」

 いつの間にか現れていたクテニ族が俺たち3人にそれぞれ網篭を掲げる。
 返事をする間もなく数人のクテニ族に深靴というひざ下までもある皮のようなもので出来た靴を履かされ、黒い上下に着替えさせられ黒い外套をまとわされる。
 見るとアルゼには白、千早ちはやには薄茶色とそれぞれの髪色の体格に合ったものが着せられていた。

「こちらは寒い地域でございますね。雪を初めて見ました」

 世間話をしながらラフが俺たちを外へといざなう。

 初春の柔らかな日差しに目を細めアヌノク移動式住居から出ると、そこにはラフと同じクウガ族であろう3人の焦げ茶色の人化した獣人が跪いていた。

「右が第一幻魔獣隊長」

 ラフがそういうと武装した男が跪いたまま顔だけを上げ俺を見上げる。
 唇をわななかせ今にも涙が零れ落ちそうな様が不思議でならない。

「真ん中が王宮統括補佐」

 族長くらいの歳だろうか、しわが刻まれた顔にも喜びがあふれている。

「左がクテニ族総括」

 顔が髪の毛との境目がないような毛むくじゃらの男が、声もなく涙を流して俺を見上げている。


「おぇといっちょ!みみ、しっぽ。みんないっちょ!」

 嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねるアルゼが、俺の外套を握りしめ頬を染めてはしゃぐ。

 ラフが3人の前まで進み俺のほうを振り返ると、跪き両手を後ろで組み服従の姿勢をとる。

アヌノク移動式住居では狭く、お話を続けるにしても何かとご不自由をおかけすると判断し、ご移動していただきたくお願い申し上げます」

 跪く4人のクウガ族を前に俺はなぜこうなっているのかさっぱりわからなかった。

「なぜ、ついていかなければならない」

 見下ろしながら尋ねると

「この村はあなた様に危害を加えようとしていましたし、現在も一部のものはその考えを捨ててはおりません」

 キツイ目つきのラフが不愉快そうに答えた。

 鳶尾いちはつのことだろうか。
 確かにこのままこの村で山頂で今まで通り暮らせるとは思えないし、アルゼとも引き離されるだろう。

「わかった」

俺がそういうと3人の後ろからノッソリと幻魔獣3体が現れた。

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