悠遠の誓い

angel

文字の大きさ
148 / 203
15章

トラブル

しおりを挟む
「台湾サーバーだけじゃなくシンガポールもか!?」

海瑠のお仕事部屋から聞こえる声が珍しく険しかった。

「攻撃受けてるのがわかってから1時間以上もたってるんだろ、なんで防御出来てないんだ!」

ダン!と机を叩く音まで聞こえる。ただ事じゃないみたいだ。


オレは数々の失敗を続けてた家事もなんとかできるようになってきてた。洗濯は洗濯機に任してるし、食器も食器洗い機に任せたオレはハンディモップで棚の上のホコリを取りながら海瑠の部屋の様子をうかがう。

「こっちでやるから管理権限よこせ!この無能集団が!!」

誰が言ってるの?ってくらい汚い言葉で罵るのが聞こえる。こんな海瑠は知らない…。偽物なのかな?
カチャカチャタンタンターンとキーボードを叩く音まで尖っている。通話の相手はわたるだろうか?

お仕事のトラブルなんだろう。海瑠じゃないと解決できないような問題なんだろう。
海瑠がこんな山奥じゃなく会社にいればもっと迅速に対処できたんだろうと思うと胸がツキンと傷んだ。


まだも続く尖った怒鳴り声のするお仕事部屋から離れキッチンへと行く。

オレの出来ることをしよう―――――

冷蔵庫から牛乳とガムシロップとバナナを取り出しミキサーに入れる。
前に海瑠が作ってくれたバナナジュースを作ろうとしてた。
すごく甘くておいしくて『バナナは脳に栄養をすぐに送ってくれるんだよ』って朝に作ってくれてたんだ。

(これ飲んでお仕事がんばってもらいたい)

そう思っただけなのに…



部屋中に飛び散った牛乳と机の上に転がるバナナの破片。
オレは頭から顔から服までずぶ濡れのバナナ牛乳まみれだった。

ベッドで眠るオレに『しょーちゃん起きて、バナナジュース持って来たから。これ飲んだらすぐに頭がスッキリするよ』って微笑む海瑠。いつも出来たてを持ってきてくれてた。作り方なんて知らなかった。


(ミキサーに入れてスイッチ入れるだけじゃないのか…?)

こんな簡単なことも失敗する自分に嫌気がさし、泣きながら床や壁をふいた。
オレには想像もできない難しいお仕事をしてる海瑠にバレたくない一心で隠した数々の失敗が蘇る。
割れた花瓶は処分したし、アイロンで溶けてしまったパーカーは捨てた。オレが家事をやると言ってから次々と消える鍋や家具に気づいてるだろうに何も言わない海瑠。
早く一人前になりたいのにバカなオレの頭は普通のこともちゃんと出来ない。
布巾を絞ろうとしても右手が言うことを聞かずビシャビシャで床が一層ひどいことになっていく。

お仕事部屋からはキーボードをたたく音が聞こえてる。
世界に通用する会社なんだって。ITのすごい会社なんだって。ゲームもアプリも大人気なんだって。
オレなんかに構ってないで自由に飛び立てばアイツには大きな空が広がってるのに。
足手まといのオレのせいでこんな田舎の山奥にひっこんでるんだ。



「うっ…うぅ……、うぇ…」


泣きながら右手にペンを握りしめメモを書いた後、オレは一人で山荘を離れた。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています

大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。 冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。 ※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です

鳴成准教授は新しいアシスタントを採用しました。実は甘やかし尽くし攻めの御曹司でした。

卯藤ローレン
BL
逢宮大学准教授の鳴成秋史は、自分の授業サポートをしてくれるTA(ティーチングアシスタント)を募集していた。 そこに現れたのは、月落渉と名乗る男。 志望動機を問うと、男はこう答えた。 「端的に言うと迷子です。迷える子羊のような気持ちで」 「……はい?」 独特なペース、冗談か真実か分からない。 けれど、鳴成は採用を決めた。 理由は、『自分に興味のなさそうな雰囲気に惹かれたから』。 それが、男の完璧なる包囲網の一端に既に引っかかっているとも知らずに――。 仕事の枠を超え持てる全てで全力サポートするハイスペック年下御曹司×穏やかで大人な年上准教授。 ベタベタしてないのにものすっごくイチャイチャしてる、日常系ラブコメです。

【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

初戀

槙野 シオ
BL
どうすることが正解で、どうすることが普通なのかわからなかった。 中三の時の進路相談で、おまえならどの高校でも大丈夫だと言われた。模試の結果はいつもA判定だった。進学校に行けば勉強で忙しく、他人に構ってる暇なんてないひとたちで溢れ返ってるだろうと思って選んだ学校には、桁違いのイケメンがいて大賑わいだった。 僕の高校生活は、嫌な予感とともに幕を開けた。

処理中です...